- 「小説家になろう」が2026年6月9日にAI利用状況の開示機能を追加
- 9月1日以降は未設定だとエピソード投稿や作品情報の編集ができなくなる
- 「直接使用」「間接利用」「補助的利用」「不使用」の4段階で表示
- 虚偽申告は運営対応の対象。背景には出版社・読者・作者の保護がある
- カクヨム・アルファポリスとも基準が異なり、書き手は各サイトの確認が必須
「自分の作品はAIを使っていないのに、最近ランキング上位はAI製ばかりな気がする」——そんな声が国内最大級のWeb小説サイト「小説家になろう」で長く渦巻いてきました。運営の株式会社ヒナプロジェクトは2026年5月26日、ついにAI利用状況の開示を必須化すると発表。9月以降は対応しないと作品の編集さえできなくなります。
何が発表されたのか
9月1日から「未設定」は編集不可に
株式会社ヒナプロジェクトは2026年5月26日、「小説家になろう」に投稿された全作品について、AI利用状況の開示を必須化すると公式発表しました。
スケジュールは2段階です。
2026年6月9日:作品ごとにAI利用状況を選べる機能を追加。
2026年9月1日:未設定の作品はエピソード投稿や作品情報の編集ができなくなる。
つまり夏のあいだに全作品の設定を済ませないと、9月以降は新話の追加も、あらすじの修正もできなくなるということです。
対象は新作だけでなく既存作品も
気をつけたいのは、この義務化が既存作品にも適用される点です。2009年のサイト開設以来、何百万作品が積み上がっていますが、すべての作者が3か月以内に対応する必要があります。
長期休止中の連載や、完結作品でも書誌情報を直したい場合は設定が必須になる見込みです。アカウントを長く放置している作者は、9月までにログインして対応するかどうかの判断を迫られます。
4段階の開示カテゴリーとは
「直接使用」から「不使用」まで
新設される項目は4段階に分かれています。
- 直接使用:作品本文の主要な部分をAIが生成したもの
- 間接利用:本文生成ではないが、創作プロセスでAIが大きな役割を果たしたもの
- 補助的利用:推敲・アイデア出し・一部の表現修正など補助的な範囲
- 不使用:AIを一切使っていない
境界線はやや曖昧ですが、たとえばChatGPTにキャラ設定の壁打ちをしてもらった程度なら「補助的利用」、長文の地の文をAIに書かせて軽く手直しした場合は「直接使用」に近い、という整理になりそうです。
虚偽申告は運営対応の対象
運営は「虚偽の設定を行った場合は運営対応の対象となる」と明記しています。「直接使用」なのに「不使用」と申告するなど、悪質な隠蔽は規約違反として処分される可能性があります。
ヒナプロジェクトは発表のなかで、「AI利用状況が認知されずに進行してしまった場合、作者や企業が不慮のトラブルに見舞われる恐れもある」と説明しています。書籍化が決まったあとに「実はAI製でした」と判明する事例を未然に防ぐ狙いがありそうです。
なぜ今このタイミングなのか
2025年カクヨムAI騒動の余波
背景にあるのが、2025年に他のWeb小説プラットフォームで起きた一連の騒動です。
とくに大きく報道されたのが「カクヨムAI小説騒動」。コンテストで受賞した作品がAI生成だったと指摘され、書籍化が中止になる事態に発展しました。受賞者は「後出しの規約変更」と反発しましたが、出版社や運営にとっては事前の開示ルールが整っていなかったことが痛手となりました。
アルファポリスも2025年11月18日、AI生成作品でのコンテスト参加と出版申請を禁止すると発表。各社が手探りで線引きを進めてきた流れの中で、なろうが「禁止ではなく開示」というスタンスを取ったかたちです。
出版社・読者・作者の三方を守る
運営は「創作活動におけるAI利用は、作者や読者だけでなく出版社といったコンテンツに関わる関係者全体が強い関心を寄せる内容」と説明しています。
つまり守りたい相手が3者います。
作者:意図せず規約違反になることを防ぐ。読者:何を読んでいるかを知る権利を保障する。出版社:書籍化検討時のリスクを下げる。
禁止せず「ラベルだけ義務化」という設計は、AI活用を続けたい作者にも逃げ道を残しつつ、業界全体の透明性を上げる現実的な落としどころと言えます。
他サイトとの違いを整理する
カクヨムは3段階タグ制
競合のカクヨム(KADOKAWA運営)は2025年11月以降、「AI本文利用」「AI本文一部利用」「AI補助利用」の3種類のタグから実際の使い方に合うものを付けるルールを採用しています。なろうの「直接/間接/補助/不使用」とは段階数も用語も異なります。
カクヨムはAIタグを付ければコンテストにも参加可能です。透明性さえ確保すればAI作品を排除しない姿勢を示しています。
アルファポリスはコンテスト・書籍化禁止
一方アルファポリスは最も厳しい立場で、AI生成作品でのコンテスト参加も出版申請も禁止しています。「補助的な利用」は対象外とされていますが、本文の大半をAIが書いた場合は明確にNGです。
3サイトの違いを表にすると、こんな整理ができます。
- 小説家になろう:4段階で開示必須。投稿自体は可能
- カクヨム:3段階タグ必須。コンテスト参加もタグ付きでOK
- アルファポリス:本文がAI主体ならコンテスト・書籍化は不可
複数サイトに同じ作品を投稿している兼業書き手は、サイトごとに設定を変える必要があります。なろうで「補助的利用」と申告した作品をアルファポリスに投稿する際、それがコンテスト規約に抵触しないか別途確認しなければなりません。
日本のWeb小説エコシステムへの影響
なろう発書籍ビジネスへの追い風
「小説家になろう」は国内のなろう系ライトノベル市場の源流であり、年間100作以上が書籍化されると言われる巨大なエコシステムです。出版社にとって、書籍化検討の初期段階でAI利用状況がわかるのは大きな前進です。
これまでは編集担当が作者にヒアリングして個別に確認するしかなく、コストも心理的負担もありました。ラベル化されれば、書籍化候補のスクリーニング段階で機械的に絞り込めるようになります。
読者の安心感とランキング健全化
読者にとっても影響は大きいです。「ランキング上位はAI製ばかりではないか」という疑念に運営として答えるかたちになります。AI製を避けたい読者は「不使用」フィルターで絞れますし、AI協作にも興味のある読者は逆に「直接使用」を探せます。
結果として、好みに合った作品を見つけやすくなり、読者離れを抑える効果も期待できます。
作者は今、何をすればいいか
夏の間に全作品の棚卸し
具体的なアクションはシンプルです。
6月9日に機能が追加されたら、自作品にログインし、4段階のうち適切なものを選択するだけ。所要時間は1作品あたり数十秒です。
問題は複数作品を抱える兼業作家。10作品、20作品と持っている場合、夏休みのうちに棚卸しを終わらせる計画が必要です。
迷ったときは「補助的利用」が無難か
判断に迷う典型例は「ChatGPTにアイデア相談はしたが、本文は自分で書いた」というケース。これは「補助的利用」に該当する可能性が高いです。
厳密な定義が今後追加されるかは不透明ですが、虚偽申告のリスクを避けるなら、自己評価で疑わしいほうに振っておくのが安全策と言えます。
よくある質問(FAQ)
Q1. AI利用作品の投稿そのものは禁止されたのですか?
いいえ、禁止ではありません。「開示すれば投稿は可能」という設計です。「直接使用」を選んで投稿することもできます。ただし「不使用」と虚偽申告した場合は運営対応の対象になります。
Q2. 9月1日までに設定しないとどうなりますか?
作品のエピソード投稿や情報編集ができなくなります。既存の話数を読者が読むこと自体はおそらく可能ですが、新話の追加・あらすじ修正・タグ変更などのアクションが封じられます。
Q3. 過去にAIなしで書いた作品にも設定が必要ですか?
はい、必要です。既存作品も含めて全作品が対象です。AI不使用の作品でも「不使用」を能動的に選択する必要があります。完結作品も、書誌情報を編集したくなった瞬間に設定を求められます。
Q4. 他サイト(カクヨム・アルファポリス)の設定と同じでよいですか?
サイトごとに用語と段階数が違うので、個別に確認・設定が必要です。カクヨムは「AI本文利用/一部利用/補助利用」の3段階、アルファポリスは「本文がAI主体ならコンテスト不可」というルールで、なろうの4段階とは枠組みが異なります。
Q5. 校正AIだけ使った場合はどうなりますか?
誤字脱字の校正のみであれば「補助的利用」に該当する可能性が高いと考えられます。ただし、AIが校正を超えて表現の言い換えまで提案している場合は、利用度合いを再評価したほうが安全です。最終的な解釈は運営の判断に委ねられます。
まとめ
- 小説家になろうが2026年6月9日にAI利用状況の開示機能を追加、9月1日以降は未設定で編集不可になる
- 「直接使用」「間接利用」「補助的利用」「不使用」の4段階で、虚偽申告は運営対応の対象
- 既存作品も対象なので、夏の間に全作品を棚卸しする必要がある
- カクヨムは3段階タグ制、アルファポリスはコンテスト禁止と各社で対応がバラバラ
- 出版社・読者・作者の三方を守る現実的な落としどころとして評価できる設計
なろうで作品を持っている人は、6月9日の機能リリース後すぐにマイページにログインし、設定を済ませておきましょう。

