- Anthropicが科学研究専用のAI「Claude Science」を公開しました
- 60以上の科学データベースにつながり、創薬(新しい薬づくり)を支援します
- AlphaFoldでノーベル賞を受けたジョン・ジャンパー氏が開発陣に参加しました
- GoogleやOpenAIも参入し、AI創薬は三つ巴の争いになっています
- 有料のClaudeを契約していれば、日本の研究者もすぐに使えます
「AIがプログラムを書く時代」は、もう当たり前になりました。では、AIが「新しい薬」まで見つけられるとしたら、どうでしょうか。2026年7月、Anthropic(アンソロピック)が科学研究専用のAI「Claude Science」を公開しました。ノーベル賞学者まで巻き込んだこの発表の中身を、やさしく解説します。
Claude Scienceとは?「科学者専用のClaude」です
Claude Science(クロード・サイエンス)は、Anthropicが2026年6月30日に発表した新しいAIツールです。パブリックベータ(お試し公開版)として7月1日から使えるようになりました。
ひとことで言うと、「科学研究のためのClaude Code」です。
Claude Codeは、ざっくりした指示だけでプログラムを書いてくれるAIとして人気になりました。Claude Scienceは、それを科学の世界に持ち込んだものです。
研究者が「このデータからこういう傾向を調べて」と話し言葉で頼むだけで、AIが自分で作業を進めてくれます。
しかも、ただ文章を書くだけではありません。実際にコード(計算プログラム)を動かし、強力な計算サーバーで大量のデータを処理します。
特に得意なのが、計算生物学(コンピューターで生き物のしくみを調べる分野)と、創薬(新しい薬を見つける研究)です。
何がすごい?「60以上のデータベース」と3層のAIチーム
Claude Scienceの心臓部は、60を超える科学データベースとつながっている点です。遺伝子、化学、タンパク質など、研究に必要な情報の宝庫に直接アクセスできます。
さらに面白いのが、AIが「チーム」で動くしくみです。3つの層に分かれて働きます。
- まとめ役のAI:研究者の頼みごとを受け取り、作業を細かく分けます
- 専門家のAI:ゲノム解析やタンパク質構造など、分野ごとに担当します
- 土台のAI:最新モデル「Claude Opus 4.8」が全体を支えます
つまり、一人の万能AIではなく、リーダーと専門スタッフがそろった研究チームを、丸ごと雇うようなイメージです。
安全面の工夫もあります。データは研究者自身のパソコンやサーバーの中に残ります。macOS(マック)やLinux上で動き、必要な部分だけがAnthropicのサーバーに送られるしくみです。
大切な実験データを外に丸ごと預けなくてよいので、研究者は安心して使えます。
さらに、AIが出した答えを自分でチェックする機能もあります。引用の間違いや、根拠のない数字、コードと合わないグラフを見つけて指摘してくれます。
ノーベル賞学者ジョン・ジャンパー氏が参画
今回の発表がとりわけ注目された理由は、ジョン・ジャンパー氏の存在です。
ジャンパー氏は、タンパク質の立体構造を予測するAI「AlphaFold(アルファフォールド)」を率いた研究者です。この功績で2024年にノーベル化学賞を受けました。
AlphaFoldは、これまで2億を超えるタンパク質の形を解き明かしました。薬づくりや生物学の常識を大きく変えた、歴史的な成果です。
そのジャンパー氏が、約9年在籍したGoogle DeepMindを離れ、Anthropicへ移りました。移籍を表明したのは2026年6月19日のことです。
世界トップクラスの科学者が加わったこと。これは、Anthropicが「本気で科学に挑む」という強いメッセージになりました。
Google・OpenAIとの「三つ巴」の争い
実は、AIで薬を探す競争は、すでに激しくなっています。今やGoogle・OpenAI・Anthropicの三つ巴(さんつどもえ)です。それぞれの立ち位置を整理します。
- Google:子会社Isomorphic Labsが、AIで設計した薬の臨床試験(人で試す段階)に近づいています。「Gemini for Science」も提供中です
- OpenAI:2026年4月に生物向けAI「GPT-Rosalind」を発表。ただし今は米国の一部企業に限定公開です
- Anthropic:今回のClaude Scienceで本格参入。契約者なら誰でもすぐ使える手軽さが武器です
3社の違いは「開かれ方」に表れています。OpenAIが慎重に絞って提供する一方、Anthropicは有料契約者へ一気に開放しました。
この市場の伸びも見のがせません。AI創薬の市場規模は、2026年の約6000億円から、2035年には3.7兆円を超えると予測されています。
各社が力を注ぐのも、うなずける数字です。
日本の研究者や企業にはどう関係する?
「海外の大きな話でしょう?」と思ったかもしれません。ですが、日本の研究者にも身近な話です。
Claude Scienceは、有料のClaude(Pro・Max・Team・Enterprise)を契約していれば使えます。特別な審査や、企業向けの厳しい手続きは基本的に不要です。
つまり、日本の大学や製薬会社の研究者も、月額プランに入っていれば、今日から試せる可能性があります。
日本には武田薬品や第一三共など、世界で戦う製薬企業がたくさんあります。こうした企業や、その研究を支える大学にとって、強力な道具になり得ます。
たとえば、ある大学の若手研究者を想像してみてください。膨大な遺伝子データを前に、解析プログラムを一から書く時間がありません。
そんなとき、話し言葉で頼めるClaude Scienceがあれば、分析の下準備を一気に短くできます。研究者は「考えること」に集中できるのです。
一方で注意点もあります。データを扱う以上、患者情報など機密の管理ルールは、各機関でしっかり決める必要があります。
誰が使える?料金と始め方
Claude Scienceは、前述のとおり有料Claude契約者向けです。追加料金なしで、契約中のモデルをそのまま使えます。
TeamやEnterpriseの場合は、管理者が機能をオンにする必要があります。まずは社内の担当者に確認するとよいでしょう。
研究資金の支援もあります。Anthropicは「AI for Science」という制度で、最大3万ドル(約450万円)分の計算リソースを提供します。
対象は、進行中の大学院・ポスドク研究のプロジェクトです。最大50件が選ばれます。
応募の締め切りは2026年7月15日、結果通知は7月31日の予定です。研究期間は9月1日から12月1日までとされています。
Anthropic自身も、この道具を使って動き始めています。見過ごされがちな希少疾患(患者数の少ない病気)の薬を、自社で研究する計画です。
よくある質問(FAQ)
Q1. Claude Scienceは無料で使えますか?
いいえ。無料版では使えません。Pro・Max・Team・Enterpriseなど、有料のClaude契約が必要です。ただし契約者は追加料金なしで使えます。
Q2. プログラミングができなくても使えますか?
はい。話し言葉で指示できるのが特長です。計算が専門でない生物学者でも使えるよう設計されています。とはいえ、結果を正しく読み解く専門知識はやはり大切です。
Q3. どんなパソコンで動きますか?
macOS(Apple Silicon・Intel)とLinuxに対応します。手元のパソコンのほか、SSHやHPC(高性能計算環境)で遠くのサーバーにつなぐこともできます。
Q4. データが外部に漏れる心配はありませんか?
生のデータは研究者側の環境に残る設計です。各作業に必要な部分だけがAnthropicに送られます。ただし、機密情報の扱いは所属機関のルールに従う必要があります。
Q5. AIが見つけた薬は、もう販売されていますか?
いいえ。現時点でAIが設計した薬でFDA(米国の医薬品当局)の承認を得たものはありません。あくまで研究を速める道具、という段階です。
まとめ
今回のポイントを、もう一度振り返ります。
- Claude Scienceは、Anthropicが公開した科学研究専用のAIです
- 60以上のデータベースと3層のAIチームで、創薬を強力に支えます
- ノーベル賞学者ジョン・ジャンパー氏の参加が、本気度を示しました
- Google・OpenAIとの三つ巴で、AI創薬の競争は加速しています
- 有料Claude契約者なら、日本の研究者も今日から試せます
AIはついに「新しい薬を探す現場」まで入ってきました。まずはあなたの契約プランで、この新機能が使えるか確認してみてはいかがでしょうか。
参考文献
- Claude Science is Anthropic’s newest flagship product(MIT Technology Review)
- Claude Science, an AI workbench for scientists(Anthropic 公式)
- Anthropic launches AI drug discovery program, Claude Science(CNBC)
- Anthropic launches Claude Science, and Google and OpenAI are already racing to match it(TFN)
- Anthropic、AIで科学研究を支援する「Claude Science」をパブリックベータで公開(gihyo.jp)


