企業7割がシャドーAIを放置|情報漏洩の盲点

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

taolis.net X note Voicy YouTube
  • Gartnerの調査で、日本企業の73%が「シャドーAI」を管理できていないと判明
  • シャドーAIとは、会社が許可していないAIを社員が勝手に使うこと
  • 最大のリスクは、社外秘の情報がAIに吸い込まれて漏れること
  • 「全部禁止」はもう限界。Gartnerは役割分担型の管理をすすめる
  • 今日から始められる3ステップの対策をやさしく解説します

あなたの会社でも、こっそりChatGPTを使っている同僚がいませんか?実はそれ、いま企業を悩ませる大問題です。Gartner(世界的なIT調査会社)の最新調査で、日本企業の7割超がこの問題に手を打てていないとわかりました。この記事を読めば、何が危ないのか、そしてどう対策すればいいのかがスッキりわかります。

そもそも「シャドーAI」って何?

シャドーAIとは、会社が正式に許可していないAIを、社員が勝手に業務で使うことです。

「シャドー」は英語で「影」という意味です。会社の目が届かない影で使われている、というイメージですね。

たとえば、こんな場面が当てはまります。

  • 資料づくりに、個人のスマホからChatGPTを使う
  • 翻訳のために、会社が知らない無料AIサイトに文章を貼り付ける
  • 議事録のまとめを、私物パソコンのAIアプリにまかせる

どれも「仕事を早く終わらせたい」という前向きな気持ちから生まれます。だからこそ、止めるのが難しいのです。

Gartner調査が示した衝撃の数字

Gartnerは2026年2月、日本企業を対象に大規模な調査をしました。その結果が2026年6月に公表され、大きな話題になっています。

いちばん注目すべき数字がこちらです。

  • 43%:そもそもシャドーAIを「見つけられていない」
  • 30%:見つけてはいるが「有効な対策がない」
  • 24%:見つけて、対策も打てている

上の2つを足すと73%。つまり、約4社に3社がシャドーAIをきちんと管理できていません。

さらに別の数字も出ています。社員が選んだAIの利用を「自由に認めている」会社が8%、「審査して問題なければ認める」会社が67%。合わせて75%の会社が、何らかの形で社員のAI利用を受け入れているのです。

AIはもう、止められない流れになっています。

シャドーAIが招く4つのリスク

では、放っておくと何が起きるのでしょうか。Gartnerは大きく4つのリスクを挙げています。

1. 社外秘の情報が漏れる

これが最大の危険です。AIに入力した文章は、AIの「勉強の材料」として吸い込まれることがあります。

一度AIが覚えた機密データは、取り消すのがほぼ不可能です。最悪の場合、他社の画面に答えとして出てしまう恐れもあります。

実際、2023年にサムスン電子で社員が社内の機密ソースコード(プログラムの設計図)をChatGPTに入力し、流出させてしまった事例がありました。

2. ルールや法律に違反する

顧客の個人情報をうっかりAIに入れると、個人情報保護のルールに違反するおそれがあります。会社が責任を問われる事態にもなりかねません。

3. セキュリティや倫理の問題

素性のわからないAIサイトには、ウイルスや詐欺が潜むこともあります。また、AIが出した間違った答えをそのまま信じてしまうリスクもあります。

4. 「誰の責任か」があいまいになる

問題が起きても「使ったのは現場、管理はIT部門」と責任が散らばり、対応が遅れます。

なぜ「全部禁止」では解決しないのか

「危ないなら、AIを全部禁止すればいい」と思うかもしれません。でも、それはもう限界だとGartnerは指摘します。

禁止しても、社員は私物スマホでこっそり使い続けるからです。むしろ管理の目が届かなくなり、状況は悪化します。

対応の方針を、3つのやり方で比べてみましょう。

  • 一律禁止:手軽だが守られない。隠れて使われ、逆に危険が増す
  • 会社が選んだAIだけ許可:安全だが種類が少なく、不便だから抜け道を探される
  • 役割分担モデル:IT部門と現場が責任を分け合う。手間はかかるが現実的

Gartnerがすすめるのは、3つめの役割分担モデルです。これまでの「IT部門がすべて中央で管理する」やり方から、現場も一緒に責任を持つ形へ変えていく考え方です。

セキュリティ部門、法務、人事、そして現場が手を組む。AIの管理は、もうIT部門だけの仕事ではないのです。

今すぐできる3ステップの対策

むずかしく聞こえますが、進め方はシンプルです。Gartnerは3つのステップを示しています。

ステップ1:まず「何が使われているか」を知る

最初の一歩は、社内でどんなAIが使われているかを把握することです。アンケートや聞き取りで、現状を洗い出します。

敵を知らなければ、守ることもできません。

ステップ2:使われ方を見守り続ける

次に、AIへの通信を監視するしくみを入れます。一度きりの調査ではなく、続けてチェックすることが大切です。

近年は、会社のネットワークからどんなAIサイトにつないでいるかを見える化するツールも増えています。

ステップ3:安全な選択肢を用意する

そして、社員が安心して使える法人向けAIを会社が用意します。入力した情報が学習に使われない、業務用のAIサービスです。

「禁止」ではなく「安全な道を用意する」。これがいちばん効く対策だと言われています。

日本の会社とあなたへの影響

この問題は、海外の話ではありません。今回の調査はまさに日本企業が対象でした。

日本でも無断利用は広がっています。SIGNATE総研の2025年12月の調査では、業務でAIを使う人の34.8%、つまり約3.5人に1人が「会社の許可なし」で使っていました。

国の動きも見逃せません。IPA(情報処理推進機構)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて3位に入りました

働く一人ひとりにできることもあります。社外秘や個人情報は、許可されたAI以外に絶対に入れない。これを守るだけでも、リスクは大きく減ります。

会社のルールがまだ曖昧なら、「うちはどのAIを使っていいですか?」と上司に確認してみてください。その一言が、あなたと会社を守ります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 無料のChatGPTを仕事で使うのは危ないですか?

会社が許可していないなら、危険です。入力した内容がAIの学習に使われる可能性があるためです。社外秘の情報は絶対に入れないでください。

Q2. シャドーAIは違法なのですか?

使うこと自体が違法とは限りません。ただし、個人情報や機密情報を入力すると、法律やルールに違反するおそれがあります。

Q3. 会社はどうやってシャドーAIを見つけるのですか?

社内ネットワークからの通信を調べ、どのAIサイトにつないでいるかを確認する方法が一般的です。専用のツールも増えています。

Q4. 全部禁止すれば安全ではないですか?

いいえ。禁止しても隠れて使われ、かえって管理できなくなります。安全なAIを用意するほうが効果的です。

Q5. 個人でできる対策はありますか?

許可されたAIだけを使い、社外秘や個人情報は入力しないことです。迷ったら会社のルールを確認しましょう。

まとめ

シャドーAIは、もはやどの会社にもある身近な問題です。要点を振り返りましょう。

  • 日本企業の73%がシャドーAIを管理できていない
  • 最大のリスクは、社外秘の情報が漏れること
  • 「全部禁止」は守られず、逆効果になりやすい
  • Gartnerは現場とIT部門の役割分担モデルをすすめる
  • 対策は「把握する→見守る→安全な選択肢を用意する」の3ステップ

まずはあなたの職場で「どのAIを使っていいか」を確認することから始めてみてください。

参考文献

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です