- AIエージェント「Manus」がMetaの傘下から離れ、独立企業として再スタートします
- 2025年12月29日以降に作ったデータは、8月23日から24日にかけて削除されます
- バックアップの締め切りは日本時間8月23日午前8時59分。復元は8月25日以降です
- 破談の原因は、中国当局が外国からの投資を安全保障の理由で禁止したことです
- ChatGPT AgentやGensparkとの違い、日本のユーザーが今すべきことも解説します
いつも使っているAIサービスから、突然「あなたのデータを消します」というお知らせが届いたら、どうしますか。いま実際に、AIエージェント「Manus(マナス)」でそれが起きています。締め切りは日本時間の8月23日午前8時59分。背景には、3000億円規模の買収が国家間の思惑でひっくり返った大きな事件がありました。
何が起きたのか?ManusがMetaの傘下から離れます
2026年8月11日、Manusを開発するButterfly Effect Technology(バタフライ・エフェクト・テクノロジー)が発表しました。
ManusはMetaの一部ではなく、ふたたび独立した会社として運営されます。
Metaは2025年12月29日に、Manusを約20億ドル(1ドル150円換算で約3000億円)で買収すると発表していました。ところがその買収が、成立しないまま白紙に戻ったのです。
Manus側は「今回の分離はセキュリティ事故が原因ではありません」とはっきり説明しています。情報漏えいがあったわけではない、ということです。
ただし独立にともなって、一部のユーザーデータが削除されます。ここが利用者にとって一番大事なポイントです。
8月23日までにやること|データ削除のスケジュール
消えるのは「2025年12月29日以降」のデータ
削除の対象は、2025年12月29日以降に生成されたデータです。
この日付は、Metaによる買収が発表された日と同じです。つまり「Metaの傘下だった期間に作られたデータ」が対象、と考えるとわかりやすいでしょう。
買収発表より前に作ったデータは、そのまま残ります。
また、全ユーザーが対象というわけではありません。対象になる人には、Manusのアプリ内通知とメールでお知らせが届く仕組みです。
心当たりのある方は、まず受信トレイと通知欄を確認してください。
バックアップと復元のタイムライン
スケジュールは分単位で決まっています。日本時間に直すと次のとおりです。
- バックアップ期限:8月23日 午前8時59分(シンガポール時間 7時59分)
- 削除の実行:8月23日 午前9時 〜 8月24日
- 復元ポータルの開放:8月25日 午前9時 以降
流れとしては「自分で保存する → いったん削除される → 復元ポータルから戻す」という三段構えです。
保存し忘れたまま23日の朝を迎えると、データを戻せなくなる可能性があります。
ちなみにManusは、8月11日から23日までの利用料金を免除すると発表しました。データを復元したユーザーへの特典も用意するとしています。
なぜ買収は破談したのか|中国当局の「安全審査」
ここからは少し国際政治の話になります。
Manusを開発したButterfly Effect Technologyは、2022年に中国で生まれた会社です。創業者は肖弘(シャオ・ホン)氏。2025年の半ばに、本社をシンガポールへ移しました。
それでも中国当局は、Manusを「中国の技術」と見なしました。
2026年4月27日、中国の国家発展改革委員会(NDRC)がこの買収を禁止すると発表。両社に取引の撤回を命じました。
根拠になったのは「外商投資安全審査弁法」という制度です。外国企業が中国の重要分野の会社を買うとき、国の安全保障の観点から審査する仕組みで、2020年に導入されました。
この制度でAI分野の買収が公に止められたのは、今回が初めてとされています。
さらに3月下旬から、CEOの肖弘氏と主席科学者の季逸超(ジー・イーチャオ)氏には出国制限がかけられていたと報じられました。審査の厳しさがうかがえます。
今後については、中国のTencent(テンセント)が既存の投資家とともに株式の買い戻しを協議していると伝えられています。
Manusとは何か|8カ月で年商150億円に届いた実力
そもそもManusは、なぜMetaが3000億円を出そうとしたほどの存在なのでしょうか。
Manusは「自律型AIエージェント」と呼ばれるサービスです。
チャットAIとの違いは、答えを返すだけで終わらない点にあります。Webを検索し、資料を読み、コードを実行し、ファイルを作るところまで自分でやります。
数字も派手です。正式公開からわずか8カ月で年間経常収益(ARR=毎年安定して見込める売上)1億ドル(約150億円)を突破しました。
従量課金なども含めた総収益ペースは、1億2500万ドル超に達したと発表されています。ゼロからこの水準に届いた速さは、スタートアップとして史上最速だと言われています。
具体的な使われ方を3つ想像してみてください。
ある広告代理店の担当者は、競合5社のサービス比較を頼みます。Manusは各社のサイトを回り、価格表を読み取り、比較表とスライドまで作って返してきます。
個人の投資家は、決算資料のPDFを渡して「3年分の売上推移をグラフにして」と指示します。数字を抜き出し、計算し、グラフ画像として出力するところまで自動です。
採用担当者は、届いた履歴書50件を条件ごとに仕分けするよう頼みます。1件ずつ読んで表にまとめる半日仕事が、待っているだけで終わります。
こうした「作業の完了まで面倒を見る」性質が、高く評価された理由です。
他のAIエージェントと比べてどうか
とはいえ、Manusだけが特別というわけではありません。2026年8月時点で、選択肢はかなり増えています。
OpenAIのChatGPT Agentは、月20ドル(約3,000円)のChatGPT Plusに含まれています。すでにChatGPTを使っている人なら、追加費用なしで試せるのが強みです。
Genspark(ジェンスパーク)は月24.99ドル(約3,700円)から。AIが音声で電話をかける機能など、尖った使い方で知られています。
Claude Codeはプログラミングに特化した方向です。汎用の作業代行ではなく、開発現場での深さで勝負しています。
そのなかでManusは、無料プランに加えて月20ドル前後から上位プランまでを用意する「クレジット制」を採用しています。
クレジット制とは、使った分だけ残高が減る仕組みのことです。複雑な調査やスライド作成は1回で数百クレジットを消費することもあり、使い方しだいで実質の月額が大きく変わります。
選び方の軸をまとめると、こうなります。
- すでにChatGPTを契約している → ChatGPT Agentから試すのが早い
- 調査や資料作成をまるごと任せたい → ManusやGensparkが向く
- コードを書かせたい → Claude Codeなど開発特化型
ただし今回のような「運営体制が急に変わるリスク」は、どのサービスにもつきまといます。価格や性能だけで選ぶ時代ではなくなった、とも言えます。
日本のユーザーと企業への影響
日本にとって、この件は他人事ではありません。
Manusは日本語のUI(画面表示)に対応しており、日本語の指示でそのまま動きます。招待コードも不要になったため、国内でも業務に組み込んでいる人が少なくありません。
気をつけたいのは3点です。
1つめは時差です。公式のアナウンスはシンガポール時間で書かれています。日本時間はその1時間後。「23日の7時59分」を鵜呑みにすると、1時間ずれて計算してしまいます。
2つめは業務データの棚卸しです。Manusに作らせたレポートやスライドを、社内の共有ドライブに保存しているでしょうか。サービス側にしか残っていない状態なら、いますぐ手元へ落としておくべきです。
3つめは依存先の分散です。今回の破談は、技術的な失敗ではなく国と国の駆け引きで起きました。
つまりどんなに優秀なAIでも、地政学的な理由で急に使えなくなることがあるということです。
重要な業務を1つのAIサービスだけに預けるのは危ない、とこの一件は教えてくれます。代わりになるツールを1つ決めておくだけでも、いざというときの被害はかなり小さくなります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 私のデータも消えますか?
対象は2025年12月29日以降に生成されたデータで、全ユーザーではありません。対象者にはアプリ内通知とメールで案内が届きます。まず通知を確認してください。
Q2. バックアップを忘れたらどうなりますか?
8月25日以降に開く復元ポータルは、自分で保存しておいたデータを戻すための仕組みです。保存していなければ戻せない可能性が高いと考えてください。
Q3. なぜわざわざ削除する必要があるのですか?
Manusは「一部の国や地域の規制に対応するため」と説明しています。セキュリティ事故が起きたわけではない、と明言されています。
Q4. Manusは今後も使えますか?
はい。独立企業として運営を続けると発表されています。8月11日から23日までは利用料金が免除され、データを復元したユーザーへの特典も予定されています。
Q5. 料金プランは変わりますか?
現時点で値上げの発表はありません。ただし出資構成が変わる可能性があるため、公式サイトの最新情報は定期的に確認したほうが安全です。
まとめ
- ManusはMetaの傘下を離れ、独立企業として運営を再開します
- 2025年12月29日以降のデータは、8月23日〜24日に削除されます
- バックアップ期限は日本時間8月23日午前8時59分、復元は8月25日午前9時以降
- 破談の原因は、中国NDRCが外商投資安全審査で買収を禁止したこと
- ManusはARR1億ドルを8カ月で達成した、史上最速級のAIエージェント
- 優秀なAIでも地政学的な理由で止まりうる。依存先の分散が現実的な備えになります
まずはManusのアプリを開き、通知が届いていないかを確認しましょう。届いていたら、23日の朝までにデータのバックアップを済ませてください。
参考文献
- AIエージェント「Manus」がMetaから独立へ 一部ユーザーデータは削除(ITmedia NEWS、2026年8月12日)
- Singapore-based Manus AI to leave Meta as China blocks Meta’s $2B acquisition(TNGlobal)
- China blocks Meta’s $2B Manus deal after months-long probe(TechCrunch)
- China blocks Meta’s $2 billion takeover of AI startup Manus(CNBC)
- Manus (AI agent)(Wikipedia)

