27億ドルの天才がGoogle去りOpenAIへ

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • Transformer(今のAIの土台になった技術)の生みの親が、GoogleからOpenAIへ移籍しました
  • その人物の名はNoam Shazeer(ノーム・シャジア)さん。2026年6月18日に発表されました
  • Googleは2024年、彼を呼び戻すために約27億ドル(約4000億円)を投じていました
  • それなのに、たった2年も経たずにライバルのOpenAIへ去ってしまいました
  • 背景には、年収数億円が飛び交う「AI人材の奪い合い」があります

今あなたが使っているChatGPTやGemini、Claude。実はこれら全部、たった1本の論文から生まれた技術で動いています。その論文を書いた中心人物が、巨額のお金で引き止められていたのに、ライバル会社へ移ってしまいました。いったい何が起きたのでしょうか。AI業界を揺るがした「人材の大移動」を、やさしく解説します。

何が起きたの?6月18日に発表された移籍

2026年6月18日、AI業界に衝撃が走りました。

GoogleのAI開発の中心人物が、ライバルのOpenAIへ移籍すると発表したのです。

その人物の名前は、Noam Shazeer(ノーム・シャジア)さん。

彼はGoogle DeepMind(グーグルのAI研究部門)で、エンジニアリング担当の副社長を務めていました。

さらに、Googleの最新AI「Gemini(ジェミニ)」の開発を率いる共同リーダーでもありました。まさにGoogleのAIの「顔」のような存在です。

本人はこの移籍を「難しい決断だった」と語りつつ、「OpenAIに参加できてワクワクしている」とコメントしています。

Noam Shazeerって何者?「Transformerの父」

「名前を聞いてもピンとこない」という人がほとんどだと思います。

でも彼は、AIの歴史を変えた超重要人物です。

2017年、彼は仲間8人と一緒に「Attention Is All You Need」という論文を発表しました。

この論文で生まれたのが「Transformer(トランスフォーマー)」という仕組みです。Transformerは、AIが文章の意味を理解するための「設計図」のようなものです。

実はこのTransformer、今の生成AIすべての土台になっています。

ChatGPTも、Geminiも、Claudeも、根っこは全部このTransformerです。だからShazeerさんは「現代AIの生みの親の一人」と呼ばれています。

この論文は、コンピュータ科学の歴史でもっとも多く引用された論文の一つになりました。それだけ世界中の研究の出発点になった、ということです。

なぜ27億ドルの「出戻り社員」が2年で去ったの?

ここが今回いちばん驚かれているポイントです。

Shazeerさんは2000年にGoogleに入社した古株でした。ところが2021年、彼はGoogleを一度退社します。

理由は、自分たちが作ったチャットAI「Meena」をGoogleが世に出してくれなかったから、と言われています。そして彼は仲間と「Character.AI」という会社を立ち上げました。

その後、生成AIブームが爆発します。

あわてたGoogleは2024年8月、約27億ドル(日本円で約4000億円)もの巨額契約で、彼をCharacter.AIから呼び戻したのです。

そして再びGeminiの共同リーダーに据えました。「Geminiを立て直した立役者」とも報じられています。

それなのに、2年も経たずにOpenAIへ。ある専門家は「1か月あたり1億ドル以上を払った計算になる」と皮肉まじりに指摘しています。Googleにとっては、まさに大誤算でした。

OpenAIでの新しい仕事は「次世代の設計図づくり」

では、Shazeerさんは移籍先で何をするのでしょうか。

OpenAIでの役職は「Architecture Research Lead(アーキテクチャ研究のリーダー)」です。

むずかしい言葉ですが、かみくだくと「次世代AIの新しい設計図を考える責任者」という意味です。

今のChatGPTはGPTという仕組みで動いています。これも元はTransformerがベースです。

OpenAIは今後、その先の「まったく新しい仕組み」を作ろうとしています。だからこそ、Transformerを生み出した本人を迎え入れたわけです。

OpenAIのサム・アルトマンCEOは「彼はOpenAI創業当初から、最も一緒に働きたかった人の一人」「10年越しの夢がかなった」と大喜びでコメントしました。

加熱する「AI人材の奪い合い」

今回の移籍は、ひとりの天才の引っ越し話ではありません。

その裏には、世界中のAI企業によるすさまじい人材の奪い合いがあります。

主な「奪い合いプレイヤー」を整理してみましょう。

  • OpenAI:ChatGPTの会社。社員の平均株式報酬が約150万ドル(約2.2億円)と過去最高水準
  • Google DeepMind:Geminiの会社。今回Shazeerさんが去り、他の研究者2人もAnthropicへ流出
  • Anthropic:Claudeの会社。Googleから優秀な研究者を引き抜き中
  • Meta(旧Facebook):1人に1億ドルの契約金を提示したと噂され、各社から人材を爆買い

トップクラスの研究者になると、年収が200万〜500万ドル(約3億〜7億円)に達することもあります。

なぜこんなに高いのでしょうか。理由はシンプルです。本当に優秀な研究者は世界に数えるほどしかいないからです。

たった数人の天才が、会社の勝敗を決めてしまう。だから各社は、サッカーのスター選手を奪い合うように、巨額のお金を積むのです。

日本のAI業界への影響は?

「アメリカの話でしょ?」と思うかもしれません。でも、日本にとっても他人事ではありません。

まず、私たちが毎日使うChatGPTやGeminiの進化スピードに直結します。天才研究者の移籍で、新しい仕組みのAIが早く登場するかもしれません。

次に、日本の人材問題です。これだけ年収が高騰すると、日本の優秀なAI研究者も海外企業に引き抜かれやすくなります。

実際、日本企業の給与水準では、年収数億円の提示にはなかなか太刀打ちできません。

国産AIを育てたい日本にとって、「頭脳の流出」は大きな課題です。ソフトバンクやNTT、Preferred Networksなど、国内勢がどう優秀な人材をつなぎ留めるかが問われています。

あなたの会社でも、AIに詳しい人材の取り合いは、これからどんどん身近になっていくはずです。

よくある質問(FAQ)

Q1. Noam Shazeerさんはなぜそんなにすごいのですか?

A. 今の生成AIすべての土台「Transformer」を共同で発明したからです。ChatGPTもGeminiもClaudeも、彼が2017年に書いた論文がなければ生まれませんでした。

Q2. Googleは27億ドルをまるまる損したのですか?

A. 完全な損とは言い切れません。契約にはCharacter.AIの技術ライセンスも含まれており、Geminiの立て直しにも貢献しました。ただ、本人がすぐ去ったのは大きな痛手です。

Q3. 彼が移籍すると、ChatGPTはどう変わりますか?

A. すぐには変わりません。彼の役割は「次世代の新しい仕組み」を研究することです。数年後のChatGPTが、まったく新しい形に進化する可能性があります。

Q4. なぜAI研究者の給料はこんなに高いのですか?

A. 本当に優秀な研究者が世界に数えるほどしかいないからです。たった数人の天才が会社の勝敗を左右するため、各社が巨額の報酬で奪い合っています。

まとめ

今回のニュースのポイントを振り返ります。

  • Transformerの生みの親Noam Shazeerさんが、GoogleからOpenAIへ移籍(2026年6月18日発表)
  • Googleは2024年に約27億ドルで彼を呼び戻したが、2年足らずで離脱
  • OpenAIでは「次世代AIの設計図」を作る研究リーダーに就任
  • 背景には、年収数億円が飛び交う激しいAI人材戦争がある
  • 日本にとってもAIの進化スピードと人材流出の両面で無関係ではない

気になるAIの最新ニュースは、ぜひこれからも一緒に追いかけていきましょう。

参考文献

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