- デジタル庁が国産AI3モデルを国産クラウド「さくらのクラウド」で稼働させると発表
- 対象はtsuzumi 2(NTT)、Takane 32B(富士通)、PLaMo 2.0 Prime(Preferred Networks)
- 8月までに環境を構築し、9〜11月に政府職員が実際に使い比べるテストを実施
- 政府クラウド(ガバメントクラウド)で国産クラウドを使う初めての事例
- 狙いは「AIに関する日本の自律性の確保」=海外への依存を減らすこと
あなたが使っているAIは、どこの国の技術で、どこのサーバーで動いているか知っていますか?
実は多くのAIは海外製で、海外のクラウドで動いています。もし使えなくなったら、日本の仕事は止まってしまうかもしれません。
そんな不安に、日本政府が動きました。2026年7月10日、デジタル庁が国産AIを国産クラウドで動かすと発表したのです。この記事では、何が起きたのか、私たちにどう関係するのかを、やさしく解説します。
デジタル庁が発表した「国産AI稼働」とは
2026年7月10日、デジタル庁が新しい取り組みを発表しました。
内容はシンプルです。3つの国産AIを、国産のクラウドサービス「さくらのクラウド」で動かすというものです。
クラウドとは、インターネットの向こう側にあるコンピューターのことです。AIはこうした強力なコンピューターの上で動いています。
スケジュールも決まっています。まず8月までに動かすための環境を整えます。そのあと9月から11月にかけて、政府の職員が実際に使ってテストします。
ちなみにこのテストは、対象となる政府職員が約18万人規模の大きなAI基盤の一部として行われます。
稼働する3つの国産AIモデル
今回選ばれたのは、日本を代表する企業がつくった3つのAIです。それぞれの特徴を見てみましょう。
tsuzumi 2(NTTが開発)
tsuzumi 2は、通信大手のNTTがゼロから作った純国産AIです。
大きな特徴は「軽いのに賢い」こと。約300億個の部品(パラメータ)でできていますが、高性能なGPU(AIを動かす専用の計算チップ)1枚で動きます。
日本語の理解力は同じサイズのAIの中でトップクラスと言われています。日本語の資料やビジネス文書を読むのが得意です。
Takane 32B(富士通が開発)
Takane 32Bは、富士通がつくったAIです。日本語の実力テスト「JGLUE」で世界1位を取ったこともあります。
富士通独自の圧縮技術も注目されています。AIのデータ量を約94%も減らしながら、賢さは89%も保てるという技術です。
これは、大きな荷物を小さなカバンに詰め込んでも中身がほぼ壊れない、そんなイメージです。少ない設備でも動かしやすくなります。
PLaMo 2.0 Prime(Preferred Networksが開発)
PLaMo 2.0 Primeは、AIベンチャーのPreferred Networksがつくったモデルです。
このAIのこだわりは、海外のAIを手直しするのではなく、まっさらな状態から日本の技術だけで作り上げた点にあります。まさに「純国産」のAIです。
なぜ「国産クラウド×国産AI」なのか
今回いちばん大事なのは、AIだけでなくクラウドも国産にそろえたことです。
これまで政府が使うクラウドは、アマゾンやグーグルなど海外の巨大企業が中心でした。
今回使う「さくらのクラウド」は、日本のさくらインターネットが運営しています。2026年3月に、国産クラウドとして初めて政府公式のクラウド(ガバメントクラウド)に認定されました。
認定には、暗号化やログ管理など約300項目もの厳しい条件をクリアする必要がありました。海外の巨大企業と同じ水準が求められたのです。
デジタル庁はこの取り組みの狙いを「AIに関する日本の自律性の確保」と説明しています。つまり、大事な政府の仕事を海外の都合に左右されないようにするということです。
政府AI基盤「源内」との関係
今回の実験は、デジタル庁が育てているAI基盤「源内(げんない)」の一部です。
源内は、府省庁の職員が使うためのAIです。すでに約10万人が利用でき、最終的には約18万人が対象になります。
職員は源内を使って、国会答弁の下調べや法令の検索、データの整理などをこなします。これまでは海外製AIが中心でした。
そこに国産AIを加えて使い比べるのが、今回のテストです。テスト方法もユニークで、職員には2つのAIの答えがランダムに表示され、どちらが良いかを選びます。名前を隠した「利き酒」のような比べ方です。
ここで国産AIが選ばれれば、2027年4月から本格的に有料で採用される道が開けます。
海外の巨大AIと国産AIはどう違う?
「ChatGPTやGeminiの方が賢いのでは?」と思う人もいるはずです。ここを整理してみましょう。
たしかに、海外の巨大AIは総合力では世界最高レベルです。一方で、国産AIには海外AIにない強みがあります。
1つ目はデータの安全性です。国産クラウドで動かせば、機密情報が海外に渡るリスクを抑えられます。
2つ目は日本語の得意さです。tsuzumi 2やTakaneは日本語の細かいニュアンスや役所の文書に強く作られています。
3つ目はコストの軽さです。GPU1枚で動くモデルもあり、少ない設備で運用できます。海外の巨大AIは動かすだけで莫大な費用がかかります。
つまり、賢さだけでなく「安全・日本語・低コスト」で勝負するのが国産AIの戦い方なのです。
日本の私たちへの影響
「国の話でしょ?」と感じるかもしれません。でも、この動きは私たちの暮らしにもつながります。
まず、役所の仕事が速くなる可能性があります。ある自治体の窓口担当者が、複雑な制度の質問に答える場面を思い浮かべてください。AIが法令をすぐ調べてくれれば、待ち時間が短くなります。
次に、日本企業のAIが育ちます。政府に採用されれば実績になり、国産AIの信頼が高まります。これは日本のIT業界全体の追い風です。
さらに、企業でも同じ選択が広がりそうです。地方の中小メーカーが、社外に出せない設計データをAIに読ませたい場合、国産クラウドで動く国産AIは有力な選択肢になります。
私たち一人ひとりにとっても、「日本語に強く、安心して使えるAI」が増えることは、うれしい変化と言えるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. tsuzumi 2やTakaneは、私たちも使えますか?
今回のテストは政府職員向けです。ただし、tsuzumi 2などは企業向けにも提供が始まっており、将来的に私たちが使うサービスに組み込まれる可能性があります。
Q2. なぜ国産にこだわるのですか?
海外のAIやクラウドに頼りきると、価格の値上げやサービス停止のときに困るからです。大事な政府の仕事を守るため、日本の技術を育てる狙いがあります。
Q3. 海外のAIはもう使わないのですか?
いいえ。源内は今も海外製AIを使っています。今回は国産を「加えて」使い比べる段階で、いきなり全部を置き換えるわけではありません。
Q4. 「さくらのクラウド」はそんなにすごいのですか?
約300項目の厳しい条件をクリアし、国産クラウドとして初めて政府公式に認定されました。海外の巨大企業と同じ土俵に立った、大きな実績です。
まとめ
今回のポイントを振り返ります。
- デジタル庁が国産AI3モデルを国産クラウド「さくらのクラウド」で稼働させると発表(2026年7月10日)
- 対象はtsuzumi 2、Takane 32B、PLaMo 2.0 Primeの3つ
- 8月までに環境構築、9〜11月に政府職員が使い比べてテスト
- 狙いは海外依存を減らし、日本のAI自律性を確保すること
- 安全・日本語・低コストが国産AIの強み
まずはこの機会に、あなたが普段使うAIが「どこ製か」を一度気にしてみると、ニュースの見え方が変わるはずです。


