AI導入で業務8割減|中古車CARS24の実例

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

taolis.net X note Voicy YouTube
  • インドの中古車大手CARS24が、OpenAIのAIで顧客対応を自動化したと2026年7月16日に発表しました
  • カスタマーサポートの解決率は50%向上、業務にかかる時間は80%も短くなりました
  • 一度離れた見込み客の12%を、AIが再び商談へ呼び戻すことにも成功しています
  • 裏側では月100万分を超える会話をAIが処理し、社内でも約600人が毎日使っています
  • 日本でもアフラックやソフトバンクが同じ流れを進めており、他人事ではありません

「電話がなかなかつながらない」「折り返しを待つだけで何日もかかる」。中古車を売り買いした人なら、こんなイライラを経験したことはありませんか。そのストレスを、AIが一気に減らし始めています。今回は、インドの中古車大手CARS24がOpenAIのAIで業務時間を80%も短くした実例を、やさしく読み解きます。

中古車のCARS24で何が起きたのか

2026年7月16日、OpenAIが1つの導入事例を公開しました。

主役はCARS24(カーズ24)という会社です。インドで中古車をオンライン売買できる大手サービスで、2015年に生まれました。

従業員はおよそ6,800人。企業価値が10億ドルを超える「ユニコーン」(急成長した未上場の巨大企業)でもあります。

この会社が、OpenAIのAIを顧客対応や社内業務にまるごと組み込みました。お試しではなく、本番のシステムに本格導入した点がポイントです。

CEOのVikram Chopra氏は「AIはもう個別の作業を改善する道具ではなく、CARS24のOS(土台となる基本ソフト)になりつつある」と語っています。

成果を数字で見るとどれくらいすごいのか

発表された数字は、どれもかなりインパクトがあります。

  • カスタマーサポートの解決率が50%向上(問い合わせがその場で片付く割合が増えた)
  • 主要な業務の対応時間が80%短縮(数日かかっていた作業が数時間に)
  • 一度離れた見込み客の12%を商談に呼び戻した
  • AIが月100万分を超える顧客との会話を処理
  • 顧客への連絡のうち20%をAIが自動で担当

社内での使われ方も本格的です。約600人の社員がAIを使い、そのうち85〜90%が「毎日」利用しています。

2026年4〜6月の3か月間だけで、AIが処理した文章量は1.1兆トークン(AIが読み書きする文字のかたまりの単位)に達しました。2四半期前と比べて、およそ3倍に増えた計算です。

AIはどんな仕事を代わりにやっているのか

「AIが対応」と聞くと、簡単な自動応答を想像するかもしれません。CARS24の使い方は、もっと踏み込んでいます。

たとえば、仕事帰りの夜に「そろそろ車を売りたい」と思い立った人を考えてみてください。従来なら翌朝の営業時間を待つしかありませんでした。CARS24ではその場でAIが車種や状態を聞き取り、査定の予約まで数分で終わります。翌日には人間の担当者が引き継ぐ、という流れです。

車を買いたい人への対応

予算や家族構成、欲しい車のタイプをAIが聞き取ります。

そのうえで、ぴったりの車を提案し、試乗の予約まで自動で進めてくれます。人間の営業担当が最初にやる仕事を、AIが肩代わりするイメージです。

車を売りたい人への対応

車の情報を受け取り、査定の予約を調整します。

予約前のリマインドや、都合が悪くなったときの再予約にも対応します。忙しくて連絡を取りづらい売り手にも、AIが根気よく寄り添う形です。

社内の事務やエンジニア業務

AIの活躍は顧客対応だけではありません。バグ報告の自動処理や、財務の資料づくり、採用業務の支援にも使われています。

エンジニアの現場では、本番で動くコードの89%がAIの支援で書かれ、開発の生産性は平均3倍になったといいます。車両検査の80%、ローン実行の65%もAIが主導しています。

従来のコールセンターと何が違うのか

これまでのコールセンター自動化は、「決まった質問に決まった答えを返す」チャットボットが中心でした。少し複雑な相談になると、結局は人につなぐしかありませんでした。

CARS24が使うのは、AIエージェント(自分で考えて手順を進めるAI)です。ここが大きな違いです。

チャットだけでなく音声でも会話し、査定予約や書類確認といった一連の流れを、途中で人に渡さず最後までやり切ります。

実際、音声で対応した会話は3か月で258万分にのぼり、前の四半期より30%増えました。「ボットに任せると話が進まない」という従来の常識が、崩れ始めています。

日本の私たちにどう関係するのか

「インドの話でしょう?」と思うかもしれません。ですが、同じ動きは日本でも始まっています。

生命保険大手のアフラックは、2025年6月にOpenAIと提携しました。AIアバターが音声で顧客に応対する仕組みを開発し、約1,600人のコールセンター担当を2031年までに半分へ減らす計画です。

ソフトバンクもワイモバイルのサポートに、自分で考えて動く生成AIを導入しています。コールセンター大手のベルシステム24は、人手を5割減らせる新技術を2026年に始めると発表しました。

中古車業界に限らず、私たちが日々使う保険・通信・小売の窓口が、静かにAIへ置き換わっていく可能性があります。問い合わせがすぐ解決する便利さと、雇用への影響。その両方を見ておく必要があります。

導入で気をつけたい落とし穴

数字だけを見ると「すぐ真似したい」と感じます。ですが、うまくいった裏には準備の積み重ねがあります。

CARS24は最初から全業務をAIに任せたわけではありません。問い合わせ対応や査定予約など、効果が見えやすい業務から少しずつ広げていきました。

また、AIは「間違った答えを自信たっぷりに返す」ことがあります。金額や契約に関わる場面では、人間が最終確認する仕組みを残すことが欠かせません。

社員の教育も重要です。CARS24では約600人が日常的にAIを使いこなすまでになりました。道具を配るだけでなく、使い方が定着して初めて成果が出ます。

よくある質問(FAQ)

Q1. AIに任せると対応が雑になりませんか?

CARS24の例では、逆に解決率が50%上がりました。AIは24時間動けて待ち時間が少なく、過去のやり取りも正確に覚えているためです。ただし、複雑なクレームなどは人が対応する仕組みも残しています。

Q2. どんなAIを使っているのですか?

OpenAIのAPIを組み込んだ音声・チャット対応のエージェントに加え、法人向けのChatGPT Enterpriseや、開発を助けるCodexを組み合わせています。用途ごとに使い分けているのが特徴です。

Q3. 個人情報は大丈夫なのでしょうか?

法人向けのChatGPT Enterpriseは、入力した内容をAIの学習に使わない設定が基本です。とはいえ、企業側の運用ルールが重要で、利用者としては何を入力するか意識することも大切です。

Q4. 日本の中小企業でも同じことができますか?

いきなり全社導入は難しくても、問い合わせ対応や予約調整など、範囲を絞れば始められます。CARS24も一部の業務から広げていきました。小さく試して効果を確かめる進め方が現実的です。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • 中古車大手CARS24が、OpenAIのAIで顧客対応の解決率を50%向上、業務時間を80%短縮した
  • 離脱客の12%を呼び戻し、月100万分超の会話をAIが処理している
  • 買う・売る・社内業務まで、幅広い作業をAIエージェントが担っている
  • 日本でもアフラックやソフトバンクが同じ流れを進めている

まずは自分がよく使うサービスの問い合わせ窓口が、AIに変わっていないか意識してみることから始めてみましょう。

参考文献

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です