米成人34%が症状をAIに相談|世代差27ポイント

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • 米国の成人34%が、健康や医療のことでAIチャットボットを使った経験がある(3,488人調査)
  • 用途のトップは「症状の原因を調べる」25%、「検査結果を理解する」20%
  • 18〜29歳は44%、65歳以上は17%で、世代差は27ポイント
  • 回答が「とても役に立った」は47%、健康データを渡すのに抵抗があるのは26%
  • 孤独やうつの相談は「助けになる」19%に対し「害になる」39%と評価が真逆

体調が悪いとき、病院に行く前にスマホで検索したことはありませんか。その検索相手が、いまAIに置き換わり始めています。

米調査機関ピュー・リサーチ・センターが2026年8月25日に公開した調査で、米国の成人の3人に1人がすでに健康目的でAIチャットボットを使っていることがわかりました。誰が、何を、どこまで信じて聞いているのか。数字の中身を見ていきます。

米国の成人34%が健康のことをAIに聞いている

3,488人に聞いた6月末の調査

調査は2026年6月22日から28日にかけて、米国の成人3,488人を対象に行われました。

結果は34%。健康や医療に関する8つの用途のうち、少なくとも1つでAIチャットボットを使ったことがある人の割合です。

ここでいうAIチャットボット(人間のように文章で答えるAI)は、ChatGPTやGeminiのような一般向けサービスです。普通の人が、普段使いのAIに体のことを相談しているという数字になります。

いちばん多いのは「症状の原因調べ」

何のために使っているのか。米成人全体に占める割合で並べると、こうなります。

  • 健康情報をすばやく手に入れたい:28%
  • 症状の原因が何かを知りたい:25%
  • お金をかけずに健康情報がほしい:22%
  • 治療法について知りたい:22%
  • 医師の診断内容を理解したい:22%
  • 検査結果の数値を読み解きたい:20%
  • 人に言いにくい話題を調べたい:18%
  • 病院に行くべきか判断したい:15%

並べてみると傾向がはっきりします。上位に来ているのは「診断してほしい」ではなく、「わからない言葉を、わかる言葉にしてほしい」という要望です。

健康診断の結果表を思い浮かべてください。「HbA1c 6.2」と書かれていても、それが何を意味するのかは書かれていません。以前なら数値を検索して広告だらけのページをめくっていた作業が、いまはAIに貼り付ければ30秒で終わります。

使う人と使わない人を分ける3つの線

27ポイント開いた世代差

年齢別に見ると、差はかなりくっきりしています。

  • 18〜29歳:44%
  • 30〜49歳:40%
  • 50〜64歳:32%
  • 65歳以上:17%

いちばん若い層といちばん高い層で、27ポイントの開きがあります。

皮肉なのは、健康の悩みが多いのは本来65歳以上だという点です。持病があり、薬の種類も多く、検査結果を読む機会も一番多い世代。その世代が、この道具をいちばん使っていません。

アジア系56%、大卒44%、高所得48%

差がつくのは年齢だけではありません。

人種・民族別ではアジア系が56%と突出しています。ヒスパニック系39%、黒人35%、白人29%と続きます。

学歴では大卒以上が44%、短大などが34%、高卒以下が23%。世帯収入では上位層48%、中間層33%、下位層28%でした。

興味深いのは、「無料で健康情報がほしい」を理由に挙げた人が22%いたのに、実際に多く使っているのは高所得層だったことです。お金のかからない道具なのに、使いこなせる人には偏りがある。デジタル格差がそのまま健康情報の格差になりかねない構図です。

もう1つ、AIへの姿勢でも大きく割れました。AIに「期待のほうが大きい」人は60%が健康目的で使っているのに対し、「不安のほうが大きい」人は21%。3倍近い差です。

「役に立つ」47%、でも健康データは渡したくない

実際に使った人の評価は、悪くありません。

回答が「非常に/とても役に立った」と答えたのが47%、「ある程度役に立った」が48%。「あまり役に立たなかった」はわずか5%でした。使った人の95%が、何らかの手ごたえを感じています。

ところが、信頼の中身を掘ると温度が変わります。

自分の個人的な健康データをAIに渡すことについて、「非常に/とても抵抗がない」と答えたのは29%だけ。「ある程度なら」が42%で、「抵抗がある」が26%いました。

つまり多くの人は、答えの質は評価しつつ、自分のカルテを預ける気にはなっていないということです。「一般論を聞く相手」としては合格でも、「主治医」としては認めていない。この線引きが、いまの利用実態をよく表しています。

心の悩みだけは評価が真逆になる

同じ日に公開されたもう1本の調査結果は、さらに厳しい数字でした。

孤独・うつ・ストレスの相談相手としてAIチャットボットを使うことについて、米国人の評価は「助けになる」より「害になる」が上回っています

  • 孤独:害になる39% / 助けになる19%
  • うつ:害になる36% / 助けになる17%
  • ストレス:害になる29% / 助けになる22%

体のことなら3人に1人が使っているのに、心のことでは倍以上の人が「やめたほうがいい」と考えている。同じAIに対する評価が、テーマによってここまで反転します。

しかも、いちばん否定的なのは若い世代です。18〜29歳では孤独について49%が「害になる」と答えました。AIをいちばん使いこなしている世代が、心の相談相手としてはいちばん警戒しているわけです。

ChatGPT Healthとユビー、健康AIはどこまで来たか

この34%という数字は、サービス側の動きと切り離せません。いま健康分野のAIは、大きく3つのタイプに分かれています。

1つめは汎用チャットボットです。ChatGPTやGeminiに直接聞くやり方で、今回の調査の大半はこれにあたります。無料で何でも聞ける代わりに、医療用に作られたわけではありません。

2つめは健康特化型の機能です。OpenAIは2026年1月に「ChatGPT Health」を発表し、7月23日から米国の18歳以上に提供を始めました。電子カルテやApple ヘルスケアのデータとつなぎ、一般論ではなくその人の履歴を踏まえた回答を返す仕組みです。カルテ連携はb.wellとの提携で米国限定となっています。

3つめは医療特化のサービスです。日本では症状検索エンジン「ユビー」が代表格で、50名以上の医師監修のもと、参照する情報を公的機関や専門サイトに限定しています。医療機関向けの「AI問診ユビー」は全国47都道府県、400以上の医療機関で導入されました。

日本ではどうなのか

では日本はどうか。方向は同じでも、速度と道具が違います。

日本リサーチセンターの調査では、生成AIの利用経験率は2023年3月の3.4%から2026年3月には48.5%へと伸びました。そのうえで、AI利用経験者が相談したいことの上位に「健康・体調に関すること」が50.0%で入っています。

テックドクターが2026年3月に一般生活者480名に行った調査は、もう少し踏み込んだ数字を出しています。

  • 健康不安があるとき最初に相談したい相手にAIを選ぶ人:全体10.2%、AI利用経験者17.5%
  • 60代以上でAIを選ぶ人:21.7%(医師に次いで2位)
  • 受診前にAIへ症状を相談することへの肯定:全体50.4%、AI利用経験者72.5%
  • 約25%が「友人・家族より信頼するが、医師よりは信頼しない」と回答

「友人・家族より上、医師より下」という位置づけは示唆的です。日本の生活者は、AIを診断者ではなく相談相手として受け入れ始めているということでしょう。

ただし条件は米国と違います。ChatGPT Healthは現時点で米国のみの提供で、日本展開の時期は公表されていません。日本のユーザーが使えるのは、汎用のChatGPTかユビーのような国内サービスに限られます。

深夜に子どもが38度台の熱を出した場面を考えてみてください。救急に行くべきか、朝まで様子を見るか。米国のユーザーならカルテ連携済みのAIに相談できますが、日本では汎用AIに症状を書き込むか、ユビーで受診の目安を調べるかの二択です。同じ34%でも、その裏にある道具の質が違う点は押さえておく必要があります。

AIの健康アドバイスはどこまで信じていいのか

利用が広がる一方で、精度への警告も出ています。

スタンフォード関連のベンチマークでは、AIの助言にそのまま従った場合、約4分の1のケースで深刻な害につながるリスクがあると報告されました。多くは、危険な兆候をAIが指摘し損ねたケースです。

2026年のBMJ Openに掲載された監査でも、主要チャットボットの健康情報のほぼ半数に問題があったとされています。自信たっぷりの口調で、実在しない出典を挙げるケースが目立ちました。

2025年の医師調査では、94%が「患者がAIに医療判断を頼ること」に懸念を示しました。誤診と受診の遅れが主な理由です。

とはいえ「使うな」で終わる話ではありません。比較的リスクの低い使い方は、はっきりしています。

  • 専門用語や検査値を、わかる言葉に翻訳してもらう
  • 診察のときに医師へ聞く質問を、あらかじめ整理する
  • 飲んでいる薬のリストを一覧に整える
  • 検査や手術の流れを事前に把握する

共通しているのは、AIに判断させず、自分と医師の会話を助ける道具として使うという点です。

持病のある70代が、月に一度の診察で言い忘れをなくしたいとします。前夜のうちにAIへ症状と薬を書き出し、聞くべきことを5つに整理しておく。この使い方なら、AIが間違えても医師が受け止めてくれます。逆に「この痛みは放っておいて大丈夫か」をAIだけで判断すると、間違いは誰も止めてくれません。

よくある質問(FAQ)

Q. 34%という数字は、毎日使っている人の割合ですか?

A. いいえ。8つの健康関連の用途のうち、少なくとも1つで「使ったことがある」人の割合です。利用頻度を示す数字ではありません。

Q. 日本でもChatGPT Healthは使えますか?

A. 2026年8月時点では使えません。米国の18歳以上に限定して提供されており、日本を含む米国外への展開時期は公表されていません。

Q. AIに症状を相談するのは違法ではないのですか?

A. 一般的な健康情報を調べる行為そのものは問題になりません。ただしAIの回答は診断ではなく情報提供です。ユビーのような国内サービスも、受診先を探す手がかりを示すものとして設計されています。最終的な判断は医師に委ねるのが前提です。

Q. AIに検査結果を貼り付けても大丈夫ですか?

A. 内容は慎重に選んでください。Pew調査でも26%が個人の健康データを渡すことに抵抗を示しています。氏名や生年月日、病院名などの個人が特定できる情報は外し、数値と項目名だけを渡すのが現実的です。

Q. 心の悩みをAIに相談するのはやめたほうがいいですか?

A. 米国では「害になる」という見方が多数派です。孤独については39%が害、19%が助けと答えました。気持ちを言葉にする練習相手としては使えても、治療の代わりにはなりません。つらさが続く場合は専門の窓口に相談してください。

まとめ

  • 米国の成人34%が健康目的でAIチャットボットを使った経験がある(3,488人調査、2026年6月実施)
  • 用途の中心は診断ではなく「専門用語や検査結果の翻訳」
  • 18〜29歳44%に対し65歳以上17%と、世代差は27ポイント
  • 使った人の95%が役立ったと答える一方、26%は健康データを渡すことに抵抗がある
  • 孤独やうつの相談では「害になる」39%が「助けになる」19%を大きく上回る
  • 日本でもAI利用者の17.5%が健康不安時の相談先にAIを挙げるが、ChatGPT Healthは未提供
  • AI助言の約4分の1に深刻な害のリスクがあるとの報告もあり、判断は医師に委ねるのが前提

次のアクションとして、まずは手元の健康診断結果を用意し、個人が特定される情報を外したうえで「この数値が何を意味するのか、専門用語を使わずに説明して」とAIに聞いてみてください。

参考文献