EUがGoogleに1500億円制裁|Gemini独占に幕

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • EUが2026年7月16日、Googleに約1500億円(8億9000万ユーロ)の制裁金を科したこと
  • AndroidスマホでGemini以外のAIアシスタントも「標準の相棒」に選べるようになること
  • 開放されるのはAndroidの11の機能で、次のAndroid(2027年7月ごろ)から始まること
  • ChatGPTやPerplexityなどライバルAIが一気に使いやすくなる可能性があること
  • 日本にも同じような法律があり、近い将来スマホの「AIの選び方」が変わるかもしれないこと

スマホで「OK Google」と話しかけたことはありませんか。実はいま、その”呼びかけの相手”を自由に選べる時代が始まろうとしています。2026年7月16日、EU(ヨーロッパ連合)がGoogleに大きな命令を出しました。この記事を読むと、何が変わるのか、そして日本のスマホにどう関係するのかが5分でわかります。

EUはGoogleに何を命じたのか

2026年7月16日、EUの執行機関である欧州委員会が動きました。

Googleに対して、大きく3つのことを求めたのです。

  • 1500億円(8億9000万ユーロ)の制裁金を支払うこと
  • Androidスマホを他社のAIアシスタントにも開放すること
  • 検索で集めたデータをライバルにも分けあたえること

この1500億円は、EUが「デジタル市場法(DMA)」という新しいルールで科した過去最大の制裁金です。

DMAとは、巨大IT企業が力を持ちすぎないように見張るためのEUの法律です。

つまりEUは「Googleは自社サービスをひいきしすぎだ」と判断したわけです。

なぜ「Gemini独占」が問題になったのか

ここでカギになるのがGemini(ジェミニ)です。GeminiはGoogleが作ったAIアシスタントで、文章づくりや調べものを手伝ってくれます。

これまでAndroidスマホでは、音声で呼び出せるAIはほぼGeminiだけでした。

スマホの奥深くにある便利な機能に触れられるのは、GoogleのGeminiだけだったのです。

たとえるなら、大きなショッピングモールで自社のお店だけを一番目立つ入口に置き、ライバル店は倉庫の裏口からしか入れないような状態です。

EUは、この状態を「不公平だ」と考えました。

Googleは2026年3月に古い「Googleアシスタント」を終わらせ、Geminiに一本化する予定でした。だからこそ、Geminiの一人勝ちにブレーキをかけたい規制当局の危機感が強まったのです。

具体的に何が、いつ変わるのか

今回の命令で、Androidの11個の機能がライバルAIにも開放されます。

開放される機能には、たとえば次のようなものがあります。

  • 音声での呼び出し(「OK Google」のように話しかけて起動する仕組み)
  • アプリの操作(AIが地図やカレンダーなど他のアプリを動かす)
  • センサーの利用(位置情報などスマホの情報を使う)
  • バックグラウンド動作(画面を閉じていてもAIが裏で作業する)

これらが使えると、ライバルのAIもGeminiと同じくらい”賢い相棒”になれます。

スケジュールも決まっています。

AIアシスタントの開放は、次のAndroid(2027年7月ごろ)から始まる予定です。

検索データの共有は、それより早く2027年1月から始まります。ただしデータは名前などを消した状態(匿名化)で渡されます。

もしGoogleが従わない場合、世界の年間売上の最大10%という、けた違いの罰金が待っています。

ChatGPTやPerplexityは何が得をするのか

今回いちばん喜んでいるのは、Googleのライバルたちです。

代表的なAIアシスタントを、かんたんに比べてみましょう。

  • Gemini(Google):これまでAndroidで一人勝ち。今後はライバルと同じ土俵に立つ
  • ChatGPT(OpenAI):利用者が世界で数億人。音声起動を得られれば一気に身近になる
  • Perplexity(パープレキシティ):調べもの特化のAI。検索データ共有の恩恵が大きい
  • Claude(Anthropic):文章や分析が得意。スマホ標準になれれば利用シーンが広がる

これまでは、スマホを買うと最初からGeminiが入っていました。

これからは、iPhoneでSiriの代わりを選ぶように、「自分の相棒AI」を選ぶのが当たり前になるかもしれません。

ちなみにGoogleは反発しています。同社のケント・ウォーカー氏は「今回の決定は、数百万人のヨーロッパ人の安全とプライバシーを守る仕組みを崩しかねない」とコメントしました。

日本のスマホはどうなるのか

「これはヨーロッパの話でしょう?」と思ったかもしれません。

ところが、日本にもよく似た法律があります。

その名はスマホソフトウェア競争促進法です。2025年12月18日から本格的に始まりました。

この法律も、EUのDMAと同じように「巨大IT企業のひとり勝ちを防ぐ」ことを目的にしています。

実際にGoogleは、日本でもこの法律に合わせてスマホの設定などを見直すと発表しています。

さらに日本では、Geminiの新機能「Gemini Intelligence」が2026年夏からGalaxyやPixelに順番に入り始めています。

EUの今回の決定は、日本の規制当局にとっても「お手本」になります。

数年後、日本のスマホでも「標準のAIアシスタントを選んでください」という画面が出る日が来るかもしれません。

よくある質問(FAQ)

Q1. 制裁金の1500億円は誰が受け取るのですか?

EU(欧州委員会)が受け取ります。これはルール違反への罰金であり、ライバル企業に配られるお金ではありません。

Q2. いま持っているAndroidスマホでも、すぐにAIを変えられますか?

いいえ、すぐには変わりません。AIアシスタントの開放は2027年7月ごろの新しいAndroidから始まる予定です。

Q3. Geminiが使えなくなるのですか?

いいえ、Geminiはこれまで通り使えます。変わるのは「Gemini以外も選べるようになる」という点です。

Q4. 検索データを渡すと、私の個人情報が漏れませんか?

渡されるデータは名前などを消した匿名の状態です。個人が特定されない形にするルールになっています。

Q5. これはEU以外の国にも広がりますか?

広がる可能性があります。日本にも似た法律があり、EUの決定は世界中の規制当局から注目されています。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • EUが2026年7月16日、Googleに約1500億円の制裁金を科した
  • Androidの11機能がライバルAIにも開放される
  • AIアシスタントの開放は2027年7月ごろ、検索データ共有は2027年1月から
  • ChatGPTやPerplexityなどが一気に使いやすくなる可能性がある
  • 日本にも同じような法律があり、近い将来スマホのAI選びが変わるかもしれない

まずは、あなたのスマホに入っているAIが「本当に一番使いやすいか」を、あらためて試してみてはいかがでしょうか。

参考文献