Pixel 11が1万6300円値上げ|原因はAI

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • Googleが次期スマホ「Pixel 11」の値上げを正式に認めた
  • 値上げ幅は約100ドル(約1万6300円)とされ、発表は8月12日
  • 原因はRAM(メモリ)価格の6倍高騰。1GBあたり458円→1963円へ
  • 犯人はAIデータセンター。スマホ用メモリまで買い占めている
  • 2026年の世界スマホ出荷は約13.9%減。過去最大の落ち込み見通し

スマホの買い替えを考えていて、「あれ、去年より高くない?」と感じたことはありませんか。実はいま、世界中のスマホが同じ理由で値上がりしています。犯人はAIです。この記事では、Googleが自ら認めた「メモリ危機」の正体と、私たちの財布への影響をやさしく解説します。

Googleが値上げを正式に認めた

2026年7月24日、Googleのデバイス・サービス担当バイスプレジデント、シャキール・バルカット氏が海外メディア9to5Googleの取材に応じました。

そこで語られたのが、次期スマホ「Pixel 11」の値上げです。

バルカット氏はその理由を「深刻なサプライヤー主導のメモリ危機」と表現しました。サプライヤーとは部品を作って売る会社のこと。つまり、部品メーカー側の事情で価格が跳ね上がっている、という意味です。

さらに踏み込んだ発言もあります。「いま世界が経験しているようなメモリ価格の上昇は、これまで一度もなかった」。

メーカーが発表前に値上げを認めるのは、かなり珍しいことです。それだけ隠しきれない事態になっている、と読むこともできます。

値上げ幅は約1万6300円

具体的な価格は8月の発表まで伏せられています。

ただし業界のリーク情報では、Pixel 11シリーズ全体で約100ドル(約1万6300円)の値上げとされています。欧州では100ユーロの上乗せという情報もあります。

対象はPixel 11だけではありません。バルカット氏は「Pixelシリーズ全体で価格調整が行われる」と述べており、廉価モデルのPixel 10aや、すでに販売中の機種も影響を受けるとみられます。

RAM価格が6倍に——何が起きているのか

値上げの原因は、たった一つの部品にあります。RAM(スマホやPCが計算作業をするための一時記憶メモリ)です。

数字を見ると衝撃的です。

RAM 1GBあたりの価格は、2025年には約458円(2.80ドル)でした。それが2026年には約1963円(12ドル)まで上がっています。

約6倍です。1年で6倍になる部品を使って、同じ値段の商品を作り続けるのは不可能に近いでしょう。

AIデータセンターがメモリを吸い上げている

ではなぜ、こんなことが起きたのでしょうか。

答えはAIブームです。世界中の企業が生成AI(文章や画像を作るAI)を動かすためのデータセンターを建てています。そこで大量に必要になるのがメモリです。

メモリメーカーからすれば、AI向けのサーバー用メモリのほうが利益が大きい。だから工場のラインをそちらに振り向けます。

決定打になったのがNVIDIAの方針転換だと言われています。同社がAIサーバーにLPDDR(本来はスマホ向けの省電力メモリ)を採用しはじめたのです。

これで何が起きたか。NVIDIAが「スマホ大手1社ぶんの注文量」を持つ客としてメモリ市場に参入した状態になりました。もともとスマホ各社が取り合っていた在庫に、巨大な新規客が割り込んできた形です。

結果として、モバイル向けLPDDR4X/LPDDR5Xの契約価格は2026年第1四半期に前期比で約90%上昇しました。調査会社TrendForceは、第2四半期も従来型DRAMが58〜63%上がると予測しています。

解消は2027年以降と言われている

「工場を増やせばいいのでは」と思うかもしれません。

ところが半導体工場は、着工から量産まで数年かかります。現在建設中の新工場が本格稼働するのは2027〜2028年とされています。

つまり、この高値は少なくともあと1年以上続く可能性が高い、ということです。

Pixel 11はどう変わる?

Pixel 11シリーズの発表イベントは米国時間8月12日(日本時間8月13日午前7時)に予定されています。

リーク情報から見えてきた変化は、単純な値上げだけではありません。

メモリは減り、ストレージは倍増

注目すべきはRAM容量です。

Pixel 10 Proは16GBを搭載していました。これに対しPixel 11 Proは12GBに減るとされています。高すぎて積めなくなった、というわけです。

一方で、ストレージ(写真やアプリを保存する容量)は増えます。Pixel 11は128GB→256GB、Proは256GB→512GBへ。Proには1TBモデルも追加されるという情報があります。

ストレージに使われるNAND型フラッシュメモリは、RAMほど価格が暴れていません。だから「高い部品を減らして、安い部品を増やす」という調整が可能になります。

128GBモデルが廃止されるという見方もあり、実質的な値上げ幅は見た目の数字より小さくなる可能性もあります。

iPhone・Galaxy・格安スマホとの比較

これはGoogleだけの話ではありません。スマホ業界全体が同じ壁にぶつかっています。

Appleは価格を据え置く構え

2026年9月ごろ登場が見込まれるiPhone 18は、RAMをiPhone 17の8GBから12GBへ5割増やすと報じられています。それでいて開始価格は799ドルのまま据え置く、という見方が有力です。

ただしコスト自体は消えていません。12GBぶんのDRAM原価は、iPhone 17 Proの約39ドルからiPhone 18 Proでは約145ドルに膨らむと試算されています。Appleは体力で吸収する戦略、というわけです。

とはいえ上位モデルについては、最大200ドルの値上げがあり得るという予測も出ています。

Samsungは「売る側」でもある

面白い立場にいるのがSamsungです。同社はスマホメーカーであると同時に、世界有数のメモリメーカーでもあります。

スマホ部門は原価高で苦しみますが、半導体部門はこの高騰で儲かります。実際、SamsungはDRAMの平均販売価格を2026年第3四半期に20%引き上げたい意向と報じられています。

自社で部品を確保できる強みは、XiaomiやOPPOには真似できません。

いちばんの被害者は「格安スマホ」

最も深刻なダメージを受けているのは、実は安いスマホです。

エントリーモデルでは、メモリが部品原価(BOM)の65%以上を占めるようになったと言われています。もともと利益の薄い価格帯なので、値上げすれば売れず、据え置けば赤字になります。

Xiaomiは2026年第2四半期に出荷が26.3%減りました。利益を守るため、低価格帯の生産をあえて絞ったためとされています。

市場全体の数字も厳しいものです。IDCは2026年の世界スマホ出荷を前年比13.9%減の約10億9000万台と予測。調査会社Counterpointも約14%減とみています。第2四半期は2013年以来、13年ぶりの低水準でした。

そして平均販売価格(ASP)は過去最高の550ドルへ。前年から100ドルも上がりました。

日本のユーザーと企業への影響

日本で暮らす私たちにとって、これは他人事ではありません。

日本のPixelは、そもそもドル建て価格に為替が乗った値付けになっています。円安が続けば、100ドルの値上げが体感ではそれ以上に感じられる可能性があります。

買い替えサイクルが延びる

ある家庭を想像してみてください。両親と子ども2人、全員がスマホを持っています。4台まとめて2年ごとに買い替えていたとします。

1台1万6300円の値上げなら、4台で6万5200円の追加負担です。「今年はやめて、もう1年使おう」となる家庭は少なくないはずです。

実際、キャリア各社の分割払いプログラムや残価設定型の販売が、これまで以上に重要になるとみられます。

法人の端末更新コストが跳ね上がる

企業への影響はもっと直接的です。

従業員300人にスマホを支給している会社を考えてみましょう。3年サイクルで更新する場合、1台1万6300円の上昇は約489万円の追加予算を意味します。

情報システム部門にとっては、来年度の予算計画をそのまま出せば確実に足りなくなる数字です。更新時期をずらす、下位モデルに変える、といった判断が必要になります。

PC・ゲーム機・自作パーツも同じ理由で高い

影響はスマホにとどまりません。

同じDRAM不足は、ノートPC、ゲーム機、自作PC用のメモリモジュールにも及んでいます。「メモリを増設しようと思ったら値段が倍になっていた」という声は、2026年に入ってから急増しました。

年末商戦に向けて、家電量販店の値札がさらに動く可能性もあります。買い時を待つより、必要なら早めに確保するという考え方も現実的でしょう。

Googleの反撃:Androidを「省メモリ」にする

Googleは値上げを消費者に転嫁するだけで終わらせるつもりはないようです。

バルカット氏は、Androidとアプリのエコシステム全体でメモリ使用量を減らす「専任の取り組み」を進めていると明かしました。

ポイントは、Googleが自社でAIモデル、OS、そして半導体(Tensorチップ)の3つを持っていることです。この3つを一体で設計できるなら、少ないメモリでもAI機能をきちんと動かせる余地があります。

スマホの中でAIを動かす「オンデバイスAI」は、通常たっぷりのメモリを必要とします。そこを削りながら性能を保てるかどうかが、今後の勝負どころになりそうです。

これは業界全体にとっても意味のある話です。もし省メモリ化が成功すれば、格安スマホが復活する道も開けます。

よくある質問(FAQ)

Q. Pixel 11はいくらになりますか?

正式な価格は8月12日(日本時間13日)の発表まで公表されていません。リーク情報では前モデルより約100ドル(約1万6300円)高くなるとされています。ただしストレージが倍増するため、容量あたりの単価で見ると割高感は薄まる可能性があります。

Q. いま買うべき?待つべき?

価格が下がる材料は当面見当たりません。新しいメモリ工場の稼働は2027〜2028年とされ、供給改善までに時間がかかります。今使っている端末が不便でないなら急ぐ必要はありませんが、「待てば安くなる」という期待はしにくい状況です。

Q. RAMが16GBから12GBに減ると性能は落ちますか?

用途によります。一般的なアプリ利用や写真撮影では体感差はほとんど出ないとみられます。影響が出やすいのは、多数のアプリを同時に開いたままにする使い方や、端末内でAIモデルを動かす場面です。GoogleがAndroid側の省メモリ化をどこまで進められるかが鍵になります。

Q. 中古スマホを買えば安く済みますか?

新品が値上がりすれば、中古や型落ちモデルの需要は高まります。ただし需要が集中すれば中古相場も上がるのが普通です。すでに一部モデルでは値下がりが止まっているとも言われており、「中古なら必ず安い」とは限りません。

Q. この値上げはいつまで続きますか?

断言はできませんが、少なくとも2027年までは高止まりするという見方が多数派です。加えて、平均販売価格は不足が解消しても元の水準には戻らないという指摘もあります。一度上げた価格を下げるメーカーは多くないためです。

まとめ

  • Googleが次期Pixel 11の値上げを正式に認めた。理由は「深刻なメモリ危機」
  • 値上げ幅は約100ドル(約1万6300円)とされ、発表は8月12日(日本時間13日)
  • RAM 1GBの価格が458円から1963円へ、約6倍に高騰した
  • 原因はAIデータセンター向けの需要急増。NVIDIAのLPDDR採用が拍車をかけた
  • Pixel 11 ProはRAMが16GB→12GBに減り、ストレージは倍増する見込み
  • 2026年の世界スマホ出荷は約13.9%減。格安スマホほど打撃が大きい
  • 供給改善は2027〜2028年以降とされ、高値はしばらく続く

まずは自分の端末のRAM容量と使用状況を確認し、本当に買い替えが必要かを見極めるところから始めてみてください。

参考文献