Gemini 3.5 Pro延期|7月17日に何が変わる?

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

taolis.net X note Voicy YouTube
  • GoogleがGemini 3.5 Proの公開を6月から7月17日へ延期したこと
  • 既存の設計を捨て、ゼロから作り直す「全面刷新」を選んだ理由
  • 数学の計算力・画像品質・200万トークン対応など、強化される中身
  • 1週間で4人の研究者が流出し、株価が大きく揺れた背景
  • GPT-5.6やClaudeとの違い、日本のユーザーへの影響

「新しいAIが出るのを楽しみに待っていたのに、また延期された…」。そう感じた人はいませんか。Googleの主力AI「Gemini 3.5 Pro」が、当初の6月から7月17日へずれ込みました。しかも、ただ遅れただけではありません。中身をまるごと作り直すという大きな決断が背景にあります。この記事を読むと、延期の本当の理由と新しい中身がわかります。

Gemini 3.5 Proとは?まず全体像をつかもう

Gemini(ジェミニ)は、Googleが開発している対話型AIです。

文章を書いたり、質問に答えたり、プログラムを組んだりできます。ChatGPTのライバル、と考えるとイメージしやすいです。

その最新版が「Gemini 3.5 Pro」です。

Proは「一番かしこい上位モデル」という位置づけです。仕事や研究など、難しい作業を任せる想定で作られています。

GoogleのAI部門「DeepMind(ディープマインド)」が開発を担当しています。世界トップクラスの研究者が集まる、Googleの頭脳とも言える組織です。

なぜ延期された?「作り直し」という重い決断

今回の延期は、単なるスケジュールの遅れではありません。

Googleは、これまで使っていた「Gemini 2.5 Pro」の土台(アーキテクチャ)を丸ごと捨てて、ゼロから作り直すと決めました。

アーキテクチャとは、AIの設計図や骨組みのことです。家でいえば基礎や柱にあたります。

つまり、リフォームで済ませず、基礎から建て直すことにしたわけです。それだけ大きな決断でした。

きっかけは「これ以上よくならない」という壁

理由は、今の設計では性能が伸びきってしまったからです。

細かい調整(ファインチューニング)を重ねても、次の3つの弱点をどうしても直せませんでした。

  • 数学の推論力(複雑な計算や論理の組み立て)
  • SVG画像の生成(図やイラストをきれいに描く力)
  • 画像全体の品質

これらは、ライバルのAIが得意としている分野です。

中途半端な状態で出すより、作り直してでも勝てるモデルにする。Googleはそう判断しました。

利用者の声も反映

Googleは、早期テスターからの意見も取り入れています。

特に、下位モデルの「Flash 3.5」でトークンを使いすぎる問題が指摘されていました。トークンとは、AIが文章を処理するときの単位です。使いすぎると料金や処理時間が増えてしまいます。

こうした課題も、作り直しの中で解決を目指しています。

Sundar Pichai CEOの「あと1か月」から始まった延期

時計の針を少し戻します。

2026年5月19日、開発者向けイベント「Google I/O」でのことです。CEOのSundar Pichai(スンダー・ピチャイ)氏は、来場者にこう語りました。

「あと1か月、待ってほしい」。

本来なら6月中に登場するはずでした。しかし、その約束は果たされませんでした。

そして今回、新たな期日として7月17日が示されたのです。「あと1か月」が、結果として2か月近くに延びた形になります。

新しいGemini 3.5 Proで何が変わる?

作り直しによって、いくつかの強力な機能が加わる予定です。順番に見ていきます。

200万トークンの巨大な記憶容量

目玉は200万トークンのコンテキストウィンドウです。

コンテキストウィンドウとは、AIが一度に読み込んで覚えていられる情報量のことです。数字が大きいほど、長い資料をまとめて扱えます。

200万トークンは、分厚い専門書を何冊も一気に読ませられるほどの量です。長い契約書や大量のプログラムも、途中で忘れずに処理できます。

じっくり考える「Deep Think」

2つ目は「Deep Think Reasoning Layer」です。日本語にすると「深く考える推論の層」となります。

これは、難しい問題を何段階にも分けて解く仕組みです。すぐに答えを出さず、いったん立ち止まって筋道を組み立てます。数学や論理の問題で力を発揮します。

自分で作業を進める「自律ワークフロー」

3つ目は自律的なワークフロー機能です。

人がいちいち指示しなくても、AIが自分でコードを書き、必要な道具を選んで作業を進めます。いわゆる「AIエージェント」の方向性です。将来、面倒な作業を丸ごと任せられる可能性があります。

株価が揺れた背景|研究者の流出

この延期の裏には、もう一つ深刻な出来事がありました。人材の流出です。

報道によると、DeepMindからわずか1週間で4人の主要研究者が去りました。行き先はライバル企業でした。

  • Gemini共同リードのNoam Shazeer氏 → OpenAIへ
  • ノーベル賞受賞者のJohn Jumper氏 → Anthropic(アンソロピック)へ
  • Jonas Adler氏、Alexander Pritzel氏 → いずれもAnthropicへ

市場はこれに強く反応しました。

6月22日、Alphabet(グーグルの親会社)の株価は一時7.2%も下落しました。時価総額にして、およそ2,250億ドル(約33兆円)が吹き飛んだと報じられています。

優秀な人がライバルへ移り、看板モデルは延期。投資家が不安を感じたのも無理はありません。

GPT-5.6やClaudeと何が違う?主要モデル比較

Gemini 3.5 Proは、どんなライバルと戦うのでしょうか。

2026年7月は、各社が主力モデルを次々に投入する激戦の時期です。OpenAIの「GPT-5.6」やAnthropicの「Fable 5」、さらに中国系の「DeepSeek」も控えています。

料金と記憶容量を比べると、次のようになります(1Mトークンあたりの入力/出力価格)。

  • Gemini 3.5 Pro:200万トークン、約15ドル/60ドル(予定)
  • Claude Opus 4.8:100万トークン、5ドル/25ドル
  • GPT-5.5:100万トークン、5ドル/30ドル
  • Gemini 3.5 Flash:100万トークン、1.5ドル/9ドル

注目は記憶容量の大きさです。200万トークンは、他の主要モデルの2倍にあたります。

一方で、料金は上位モデルの中では高めです。「大量の情報をまとめて扱いたい人」向けの、パワー重視の選択肢と言えそうです。

なお、AI市場ではChatGPTがアシスタント利用で46%と首位、Geminiは28%とされています(Sensor Tower調べ)。Googleは今回の刷新で、この差を縮めたい考えです。

日本のユーザーや企業への影響は?

では、日本にいる私たちにはどう関係するのでしょうか。

まず、GeminiはGoogleアカウントがあれば日本語でそのまま使えます。今回の刷新は、日本語での文章作成や資料の要約にも効いてくる見込みです。

200万トークンの容量は、日本企業にとって特に魅力的です。長い社内マニュアルや契約書を、分割せずに読み込ませられるからです。

具体的な場面を想像してみてください。

ある製造業の担当者が、数百ページの技術文書から必要な仕様を探すとします。従来は分割して何度も質問していました。新モデルなら、まとめて渡して一度に答えを得られます。

また、法務担当者が長い契約書を丸ごと確認させ、リスク箇所を洗い出す使い方も現実的になります。

ただし料金は高めです。日常のちょっとした質問なら、安価なFlashで十分な場面も多いでしょう。用途に合わせた使い分けが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q1. Gemini 3.5 Proはいつ使えるようになりますか?

現時点では2026年7月17日が目標とされています。ただし、これまでも延期があったため、さらにずれる可能性はゼロではありません。

Q2. 「作り直し」で、これまでのGeminiは使えなくなりますか?

いいえ。作り直すのは新しい「3.5 Pro」の土台です。現行のGeminiは引き続き利用できます。

Q3. 無料で使えますか?

Gemini自体は無料プランでも利用できます。ただしProのような上位モデルは、有料プランやAPI利用が中心になる見込みです。紹介した料金はAPIでの目安です。

Q4. なぜライバルより料金が高いのですか?

200万トークンという大きな記憶容量など、高い性能を備えているためと考えられます。大量の情報を一度に扱う用途では、その価値が生きてきます。

Q5. 日本語の精度は上がりますか?

数学推論や画像品質の強化が中心と発表されています。日本語専用の改善は明言されていませんが、全体の性能向上により、日本語処理も底上げされると期待されています。

まとめ|延期は「弱さ」ではなく「本気」の表れ

今回のポイントを整理します。

  • Gemini 3.5 Proは6月から7月17日へ延期された
  • 理由は、既存の設計を捨ててゼロから作り直すため
  • 数学推論・画像品質・200万トークン対応などが強化される
  • 背景には研究者の流出と、約33兆円の時価総額下落があった
  • GPT-5.6やClaudeとの競争が激しく、日本でも用途次第で有力な選択肢になる

延期は一見ネガティブに見えます。しかし、中途半端な製品を出さない姿勢とも受け取れます。

まずは7月17日の正式発表で、Googleが本当に弱点を克服できたのかを確かめてみてはいかがでしょうか。

参考文献

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です