AIエージェントは電力を最大136倍消費?研究の真相

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • AIエージェントは通常の生成AIより最大136.5倍の電力を消費すると研究で判明
  • 研究したのは韓国のKAIST(韓国科学技術院)。世界初のサービス環境での分析
  • 1回の依頼で平均348.41Wh(電子レンジを約35分回す電力)を使う
  • 原因は「何度もLLMを呼び出す」「GPUが待つだけの時間が半分以上」の2つ
  • 「136倍」は最大値。実際は使い方で大きく変わるという冷静な指摘もある

ChatGPTに質問するのと、AIに「旅行の計画を全部立てて」と丸投げするのでは、使う電気の量がまったく違うと知っていましたか?後者は前者の最大136.5倍もの電力を食べていました。2026年7月6日に報じられた研究が、その驚きの数字を明らかにしました。この記事では、なぜそんなに差がつくのか、そして日本のわたしたちにどう関係するのかを、やさしく整理します。

AIエージェントは通常のAIより最大136倍の電力を消費

まず研究の中身を見ていきます。

調べたのは、韓国のKAIST(韓国科学技術院。韓国のトップ理工系大学)のユ・ミンス教授らのチームです。

研究の成果は、コンピューター設計の国際学会IEEE HPCA 2026で発表されました。実際のサービス環境で電力を体系的に測ったのは、世界で初めてだといいます。

結果はこうです。700億パラメータ(AIの賢さを決める部品の数)のLLMを使ったAIエージェントは、1回の依頼で平均348.41Wh(ワットアワー)の電力を消費していました。

これは電子レンジを約35分間まわし続ける電力に近い量です。たった1回の依頼で、です。

そして、単純な質問に答えるだけの通常の生成AIと比べると、その差は最大136.5倍にもなりました。

なぜAIエージェントはそんなに電力を食うのか

ここで気になるのが「同じAIなのに、どうしてそんなに差が出るの?」という疑問ですよね。理由は大きく2つあります。

理由1:何度もLLMを呼び出すから

AIエージェントとは、目標を渡すと自分で段取りを考えて動くAIのことです。

たとえば「予算内で旅行を計画して」と頼むと、エージェントはネットを検索し、料金を計算し、予約サイトを操作します。これを全部ひとりでやります。

この間、エージェントは「考える→道具を使う→結果を見る→また考える」というループ(同じ流れの繰り返し)を回します。

研究によると、エージェントは通常のAIより平均9.2倍も多くLLMを呼び出していました。呼び出すたびに電気を使うので、消費量がふくらむわけです。

理由2:GPUが「待つだけ」の時間が半分以上

もうひとつの理由が、意外と見落とされがちな「待ち時間」です。

エージェントはネットの検索結果やアプリの返事を待つ間、AIの計算をになう高価な部品GPU(画像処理も得意な計算チップ)を止められません。

研究では、GPUが仕事をせず待っているだけの時間が、なんと実行時間全体の54.5%を占めていました。

つまり半分以上は「待機しながら電気を垂れ流している」状態です。応答が終わるまでの時間も、通常のAIの最大153.7倍に達したといいます。

「136倍」の数字はどこまで信じていい?

ここで少し冷静になりましょう。実はこの「136倍」という数字には注意も必要です。

これはあくまで最大値であって、いつも136倍になるわけではありません。米経済誌フォーブスは、使うエージェントの仕組みしだいで数字が大きく変わると指摘しています。

実際、別の仕組み(LATSと呼ばれる方式)では、同じモデルでも消費は62倍にとどまったそうです。

また、研究が示した「1日137億件の依頼なら約198.9GWの電力が必要」という試算も、予測ではありません。「もしそうなったら」という仮定の思考実験です。ちなみに198.9GWは、アメリカ全体の平均消費電力の約半分にあたる巨大な数字です。

本当の問題は数字の大きさそのものより、GPUが待つだけで電気を使ってしまう構造にあります。ここを改善できるかが、これからの課題だと言われています。

通常のチャットとの違いを数字で比較

では、ふだん使うAIチャットとどれくらい違うのか、数字で並べてみます。

  • ChatGPTへの1問:平均約0.34Wh(2025年にサム・アルトマンCEOが公表。Google検索1回と同じくらい)
  • AIエージェントへの1依頼:平均348.41Wh(この研究の測定値)
  • 呼び出す回数:エージェントは通常のAIの約9.2倍
  • 返事にかかる時間:エージェントは通常のAIの最大153.7倍

ざっくり言えば、チャットが「電卓」なら、エージェントは「工場を動かす」くらいのイメージです。

気軽に「あとはよろしく」と丸投げするほど、裏では大量の電気が動いている、というわけです。

日本のわたしたちにどう関係する?

「海外の研究でしょ?」と思うかもしれませんが、これは日本にも直結する話です。

AIを動かすデータセンター(大量のサーバーを集めた施設)は、大量の電気を必要とします。国内の試算では、日本のデータセンターの電力消費は2034年に約3倍になると見られています。

すでに対応も始まっています。柏崎刈羽原発の再稼働の動きや、ソフトバンクによる2兆円規模のAI投資などが、その一例です。

もし今後、企業のAIエージェント利用が一気に広がれば、電力需要はさらに跳ね上がります。それは電気代や電力の安定供給という形で、わたしたちの生活にも返ってきます。

身近な場面でも同じです。たとえば、ある中小企業が経理の担当者の作業をAIエージェントに任せたとします。数百件の請求書を自動でさばく便利さの裏で、実は無視できない電気代がかかっている、ということです。

よくある質問(FAQ)

Q. AIエージェントと普通のChatGPTは何が違うの?

A. ChatGPTは質問に答えたら止まります。エージェントは目標を渡すと、検索・計算・操作まで自分で最後までやり遂げます。その分だけ電力も時間も多く使います。

Q. 348.41Whってどれくらいの電力ですか?

A. 電子レンジ(600W)を約35分まわす電力に近い量です。1回の依頼でこれを使う計算になります。

Q. じゃあエージェントは使わないほうがいい?

A. そうとは限りません。人の何時間分もの作業を肩代わりしてくれる価値もあります。大事なのは「必要な場面で使う」ことと、提供する側が電力コストを見える化することです。

Q. この電力問題はこれから改善しますか?

A. 研究チームは、AIとインフラをまとめて最適化すれば改善できると考えています。特にGPUの待ち時間を減らす工夫が鍵になりそうです。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • AIエージェントは通常の生成AIより最大136.5倍の電力を消費(KAISTの研究)
  • 1回の依頼で平均348.41Wh。電子レンジ約35分ぶんに相当
  • 原因は「何度もLLMを呼ぶこと」と「GPUが半分以上の時間を待機に使うこと」
  • ただし136倍は最大値。使い方で大きく変わる点には注意
  • 日本でもデータセンターの電力需要は増加中。電気代や供給に影響しうる

AIエージェントを使うときは、便利さだけでなく「その裏でどれだけの電力が動くか」も少し意識してみてください。

参考文献

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