アスクル社長も絶句|商談準備を2週間→3時間に

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • アスクルの吉岡晃社長が、商談準備の時間を「2週間→3時間」に短縮したと明かしました
  • あまりの速さに社長は「ウソだろ」と絶句したそうです
  • きっかけは2025年10月のランサムウェア攻撃と、その後のシステム全面再構築でした
  • 使ったのはAWSのAI開発ツール「Kiro(キロ)」と「AI-DLC」という新しい進め方です
  • 営業や調達の準備に時間を取られている人にとって、他人事ではないニュースです

「AIを使うと仕事が速くなる」とよく聞きます。でも、どれくらい速くなるのか、ピンとこない人も多いはずです。今回、大手通販のアスクルが出した数字は衝撃的でした。なんと商談の準備が「2週間から3時間」に縮んだのです。この記事では、何が起きたのか、なぜそんなに速くなったのかを、やさしく解説します。

社長が「ウソだろ」と絶句したAI活用

話題になっているのは、事務用品通販で有名なアスクルです。

同社の吉岡晃(よしおかあきら)社長が、AIを使った業務改善の成果を明かしました。

対象になったのは、仕入れ先(商品を卸してくれる会社)との商談の準備です。

これまで2週間ほどかかっていた準備が、AIを使うとおよそ3時間で終わったといいます。

吉岡社長は「指示を出して10日くらいかかると思っていた」と話します。

それが「夕方には出てきてびっくりした」「『ウソだろ』と思った」と、驚きを隠しませんでした。

トップが公の場で「ウソだろ」と言うほどですから、現場の衝撃はもっと大きかったはずです。

きっかけは、まさかのサイバー攻撃だった

実は、この改革のきっかけは前向きなものではありませんでした。

2025年10月、アスクルはランサムウェア(データを人質に身代金を要求するウイルス)による攻撃を受けます。

この影響で「ASKUL」「LOHACO」などの受注・出荷が一時ストップしました。

顧客情報など、あわせて数十万件規模の情報が流出した可能性も公表されています。

物流を止めるほどの大きな被害でした。

アスクルはこの一件で、ITシステムを一から作り直す決断をします。

そして再構築の中心にAI活用を据えました。ピンチをチャンスに変えようとしたのです。

商談準備の刷新も、この大きな立て直しの一部でした。

使ったのはAWSの「Kiro」とAI-DLC

アスクルが使ったのは、アマゾンのクラウド部門AWSが提供するツールです。

「Kiro(キロ)」ってなに?

Kiroは、人間の指示を「仕様書」に変換して開発を進めるAIツールです。

ふつうのAIは「なんとなく」で作業を進めがちです。

Kiroは違います。まず「何を・どう作るか」をきちんと文書にまとめます。

人とAIが同じ設計図を見ながら合意して進むので、手戻りが減るのが特徴です。

この「AIを開発の中心に置く進め方」を、AWSはAI-DLC(AI駆動ライフサイクル)と呼んでいます。

商談準備の「4つの壁」が消えた

従来の商談準備は、大きく4つのステップに分かれていました。

  • 市場全体の需要を分析する
  • 世界情勢の見通しを立てる
  • 商品や顧客ごとに需要を予測する
  • 提案資料を作り込む

問題は、ステップのすきまにありました。

担当者が交代したり、上司のレビュー待ちが発生したり、やり直しが起きたりします。

この「待ち時間」の積み重ねが、2週間という長さの正体でした。

AIがこの4ステップを一気通貫でこなすことで、すきまが消え、3時間に縮んだのです。

吉岡社長は成功の理由として、次の3つを挙げています。

  • ビジネス部門とエンジニアが一体になって働くこと
  • 現場に権限と責任を思い切って渡すこと
  • AIを使える環境にしっかり投資すること

他の商談準備AIと何が違う?

実は今、「商談準備を助けるAI」はたくさん登場しています。

たとえば「Sales Marker」や「Uravation」などは、会社名を入れるだけで企業分析を自動で作ってくれます。

これらは主に営業マン一人ひとりの下調べを助けるツールです。相手企業の情報集めや提案書のたたき台づくりが得意です。

一方、アスクルの取り組みは規模が違います。

需要予測から資料作成まで、調達業務そのものの流れ全体をAIで作り替えました。

つまり「便利なツールを1つ導入した」話ではありません。

「業務プロセスをAI前提で組み直した」という、より根っこの深い改革なのです。ここが最大の違いです。

たとえるなら、便利な電動ドリルを1本買うか、工場のラインごと自動化するか、くらいの差があります。

どちらが良い・悪いではありません。目的によって選ぶものが変わる、ということです。

まずは市販の商談準備AIから試し、効果を見てから大きな改革に進む。そんな順番でも十分です。

日本のビジネスパーソンにどう関係する?

「大企業の話でしょ」と思ったかもしれません。でも、身近な話です。

ある中小企業の営業担当者を思い浮かべてみてください。

取引先との商談前に、相手の業績を調べ、資料を作り、上司の確認を待ちます。

この一連の作業に、毎回まる一日かかっている人は少なくないはずです。

アスクルの事例は、この作業が数時間で終わる未来が現実になったことを示しています。

しかも今回使われたKiroやAI-DLCは、日本のAWSでも利用できる仕組みです。

実際、AWSのワークショップでは、参加者の9割が「開発工数を7割以上削減できた」と回答した例もあります。

「うちには関係ない」ではなく、「うちならどこに使えるか」を考える時期に来ています。

もう一つ、見逃せない点があります。それは働く人の負担が減ることです。

資料づくりの残業に追われていた人が、本来の「お客さまと話す仕事」に時間を使えます。

AIは仕事を奪う存在として語られがちです。しかし今回のような使い方は、むしろ人の時間を取り戻す方向に働きます。

導入のときに気をつけたいこと

もちろん、AIを入れればすぐ速くなるわけではありません。

吉岡社長も「現場に権限を渡すこと」を成功の条件に挙げていました。

逆に言えば、上司の承認だらけの仕組みのままでは、AIの速さが活きません。

AIの出した内容が正しいかを確かめる「人の目」も欠かせません。

ツール選びと同じくらい、働き方や決め方の見直しが大事だということです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 本当に2週間が3時間になったのですか?

アスクルの吉岡社長が公の場で語った数字です。従来の商談準備が約2週間、AI活用後は約3時間だったと説明しています。

Q2. 「Kiro」は個人でも使えますか?

KiroはAWSが提供するAI開発ツールで、企業や開発者が利用できます。個人開発者が試している事例もありますが、本格的な業務利用には環境の準備が必要です。

Q3. なぜサイバー攻撃がAI活用につながったのですか?

攻撃でシステムを作り直す必要が生じ、その再構築の中心にAIを据えたためです。ゼロから作るからこそ、思い切ったAI活用ができました。

Q4. 商談準備AIは他にもありますか?

はい。Sales MarkerやUravationなど、企業分析や提案書づくりを助けるサービスが複数あります。目的や規模に合わせて選ぶとよいでしょう。

Q5. 中小企業でも同じことができますか?

規模は違っても考え方は応用できます。まずは時間のかかる定型作業を1つ選び、そこにAIを試すのがおすすめです。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • アスクルは商談準備の時間を「2週間→3時間」に短縮した
  • 社長が「ウソだろ」と驚くほどの効果だった
  • きっかけは2025年10月のサイバー攻撃とシステム再構築
  • AWSの「Kiro」とAI-DLCという新しい開発手法を活用した
  • ツール導入だけでなく、権限移譲など働き方の見直しがカギ

まずは自分の仕事で「一番時間がかかっている準備作業」を1つ書き出し、そこにAIを試してみましょう。

参考文献

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