「AIで成果」は16%止まり|差はデータ基盤

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • AI・データ活用で「明確な成果」を出せた企業は、わずか16.4%だった
  • 期待していた企業は64.9%。期待と現実には約49ポイントもの差がある
  • 成果を出した企業は「全社統合データ基盤」の整備率が26.2%と、他社の2倍以上
  • それでも投資はAI開発に集中し、6割はデータ基盤に一切お金を使う予定がない
  • 日本の生成AI活用率は34.5%。次の勝負どころは「土台づくり」に移りつつある

AIを導入したのに、思ったほど成果が出ない。そう感じたことはありませんか。2026年7月17日に発表された調査で、その理由がはっきり数字になりました。うまくいった企業とそうでない企業を分けていたのは、AIの性能ではありません。もっと地味な「土台」でした。

調査でわかった「期待と現実」の大きな差

調査を行ったのはprimeNumber(プライムナンバー)という日本のデータ企業です。

「AI・データ活用実態調査2026」と名づけられ、2026年6月に実施されました。AIやデータ活用に関わる企業の担当者から、373件の有効回答を集めています。

まず目を引くのが、期待の大きさです。

AI・データ活用によって「劇的な変革が起きる」と答えた人が18.0%、「大きな改善が見込める」と答えた人が46.9%。あわせて64.9%が、大きな手ごたえを期待していました

ところが、実際に「明確な成果が得られている」と答えた企業はたった16.4%でした。

期待は約65%、現実は約16%。その差はおよそ49ポイントにもなります。

残りはどうだったのでしょうか。「限定的な範囲にとどまる」が48.3%、「まだ成果は出ていない」が12.3%。つまり6割の企業が、手ごたえを感じきれていません。

導入が進んでいないわけではありません。全社的に、あるいは複数の部門でAIを使い始めた企業は60.6%にのぼります。入れてはいる。でも効いていない。そういう状況です。

なぜ成果が出ない?ネックは「置き去りのデータ基盤」

調査が指摘した犯人は、データ基盤(社内のデータを集めて整理しておく仕組み)でした。

AIはデータを食べて動きます。社内のデータがバラバラのままだと、AIは十分に力を出せません。

整備できている企業は、たったの13.9%

AI活用に向けて全社でデータを統合できている企業は、わずか13.9%でした。

約7社に1社しかできていない計算です。

データの意味を管理する「メタデータ管理(そのデータが何を表すかの説明書き)」に至っては、全社統合は10.7%まで下がります。

現場では何が起きているのか

ある小売企業の在庫担当者を思い浮かべてください。

店舗の売上は本部のシステムに、ネット通販の数字は別のツールに、仕入れの記録は担当者のExcelにあります。AIに需要予測をさせたくても、まず3つの数字を手で突き合わせる作業から始まります。予測が出るころには、もう来週になっています。

製造業の営業部門でも似たことが起きます。

営業が使う顧客管理ツールと、経理の請求システムで、同じ会社に違う顧客IDがついている。AIに「優良顧客を教えて」と聞いても、同じ会社が2社として数えられてしまいます。答えは出ますが、その答えは間違っています。

カスタマーサポートも同じです。問い合わせ履歴はチャットツール、契約内容は別のSaaS。AIに「この客は何に困っている?」と聞いても、AIは半分しか見えていません。

どれも、AIが悪いのではありません。渡せる材料が足りていないだけです。

成果が出た企業と出ない企業、決定的な違い

ここがこの調査でいちばん面白いところです。

「明確な成果が出ている」と答えた企業だけを取り出すと、26.2%が全社統合データ基盤を整えていました

一方、それ以外の企業では11.5%にとどまります。

その差は2倍以上。成果を出している企業ほど、地味な土台を先に固めていたわけです。

もちろん「基盤を作れば必ず成果が出る」と言い切れる話ではありません。うまくいっている企業だから基盤に手が回った、という逆の順番もありえます。

それでも、成功と最も強く結びついていた項目がデータ基盤だった。この事実は重く受け止めるべきだと言われています。

投資のねじれ|AIには出すが、土台には出さない

では企業はこれから、どこにお金を使うつもりなのでしょうか。

今後12か月で投資を増やす見込みの企業は44.8%。財布のひもは緩んでいます。

問題は、その使い道です。

  • 生成AI・エージェント型AIの開発:43.4%
  • データ連携・パイプラインの整備:21.7%
  • データカタログ・メタデータ管理:12.3%
  • DWH・データレイクの強化:11.0%

いちばん人気はAI開発そのもの。土台側の項目は、どれも2割前後です。

さらに驚く数字があります。

AI開発を優先すると答えた162社のうち、98社(60.5%)が、データ基盤に関する選択肢をひとつも選びませんでした

調査はこれを「最も成果と相関しているのに、最も後回しにされている領域」と表現しています。

この傾向は他の調査でも見えます。EC事業者を対象にした2026年5月の調査では、経営層の58.0%が「データ統合なしにAI競争に勝てない」と答えました。ところが、データ統合基盤への投資を最も増やす予定の企業は18.2%だけ。頭ではわかっているのに、財布は動いていないのです。

データ基盤ツール比較|TROCCO・Fivetran・Snowflakeは何が違う?

「じゃあ何を入れればいいの?」と思いますよね。ここは混乱しやすいので整理します。

レイヤーが違うものが混ざっている

よく名前が挙がるツールは、実は役割が違います。

  • TROCCO(トロッコ):primeNumberの国産ETL(バラバラのデータを集めて整える仕組み)。日本語サポートが手厚く、kintoneなど国内SaaSとの接続に強い。非エンジニアでも設定しやすいUIが売り。月額数万円〜
  • Fivetran(ファイブトラン):海外製の完全マネージド型。データの形が変わっても自動で追従してくれる。海外SaaSとの接続の安定性を最優先するならこちら。月額数万円〜
  • AWS Glue:AWSを中心に使っているならエコシステム的に有利
  • Snowflake / Databricks:こちらはETLではなくデータの置き場そのもの(DWH/レイクハウス)。集めたデータを溜めて分析する側のレイヤー
  • COMETA(コメタ):primeNumberのメタデータ管理。データの意味を整理する層

選び方のざっくり指針

倉庫と運送屋の関係で考えるとすっきりします。SnowflakeやDatabricksが倉庫で、TROCCOやFivetranが荷物を運び込むトラック。どちらか片方だけでは回りません。

国内SaaSが多く日本語サポートを重視するならTROCCO、海外SaaS中心で運用を任せきりにしたいならFivetran、というのが実務的な分かれ目です。

日本企業への影響と、今日からできる3ステップ

この話は、日本企業にとって他人事ではありません。

生成AI活用34.5%という現在地

帝国データバンクが2026年3月に全国2万3349社を対象に行い、1万312社が回答した調査では、業務で生成AIを「活用している」企業は34.5%でした。

規模別に見ると差が出ます。大企業は46.5%、中小企業は32.4%、小規模企業は28.0%。

活用している企業のうち86.7%は「効果が出ている」と答えています。使えば効くのです。

一方で課題も残ります。「情報の正確性」が50.4%で最多、次いで「専門人材・ノウハウ不足」が41.3%、「活用すべき業務の範囲」が40.0%、「情報漏洩のリスク」が33.5%と続きました。

ちなみに、情報の正確性という悩みの一部は、AIの性能ではなくデータ側の問題です。元データが古かったり重複していれば、AIの答えもズレます。

今日からできる3ステップ

いきなり全社統合を目指す必要はありません。

ステップ1:AIに使わせたいデータを1つだけ決める。売上でも問い合わせ履歴でも構いません。

ステップ2:そのデータが今どこに、いくつあるか数える。3か所に散っていれば、それが伸びしろです。

ステップ3:定義をそろえる。「顧客」とは誰を指すのか、部門間で言葉の意味を合わせるだけでも精度は変わります。

よくある質問(FAQ)

Q1. データ基盤って、結局なんですか?

社内に散らばったデータを1か所に集めて、いつでも使える形に整えておく仕組みのことです。AIにとっての食材倉庫だと考えてください。倉庫が散らかっていると、どんな一流シェフでも料理は作れません。

Q2. 中小企業にもデータ基盤は必要ですか?

規模が小さいほど、実は始めやすい面があります。データの量も部署の数も少ないからです。帝国データバンクの調査では中小企業の生成AI活用率は32.4%で、大企業の46.5%と14ポイント差。今のうちに土台を整えると差を縮めやすいと言われています。

Q3. 基盤を作らないとAIを入れてはいけないのですか?

そんなことはありません。調査でも、活用企業の86.7%が効果を実感しています。まず試すのは正解です。ただし「限定的な成果」で止まりやすい。全社的な成果まで伸ばす段階で、基盤が効いてきます。

Q4. 費用と時間はどれくらいかかりますか?

ETLツールは月額数万円〜が目安です。ただし本当のコストはツール代よりも、データの定義をそろえる社内調整だと言われています。まず1つの業務に絞れば、数か月単位で形になります。

Q5. うちが「置き去り」かどうか、どう見分ければいい?

簡単なテストがあります。「先月の売上を、部署をまたいで5分以内に出せますか?」。出せないなら、AIも同じところでつまずいています。

まとめ

  • AI・データ活用で「明確な成果」が出た企業は16.4%。期待した64.9%との差は約49ポイント
  • 全社統合データ基盤を整えた企業は13.9%。メタデータ管理まで進んだのは10.7%
  • 成果を出した企業の整備率は26.2%で、その他の11.5%の2倍以上
  • 投資はAI開発(43.4%)に集中し、AI優先派の60.5%はデータ基盤に一切投資しない
  • 日本の生成AI活用率は34.5%。使えば86.7%が効果を実感している

まずは自社のデータが何か所に散らばっているかを数えるところから始めてみてください。それがAIの成果を伸ばす、いちばん確実な一歩になります。

参考文献

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