TwelveLabs、動画AIに150億円|Soraと何が違う?

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

taolis.net X note Voicy YouTube
  • 動画AIの「TwelveLabs(トゥエルブラボ)」が約150億円を調達したこと
  • Sora(ソラ)やVeo(ヴィオ)のような「動画を作るAI」とは真逆の技術だとわかること
  • AmazonやNAVER(韓国の大手IT企業)が出資した理由
  • スポーツや映画の現場でどう使われているかの具体例
  • NAVER経由で日本のユーザーにも関係してくる可能性

スマホに何百本もたまった動画。「あの場面、どこだっけ?」と探すのに苦労したことはありませんか?その悩みを企業レベルで解決するAIが、いま大きな注目を集めています。

2026年7月1日、動画理解AIの「TwelveLabs」が約150億円という大きな資金を調達しました。この記事では、この会社が何をしていて、なぜAmazonまで出資したのかを、やさしく解説します。

TwelveLabsが150億円を調達|何が起きたのか

2026年7月1日、アメリカのAIスタートアップ「TwelveLabs」が発表を出しました。

シリーズB(成長期の企業が受ける大型出資)で1億ドル、日本円でおよそ150億円を集めたという内容です。

創業からの累計調達額は、およそ2億ドル(約300億円)にのぼります。

この会社は2021年に生まれました。本社はアメリカのサンフランシスコと、韓国のソウルの2か所にあります。

CEO(最高経営責任者)はJae Lee(ジェイ・リー)さんです。今回の資金でニューヨークとロンドンにも新しい拠点を開くと発表しました。

そもそもTwelveLabsとは?動画を「理解する」AI

TwelveLabsがやっていることは、ひとことで言うと「動画の中身をAIに理解させる」ことです。

これまで動画は、AIにとって「ただの重いデータのかたまり」でした。中に何が映っているかは、人が見るまでわかりませんでした。

TwelveLabsのAIは、動画の映像・音声・セリフ・動きをまるごと読み取ります。

だから「猫がソファから飛び降りるシーン」と言葉で入れるだけで、その瞬間をピンポイントで探し出せます。

MarengoとPegasus、2つのモデル

TwelveLabsには、役割の違う2つのAIモデルがあります。

Marengo(マレンゴ)は「知覚」を担当します。映像や音を細かく読み取り、検索できる形に変える役目です。

Pegasus(ペガサス)は「推論」を担当します。動画を「シーンの区切り」「登場人物」「場面の意味」といった整理されたデータに変えます。

この2つは、最大2時間ぶんの動画をまとめて理解できます。長い試合や映画でも扱えるということです。

2026年7月には、これらを使いやすくした初のアプリ「Rodeo(ロデオ)」も登場しました。

SoraやVeoとの決定的な違い

ここが一番大事なポイントです。

OpenAIの「Sora」やGoogleの「Veo」は、文章から新しい動画を作り出すAIです。世間ではこちらが話題になりがちです。

一方でTwelveLabsは、すでにある動画を理解して検索することに集中しています。方向が真逆なのです。

CEOのリーさんは、こう語っています。

「5年前、私たちは逆張りの賭けをした。機械の知能の土台は、言語ではなく『動いて記録された現実』だと」。

つまり「動画を作る競争」には加わらず、「動画を分かる技術」で一番を目指す、という戦略です。

誰が出資した?AmazonとNAVERの狙い

今回の出資には、豪華な顔ぶれが並びました。

共同で主導したのは、老舗VCのNEAと、韓国の大手IT企業NAVER(ネイバー)の投資部門です。

さらにAmazon、Radical Ventures、Index Ventures、韓国投資パートナーズ、そしてレッドブルの投資部門なども加わりました。

過去には、データ分析大手のDatabricks(データブリックス)やSnowflake(スノーフレイク)も出資しています。名だたる企業が注目しているのです。

AWS Trainiumチップで動画処理を高速化

Amazonの出資には、はっきりした狙いがあります。

TwelveLabsは、AmazonのクラウドサービスAWSを「一番のパートナー」に選びました。複数年にわたる契約を結んでいます。

注目は、AWSが自前で作るAI専用チップ「Trainium(トレイニウム)」を使う点です。動画の処理をこのチップに最適化します。

動画は文章より何百倍も重いデータです。専用チップで処理すれば、速く、そして安く動かせるようになります。

どんな場面で使われている?活用シーン

TwelveLabsのAIは、すでに現場で動いています。3つの例を見てみましょう。

まずプロスポーツです。あるリーグでは、何万時間もの試合映像から「決勝ゴールの瞬間」だけを一瞬で集められます。ハイライト作りが劇的に速くなります。

次に映画やドラマの制作スタジオです。過去の膨大なフィルムから「雨のシーン」や「特定の俳優が映る場面」を探し、編集や再利用に役立てています。

そして政府機関です。防犯カメラや記録映像を解析し、大切な業務に活用する動きが世界で広がっています。

ほかにも広告、警備、自動車といった分野からの需要が高まっています。動画を「保管コスト」から「使える資産」に変えるのが、この会社の目標です。

競合サービスとの比較|Google・Amazonとどう違う

動画を扱うAIは、TwelveLabsだけではありません。

Googleの「Gemini(ジェミニ)」でも映像を検索できます。AmazonやMicrosoftも、映像から物体を見つけるサービスを持っています。

では何が違うのでしょうか。リーさんは「動画に最初から絞っている」点を強調します。

「GoogleやOpenAIは、なんでもこなす万能モデルに投資している。でもそれは動画に最適化されていない」と語ります。

TwelveLabsは動画一本に集中しているぶん、精度が高いという主張です。しかも、企業が自社のデータに合わせてモデルを調整できる柔軟さもあります。

大企業の「動画もできる万能AI」に対し、TwelveLabsは「動画の専門家」として勝負しているわけです。

日本市場への影響|NAVER経由で身近に?

「アメリカと韓国の話でしょ?」と思うかもしれません。でも、日本にも関係があります。

今回の出資を主導したNAVERは、日本の「LINEヤフー」の親会社にあたる企業です。日本と縁が深いのです。

NAVERが力を入れる技術は、いずれ日本のサービスに入ってくる可能性があります。動画検索が身近になるかもしれません。

日本には、テレビ局やアニメスタジオが持つ膨大な映像アーカイブがあります。こうした「眠っている動画資産」を活かす技術として、相性は良さそうです。

韓国では、TwelveLabsはすでにLG CNSと提携し、「イカゲーム」制作会社からも出資を受けています。アジアでの存在感を着実に広げています。

よくある質問(FAQ)

Q1. TwelveLabsは無料で使えますか?

おもに企業や開発者向けのサービスです。API(外部から機能を呼び出す仕組み)を通して提供され、利用量に応じた料金がかかります。個人がすぐ使うより、企業のシステムに組み込む形が中心です。

Q2. SoraやVeoの競合ではないのですか?

直接の競合ではありません。SoraやVeoは動画を「作る」AI、TwelveLabsは動画を「理解して探す」AIです。むしろ役割が補い合う関係にあります。

Q3. 日本語の動画にも対応していますか?

TwelveLabsは多言語に対応しており、日本語のセリフや音声も解析できるとされています。ただし精度は動画の内容や品質によって変わります。

Q4. なぜ「動画を理解するAI」がそんなに重要なのですか?

いまインターネット上のデータの多くは動画です。しかしAIは長い間、文章ほど動画を理解できませんでした。この「未開拓の領域」を切り開く技術だからこそ、大きな期待が集まっています。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • TwelveLabsが2026年7月にシリーズBで約150億円を調達、累計は約300億円
  • 技術は「動画を作る」のではなく「動画を理解して検索する」もの
  • MarengoとPegasusの2モデルで、最大2時間の動画を分析できる
  • AmazonはAWS Trainiumチップで、韓国NAVERはアジア展開で連携
  • スポーツ・映画・政府など幅広い現場ですでに活躍中
  • NAVER経由で、日本のユーザーにも将来関係する可能性がある

動画は今後さらに増え続けます。まずは自分の使う動画サービスに「賢い検索機能」が加わるか、注目してみてください。

参考文献

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です