中国、AIの恋人を規制|3.4億人に7月15日の衝撃

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • 中国が「人格模倣AI」を対象にした新ルールを2026年7月15日に施行します
  • DoubaoやQwenの「AIコンパニオン(話し相手AI)」機能が停止されます
  • 影響を受けるユーザーは3.4億人規模と言われています
  • 2時間ごとの休憩通知や「これはAIです」表示など、依存対策が義務化されます
  • 仕事を助ける業務AIは規制の対象外で、狙いは「感情でつながるAI」です

もし毎日話していたAIの友だちが、ある日突然「使えなくなります」と言われたらどう思いますか。いま中国で、まさにそれが起きようとしています。2026年7月15日、人間そっくりに振る舞うAIへの新しい規制が始まります。この記事を読むと、何が禁止され、なぜ中国が動いたのか、そして日本にどう関係するのかがわかります。

中国で何が起きたのか

中国政府が、AIコンパニオン(話し相手や恋人役をするAI)に対する新しいルールを作りました。

正式名称は「人格模倣型AIインタラクティブサービス管理暫定弁法」です。むずかしい名前ですが、意味はシンプルです。

「人間のフリをして、ずっと感情のやり取りをするAI」を規制する、というものです。

このルールは2026年4月に発表され、7月15日から実際に効力を持ちます。

作ったのは中国のインターネット規制当局(サイバースペース管理局)です。さらに、経済や産業、公安など4つの役所が一緒に名前を連ねました。

つまり、国をあげての大きな動きなのです。

DoubaoとQwenの機能が止まる

この規制を受けて、中国の大手2社がすぐに反応しました。

1つは、TikTokを運営するバイトダンス(ByteDance)の「Doubao(豆包)」です。

もう1つは、通販大手アリババ(Alibaba)の「Qwen(通義千問)」です。

どちらも中国で大人気のAIサービスです。

この2社は、7月15日にAIエージェント(自分好みのキャラクターを作れる機能)を停止すると発表しました。

停止後はどうなるのか

7月15日を過ぎると、新しいキャラクターは作れなくなります。

すでに作ったキャラクターも動かなくなります。

ただ、しばらくの間は「読むだけ」ならできます。過去の会話やキャラクターの設定を見ることは可能です。

Doubaoの場合、そのデータを保存できる期限は2026年10月15日までです。

この日を過ぎると、データは取り出せなくなり、二度と戻せません。

Qwenにいたっては、データを移す手段すら用意されていないと報じられています。

毎日話していた「AIの友だち」との思い出が、期限つきで消えてしまうのです。

3.4億人という規模の大きさ

この規制の影響を受ける人は、なんと3.4億人規模と言われています。

日本の人口の約2.7倍です。想像してみてください。それだけの人が使うサービスが、一斉に機能を止めるのです。

なぜ、これほど多くの人がAIコンパニオンを使うのでしょうか。

理由の1つは「孤独」です。仕事や勉強で疲れたとき、いつでも優しく話を聞いてくれる相手がいる。それがAIコンパニオンの魅力でした。

ある調査では、AIコンパニオンと過ごす平均時間は、ChatGPTを使う時間の約4倍にのぼるそうです。

それだけ深く生活に入り込んでいた、ということです。

新ルールが求める「依存対策」

では、どんなルールが課されるのでしょうか。中身を見てみましょう。

新しいルールは、AIコンパニオンに次のような機能を義務づけます。

  • 2時間ルール:2時間続けて使うと「そろそろ休みましょう」と通知を出す
  • すぐ抜けられる仕組み:ユーザーが「やめたい」と言ったら、すぐにやり取りを終える
  • 依存の検知:使いすぎのサインを見つけたら警告する
  • 「これはAIです」表示:相手が人間ではなく人工知能だと画面で知らせる

さらに、未成年者への対策はもっと厳しくなっています。

14歳未満の子どもが使うには、保護者の同意が必要です。

子ども向けに「恋人役」や「家族役」のAIを提供することは禁止されました。

また、自傷やお金の大きな損失などの危険なサインを見つけたら、AI側が止めに入る仕組みも求められます。

なぜ「記憶するAI」が問題なのか

ここで疑問がわきます。なぜ、企業は機能を改良せず、まるごと止めてしまったのでしょうか。

カギは「記憶」にあります。

AIコンパニオンの魅力は、あなたのことを覚えていてくれることです。昨日の話の続きができて、関係が育っていく感覚があります。

ところが、この「ずっと覚えている」という仕組みこそが、依存を生みやすいと見なされました。

「休憩をうながす」ルールと、「ずっと寄りそう」設計は、根っこでぶつかってしまうのです。

だから2社は、改良するより停止を選びました。

狙われたのは「感情でつながるAI」だけ

大事なポイントがあります。すべてのAIが止まるわけではありません。

今回のルールが対象にするのは、「ずっと感情のやり取りをするAI」だけです。

たとえば、次のようなAIは規制の対象外です。

  • お店の問い合わせに答えるカスタマーサポートAI
  • 調べ物に答えるQ&AのAI
  • 仕事を手伝う業務用アシスタント
  • 勉強を教える教育向けAI

中国が引いた線は、はっきりしています。

「あなたの仕事を助けるAI」は歓迎。でも「あなたの寂しさを埋めるAI」には待った、というわけです。

ちなみにバイトダンスは、Doubaoの利用者に別のアプリ「Maoxiang(猫箱)」への移動をすすめています。規制に合わせて作り直した、専用アプリだと見られています。

世界と日本の状況はどうか

実は、AIコンパニオンをめぐる悩みは中国だけのものではありません。

海外では「Replika(レプリカ)」や「Character.AI(キャラクターAI)」といったサービスが有名です。友だち、恋人、相談相手など、いろんな役を演じてくれます。

しかし、これらは「無法地帯」とも言われてきました。ルールが追いついていないのです。

アメリカでは、AIとのやり取りが原因とされる訴訟も起きています。未成年者を守るため、カリフォルニア州などで法案が提出されました。

日本ではどう関係するのか

日本でも、AIと話すサービスは静かに広がっています。

キャラクターと会話できるアプリや、恋愛シミュレーション風のAIも人気です。若い世代を中心に、日常的に使う人が増えています。

いまのところ、日本には中国のような専用の規制はありません。

でも、中国の動きは「先行事例」として注目されます。世界で最も大胆に踏み込んだルールだからです。

「AIとの心の距離をどう守るか」は、日本の私たちにとっても他人事ではありません。

楽しく使うのはいいことです。ただ、現実の人間関係とのバランスを、自分で意識しておく必要がありそうです。

DoubaoとQwen、そして海外サービスの違い

ここで、主なサービスの違いを整理してみましょう。

  • Doubao(中国):バイトダンス製。7月15日にキャラクター機能を停止。データ保存は10月15日まで
  • Qwen(中国):アリババ製。同じく7月15日に停止。データの移行手段はなし
  • Maoxiang(中国):バイトダンスの新しい受け皿アプリ。規制に合わせて設計
  • Replika(海外):恋人・友人役の定番アプリ。月額課金モデル。規制は各国でこれから
  • Character.AI(海外):多彩なキャラクターと会話できる。利用時間が長く、依存が指摘される

こうして並べると、中国だけが「国として強く踏み込んだ」ことがよくわかります。

よくある質問(FAQ)

Q1. AIコンパニオンとは何ですか?

友だちや恋人のように、感情のやり取りをしてくれるAIのことです。あなたを覚えていて、会話を続けてくれるのが特徴です。ChatGPTのような調べ物中心のAIとは、少し役割がちがいます。

Q2. なぜ中国は規制したのですか?

主な理由は「依存」と「未成年者の保護」です。長時間の利用や、心への影響が心配されました。とくに子どもが恋人役のAIにのめり込むことを、強く問題視しています。

Q3. ChatGPTや業務用AIも止まるのですか?

いいえ、止まりません。今回のルールは「感情のやり取りをするAI」だけが対象です。仕事を助けるAIや、質問に答えるAIは対象外です。

Q4. 日本のサービスにも影響はありますか?

今すぐ日本のサービスが止まることはありません。日本には同じ規制がないからです。ただ、中国の事例は世界の議論に影響します。日本でも将来、ルール作りの参考にされる可能性があります。

Q5. データが消えると聞きましたが本当ですか?

Doubaoの場合、2026年10月15日まではデータを保存できます。その後は取り出せなくなります。大切な会話がある人は、期限内の保存が必要です。Qwenは移行手段がないと報じられています。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • 中国が2026年7月15日、人格模倣AIへの新ルールを施行します
  • DoubaoとQwenのAIコンパニオン機能が停止されます
  • 影響は3.4億人規模と言われ、データ保存の期限は10月15日までです
  • 2時間ごとの休憩通知やAI表示など、依存対策が義務化されます
  • 対象は「感情でつながるAI」だけで、業務AIは規制されません

AIと心地よく付き合うために、まずは自分の利用時間を一度ふり返ってみましょう。

参考文献

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