- Coinbaseがコードの95〜100%をAIで書いていると幹部が公表しました
- 2026年2月は約40%。わずか半年で一気に急上昇しました
- エンジニア1人が5〜10体のAIエージェントを同時に動かしています
- AIの働きは「デジタル従業員1200人分」に相当すると試算されています
- MicrosoftやGoogleは約30%。日本企業の導入率はまだ12%です
「会社のコードの95%以上をAIが書いている」。そんな発表があったら驚きますよね。
暗号資産(あんごうしさん)取引所の大手Coinbase(コインベース)が、まさにその数字を明かしました。しかも半年前は40%でした。この記事では、何が起きたのか、なぜここまで急に進んだのか、そして日本の私たちにどう関係するのかを、やさしく解説します。
Coinbaseで何が起きたのか
2026年7月、Coinbaseの幹部が社内外に向けて衝撃的な数字を語りました。
発言したのは、開発基盤の責任者を務めるロブ・ウィトフ氏です。
「いまや会社のコードの95〜100%が、AIによって、またはAIの助けを借りて書かれている」と述べました。
ここで言うAIとは、LLM(大量の文章を学んで、人間のように文章やコードを書けるAI)のことです。ChatGPTのようなAIが、プログラムのコードを書いてくれるイメージです。
注目すべきは、その伸びの速さです。2026年2月の時点では、AIが関わったコードは約40%でした。
それがわずか5か月で、95%を超えました。企業のシステム開発で、これほど急な変化は珍しいことです。
なぜ半年で40%から95%まで伸びたのか
この急成長には、はっきりした「きっかけ」があります。
2025年8月、CoinbaseのCEOブライアン・アームストロング氏が、ある強引な決断をしました。
彼は全エンジニアに「今週末までにAIコーディングツールを使い始めること」を命じました。会社はGitHub CopilotやCursor(カーソル)といったツールの企業ライセンスを購入済みでした。
そして期限までに使わなかったエンジニアの一部を、実際に解雇したのです。アームストロング氏は後に「自分は暴走した」と振り返っています。
やり方は賛否を呼びました。ですが「AIは会社にとって最重要だ」という強いメッセージにはなりました。
その後、AI利用率は着実に上がりました。2025年半ばに約33%、2026年2月に約40%、そして2026年7月に95%超へと駆け上がったのです。
「1200人分」の正体とAIエージェントの使い方
今回いちばん話題になったのが「デジタル従業員1200人分」という表現です。
これはどういう意味でしょうか。
Coinbaseのエンジニアの多くは、いま1人あたり5〜10体のAIエージェントを同時に動かしています。エージェントとは、指示を与えると自分で作業を進めるAIのことです。
人間の開発者が横で見守りながら、複数のAIに別々の作業を任せる。そんな働き方が普通になりつつあります。
これらのAIがこなす作業量を合計すると、人間の従業員約1200人分に相当する、とウィトフ氏は試算しました。さらに2030年には、10万人分の働きに達する可能性があるとも語っています。
ただし、大事な注意点があります。95%という数字は「AIの助けを借りて書かれたコード」の割合です。AIが100%勝手に作って、そのまま本番で動かしているわけではありません。
実際にAIが担当するのは、下書き、書き直し、テスト、レビュー、バグ探し、定型コードの生成などです。
暗号資産を扱う会社ですから、お金やセキュリティに関わる重要な部分は、必ず人間が確認します。この「人間による監督」を中心に置く姿勢は変えていません。
他社と比べてCoinbaseは異常なのか
「95%」という数字は、業界の中でも突出しています。
比較のために、他の大手企業の数字を見てみましょう。
- Microsoft:社内コードの約20〜30%をAIが生成
- Google:新しいコードの約25%以上をAIが生成
- Coinbase:コードの95〜100%がAI関与
MicrosoftのCEOナデラ氏も、GoogleのピチャイCEOも、公の場で「約30%」と語っています。つまり最先端の巨大テック企業でも、30%前後が現在の相場なのです。
そう考えると、Coinbaseの95%がいかに極端かがわかります。
なぜここまで違うのでしょうか。理由の一つは、Coinbaseがトップダウンで一気に全社導入を進めたことです。
もう一つは、数字の「定義」の違いです。Coinbaseの95%は「AIが少しでも関わったコード」を広く含みます。一方、Microsoftの30%は「AIが生成した部分」をより狭く数えている可能性があります。
数字をそのまま比べるのは難しいですが、それでもCoinbaseの積極さは際立っています。
日本の開発現場にはどう関係する?
「アメリカの話でしょ」と思ったかもしれません。ですが、日本にとっても他人事ではありません。
まず気になるのは、日本企業の遅れです。ある調査では、日本のAIコーディングツール導入率はわずか12%でした。
これに対し、アメリカは67%、イギリスは52%、インドは48%です。日本は大きく出遅れているのが現状です。
個別のツールで見ると、GitHub Copilotの認知度は日本でも76%と高めです。しかし実際の業務での採用率は29%にとどまります。
従業員5000人を超える大企業では、開発者の40%が使うというデータもあります。NTTドコモのように「コード提案の採用率は25%」と具体的に公表する企業も出てきました。
ある日本のIT企業のエンジニアを想像してみてください。周りはまだ手作業で書いているのに、海外の同業他社は95%をAI化している。この差は、数年後の開発スピードや人件費に、大きな影響を与えるかもしれません。
導入が進まない理由は、セキュリティへの不安と、社内承認の手続きの複雑さだと言われています。Coinbaseの事例は、その壁をどう乗り越えるかを考えるヒントになります。
忘れてはいけない「人員削減」の話
明るい数字の裏には、重い現実もあります。
Coinbaseはこの発表の少し前、2026年5月に大きな人員削減を行いました。
削減されたのは約700人、全体の約14%です。とくに影響が大きかったのは、経験の浅い若手エンジニアでした。マーケティングやサポート、コンプライアンス(法令順守)の担当者も対象になりました。
アームストロングCEOは「エンジニアはAIで、以前は数週間かかった仕事を数日で終えている」と語っています。
生産性が上がる一方で、人の仕事が減る。AIコーディングの進化は、この両面を私たちに突きつけています。
よくある質問(FAQ)
Q1. AIが95%書くなら、もうエンジニアは要らないのですか?
いいえ。Coinbaseも人間の監督を中心に置いています。AIが書いたコードを確認し、責任を持って世に出すのは人間の役割です。とくにお金やセキュリティに関わる部分は、人の目が欠かせません。
Q2. 「95%」は本当にAIが全部作ったという意味ですか?
違います。これは「AIの助けを借りて書かれたコード」の割合です。下書きやバグ探しなど、AIが少しでも関わればカウントされます。人間がまったく手を加えていない、という意味ではありません。
Q3. 日本の会社でもすぐ真似できますか?
すぐには難しいかもしれません。日本の導入率はまだ12%で、セキュリティや社内手続きの壁があります。ただ、GitHub Copilotなどのツール自体は日本でも普通に使えます。小さなチームから試すことは可能です。
Q4. AIエージェントを5〜10体も動かすと、混乱しませんか?
慣れが必要です。人間が全体を見渡し、各AIに役割を割り振る「管理者」のような働き方になります。うまく使えば作業量は増えますが、指示や確認のスキルが新たに求められます。
まとめ
今回のポイントを振り返ります。
- Coinbaseはコードの95〜100%をAIで書いていると公表した
- 2026年2月の40%から、半年で急上昇した
- きっかけは2025年のCEOによる強引なAI利用の号令だった
- エンジニアは5〜10体のAIエージェントを同時に使い、その働きは1200人分と試算
- 他社は約30%が相場で、日本の導入率は12%とまだ低い
- 背景には約700人の人員削減という現実もある
AIコーディングは、もう「実験」ではなく「実務」の段階に入りました。まずは自分の仕事で、AIに任せられる作業がないか一度考えてみてください。
参考文献
- FinanceFeeds – Coinbase executive says 95-100% of company code is now AI-assisted
- Crypto Briefing – Coinbase says 95% to 100% of its code is now AI-assisted, up from 40% in February
- Bitcoin.com – The Math Behind ‘1,200 Digital Workers’
- TechCrunch – Coinbase CEO explains why he fired engineers who didn’t try AI immediately
- Remotify – GitHub調査:日本企業のCopilot導入率はわずか12%

