ChatGPTの3割は小説作り?57万件の衝撃分析

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • ChatGPTの実際の会話57万件を分析した研究が2026年6月22日に公開されました
  • 会話の約34%(およそ19万5000件)が「小説やお話づくり」に使われていました
  • フィクション生成の80%以上を、全体のわずか2%のヘビーユーザーが占めていました
  • あるユーザーはゲームキャラの「出産シーン」を数千回も生成させていました
  • 研究者は「創作が他人と共有されず、個人の中で閉じてしまう」ことに懸念を示しています

あなたは、ChatGPTを何に使っていますか?調べもの、仕事の文章、プログラミング。多くの人はそう答えます。ところが、実際の会話57万件を分析した研究が、まったく別の顔を明らかにしました。じつは利用者の3割近くが「小説やお話づくり」にAIを使っていたのです。しかも、その裏には驚きの実態が隠れていました。

そもそも何を調べた研究なの?

この研究は「AI Fiction in the Wild(野生のAIフィクション)」という論文です。

2026年6月22日に公開されました。書いたのは、アメリカのワシントン大学とコロラド大学ボルダー校の研究者チームです。

分析したのは、約57万3000件のChatGPT英語会話です。「WildChat(ワイルドチャット)」という公開データを使いました。

WildChatは、AI研究機関のAllen Institute for AIが集めたデータです。2023年4月から2024年5月にかけて、ユーザーとChatGPTが実際にやりとりした記録を、匿名の形で保存しています。

つまり、AIを提供する企業の宣伝ではなく、生の会話ログを外部の研究者が調べた、めずらしい調査なのです。

3割が「お話づくり」だった驚きの内訳

いちばんの発見はここです。

全会話の約34%、およそ19万5000件が、フィクション(作り話)の生成に使われていました。オリジナル小説、二次創作、ロールプレイ(役になりきる会話)などです。

その中身をさらに見てみましょう。

  • 二次創作:既存のアニメやゲームのキャラを使ったお話が多数
  • 性的な内容:約5万2000件(フィクション全体の約27%)
  • ロールプレイ:キャラになりきって会話を続けるもの

ちなみに、有害と判定された内容は6万7000件ありました。

「調べもの中心」というイメージとは、ずいぶん違いますよね。多くの人が、AIを「自分だけの物語製造機」として使っていたのです。

たった2%のユーザーが8割を生成していた

もう一つ、衝撃的な数字があります。

フィクション会話の80%以上を、上位2%のユーザーだけが生み出していました。ごく一部の人が、圧倒的な量を作っていたのです。

推定では、利用者は約1万人。そのうち上位200人ほどが、15万件以上のお話を生成していました。

この人たちの使い方には、はっきりした特徴があります。プロンプト(AIへの指示文)の69%が、ほぼ同じ内容の繰り返しだったのです。

研究者は、こうしたヘビーユーザーを2つのタイプに分けました。

  • ストーリー・サイクラー:一定期間、同じ物語を繰り返したあと、別の話題へ移る人
  • 無限ストーリー要求者:同じ物語を、とても長い期間ずっと求め続ける人

キャラが数千回「出産」する謎の実態

具体的な事例を見ると、その熱量に驚かされます。

もっとも目立ったのは、日本の恋愛ゲーム「ドキドキ文芸部!」のキャラ「ナツキ」です。あるユーザーは、このキャラが出産するシーンを、数千回も生成させていました。

ハッピーエンドなど、結末のバリエーションまで細かく指定していたそうです。研究では「無限ストーリー要求者」の代表例として紹介されています。

作品ごとの言及数ランキングも出ています。

  • ドキドキ文芸部!:2万2381件
  • フリーダムプラネット:5204件
  • League of Legends:4514件
  • NARUTO:4342件

日本発の作品が上位に多いのも、興味深いところです。

OpenAIの公式調査とどこが違う?

じつはOpenAI自身も、同じような利用実態調査を出しています。ハーバード大学と組んだ、7億人・約150万件の会話分析です。

そちらの結果は、少し印象が違います。

  • 約49%:質問・調べもの
  • 約40%:仕事(文章作成やコーディングなど)
  • 約11%:アイデア探しなど

公式調査では「まじめな作業ツール」という顔が強く出ています。なぜ今回の研究と印象が違うのでしょうか。

理由はデータの性質にあります。WildChatは、無料で使える代わりに会話が研究用に記録される仕組みでした。そのため、実験的で自由な使い方をする人が集まりやすかったと考えられます。

2つを合わせて見ると、AIの本当の姿が立体的に見えてきます。片方は「仕事の相棒」、もう片方は「創作の遊び場」。同じChatGPTでも、使う人によって顔がまったく違うのです。

日本のユーザーと創作文化への影響

この話は、日本の私たちにも他人事ではありません。

ランキング上位の「ドキドキ文芸部!」や「NARUTO」は、日本発のコンテンツです。海外ユーザーが日本の作品でAI創作を楽しんでいる証拠でもあります。

日本にも、pixivや小説投稿サイトなど、二次創作の大きな文化があります。AIによる創作が広がれば、こうした場にも影響が出るかもしれません。

研究者が最後に投げかけた問いは、とても大切です。

本来、物語は「作った人」と「読む人」のあいだのやりとりで成り立ってきました。ところがAI創作では、作った物語が誰とも共有されず、一人の中で閉じてしまうことがあります。

好きなお話を無限に作れるのは、夢のような話です。でも、その楽しさが「人とつながる喜び」を置き去りにしていないか。AIと創作の関係を考えるうえで、日本の私たちにとっても大事な視点になりそうです。

よくある質問(FAQ)

Q1. WildChatのデータは、私の会話も入っているのですか?

WildChatは、専用の無料ツールを通じてChatGPTを使った人の会話を集めたものです。通常のChatGPTアプリの会話がそのまま入っているわけではありません。データはすべて匿名化されています。

Q2. なぜ小説づくりの利用がこんなに多いのですか?

AIは、指示すればすぐに物語を作ってくれます。しかも何度でも作り直せます。自分の好みにぴったり合ったお話を、無料で無限に楽しめる。この手軽さが、熱心な利用者を生んでいると考えられます。

Q3. 性的な内容の生成は問題にならないのですか?

今回のデータは主に2023〜2024年のものです。現在のChatGPTは、有害な内容への制限が当時より強くなっています。ただし、AIによる過激な創作をどう扱うかは、今も議論が続くテーマです。

Q4. この研究は日本語の会話も対象にしていますか?

今回分析されたのは英語の会話57万件です。日本語の会話は対象外でした。ただし、日本発の作品が多く登場している点は、日本のコンテンツの人気を示しています。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • ChatGPTの実会話57万件を分析した研究が2026年6月22日に公開された
  • 会話の約34%が小説・二次創作・ロールプレイなどの「お話づくり」だった
  • フィクション生成の80%以上を、わずか2%のヘビーユーザーが占めていた
  • あるユーザーはゲームキャラの出産シーンを数千回も生成していた
  • 研究者は「創作が個人の中で閉じてしまう」ことに懸念を示している

AIは、単なる作業ツールではありません。人によっては「自分だけの物語をつくる相棒」になっています。あなたも一度、ChatGPTで短いお話を作らせてみると、この研究の面白さが実感できるはずです。

参考文献

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