AI検索の露出、測る企業16%|IABが4指標公開

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • IABが2026年8月3日に「AI時代の可視性測定」ガイダンスを公開したこと
  • AI検索での露出を測る共通のものさし「4つのP」の中身
  • AI上での見え方を継続的に追跡している企業が世界でわずか16%という現実
  • 測定ツールが20社以上乱立し、同じブランドでも数値が食い違う理由
  • 日本では8割超の企業が動いているのに、3割が「効果を測れない」と答えている状況

自社の名前がChatGPTの回答に出ているのか、気になったことはありませんか。実は、それを継続的に測っている企業は世界でたった16%です。広告業界の国際団体IABが、この「測れない」問題に答えを出しました。共通のものさしとなる4つの指標を、やさしく分解して解説します。

IABが公開したのはどんな文書か

IAB(インタラクティブ広告協会。ネット広告のルールづくりを担う国際的な業界団体)が、2026年8月3日に新しいガイダンスを公開しました。

名前は「Measuring Visibility in the AI Era(AI時代の可視性測定)」。約36ページの文書です。

目的はシンプルです。ChatGPTやGeminiなどのAIが生成する回答の中に、自社ブランドがどう登場しているかを測るための共通ルールをつくること

対象は4者に分かれています。ブランド企業、広告代理店、メディア(出版社)、そして測定ツールを売るベンダーです。

ただし、IAB自身は「これは正式な標準規格ではない」と説明しています。AI検索のVP(担当役員)を務めるCaroline Gigerich氏は、マーケターが今いる場所を「大移行期のただ中」と表現しました。

地面が動いている最中に石碑は建てられない、という判断です。まずは共通の言葉づかいを配ることを優先しました。

AI検索の露出を測る「4つのP」

ガイダンスの中心にあるのが「4つのP(The 4 P’s of AI Visibility)」という考え方です。

4つは並列ではありません。下から順に積み上がる階層になっています。

P1 Presence(存在)— そもそも登場するか

一番下の土台です。AIの回答に自社が出てくるかどうかを測ります。

主な指標は4つ。Mention Rate(言及率)は、回答の中で自社名が出てくる割合です。

Citation Rate(引用率)は、自社サイトが情報源としてリンクされる割合を指します。

さらに、カテゴリ全体の言及に対する自社の取り分を示すShare of Voice、時系列の伸びを見るVisibility Momentumが加わります。

P2 Prominence(目立ち方)— どの位置に出るか

登場しても、回答の最後に一行だけ添えられているのと、冒頭で名指しされるのとでは価値が違います。

ここで測るのがPosition(位置)です。箇条書きの何番目か、比較表のどこに置かれたかを見ます。検索結果の1位と10位の差を思い出せば、重みの違いは想像しやすいはずです。

P3 Portrayal(語られ方)— 正しく紹介されているか

3段目は中身の質です。好意的に書かれているか(Sentiment)、どんな文脈に置かれたか(Framing)を評価します。

注目したいのが残り2つです。Hallucination Rate(ハルシネーション率)は、実在しない機能やサービスを勝手に結びつけられた割合を示します。

Factual Inaccuracy Rateは、引用そのものは正しいのに、中身の事実が間違っている割合です。

Gigerich氏は、古いデータをもとにした事実誤りこそ「夜も眠れなくなる問題」だと語っています。存在しない料金プランをAIに案内されれば、露出は多いほど損害になります。

P4 Persuasion(行動)— 実際に動かせたか

頂点にあるのが成果です。AIがどれだけ強く推したかを示すRecommendation Strengthと、引用リンクから実際にクリックされた割合(Post-Citation CTR)を測ります。

言及されただけで満足しない、という設計思想がここに表れています。

なぜ今、共通のものさしが必要だったのか

ガイダンスによれば、AI可視性の測定ツールを売る会社はすでに20社以上。しかも各社が別々の方法で計算しています。

結果として、同じブランドを測っても会社ごとに違う数字が出ます。これでは経営会議に持っていけません。

数字がブレる原因はツール側だけではありません。AIの回答自体が毎回変わります。Similarwebの調査では、AIが引用する情報源は月におよそ50%入れ替わり、主要プラットフォーム間で重なるのはわずか11%でした。

Semrushが米国の1億2600万件のプロンプトを分析した結果も衝撃的です。追跡対象1,200以上のブランドのうち、全プラットフォーム・全月で上位100に入り続けたのはたった36社(2026年6月25日発表)。

足場が毎月半分入れ替わる場所で、たまたま今月測った1回の数字を信じるのは危険だ、というわけです。

「方向性」と「意思決定級」の線引き

そこでIABが導入したのが、データ品質を2段階に分ける仕組みです。

下の段がDirectional(方向性)。傾向をつかむための水準で、条件は次のとおりです。

  • 1つのプログラムにつき最低50クエリ(質問文)
  • 同じ質問を複数回投げて回答を集める
  • 2種類以上の意図(調べる/比べる/おすすめを聞く/買う)をカバーする
  • 月次・四半期ごとの計測でも可

上の段がDecision-Grade(意思決定級)です。予算配分の根拠に使えるレベルを指します。

  • カテゴリ・サブカテゴリを網羅した大規模で多様な質問セット
  • 4種類の意図をすべてカバーし、意図ごとに分けて報告する
  • 週1回以上の計測
  • 手法の全面開示と、プラットフォーム別の内訳公開

50クエリに満たないものは「探索的(exploratory)」と分類され、判断材料にはなりません。

ある家電メーカーの担当者が、10個の質問をChatGPTに打ち込んで「うちは3回出た」と報告したとします。IABの基準では、それは測定ですらない、ということになります。

主要ツールを比べると何が違うか

共通の言葉ができると、ツール選びの物差しも変わります。現在の主要プレイヤーを整理します。

  • Profound:累計1億5,500万ドル(約230億円)を調達し評価額10億ドル規模。ChatGPT・Claude・Perplexity・Gemini・Grokなど10〜11のAI面を網羅。月1,500ドル〜のエンタープライズ向け
  • Semrush AI Toolkit:既存プラン(月129.95ドル〜)への追加で月99ドル。SEOツールを既に使っている組織向け
  • Ahrefs Brand Radar:月199ドル〜、6つのAIプラットフォームに対応
  • Otterly.AI:月79ドル〜の低価格帯。まず試したい中小企業向け
  • DolphinX AIO:国産ツール。GA4やGoogleサーチコンソールと連携し、AI検索経由の流入やコンバージョンまで追える

価格は月79ドルから2,000ドルまで、25倍の開きがあります。これまでは違いを見抜く共通語がありませんでした。

今後は「意思決定級の条件を満たしているか」「手法を開示しているか」で比較できるようになります。

ただしGigerich氏は、ツールの淘汰はすぐには起きないだろうと見ています。各社が新市場の取り合いをしている最中だからです。

日本のマーケ担当者にとって何が変わるか

日本の状況は、世界平均の16%とはかなり違う顔をしています。

SEO HACKSが2026年3月に全国のデジタルマーケ担当者420人へ実施した調査では、41.6%が「すでに対策を実施」、42.8%が「検討中」。合わせて8割超が動いています

理由の1位は「検索流入の減少への不安」(35.3%)、2位が「AI検索での露出確保」(32.1%)でした。

ところが最大の壁として約31%が「効果を測定できない」と回答しています。予算も6割超が既存の広告費やSEO費からの付け替えで、新規予算を確保できたのは約2割にとどまりました。

ここに今回のガイダンスが効いてきます。ある通販企業のマーケ担当者を思い浮かべてください。上司から「AI対策の成果を数字で出せ」と言われ、根拠がなくて詰まっている状況です。

4つのPを使えば、「言及率は先月比で伸びたが、これは方向性データであり判断材料には足りない」と説明できます。何が測れていて何が測れていないかを、共通語で切り分けられるわけです。

国内の土壌も整いつつあります。ICT総研の調査では、直近1年で生成AIを使った人は54.7%(前回29.0%から大幅増)でした。

一方で、アウンコンサルティングの2026年7月調査では日本の生成AI非利用率は3割超と5か国中で最多です。移行はまだ途中。だからこそ、今のうちに測る土台をつくれるかが差になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. このガイダンスは守らないと罰則がありますか?

いいえ。IAB自身が「正式な標準規格ではない」と明言しており、強制力はありません。共通の言葉づかいと品質の目安を示す文書です。

Q2. 個人ブログや中小企業でも使えますか?

考え方は使えます。ただし意思決定級の水準(週1回以上・大規模な質問セット)は現実的ではありません。まず50クエリの方向性データから始め、言及率と引用率だけを追うのが無理のない入り口です。

Q3. 従来のSEO対策はもう不要になりますか?

不要にはなりません。AIは既存のウェブページを情報源として引用するため、正確で構造の整ったページは引き続き土台になります。今回の4つのPは、SEOを置き換えるものではなく、その先の見え方を測る仕組みです。

Q4. 有料でAIの回答に出してもらう方法は測れますか?

今回のガイダンスは有料掲載(ペイドプレースメント)の測定を対象外としています。IAB自身が「緊急性の高い隣接課題」と位置づけており、続編での対応が待たれる領域です。

Q5. 日本語でもこの指標は成り立ちますか?

指標の考え方自体は言語に依存しません。ただし質問文は日本語で設計する必要があり、日本語の回答傾向は英語と異なる可能性があります。国内ツールを併用する意味はここにあります。

まとめ

  • IABが2026年8月3日、AI検索での露出を測る約36ページのガイダンスを公開した
  • 指標は「存在・目立ち方・語られ方・行動」の4つのPに階層化されている
  • 継続的に追跡している企業は世界で16%にとどまる
  • 測定ツールは20社以上あり、引用元は月に約50%入れ替わる
  • データは「方向性」と「意思決定級」に区別し、50クエリ未満は探索扱い
  • 日本は8割超が対策に動く一方、約31%が効果測定でつまずいている

まずは自社カテゴリの質問を50個書き出し、言及率と引用率を1か月記録するところから始めてみてください。

参考文献