録画1回でAIが代行|MS無料ツール公開

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • Microsoftが「Skill Recorder」を無料公開。PC操作を録画するだけでAIエージェント用の手順書を自動生成できる
  • 録画した画面・クリック・音声ナレーションをGitHub Copilot CLIが解析し、「意図+手順リスト」に再構成する
  • 出力は「Skill(呼べば動く手順書)」と「Automation(時間や条件で自動実行)」の2種類
  • MITライセンスで商用利用も可能。Windows 11・macOS・Ubuntuに対応し、管理者権限なしで導入できる
  • 従来のRPAとの決定的な違いは「クリックの再生」ではなく「やりたいことの理解」で動く点

毎月おなじ作業を、おなじ手順で、おなじだけ時間をかけていませんか。その作業を1回だけ録画すれば、あとはAIが代わりにやってくれる——そんなツールをMicrosoftが2026年8月に無料公開しました。名前は「Skill Recorder」です。何ができて、いくらかかり、日本のユーザーにどう関係するのかを整理します。

Skill Recorderとは?録画1回でAIの「手順書」ができる

Skill Recorderは、Microsoftが公開したデスクトップアプリです。

やることは驚くほど単純です。いつもの作業を画面録画するだけ。あとはAIが、その録画から「この人は何をしたかったのか」を読み取ってくれます。

ITmediaが2026年8月4日に報じたところによると、このツールはGitHub上でMITライセンスとして公開されています。つまり無料で使えて、商用利用も認められています。公開直後にもかかわらず、GitHubのスター(気に入った印)は1,400を超えました。

動作は4つのステップだけ

使う流れは4段階に分かれています。

  • 記録:画面の動きをローカル(自分のPCの中)でキャプチャする
  • 制御:画面に常に出ているバーで、録画とマイクのオンオフを切り替える
  • 分析:GitHub Copilot CLI(コマンドライン版のAI支援ツール)が録画を読み解く
  • 作成:SkillまたはAutomationとして書き出す

記録されるのは、クリックの位置だけではありません。

アプリやウィンドウの切り替え、訪れたページのURL(macOSの場合)、画面のスナップショット、クリップボード(コピーした内容)のプレビューまで拾います。

さらに、マイクに向かって話した説明も一緒に記録できます。「ここでこの数字を確認しています」と声に出しておけば、AIはその意図まで理解してくれるわけです。

「クリックの再生」ではなく「意図の再現」

ここがこのツールのいちばん面白いところです。

公式の説明では、生成された手順はUI(画面)のクリックを再生するよりも、エージェントが本来持っている機能を優先して使うと書かれています。

たとえばあなたが「ブラウザでメール画面を開いて、検索窓に文字を入れて、結果をコピーした」と録画したとします。AIはこれを「メールを検索して該当の情報を取り出す」という目的として理解し、次からはブラウザを操作せずにAPIで直接取りに行く、という動き方をします。

しかも1回の録画例から一般化してくれるため、「7月分」で録画すれば「8月分」でも通用する手順になります。

SkillとAutomation、どう違うのか

書き出せる形式は2種類あります。名前が似ていますが、動くタイミングが違います。

Skill=呼んだときに動く手順書

Skillは「SKILL.md」というファイルとして出力されます。

中身はふつうのMarkdown(見出しや箇条書きが書ける軽量な文書形式)です。人間が読んでも意味がわかりますし、あとから手で書き直すこともできます。

使い方は、AIに「あの作業やっといて」と頼むだけ。必要になったときだけ呼び出すタイプです。

Automation=時間や条件で勝手に動く

もう一方のAutomationは、中身の手順はSkillと同じです。違うのは起動のしかたです。

スケジュール(毎週月曜の朝9時など)やトリガー(特定のメールが届いたときなど)で自動的に走ります

週次レポートの作成のように「毎回おなじタイミングで発生する作業」は、こちらにしておくと呼び出す手間すら消えます。

出力先は3つのMicrosoft製品

作った手順は、Microsoftの3つのAI製品で使えます。

  • Microsoft Scout:Build 2026で発表された常時稼働型のデスクトップエージェント。ユーザーが席にいなくても裏で作業を進める
  • Microsoft Copilot Cowork:2026年6月16日に一般提供が始まった自律実行型の機能。複数アプリをまたぐ作業が得意
  • Copilot Studio:自社用のAIエージェントを作って配布するための開発環境

ちなみに出力される「SKILL.md」は、Microsoft独自の形式ではありません。2025年12月18日にAnthropicがオープン標準として公開した「Agent Skills」というフォーマットです。2026年3月時点で、主要な3つのマーケットプレイスに49万件を超えるスキルが存在すると報じられています。

導入に必要なものと、かかる費用

気になるのはお金と手間です。結論から言うと、ツール自体は無料、ただしGitHub Copilotのアクセス権は必要です。

対応OSと必要な環境

対応しているのは、Windows 11(x64とARM64の両方)、macOS、Ubuntuの3つです。

実行にはNode.js 24が必要ですが、インストーラーがポータブル版を自動で取ってきてくれます

うれしいのは、管理者権限が要らない点です。Node.jsやCopilot CLIをPC全体にインストールする必要もありません。会社のPCで勝手にソフトを入れられない人でも、比較的試しやすい設計になっています。

インストールはコミットSHA指定が必須

導入は1行のコマンドで済みます。ただし公式ドキュメントには、少し厳しめのルールが書かれています。

ブランチ名やmainの参照は禁止で、40文字のコミットハッシュ(そのバージョンを一意に指すID)を必ず指定するという決まりです。

インストーラーはNode.jsのアーカイブをnodejs.org公式のチェックサムで検証し、Electron(デスクトップアプリの土台)についても公式の値を確認します。「どこかで書き換えられたものを掴まされない」ための仕組みです。

なお、ビルドしたものを他人に配ったり、node_modules(部品置き場)を共有したりすることは認められていません。

従来のRPAと何が違うのか

「操作を記録して自動化する」と聞いて、RPA(決まった事務作業をソフトに代行させる技術)を思い浮かべた人も多いはずです。実際、機能だけ並べるとよく似ています。

記録型ツールの代表格との比較

ツール記録の使い方壊れやすさ
Skill Recorder意図を再構成して手順書化画面が変わっても比較的強い
Power Automate Desktop画面操作をそのまま再生ボタン位置が変わると停止しやすい
UiPath Task Captureスクリーンショット付き手順書を生成人が仕上げる前提の設計

UiPathには操作を細かく分解して記録する「Task Mining」もあり、記録の精度そのものは長年磨かれてきました。

決定的な差は「壊れにくさ」

従来のRPAで多くの担当者を苦しめてきたのが、画面が少し変わっただけで動かなくなる問題です。

ボタンの位置が10ピクセル動いた、項目名が「取引先」から「取引先名」に変わった。それだけで自動化は止まります。

Skill Recorderは座標を覚えるのではなく、やりたいことを言葉にして残します。その言葉をAIがそのときの画面に合わせて解釈し直すため、多少の変更なら乗り越えられる可能性が高くなります。

もっとも、これは裏返せば「毎回まったく同じ動きをする保証がない」ということでもあります。1円のズレも許されない会計処理では、従来型のほうが安心という場面も残るでしょう。

費用の考え方も違います。Skill Recorderはツール本体が無料で、実際に手順を動かすのはCopilot側です。つまりコストはCopilotの契約に乗る形になります。

日本のユーザー・企業にどう効くのか

日本語環境でどう役立つのか、具体的な場面で考えてみます。

中小企業の経理担当者のケース

ある20人規模の会社で、経理を1人で担当している人がいるとします。

毎月末、社内システムから請求データをダウンロードし、Excelで整形し、取引先ごとに分けてPDF化し、メールに添付して送る。所要時間は丸一日です。

この一連の流れを1回だけ録画し、「ここで消費税を確認しています」と声で補足しておく。それだけで、翌月からはAutomationが月末に自動で走り出します。

属人化した業務の引き継ぎ

もうひとつ大きいのが、退職・異動のときの引き継ぎです。

「あの人しかやり方を知らない作業」は、どの職場にもあります。マニュアルを書いてもらおうとしても、忙しくて後回しになりがちです。

ところがSkill Recorderなら、いつもの作業を録画してもらうだけで済みます。出てくるSKILL.mdは人間が読める文書なので、AIに実行させなくても引き継ぎ資料としてそのまま使えます

個人のクリエイターやフリーランス

3つめは個人です。

たとえば動画編集を請け負っている人が、納品前に毎回やる確認作業を想像してみてください。書き出し設定の確認、サムネイルの用意、請求書の作成、クライアントへの連絡。

数は多いのに、1つ1つは単純です。こうした「細かくて忘れやすい定型作業」こそ、録画1回で手順書にする価値があります。

日本語での利用について

気になる日本語対応ですが、生成されるSKILL.mdはCopilotが書き出す自然言語の文書です。

Copilotは日本語に対応しているため、日本語でナレーションすれば日本語の手順書が期待できます。ただし公式に日本語UIが用意されているわけではないため、画面の表示は英語が中心になる点は押さえておきたいところです。

使う前に知っておきたい注意点

便利なツールですが、リスクもあります。公式ドキュメントもはっきり警告しています。

パスワードは絶対に映さない

もっとも重要な注意はこれです。

公式には「パスワード、トークン、APIキーを録画したり、入力したり、貼り付けたり、口に出したりしないこと」と明記されています。

録画は画面をそのまま撮ります。ログイン画面が映れば、それも記録されるということです。録画を始める前に、機密情報が映るタブやウィンドウは閉じておくのが安全です。

どこまでがローカルで、どこからクラウドか

プライバシーの線引きも確認しておきましょう。

記録そのものは自分のPCの中で完結します。外に出るのは、ユーザーが「分析する」を選んだときです。

そのタイミングで、録画のデータやナレーションのテキストがGitHubのクラウドに送られ、Copilotが処理します。会社の規定でクラウドへのデータ送信が制限されている場合は、事前に確認が必要です。

まだ公開直後という事実

そしてもう一点。このツールは公開されたばかりです。

GitHubのIssue(不具合や要望の投稿)は21件が挙がっている段階で、フォークは150ほど。実務の基幹業務にいきなり載せるのではなく、止まっても困らない作業から試すのが現実的です

よくある質問(FAQ)

Q1. 本当に無料で使えますか?

ツール本体はMITライセンスで無料公開されており、商用利用も認められています。ただし録画を解析するにはGitHub Copilotへのアクセス権が必要です。Copilotの契約費用は別途かかると考えてください。

Q2. Windows 10でも使えますか?

公式が対応をうたっているのはWindows 11(x64/ARM64)、macOS、Ubuntuの3つです。Windows 10は対応リストに含まれていません。

Q3. プログラミングの知識は必要ですか?

録画して手順書を作るだけなら、専門知識はほぼ不要です。ただしインストールはコマンドを1行実行する形式で、コミットハッシュの指定も必要になります。ターミナル(黒い画面)に少しでも触れた経験があると安心です。

Q4. 作った手順書は他のAIでも使えますか?

出力される「SKILL.md」は、Anthropicが2025年12月にオープン標準として公開したAgent Skills形式です。同じ形式に対応したAIエージェントであれば、Microsoft製品以外でも読み込める可能性があります。

Q5. 従来のRPAを置き換えるものですか?

現時点では棲み分けが現実的です。厳密な再現性が求められる処理は従来型のRPA、画面や手順が変わりやすい作業はSkill Recorderという使い分けが向いています。

まとめ

Skill Recorderのポイントを振り返ります。

  • Microsoftが2026年8月に公開した、操作録画からAIエージェント用の手順書を作るデスクトップアプリ
  • クリック・アプリ切り替え・URL・音声ナレーションを記録し、GitHub Copilot CLIが「意図+手順」に再構成する
  • 出力は呼び出し型の「Skill」と自動実行型の「Automation」の2種類。Microsoft Scout/Copilot Cowork/Copilot Studioで動く
  • MITライセンスで無料・商用利用可。Windows 11/macOS/Ubuntuに対応し、管理者権限は不要
  • 座標ではなく意図を記録するため、画面変更に強い一方で、厳密な再現性が要る業務には向かない
  • パスワードやAPIキーを録画に映さないこと。分析時にはデータがクラウドへ送られる

まずは失敗しても困らない定型作業をひとつ選び、それを録画するところから始めてみてください。

参考文献