- Appleは2026年6月8日のWWDC26で、Google Gemini搭載の新Siriを正式発表する見込み
- 契約規模は年間約10億ドル(約1000億円)、複数年で最大50億ドルとも報じられる
- カスタムGeminiは1.2兆パラメータと、Apple自社モデルの8倍の規模
- 処理はApple側のPrivate Cloud Compute上で完結し、Googleにユーザーデータは渡らない
- iOS 27は同日に開発者ベータ公開、一般向けは2026年9月リリース予定
「Siriって、結局あまり賢くないよね」と感じたことはありませんか。その評価が、いよいよ覆ろうとしています。2026年6月8日のWWDC26で、AppleはGoogleのGeminiを心臓部に据えた新Siriを発表する見込みです。年1000億円規模の契約、1.2兆パラメータの巨大モデル、そして自社AIモデル開発の事実上の断念。この記事では、AI時代の勢力図を動かす歴史的な転換点を、やさしい言葉で読み解きます。
WWDC26で何が発表される?年1000億円のGemini契約
WWDC26は2026年6月8日(米国時間)、日本時間では6月9日(火)午前2時から開催される、Appleの開発者向け年次イベントです。
今年の最大の目玉は、新しいSiriの発表です。AppleはGoogleのGeminiを採用し、Siriを丸ごと作り直すと報じられています。
契約規模はBloombergのMark Gurman氏によると、年間約10億ドル(約1500億円)。Deepwater Asset Managementは、複数年契約の総額が最大50億ドルに達する可能性を指摘しています。
つまりAppleは、AI技術を「自社で全部やる」ことを諦め、世界最大のライバルだったGoogleに巨額の使用料を払う道を選んだのです。
WWDC26で予想される主な発表
米9to5MacやMacRumorsの報道を総合すると、以下が発表される見込みです。
- Gemini搭載の新Siri(コードネーム「Project Campo」)
- 専用のSiriアプリ(チャットボット型UI、会話履歴付き)
- iOS 27 / iPadOS 27 / macOS 27の開発者ベータ
- サードパーティAI(Claude・Geminiなど)を既定アシスタントにする機能
- Dynamic Islandでの新Siri表示(「Search or Ask」プロンプトと光るカーソル)
iOS 27の一般リリースは、例年通り2026年9月の見込みです。
なぜAppleは自社AIを諦めたのか
Appleはこれまで「プライバシー第一」「自社開発主義」を看板に掲げてきました。それなのに、なぜGoogleに頭を下げたのでしょうか。
追いつけなかった2年間
答えはシンプルです。自社の力だけでは、もう追いつけなかったのです。
2024年に発表されたApple Intelligenceは、当初の派手な宣伝に対して機能が限定的で、約束されたSiri刷新も何度も延期されました。米AppleInsiderは「GenAIギャップを埋めるためのエッジAIへの依存」と表現しています。
その間にOpenAIのChatGPT、AnthropicのClaude、そしてGoogleのGeminiは、機能を毎月のように更新。差は開く一方でした。
2026年1月の歴史的合意
2026年1月12日、AppleとGoogleは複数年のパートナーシップを正式発表しました。CNBCは「Appleが自社AI戦略を大きく転換する瞬間」と報じています。
Appleが声明で説明した選定理由は、「Appleの基盤モデルにとって、Googleの技術が最も能力の高い土台を提供する」というものでした。長年のライバルへの異例の譲歩です。
iPhoneを刷新するための苦渋の決断
背景には、iPhoneの売上に対する強い危機感があります。スマートフォン市場でAIアシスタントが差別化の核になる中、Siriの遅れはiPhone離れに直結します。
Appleが選んだのは、自社の看板を一時的に折ってでも、製品体験を取り戻す道でした。
1.2兆パラメータのカスタムGeminiの中身
新Siriの心臓部となるのは、Apple専用にカスタマイズされた巨大なGeminiモデルです。
Apple自社モデルの8倍の規模
Bloombergによると、Apple向けカスタムGeminiは1.2兆パラメータ。Appleが現在クラウドで使っている自社モデル(1500億パラメータ)の約8倍のサイズです。
パラメータとは、AIが学習で身につけた「判断材料」のようなもの。多いほど複雑な問いに答えられる傾向があります。
Mixture-of-Experts(MoE)方式の採用
このモデルはMixture-of-Experts(MoE、専門家混合)と呼ばれる構造を採用しています。質問の種類に応じて、内部で違う「専門家AI」が起動する仕組みです。
つまり、料理のレシピを聞けば料理担当のAIが、コードを書かせれば開発担当のAIが、それぞれ呼び出されるイメージです。すべてを動かさないので、巨大でも比較的軽く動きます。
得意分野は要約・計画・自然言語理解
Introlの解説によると、このカスタムGeminiは要約・計画立案・自然言語理解に最適化されています。
具体的には、こんな使い方が想定されます。
- 長いメールスレッドの要約を「Siri、3行でまとめて」と頼む
- 「来週の出張、移動・会議・夕食を含めて1日のスケジュールを組んで」と計画立案を任せる
- 画面に表示された記事について「これはどういう意味?」と文脈付きで質問する
従来のSiriが「タイマー設定」止まりだったのに対し、新Siriはあなたの生活の段取りを丸ごと面倒見るAIへと進化します。
ChatGPTや既存Siriとどう違う?比較で見る新Siri
新Siriの位置づけを、競合と並べて整理します。
既存Siri vs 新Siri
従来のSiriは、決まった命令文に対応するルールベースの色合いが強く、文脈や画面の状況を理解する力が限定的でした。
新Siriは、Geminiの大規模言語モデルで動くため、画面の中身を「見ながら」会話できるのが大きな違いです。チャットボットアプリも別途用意され、会話履歴をたどって続きを話すこともできます。
ChatGPT連携との関係
注意したいのは、ChatGPT連携がなくなるわけではない点です。CNBCに対してAppleは「OpenAIとの契約は変更しない」と回答しています。
役割分担はこうです。
- Gemini:Siri本体の頭脳。要約・計画・基本的な対話を担う
- ChatGPT:複雑な世界知識が必要なときに呼び出される外部の頭脳
- Apple自社モデル:端末内で動く軽量タスク(写真整理、通知の要約など)
つまりSiriは「3つのAIを使い分けるハブ」になります。
Google Geminiアプリとの違い
「だったら直接Geminiアプリを使えばいいのでは?」と思うかもしれません。違いはプライバシーと統合度です。
Geminiアプリでは、入力はGoogleのサーバーに送られます。一方Siriでは、同じGeminiモデルがApple管理下のサーバーで動き、Googleにデータは渡りません。さらにiPhoneのカレンダー・連絡先・写真と深く連携した回答が返ってきます。
プライバシーは大丈夫?Private Cloud Computeの仕組み
「Geminiを使うなら、自分の会話がGoogleに筒抜けでは?」という不安は当然です。Appleはこの点に、念入りな仕組みを用意しています。
Private Cloud Computeで処理が完結
Geminiのモデルそのものは、Apple自身が運用する「Private Cloud Compute」というクラウド基盤の上で動きます。Googleのサーバーには接続しません。
MacRumorsの解説によると、データはエンドツーエンドで暗号化され、処理が終わると保存されません。Googleには学習データも提供されません。
NVIDIAの「機密コンピューティング」を採用
さらにAppleは、NVIDIAのConfidential Computingと呼ばれる技術を採用する契約を結んでいます。これにより、Geminiが動くGPU上でもデータは暗号化されたまま処理されます。
イメージとしては、銀行の貸金庫の中で書類を扱うようなもの。預けた本人以外、中身を覗ける人がいません。
既存のChatGPT連携と同じ枠組み
この仕組みは、現在SiriがChatGPTを呼び出すときと基本的に同じ枠組みで動きます。Appleがクエリを匿名でルーティングし、外部AIはプロフィールを作らないという設計です。
「便利さとプライバシーは両立できる」というAppleの主張を、今回も技術で裏付ける構図です。
日本のiPhoneユーザーは何が変わるのか
気になるのは、私たち日本のユーザーにいつ届くのかという話です。
日本語Siriも刷新対象に
Apple Intelligenceは2025年4月から日本語に正式対応済みです。新Siriについても、英語と同じタイミングで日本語が提供される可能性が高いと見られます。
iOS 27の一般リリースは2026年9月予定。WWDC26から数えると、約3か月後に手元のiPhoneで使えるようになる計算です。
サードパーティAIをデフォルトにできる
日本ユーザーにとって特に注目すべきは、サードパーティAIを既定アシスタントに設定できる機能です。
すでに2025年11月のiOS 26.2では、日本向けに「サイドボタン長押しで他社AIアシスタントを起動できる」機能が先行実装されました。WWDC26ではこれが世界規模に拡大し、Writing ToolsやImage Playgroundでも他社AIを選べる見込みです。
日本企業のAIサービスにも追い風
これは日本市場にとって、地味だが大きな変化です。日本語に強い国産AIや、業務特化のAIサービスを、iPhoneのSiriボタンから直接呼べる可能性が広がります。
具体的には、こんな使い方が現実味を帯びます。
- 営業職の人がSiriボタンで自社CRMのAIを呼び出し、商談メモを自動整理する
- 学生がSiriから直接、日本語学習特化AIに「この敬語、合ってる?」と聞ける
- 経理担当が「先月のレシート読み取って」と特定の経理AIにワンタップで指示できる
Appleが自社AIを諦めたことで、皮肉にも日本のAIスタートアップにチャンスが広がる構図です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 新Siriはいつから使えるようになりますか?
2026年6月8日のWWDC26で発表され、同日に開発者向けベータが公開されます。一般向けの正式リリースは、iOS 27の公開と同じ2026年9月予定です。
Q2. 古いiPhoneでも新Siriは使えますか?
Apple Intelligenceの対象はiPhone 15 Pro以降と、A17 Pro以降を搭載した機種に限定されています。新Siriも同じ条件と見られ、iPhone 14以前では完全な機能を使えない可能性が高いです。
Q3. 自分のSiri音声データはGoogleに送られますか?
送られません。GeminiモデルはAppleのPrivate Cloud Compute上で動き、データはNVIDIA Confidential Computing技術でGPU上でも暗号化されたまま処理されます。Googleは学習データも受け取りません。
Q4. ChatGPT連携はなくなりますか?
なくなりません。AppleはCNBCに対して「OpenAIとの契約は変更しない」と回答しています。GeminiがSiri本体を動かし、ChatGPTは複雑な世界知識が必要な質問で引き続き呼び出されます。
Q5. Geminiアプリを直接使うのと何が違いますか?
大きな違いはプライバシーとiPhone内データとの統合です。Siri経由なら、データはGoogleに渡らず、カレンダー・連絡先・写真と連携した回答が返ります。Geminiアプリでは、入力はGoogle側に送られ、iPhone内データとの連携は限定的です。
まとめ|AI時代の覇権図が動き出した
Appleが自社AIの看板を一度折ってでもGeminiを採用した今回の決断は、AI時代の覇権図を確実に動かします。
- WWDC26(2026年6月8日)で、Gemini搭載の新Siriが正式発表される
- 契約規模は年1000億円、総額最大5000億円という巨額案件
- 1.2兆パラメータのカスタムGeminiが、Apple自社モデルの8倍の知性を提供
- 処理はAppleのPrivate Cloud Compute上で完結し、Googleにデータは渡らない
- iOS 27は6月8日に開発者ベータ、9月に一般公開予定
- サードパーティAI解放で、日本のAIサービスにもチャンスが広がる
まずは6月9日(日本時間)午前2時からのKeynoteで、新Siriのデモを実際に確かめてみましょう。AIアシスタントの常識が、その日から変わるかもしれません。
参考文献
- GIGAZINE「Apple、巨大Geminiモデルを縮小してiPhoneのSiriに搭載へ」(2026年5月29日)
- Bloomberg「Apple Plans to Use 1.2 Trillion Parameter Google Gemini Model to Power New Siri」(Mark Gurman、2025年11月5日)
- MacRumors「Apple Explains How Gemini-Powered Siri Will Work」(2026年1月30日)
- CNBC「Apple picks Google’s Gemini to run AI-powered Siri coming this year」(2026年1月12日)
- 9to5Mac「How to watch Apple’s WWDC keynote: iOS 27, new Siri, and more」(2026年5月27日)

