MIXIが新卒研修12科目を無料公開|AI研修は2日に

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • MIXIが2026年7月27日、2026年度入社の新卒エンジニア向け技術研修の資料と動画を無料公開した
  • 公開されたのは12科目分。Speaker Deckのスライド、YouTubeの講義動画、GitHubの実習用リポジトリまで含まれる
  • 今年の目玉はAI研修の2日間への拡充。DAY1は機械学習とMLOps、DAY2は生成AI・RAG・AIエージェント
  • 「AI活用を前提とした研修プログラム」と位置づけ、12科目すべてで現場でのAIの使い方を解説している
  • MIXIは2021年から研修資料の公開を続けており、独学のエンジニアや自社に研修がない企業にとって貴重な教材になる

新人エンジニアに、いま何を教えるのが正解なのでしょうか。AIがコードを書いてしまう時代に、この問いに答えられる企業は多くありません。MIXIはその答えを、丸ごと無料で公開しました。約1カ月分の新卒研修が、誰でも見られる状態になっています。

MIXIが公開したのは「新人研修まるごと1カ月分」

2026年7月27日、12科目の資料と動画が公開

MIXIは2026年7月27日、2026年度入社の新卒エンジニア向けに実施した技術研修の資料とアーカイブ動画を公開しました。

ITmediaの報道によると、公開されたのは全12科目分です。テーマはGit、コンテナ技術、セキュリティ、モバイルアプリ開発、データ活用など、現場ですぐ必要になるものばかりです。

MIXIは、モンスターストライクや家族アルバム みてねを運営する会社です。ゲームからSNS、スポーツ事業まで手がけています。

研修は約1カ月かけて行われました。その中身がほぼそのまま外に出た、と考えるとイメージしやすいはずです。

スライドだけでなく動画とコードまで揃っている

今回公開されたのは、スライド資料だけではありません。

講義スライドはSpeaker Deck(プレゼン資料の共有サイト)に、講義動画はYouTubeに、実習用のコードはGitHub(プログラムを共有する場所)に置かれています。

たとえばGit研修には、動画に加えて「基礎編」と「チーム開発とAI活用編」の2本のスライド、そして実習用リポジトリがセットで用意されています。

Webフロントエンド、モバイル、データベース、QA・ソフトウェアテスト、ソフトウェアアーキテクチャなども、動画付きで見られます。

ちなみに公開ページには、オリエンテーションやマインドセット研修、AWSの協力を得た4日間のクラウド研修まで並んでいます。実際に受けた研修の全体像がそのまま見えるつくりです。

使うときのルールは明確

誰でも見られますが、完全に自由というわけではありません。

受講者から参加費を取る場での使用は禁止されています。出典を消したり、内容を勝手に改変したりする使い方も認められていません。

つまり、個人の学習や社内の勉強会で使うぶんには問題ありません。有料セミナーの教材に流用するのはNG、と覚えておけば大丈夫です。

今年の目玉はAI研修の「2日間」拡充

DAY1は機械学習の土台づくり

2026年度のプログラムで最も変わったのが、AI研修です。従来から拡充され、2日間のカリキュラムになりました。

1日目は機械学習(データからパターンを学ぶAIの技術)の基礎からスタートします。

モデルの学習、推論、軽量化、そしてMLOps(AIモデルを実際のサービスで動かし続けるための仕組み)まで、手を動かしながら学ぶハンズオン形式です。

ここが土台になります。AIを「使うだけの人」で終わらず、中身を理解した上で扱えるようにする狙いが読み取れます。

DAY2は生成AI・RAG・AIエージェント

2日目は、いま開発現場で最も注目されている領域が並びます。

生成AI、LLM(人間みたいに文章を書けるAI)、RAG(社内文書などを検索してAIに答えさせる仕組み)、LangChain、そしてAIエージェント(人の指示を受けて自分で作業を進めるAI)です。

この並びは、2026年の実務そのままです。社内チャットボットを作るならRAGが要りますし、定型作業を任せるならエージェントの知識が要ります。

新入社員が入社1カ月目にこのラインナップを浴びる、というのが今の現場の水準だといえます。

AIは1科目ではなく12科目すべてに染み込んでいる

見落とされがちですが、重要なのはここです。

MIXIは今回の研修を「AI活用を前提とした研修プログラム」と定義しています。AI研修という枠の中だけでAIを扱うのではありません。

12科目すべてで、MIXIのエンジニアが実務でどうAIを使っているかを解説しているのです。

先ほど触れたGit研修に「チーム開発とAI活用」というスライドがあるのが、その象徴でしょう。バージョン管理という地味な基礎科目にまで、AIの話が組み込まれています。

2025年版と何が変わったのか

MIXIは2021年から研修資料の公開を続けています。過去の版と比べると、変化の方向がはっきり見えます。

2025年版のAI研修は、機械学習の基礎を学んだあと、クラウド環境で画像認識モデルを実装・デプロイする内容が中心でした。別途「Writing with AI研修」があり、生成AIを使ったブログ執筆を通じて、効率化と正確性・独自性・責任ある発信を学ぶ設計でした。

2026年版では、生成AI・RAG・LangChain・AIエージェントが正面から2日目に据えられました。

「AIを作る技術」に加えて、「AIを組み合わせて業務を動かす技術」が主役になった、という変化です。

AI以外も更新されています。データ活用研修には「問いの発見と仮説構築」が新しく加わりました。設計ハンズオン研修も新設されています。

データを触る技術だけでなく、そもそも何を調べるべきかを考える力を鍛える。この追加は、AIが分析作業を肩代わりする時代の答えとして筋が通っています。

他社と比べてどう違う?研修資料の「公開競争」

研修資料の無料公開は、MIXIだけの取り組みではありません。

サイバーエージェント、リクルート、GMOペパボなども新卒研修資料を公開しています。Qiitaなどには「有名企業の研修資料まとめ」が定期的に投稿され、多くのエンジニアに読まれています。

DeNAも動いています。2027年度新卒採用から職種の枠を超えた「AIジェネラリスト」コースを新設し、内定者には月額100ドルまでのAIツール利用補助を提供しています。

では、MIXIの資料の特徴はどこにあるのでしょうか。

ひとつは網羅性です。単発のテーマではなく、Gitからクラウドまで1カ月分のカリキュラムが体系として揃っています。

もうひとつは動画とコードが付いていることです。スライドだけだと、その場の説明が抜け落ちて意味がつかめないことがあります。講義動画があれば、その穴が埋まります。

そして継続性。2021年から毎年公開しているため、年ごとの変化を比べられます。2024年版・2025年版・2026年版を並べれば、業界が何を重視するようになったかが手に取るようにわかります。これは他社にない価値です。

日本のエンジニアと企業にとって何を意味するか

この公開は、日本のIT業界が抱える課題への部分的な答えでもあります。

いま起きているのは、ジュニア層の採用枠が縮む一方で、シニア層の需要が伸びるという二極化です。若手が経験を積むための「下積みの仕事」がAIに置き換わりつつあるためです。

簡単なコードを書く仕事は、AIが数秒で終わらせてしまいます。では、新人はどこで力をつけるのか。この問いに、多くの企業が答えを出せずにいます。

MIXIの研修は、ひとつの回答例です。AIが代わりにやってくれる部分は前提として、その上で何を理解しておくべきかを整理しています。

自社に体系的な研修がない中小企業にとって、この教材の価値は特に大きいはずです。研修プログラムをゼロから作るには、外部講師を呼ぶにせよ社内で作るにせよ、相当な費用と時間がかかります。

MIXIのCTO・吉野純平氏は、これからのエンジニアには「コードを書く力だけでなく、AIを活用して開発スピードを高め、その先にあるユーザーへの価値提供や事業成果に向き合う姿勢がより一層求められる」とコメントしています。

技術力の底上げと次世代エンジニアの育成に役立ててほしい、という意図での公開です。

こんな使い方ができる

具体的に、どう役立てられるのでしょうか。3つの場面で考えてみます。

ひとつ目は、地方の受託開発会社に入った1年目のエンジニアです。社内に研修制度はなく、いきなり案件に放り込まれました。先輩は忙しく、質問できるのは1日に数回。そんな状況で、帰宅後にコンテナ研修の動画を見て、翌日には自分の開発環境をDockerで作り直せるようになる、という使い方ができます。

ふたつ目は、社員10人のスタートアップでCTOを務める人です。今年初めて新卒を2人採りましたが、研修を作る時間がありません。MIXIの12科目から自社に必要な6科目を選び、「まずこの動画を見て、わからない部分を聞いて」と渡す。それだけで初月の教育設計が回り始めます。

みっつ目は、文系出身でWebサービスの企画職に就いた人です。エンジニアとの会話で出てくる「RAG」「エージェント」の意味がわからず、会議で置いていかれる感覚がありました。AI研修DAY2の動画を通しで見れば、少なくとも用語の地図は頭に入ります。

転職活動中の人にとっても、この資料は使えます。MIXIが新人に何を求めているかがわかるので、面接前の準備材料になるからです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 本当に無料ですか?会員登録は必要ですか?

無料です。Speaker Deck、YouTube、GitHubはいずれも登録なしで閲覧できます。MIXIの技術ブログ(Zenn)にまとめページがあり、そこから各科目にアクセスできます。

Q2. プログラミング未経験でも理解できますか?

科目によります。マインドセット研修やセキュリティ研修は、基礎知識が中心なので比較的読みやすい内容です。一方、Flutter研修やMLOpsを含むAI研修DAY1は、ある程度コードを書いた経験がないと難しいでしょう。まずは動画がある科目から入るのがおすすめです。

Q3. 社内の勉強会で使ってもいいですか?

使えます。ただし受講者から参加費を集める場での使用は禁止されています。出典を消したり内容を改変したりする使い方も認められていません。社内の無料勉強会であれば、出典を明記した上で利用できます。

Q4. AI研修だけ見れば十分ですか?

AI研修だけを見るのはもったいない選択です。MIXIは12科目すべてでAI活用の方法を解説しているため、Git研修やデータ活用研修の中にも実務のAIの使い方が入っています。関心のある科目から広げていくほうが得られるものは多くなります。

Q5. 過去の年の資料も見られますか?

見られます。MIXIは2021年から公開を続けており、2024年版・2025年版のまとめページも残っています。年ごとの変化を比べると、業界の関心がどう移ったかがわかります。

まとめ

  • MIXIが2026年7月27日、2026年度新卒エンジニア研修の資料と動画を無料公開した
  • 公開されたのは12科目分。Speaker Deckのスライド、YouTube動画、GitHubリポジトリが揃っている
  • AI研修は2日間に拡充。DAY1が機械学習とMLOps、DAY2が生成AI・LLM・RAG・LangChain・AIエージェント
  • AIは専用科目だけでなく、12科目すべてに組み込まれている
  • データ活用研修に「問いの発見と仮説構築」が追加され、設計ハンズオン研修が新設された
  • ジュニア層の育成が難しくなる時代に、独学者や研修を持たない企業にとって実用的な教材になる

まずはZennのまとめページを開き、自分に足りていない1科目の動画を今夜のうちに1本見てみてください。

参考文献