- 2026年8月の最初の1週間で、主要ベンダーから新モデルが立て続けに5本以上公開された
- メタの「Muse Spark 1.2」は100万トークン文脈で、標準料金は入力100万トークンあたり約190円
- アリババの「Qwen Image 3.0 Pro」は10ピクセルの小さな文字まで描き分ける画像AI
- バイトダンスの「Seedance 2.5」は30秒の音声付き動画を一度に生成できる
- コード・画像・動画のどれを作りたいかで、選ぶべきモデルがはっきり分かれる
新しいAIが多すぎて、どれを使えばいいのか分からない。そう感じたことはありませんか。2026年8月は、たった1週間で5本以上の新モデルが公開されました。この記事では、その中身と料金、そして「自分の仕事にはどれが合うのか」を整理します。
8月の1週間で何が起きたのか
2026年8月1日から8日までの動きを並べると、その密度がよく分かります。
- 8月2日:アリババが「Qwen3.8-Max」を公開。総パラメータ2.4兆・活性95億のMoE構成で、文脈は100万トークン
- 8月4日:Black Forest Labsが動画モデル「FLUX 3 Video」を正式提供開始
- 8月5日:メタが「Muse Spark 1.2」と端末用エージェント「Muse Code」(ベータ)を同時公開
- 8月5日:アリババが画像モデル「Qwen Image 3.0」「同 Pro」を公開
- 8月6日:OpenAIがChatGPTの「GPT-5.6 Sol」を更新
- 8月8日:バイトダンスが動画モデル「Seedance 2.5」の開発者向けAPIを開放
MoE(必要な部分だけを動かす省エネ設計)や100万トークン文脈(本を10冊まとめて読ませられる記憶容量)といった言葉が並びます。
ポイントは、得意分野がきれいに分かれていることです。コードはメタ、画像はアリババ、動画はバイトダンスとBlack Forest Labs。1社が全部を取る形にはなっていません。
Muse Spark 1.2:コーディングAIの価格を塗り替える
100万トークンの文脈をまるごと読む
メタが8月5日に出した「Muse Spark 1.2」は、プログラミング向けのモデルです。
文脈の長さは100万トークン。リポジトリ(プログラムの保管庫)ごと丸ごと読ませて、全体を把握したうえで直させる使い方を想定しています。
テキストだけでなく、画像・ファイル・音声・動画も入力できます。ツール呼び出しにも対応しました。
性能面では、メタの自社報告としてSWE-Bench Proで61.5、DeepSWE 1.1で53.3という数字が出ています。Terminal-Bench 2.1では80%台とされていますが、これは公式の検証済みリーダーボードに載った値ではありません。
料金が二段構えになっている
面白いのは価格設計です。Muse Spark 1.2には2つの料金帯があります。
- 標準ティア:入力100万トークンあたり1.25ドル(約190円)、出力4.25ドル(約640円)
- コントリビュータティア:入力0.10ドル(約15円)、出力0.20ドル(約30円)
10分の1以下という差には理由があります。安いほうは、やり取りの内容がメタの製品改善に使われる可能性があるのです。
個人開発者が趣味のアプリを作るなら安いほうで十分でしょう。一方、社外に出せない業務コードを扱うなら標準ティア一択です。データを渡す代わりに料金を下げるという取引が、はっきり値段として示された形になります。
同時に出た「Muse Code」は、このモデルにリポジトリへのアクセス権や計画立案、並列サブエージェント、クラッシュ復旧を持たせた端末用の相棒です。
Qwen Image 3.0 Pro:10pxの文字まで潰れない
画像生成AIを触ったことがある人なら、「文字がぐにゃぐにゃになる」問題に心当たりがあるはずです。
アリババが8月5日に公開したQwen Image 3.0 Proは、そこを正面から狙いました。10ピクセルほどの小さな文字や細部まで、崩さずに描き分けると説明されています。
出力サイズは自由な縦横比で、面積の上限は約6.55メガピクセル(2560×2560相当)です。参照画像を渡して編集させることもできます。
料金は1枚あたり0.04ドル(約6円)から。1K解像度で約0.0357ドル(約5円)、2K解像度で約0.0714ドル(約11円)という水準です。
想定されている用途は、広告バナー、ブランドビジュアル、UIのモックアップ、プレゼン資料、商品画像。中国語と英語の文字描画の正確さが強みとして挙げられています。
ある小売企業の販促担当者を思い浮かべてください。セール告知のバナーを、価格と日付だけ変えて30パターン作りたい。これまではデザイナーに依頼して2日待つ作業でした。1枚6円なら、30枚で200円弱です。
Seedance 2.5:30秒の音声付き動画を一発で
バイトダンスは7月31日にSeedance 2.5を発表し、8月7日に開発者向けAPIを開放しました。
最大の変化は長さです。音声付きの動画を一度の生成で最大30秒まで作れるようになりました。短いカットをつなぐ手間が減ります。
参照素材の受け入れ枠も広がりました。画像は最大30点、動画は10点、音声は10点まで渡せます。前世代のSeedance 2.0が画像9点・動画3点・音声3点だったので、大幅な拡張です。
さらに、タイムスタンプ単位での編集にも対応しました。「12秒目からカメラを引く」といった指示が通ります。
ただし注意点があります。2026年8月10日時点で公式の価格表は公開されていません。CapCut側の展開地域として案内されているのは欧州・アジア・中東・南米で、米国での提供開始日はまだ発表されていません。
動画AIはどこが違う?FLUX 3 Videoとの比較
同じ週に出たFLUX 3 Videoと並べると、選び方が見えてきます。
FLUX 3 Videoは最大20秒、HDとフルHDに対応し、セリフ・効果音・環境音を含む音声を同時に生成します。テキストから、画像から、キーフレームから、既存動画の続きから、と入口も豊富です。
価格は秒単位で明示されています。テキストや画像から作る場合、Draft HDが1秒0.06ドル、標準HDが0.17ドル、標準フルHDが0.29ドル。20秒フルに使うと、Draft HDで1.20ドル(約180円)、標準フルHDで5.80ドル(約870円)です。音声は追加料金なしです。
整理すると、こうなります。
- 長さ重視・参照素材が多い→ Seedance 2.5(30秒、参照50点規模)
- 今すぐ使えて費用が読める→ FLUX 3 Video(秒単価が公開済み)
- コード作業→ Muse Spark 1.2 + Muse Code
- 文字入り画像→ Qwen Image 3.0 Pro
- 日常の調べ物や文章→ GPT-5.6 Sol
そのGPT-5.6 Solも8月6日に更新されました。回答の丁寧さを自分で決められる「思考の強さ」スライダーが加わり、事実誤りは前世代のGPT-5.5 Instant比で68%減ったと説明されています。対象はPlusとProの利用者です。
日本のユーザーと企業にとって何が変わるか
まず価格です。動画1本180円、画像1枚6円という水準は、外注費と比べるまでもありません。試作の回数を10倍に増やしても予算が壊れない、という状態が現実になりました。
次に日本語対応です。Qwen Image 3.0 Proが公式に強みとして挙げているのは中国語と英語の描画精度で、日本語の縦書きやフォント再現については別途検証が必要です。日本語のバナーを量産したい場合は、少量でテストしてから本番投入するのが安全でしょう。
前世代のSeedance 2.0は、2026年2月24日以降にCapCutの姉妹サービス「Dreamina」経由で日本から使えるようになりました。2.5も同じ経路に乗る可能性が高いと見られています。
都内の制作会社で、SNS用の縦型動画を月に40本納品しているチームを想像してみてください。1本あたり半日かかっていた編集が、参照素材を渡して30秒を一発生成する形に変われば、確保できる時間はまったく違ってきます。
一方で、社内の情報管理は重くなります。Muse Sparkの二段料金がまさにその縮図です。「安いプランは学習に使われる可能性がある」という前提を、契約前に必ず確認する必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q. なぜ8月にこれほど集中したのですか?
A. 明確な理由は公表されていません。ただ、アリババ・メタ・バイトダンスが同じ週に別分野の主力を出しており、競合の発表に合わせて時期を寄せた可能性は指摘されています。
Q. Muse Spark 1.2の安いプランは危険ですか?
A. 危険というより用途次第です。コントリビュータティアはやり取りが製品改善に使われる可能性があるため、公開予定のコードや学習用途には向きますが、顧客データや未公開の業務コードには標準ティアを使うべきです。
Q. Seedance 2.5はいくらで使えますか?
A. 2026年8月10日時点で公式の価格表は出ていません。比較の目安が必要なら、秒単価を公開しているFLUX 3 Video(20秒で約180円から)を基準に見積もるとよいでしょう。
Q. これだけ出ると、すぐ古くなりませんか?
A. その通りです。だからこそ、特定のモデル名に業務を固定しないほうが安全です。差し替えられる作り方にしておけば、次の波が来ても入れ替えるだけで済みます。
Q. 個人でも試せますか?
A. 試せます。GPT-5.6 SolはChatGPTのPlus・Proで使え、Qwen Image 3.0 Proは1枚6円程度から、FLUX 3 VideoもDraft HDなら数百円で20秒動画を作れます。
まとめ
- 2026年8月の最初の1週間で、アリババ・メタ・バイトダンスなどから5本以上の新モデルが公開された
- Muse Spark 1.2は100万トークン文脈のコーディング特化で、料金は標準とコントリビュータの二段構え
- Qwen Image 3.0 Proは10px級の文字描画が売りで、1枚6円前後から使える
- Seedance 2.5は30秒の音声付き動画を一発生成できるが、公式価格は未公表
- FLUX 3 Videoは秒単価が公開済みで、20秒約180円から見積もれる
- 選び方の軸は「コード・画像・動画・文章」のどれを作るか。1社にまとめる時代ではない
まずは自分の業務で一番時間を食っている作業をひとつ選び、対応するモデルに1週間だけ任せて効果を測ってみてください。
参考文献
- AI Model Releases August 2026 Tracker – Digital Applied
- New AI Model Releases — August 2026 Timeline – LLM Gateway
- Black Forest Labs makes FLUX 3 Video generally available – The Decoder
- OpenAI updating ChatGPT with a smarter GPT-5.6 Sol – 9to5Mac
- Qwen Image 3 Pro – API Pricing & Providers – OpenRouter

