- 新しいアカウントでTikTokを開くと、おすすめ動画の59%が低品質なAI動画だったという調査が出ました
- 調査したのは動画編集サービスのKapwing。1万742本の動画を人の目で分類しました
- YouTubeショートは21%で、TikTokはその約3倍も多い結果に
- とくにひどいのが「子ども向け」で、あるタグでは100本中97本がAI製でした
- YouTubeは2025年から「大量生産動画」の収益化を停止。日本のユーザーや発信者にも関係します
スマホでTikTokを開いて、なんだか変な動画ばかり流れてくる、と感じたことはありませんか。じつはそれ、気のせいではないかもしれません。新しい調査で、TikTokのおすすめ動画の約6割がAIで雑に作られた低品質コンテンツだとわかりました。この記事では、その調査の中身と、私たちの暮らしへの影響をやさしく解説します。
そもそも「AIスロップ」って何のこと?
まず言葉の意味からです。
AIスロップ(AI slop)とは、AIを使って雑に大量生産された、中身のうすい低品質なコンテンツのことです。
「スロップ(slop)」は英語で「ブタのエサ」や「ベチャベチャした残飯」を指す言葉です。つまり「AIが吐き出したゴミ」というニュアンスがこもっています。
具体的には、AIが作った不自然な映像や、AIの台本と合成音声だけでできた使い回し動画などが当てはまります。再生数や登録者を稼ぐことだけが目的で、作り手の意図や工夫がほとんどありません。
ちなみに2026年の別の調査では、SNS利用者の56%が「AIスロップを頻繁に見る」と答えています。多くの人が、すでにうんざりし始めているのです。
調査の中身:TikTokの59%、YouTubeの21%
今回の調査をしたのは、動画編集サービスを手がけるKapwing(カプウィング)という会社です。2026年6月に結果を公開しました。
調べ方はとても地道です。20の人気カテゴリーから合計1万742本のTikTok動画を集めました。そして1本ずつ人の目で「これはAIスロップかどうか」を判断したのです。
とくに注目すべきは、新しく作ったアカウントの「おすすめ」に最初に出てきた動画です。最初の500本のうち、294本(59%)がAIスロップでした。
同じ方法でYouTubeショートも調べたところ、こちらは500本中104本、21%という結果でした。TikTokはYouTubeのおよそ3倍も多かったのです。
カテゴリー別に見ると、差がはっきりわかります。
- 子ども向け:57.4%(最悪)
- 科学・教育:35.0%
- 健康:33.8%
- 歴史:33.5%
- フィットネス:1.6%
- 音楽:1.5%
- ファッション:1.3%
フィットネスや音楽はほぼ人間が作っています。一方で、学びや健康に関わる大切な分野ほど、AIのゴミが多いという皮肉な結果になりました。
なぜ子ども向けが一番ひどいのか
この調査で一番ショッキングなのが、子ども向けコンテンツの汚染ぶりです。
たとえば「#CartoonKids(子ども向けアニメ)」というタグでは、調べた100本のうち97本がAI製でした。人間が作ったとわかるものは、わずか3本だけです。
ほかにも「#cartoons」や「#babysong」は83%、「#forkids」は79%がAIスロップでした。子ども向けの世界は、ほぼAIに乗っ取られていると言ってもいい状態です。
なぜ子ども向けが狙われるのでしょうか。理由は、小さな子どもは内容の良し悪しを判断できず、同じような動画を何度でも見続けるからです。再生数を稼ぎたい人にとって、これほど都合のいい相手はいません。
Kapwingは、ここに大きな心配があると指摘します。発達途中の子どもの脳への影響、まちがった知識の拡散、人気キャラクターの無断使用、そして気味の悪い合成音声などです。
小さなお子さんがいる家庭にとっては、人ごとでは済まされない問題です。
TikTokとYouTube、なぜ差がついた?
同じショート動画なのに、なぜTikTokとYouTubeで3倍もの差がついたのでしょうか。ここを比べてみましょう。
大きな理由のひとつが、収益化のルールの違いです。
YouTubeは2025年7月に、もうけの仕組みのルールを見直しました。それまで「繰り返しコンテンツ」と呼んでいた違反項目を、「大量生産コンテンツ」という名前に変えたのです。
これにより、AIの語りだけのスライド動画や、使い回しの寄せ集め動画は、お金を稼げなくなりました。2026年初めには、登録者が何百万人もいるAIチャンネルが12個以上も閉鎖されたと報告されています。
一方のTikTokは、こうした取り締まりがまだ追いついていません。だから新規ユーザーのおすすめにまで、AIスロップがあふれてしまうのです。
ただし誤解しないでほしいのは、YouTubeも「AIの利用そのものは禁止していない」という点です。人の工夫や独自の視点が加わっていれば、AIを使った動画でも問題ありません。問われているのは「中身があるかどうか」だけなのです。
日本のユーザー・発信者への影響は?
「これは海外の話でしょ?」と思った方もいるかもしれません。でも、日本も決して無関係ではありません。
TikTokもYouTubeも、日本で何千万人もが使うアプリです。おすすめに出てくる仕組みは世界共通なので、日本のフィードにも同じようにAIスロップが流れ込んでいます。
とくに気をつけたいのが、動画を投稿して収入を得ている個人や企業です。AIで楽に量産しようとすると、YouTubeの収益化停止に引っかかるおそれがあります。
ある個人クリエイターを想像してみてください。AIに台本と音声を作らせ、フリー素材をつなげて毎日10本投稿していたとします。一見かしこいやり方に見えますが、2026年のルールでは一発で収益化を外される対象です。
企業のマーケティング担当者も同じです。広告がAIスロップ動画の横に表示されると、ブランドの印象が下がります。実際、低品質なAIコンテンツを避けるための広告ツールも登場し始めています。
日本のユーザーにできる対策はシンプルです。怪しい動画は「興味なし」を押す、信頼できる発信者をフォローする、子どもには大人が選んだ動画を見せる。この積み重ねが、自分のフィードを守ります。
私たちはどう向き合えばいい?
AIスロップは、これから完全になくなるとは考えにくい問題です。作るのが安くて速い以上、お金になるかぎり量産され続けます。
大事なのは、見る側が「これはAIの雑な動画かも」と気づく目を持つことです。
見分けるヒントはいくつかあります。手の指の数が変、背景がぐにゃりと歪む、音声が不自然に平坦、同じ構図の動画が大量にある。こうしたサインに気づけると、だまされにくくなります。
プラットフォーム側も、AI生成コンテンツにラベルを付ける動きを強めています。GoogleやYouTubeは、独自性や深さのあるコンテンツをより評価する方向に進んでいます。
つまり、人間にしか作れない「本物の価値」が、これまで以上に大切になる時代が来ているのです。
よくある質問(FAQ)
Q1. AIスロップとAIを使った普通の動画は、何が違うのですか?
A. 違いは「中身があるかどうか」です。人の工夫や独自の視点が加わっていればOKで、再生数稼ぎだけの雑な量産がAIスロップとされます。AIを使うこと自体は問題ありません。
Q2. なぜTikTokはYouTubeより多いのですか?
A. YouTubeが2025年に大量生産動画の収益化を止めたのに対し、TikTokの取り締まりがまだ追いついていないためと見られています。
Q3. AIスロップは法律で禁止されないのですか?
A. 今のところ全面禁止する法律はありません。各プラットフォームが収益化のルールや表示ラベルで対応しているのが現状です。
Q4. 子どもに安全に動画を見せるにはどうすればいい?
A. 子ども向けタグはAI製が非常に多いので、大人が事前に内容を確認した動画を見せるのが安心です。YouTube Kidsなどの管理機能も役立ちます。
Q5. この調査は信頼できますか?
A. Kapwingは人間の動画作りを支援する会社なので、立場による偏りには注意が必要です。ただし1万本以上を人の目で分類した点は、信頼性のある手法といえます。
まとめ
今回の調査が示したポイントを振り返ります。
- 新規ユーザーが見るTikTok動画の59%がAIスロップだった
- YouTubeショートは21%で、TikTokはその約3倍
- 子ども向けカテゴリーが最悪で、あるタグは97%がAI製
- YouTubeは大量生産動画の収益化を停止、日本の発信者にも影響
- AIの利用自体は問題なく、問われるのは「中身があるか」だけ
まずは今日から、自分のフィードに流れる動画を少し疑いの目で見てみましょう。それがAIスロップから自分と家族を守る、いちばん確実な第一歩です。

