ロボット投資2.8兆円で過去最高|身体性AIに集中

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • 2026年上半期だけでロボット企業への投資が約2.8兆円(188億ドル)に達し、過去最高を更新しました
  • お金が集まっているのは「身体性AI(体を持って動くAI)」とヒューマノイド(人型ロボット)です
  • Saronic・Neura・Skild AI・Figureなど、1社で1000億円超のラウンドが続出しています
  • 中国が世界の投資額の4割以上を占め、Unitreeなどの上場ラッシュも始まっています
  • 日本も「Noetra」という国産プロジェクトに5年で約1兆円を投じ、この波に乗ろうとしています

「ロボットに、こんなにお金が集まっているの?」と驚く数字が出ました。2026年は、まだ半年しか過ぎていないのに、ロボット企業への投資が過去最高になったのです。しかも去年1年分をすでに追い抜いています。この記事では、何が起きているのか、なぜ今なのか、そして日本にどう関係するのかを、やさしく解説します。

2026年、ロボット投資に何が起きたのか

まず数字から見ていきます。

ベンチャー投資を追うValue Add Pulseによると、2026年に入ってからロボット系スタートアップが集めた資金は188億ドル(約2.8兆円)にのぼります。

これは6月22日時点の数字です。つまり半年分です。

比べてみましょう。2025年は1年間で150億ドル。これまでの最高だった2021年でも141億ドルでした。

半年で、過去のどの1年よりも多く集めてしまったことになります。まだ半年残っているので、年末には前年のほぼ2倍になる勢いです。

ちなみに、AI全体への投資も過熱しています。世界のスタートアップ投資額は2026年上半期だけで5100億ドル(約76兆円)という記録的な水準でした。その中でも、ロボットの伸びが特に目立っているのです。

なぜ今「身体性AI」に投資が殺到するのか

キーワードは身体性AI(フィジカルAI)です。

これは、体を持って現実世界で動くAIのことです。ChatGPTのように画面の中だけで文章を書くのではなく、腕を動かしたり、歩いたり、モノをつかんだりします。

今までロボットは「ハードウェアの難しい賭け」と見られてきました。開発にお金がかかるわりに、うまく動かないことが多かったからです。

ところが、生成AIの急激な進化で流れが変わりました。「賢い頭脳」を作る技術が一気に進み、それをロボットの体に載せられるようになったのです。

投資家は「今こそロボットが本当に使える段階に来た」と考え始めました。だからお金が一気に流れ込んでいるのです。

過去最高を作った巨額ラウンドたち

記録更新の裏には、1社で1000億円を超えるような大型調達がいくつもあります。

人型ロボットの主役たち

Figure(フィギュア)は、汎用の人型ロボットを作る米サンノゼの会社です。シリーズCで10億ドル(約1500億円)を調達し、企業価値は390億ドル(約5.8兆円)になりました。

Neura Robotics(ノイラ)はドイツの企業で、最大14億ドル(約2100億円)を集めました。

Skild AI(スキルド)は「ロボットの頭脳」を作る会社です。14億ドルを調達し、企業価値は140億ドル超(約2.1兆円)に3倍化しました。

人型以外にも巨額マネー

Saronic(サロニック)は自律型の海上防衛ボートを作る会社です。3月にシリーズDで17.5億ドル(約2600億円)を調達し、企業価値は92.5億ドル(約1.4兆円)になりました。

人型だけでなく、防衛や物流など「役に立つ場所」がはっきりしている分野にも、大きなお金が向かっているのが特徴です。

中国が牽引するロボット投資

この波をいちばん強く引っ張っているのが中国です。

中国のロボット企業は、世界のロボット投資額の4割以上(43%超)を占めています。

金額で見ると、2026年5月中旬までに56億ドル(約8400億円)を176件の取引で集めました。これは2021年の1年分に並ぶ規模です。

さらに、上場の動きも活発です。四足歩行ロボットで有名なUnitree(ユニツリー)は、上海証券取引所への上場を申請しました。目標とする企業価値は30億〜70億ドルと言われています。

山東省の産業用ロボット企業Robotphoenixも、5月に香港市場へ上場し、約8600万ドルを集めました。中国は「開発」から「量産と上場」の段階に入りつつあります。

従来のAI投資と何が違うのか(比較)

これまでのAIブームと、今回のロボットブームは何が違うのでしょうか。表のように整理してみます。

  • これまでのAI投資:ChatGPTのような「画面の中で動くソフト」が中心。お金がかからず立ち上げやすい
  • 今回のロボット投資:現実世界で「体を動かすAI」が中心。工場・倉庫・家庭など、働く場所が具体的

ソフトだけのAIは、便利でも「実際の作業」はしてくれません。一方でロボットは、人手不足の現場でそのまま働ける可能性があります。ここが投資家をひきつける大きな違いです。

ヒューマノイドの主なプレイヤーを比べると、米国のFigure、ドイツのNeura、中国のUnitreeが有力です。米国は「頭脳と汎用性」、中国は「量産とコストの安さ」で勝負している、という色分けが見えてきます。

日本市場への影響|Noetraと国産フィジカルAI

「海外の話でしょ?」と思った方に、日本の動きを紹介します。

日本も、この身体性AIの波に本気で乗ろうとしています。その中心がNoetra(ノエトラ)という新会社です。

Noetraには、ソフトバンク・ソニー・NEC・ホンダなど日本を代表する企業が出資しています。参加企業は全部で44社にのぼります。

経済産業省は、このプロジェクトに初年度で約3873億円を支援します。5年間の合計では、約1兆円(約61億ドル)に達する見込みです。

狙いは、言葉・画像・映像・センサーの情報をまとめて理解する「国産の基盤モデル」を作ることです。日本の工場が持つ膨大な現場データを、安全に活かすことを目指しています。

世界のヒューマノイド企業が巨額調達で先行するなか、日本は「国のプロジェクト」として追いかける形です。ものづくりが強い日本にとって、身体性AIは負けられない分野なのです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 身体性AI(フィジカルAI)とは何ですか?

体を持って現実世界で動くAIのことです。歩いたり、モノをつかんだり、作業をしたりします。画面の中で文章を書くだけのAIとは区別されます。

Q2. なぜ2026年にこれほど投資が集まったのですか?

生成AIの進化で「賢い頭脳」を作れるようになり、それをロボットに載せられる段階が来たからです。投資家が「今なら本当に使える」と判断しました。

Q3. いちばんお金を集めた分野はどこですか?

人型ロボット(ヒューマノイド)と身体性AIです。FigureやNeura、Skild AIなど、1社で1000億円を超える調達が相次ぎました。

Q4. 日本のロボットは世界で戦えますか?

日本はNoetraを中心に5年で約1兆円を投じます。ものづくりの現場データという強みがあり、量産や実用の面で勝負できる可能性があります。

まとめ

  • 2026年上半期のロボット投資は約2.8兆円(188億ドル)で、過去最高を更新しました
  • お金が集まっているのは身体性AIとヒューマノイド。Figure・Neura・Skild・Saronicなど大型調達が続出
  • 中国が世界の4割以上を占め、Unitreeなどの上場も始まっています
  • 日本もNoetraに5年で約1兆円を投じ、国産の身体性AI基盤づくりを進めています

まずは、身近な工場や倉庫でロボットがどう使われ始めるかに注目してみてください。ソフトだけだったAIが「体」を持つ時代の入り口に、私たちは立っています。

参考文献

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