- Microsoftの「Intelligent Terminal」は、コマンド画面にAIが常駐する無料アプリ
- 2026年8月10日公開のバージョン0.2で、ネット接続ゼロのローカル動作に対応
- GitHub Copilot・Claude・Codex・Gemini・OpenCodeを自由に差し替えできる
- 日本語で「tmpファイルはいくつある?」と聞けばコマンドを書いてくれる
- 競合のWarpは月20ドルから。Intelligent Terminalは完全無料が最大の武器
黒い画面にコマンドを打ち込んで、真っ赤なエラーが出た経験はありませんか。エラー文をコピーしてブラウザで検索し、また画面に戻る。その往復が丸ごと消えるターミナルが、Microsoftから無料で公開されています。しかも最新版は、インターネットに一切つながずに動きます。
Intelligent Terminalとは?黒い画面にAIが住み着いた
Intelligent Terminal(インテリジェント ターミナル)は、Microsoftが公開したAI搭載のターミナルアプリです。
ターミナルとは、文字だけでパソコンを操作する黒い画面のこと。ファイルのコピーやプログラムの実行を、マウスではなく命令文(コマンド)で行います。
初公開は2026年6月2日、開発者向けイベント「Build 2026」でのことでした。
既存のWindows Terminalは触らない
おもしろいのは、Microsoftが既存アプリを置き換えなかった点です。
Intelligent Terminalは、標準の「Windows Terminal」をフォーク(元のコードを枝分かれさせて別物を作ること)した独立アプリとして配られます。インストールしても、いま使っているWindows Terminalはそのまま残ります。
AIを勝手に押しつけて反発を受けた過去の反省が、この設計に表れています。使いたい人だけがダウンロードする形です。
入手方法は3つ、料金はゼロ円
入手経路は3つ。Microsoft Store、GitHubのリリースページ、そしてコマンド一発のwinget install Microsoft.IntelligentTerminalです。
アプリ自体は完全無料で、ソースコードも公開されています。
対応シェル(命令を受け取る土台のプログラム)はWindows PowerShell 5.1、PowerShell、コマンドプロンプト、そしてWSL上のbash。Windows 10でも動きます。
0.2の目玉はローカルモデル対応|通信ゼロで動く
2026年8月10日に公開されたバージョン0.2で、いちばん大きく変わったのがここです。
AIを自分のパソコンの中だけで動かせるようになりました。
BYOMという仕組み
設定画面に「BYOM(Bring Your Own Model=自分のモデルを持ち込む)プロバイダー」という項目が追加されました。
ここにベースURLとモデルIDを入力するだけで設定は完了します。クリック数回の作業です。
つなげる先はOllama(オラマ/パソコン上でAIモデルを動かす無料ソフト)や、OpenAIのAPI形式に対応したサーバーなど。ASCII.jpの検証記事では、Ollamaでqwen3.5を動かす手順が紹介されています。
なぜオフラインが重要なのか
ここが企業にとっての本題です。
ある製造業の情報システム担当者を想像してみてください。社内サーバーの設定をAIに手伝ってほしい。でも、社内のディレクトリ構成やホスト名が外部に送られるのは、規程上どうしても認められない。
ローカルモデルなら、この壁が消えます。コードもコマンド履歴も、パソコンの外に一歩も出ません。
そもそもIntelligent Terminal本体はクラウドに何も送信しません。シェルの状況をパソコン内部でエージェント側に渡すだけで、送信の判断はエージェントに委ねられています。
AIエージェントは5種類から選べる
もうひとつの特徴が、AIの中身を自由に差し替えられることです。
初回起動時に、どのAIを使うか選ぶ画面が出ます。標準はGitHub Copilot CLIですが、Claude、Codex、Geminiも指定できます。0.2からはOpenCodeが正式に加わりました。
ACPという共通ルール
これを支えているのがACP(Agent Client Protocol)という規格です。AIエージェントとアプリのやりとりの作法を統一したもの、と考えてください。
この作法に沿ったAIなら、後から出てきた新顔でも差し込めます。特定の会社のAIに縛られない設計です。
タブごとに違うAIを走らせる
0.2で追加された/agentコマンドを使うと、タブごとに別々のAIを割り当てられます。会話履歴もタブごとに独立します。
調査はClaude、コード修正はCopilot、社外秘の作業はローカルモデル。そんな使い分けが1つのウィンドウで完結します。
ほかにもペインの位置を動かす/move、過去の会話を検索する/sessionsが追加されました。0.1からある/fixと/modelも健在です。
実際どう使う?3つの場面
場面1:コマンドが思い出せないとき
Qiitaに投稿された検証記事が、この使い方をよく表しています。
筆者が「tmpファイルはいくつある?」と日本語で入力したところ、AIがGet-ChildItemを使った長いPowerShellコマンドを組み立てて返してきました。
オプションの綴りを調べる時間が消えます。日本語がそのまま通るのは、国内ユーザーには地味に大きな利点です。
場面2:エラーが出たとき
設定を有効にしておくと、コマンドが失敗した瞬間にAIが気づきます。
終了ステータス(成功か失敗かを示す数値)を監視していて、失敗を検知すると原因の説明と修正候補を自動で出してくれます。
0.2ではこのAutofix機能が強化され、PowerShellのエラー、bashの不具合、そして「そんなコマンドは無い」と怒られるcommand-not-foundへの対応が改善されました。
場面3:時間のかかる作業を任せるとき
Alt+Shift+/を押すと、重い処理をバックグラウンドに回せます。AIが裏で作業している間、手前では別の作業を続けられます。
Ctrl+Shift+/でエージェント管理パネルが開き、走っているタスクの進み具合や過去のセッションを一覧で確認できます。
ちなみにエージェントペインの開閉はCtrl+Shift+.です。プロンプト履歴はタブごとに最大50件残り、トークン(AIが処理する文字のかたまり)の使用量も表示されます。
WarpやWaveと何が違う?
AIターミナルはIntelligent Terminalが初めてではありません。先行組と比べてみます。
Warp:高機能だが有料
Warp(ワープ)はRust製の高速ターミナルで、この分野の代表格です。
無料プランもありますが、本格的に使うとBuildが月20ドル(約3,000円)、Maxは月200ドル(約3万円)、法人向けBusinessは1人あたり月50ドル(約7,500円)かかります。
2026年7月1日からは、クラウドでAIを動かした分だけクレジットを消費する方式も始まりました。使うほど費用が読みにくくなる構造です。
Wave Terminal:無料だが重い
Wave Terminal(ウェーブ ターミナル)はオープンソースで基本無料。画面内に画像を表示できるなど独自の機能を持っています。
ただしElectron(Webの技術でアプリを作る仕組み)ベースのため、動作が重いと言われています。クラウド同期は有料です。
Intelligent Terminalの立ち位置
Intelligent Terminalの強みは3つに整理できます。
- アプリ代がゼロ。かかるのは接続するAI側の費用だけ
- AIを乗り換え自由。ACP対応なら何でも差せる
- Windowsの標準ターミナルとほぼ同じ操作感。乗り換えの学習コストが低い
逆に弱点もあります。バージョン番号が示すとおり、まだ実験段階です。Warpのようなブロック単位の履歴管理やチーム共有機能はありません。
日本のユーザーと企業にとっての意味
日本から使ううえで、押さえておきたい点が3つあります。
1|日本語がそのまま通る
前述のとおり、日本語の質問からコマンドが生成されます。英語のドキュメントに苦戦していた層にとって、入口のハードルが一段下がります。
2|実質の費用はAI側で決まる
アプリは無料でも、つなぐAIには料金がかかる場合があります。
標準のGitHub Copilotには無料プランがあり、月2,000回の補完と50回のチャットが使えます。お試しには十分な量です。
本格利用ならProが月10ドル(約1,500円)で、15ドル分のAIクレジット付き。法人向けBusinessは1席あたり月19ドルです。
注意したいのは、2026年6月1日からGitHub Copilotが従量課金に切り替わったこと。1クレジット=0.01ドルで、使った分だけ引かれます。CLIからのコマンドもクレジットを消費します。
ここで効いてくるのが0.2のローカルモデル対応です。Ollamaで自前のモデルを回せば、この従量課金と無縁でいられます。
3|情報漏えい規程との相性
国内企業では、生成AIの業務利用に社内ルールを設けているところが少なくありません。「社内コードを外部サービスに入力しない」の一文で、開発現場のAI活用が止まっている例もあります。
ローカルモデルで完結する構成なら、この条件をクリアできる可能性があります。情報システム部門が「使ってよい」と言いやすい選択肢が、無料で手に入ったわけです。
よくある質問(FAQ)
Q1. Windows Terminalは消えてしまいますか?
いいえ。Intelligent Terminalは別のアプリとして横に並んでインストールされます。標準のWindows Terminalは今までどおり使えます。
Q2. Windows 10でも使えますか?
使えます。0.1の途中のアップデートでWindows 10対応が追加されました。
Q3. お金は本当にかからないのですか?
アプリ本体は無料です。ただし接続するAIエージェント側に料金が発生する場合があります。GitHub Copilotの無料プランかローカルモデルを選べば、費用ゼロで始められます。
Q4. 会社のコードが外部に送信されませんか?
Intelligent Terminal本体はクラウドへ送信しません。シェルの情報を、パソコン内部でエージェントに渡すだけです。送信するかどうかは接続先のエージェント次第なので、心配ならローカルモデルを使ってください。
Q5. プログラミング初心者でも使えますか?
日本語で質問できるので、むしろ初心者ほど恩恵があります。ただし提案されたコマンドをそのまま実行する前に、内容を確認する習慣は必要です。
まとめ
- Intelligent Terminalは、Microsoftが2026年6月2日に公開した無料のAI搭載ターミナル
- Windows Terminalのフォークで、既存アプリと共存する
- 2026年8月10日の0.2でローカルモデルに対応し、通信ゼロの運用が可能に
- GitHub Copilot・Claude・Codex・Gemini・OpenCodeをACP経由で差し替えできる
- 日本語の質問からコマンドを生成し、エラーの原因と修正案も自動提示する
- Warpは月20ドルから。無料で始められる点が最大の差
まずはwinget install Microsoft.IntelligentTerminalを打って、GitHub Copilotの無料プランで感触を確かめるところから始めてみてください。
参考文献
- Intelligent Terminal 0.2 is here with local model support – Windows Command Line(Microsoft)
- Announcing Intelligent Terminal 0.1 – Windows Command Line(Microsoft)
- MicrosoftのAIターミナル「Intelligent Terminal 0.2」が公開(窓の杜)
- AIを組み込んだWindowsターミナル「Intelligent Terminal」をインストールして試してみる(ASCII.jp)
- Claude Codeも接続可能、Microsoft新「インテリジェントターミナル」の実力(マイナビニュース)
- GitHub Copilot · Plans & pricing(GitHub)

