- Sakana AIが初の商用サービス「Sakana Marlin(サカナ・マーリン)」を2026年6月15日に発表
- AIが平均8時間かけて自律的に調べ、最大80ページのレポートを自動で作る
- 独自技術「AB-MCTS」で「広く調べる」と「深く掘る」を自動で切り替える
- 料金は月額約20万円(15回)と約40万円(60回)の2プラン
- OpenAIやGoogleの「Deep Research」とは狙いが違い、ビジネス調査に特化
「市場調査に何日もかかって大変」と感じたことはありませんか。日本発のAI企業Sakana AIが、その悩みを解決する新サービスを発表しました。AIが8時間かけて自分で調べ、80ページのレポートを作ってくれます。この記事を読めば、何ができて、いくらで、他のAIと何が違うのかがわかります。
Sakana Marlinとは?8時間かけてAIが調べる新サービス
Sakana AI(サカナ・エーアイ)は2026年6月15日、初の商用サービス「Sakana Marlin」を発表しました。
ビジネス向けのリサーチ(調査)に特化したAIサービスです。
使い方はとてもシンプルです。チャットで質問を打ち込むだけです。
たとえば「東南アジアのEVバッテリーのリサイクル市場を調べて」と入力します。
するとAIが平均8時間ほどかけて、自分でインターネットや資料を調べ続けます。
そして最終的に、最大80ページのレポートを作ります。
レポートだけではありません。忙しい人向けの要約や、会議で使えるスライド資料まで自動で用意してくれます。
人間が何日もかけていた調査を、AIが半日で肩代わりしてくれるイメージです。
独自技術「AB-MCTS」が支える調査の質
長い時間ただ調べるだけなら、質の高いレポートにはなりません。
Sakana Marlinの心臓部にあるのが、同社が開発した「AB-MCTS」(エービー・エムシーティーエス)という独自技術です。
「広さ」と「深さ」を自動で切り替える
AB-MCTSは「Adaptive Branching Monte Carlo Tree Search」の略です。
難しそうですが、やっていることは人間の調べ方に似ています。
調査には2つの方向があります。幅広くいろいろ調べる「広さ」と、一つのことを掘り下げる「深さ」です。
優秀な調査員は、この2つを状況に合わせて使い分けます。
AB-MCTSは、まさにこの判断をAIが自分で行います。「ここはもっと幅を広げよう」「ここは深掘りが必要だ」と自動で決めるのです。
複数のAIで「集合知」を作る
Sakana AIは、この技術を発展させた「Multi-LLM AB-MCTS」も開発しています。
これは複数のAIモデルを問題ごとに使い分ける仕組みです。
実験では、試行錯誤を100回以上くり返したところ、1つのAIだけを使うより良い成績が出ました。
いわば「三人寄れば文殊の知恵」を、AI同士で実現しているわけです。
料金プランと使い方
Sakana Marlinの料金は、月額制で2つのプランが用意されています。
- 月額約20万円プラン:1か月に約15回の調査ができる
- 月額約40万円プラン:1か月に約60回の調査ができる
個人向けというより、企業の部署で使うことを想定した価格帯です。
想定されている使い道は、主に次の3つです。
- 経営企画での外部環境の分析
- 新しい事業に参入するときの市場調査
- 投資先を選ぶときの下調べ(スクリーニング)
業界を問わず、幅広い調査の仕事で使えるとしています。
ただし現時点では、調査が始まったあとに人間が口を出すことはできません。
そのためSakana AIは、今後途中で承認を挟む機能や、調べ直しの割引料金を検討していると説明しています。
OpenAIやGoogleの「Deep Research」と何が違う?
「それって、ChatGPTのDeep Researchと同じでは?」と思った方もいるでしょう。
たしかにOpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiにも、似た「Deep Research」機能があります。
しかし、狙いと作りが大きく違います。違いを表で整理してみましょう。
- 調査にかける時間:Deep Researchは5〜30分ほど。Sakana Marlinは平均8時間と、けた違いに長い
- 使う技術:Deep Researchは単一モデル中心。Marlinは独自のAB-MCTSで複数AIを協調させる
- 狙う相手:Deep Researchは個人や一般利用も視野。Marlinは企業のビジネス調査に特化
- 料金:ChatGPTのDeep Researchは無料で月5回から。Marlinは月20万円からの法人向け
OpenAIのDeep Researchは2026年2月にGPT-5.2ベースへ進化し、PDFやWord出力にも対応しました。
一方Sakana Marlinは、「時間をかけてでも、実務で本当に使えるレポートを作る」方向に振り切っています。
同じ「AIが調べる」でも、スピード重視か、深さ重視かという違いがあるのです。
なぜ「ベンチマークを追わない」のか
Sakana Marlinには、もう一つ大きな特徴があります。
それは「ベンチマーク(性能を測る共通テスト)をあえて追わない」という方針です。
開発エンジニアの合田晴紀氏は、こう語っています。「今のベンチマークに合わせて性能を良くすることはしていない」。
なぜでしょうか。
既存のリサーチ向けベンチマークの多くは、「1つの質問に1つの答え」という形式です。
でも実際のビジネス調査は、そんなに単純ではありません。
Sakana AIは後発企業として、点数稼ぎより「現場で役に立つか」を優先する道を選んだのです。
米国のAI企業が自然科学の分野に力を入れるなか、あえてビジネス調査という隙間を狙った形です。
日本市場とビジネスへの影響
Sakana AIは、日本のAI業界にとって特別な存在です。
2023年7月に、元Googleのデイビッドハさんやライオンジョーンズさんらが東京で創業しました。
そして創業からわずか1年あまりでユニコーン(企業価値10億ドル超の未上場企業)になりました。
2024年にはメガバンクやNEC、SBIグループなど国内大手から評価額2,200億円で出資を受けています。
2026年1月にはGoogleとの戦略的提携も発表しました。
この会社が、巨大なGPU投資で競う「規模の勝負」とは一線を画している点も注目です。
少ない計算資源でも賢く動く技術を磨いてきました。AB-MCTSはその象徴です。
日本企業にとって、海外サービスではなく国産で日本語に強いリサーチAIが選べる意味は大きいでしょう。
機密性の高い市場調査を、国内のサービスで完結できる安心感もあります。
よくある質問(FAQ)
Q. Sakana Marlinは個人でも使えますか?
料金が月額20万円からと高めなため、基本は企業向けです。個人での利用は現実的ではありません。経営企画や投資、市場調査を行う部署での導入が想定されています。
Q. 調査に8時間もかかるのは遅くないですか?
すぐ答えが欲しい用途には向きません。ただし、人間が何日もかける深い調査を半日で終えると考えれば、むしろ速いといえます。スピードより質を求める場面に向いています。
Q. ChatGPTのDeep Researchで十分では?
手軽さならDeep Researchが上です。一方Marlinは、より長時間かけてビジネス調査に特化したレポートを作ります。80ページの本格的な資料や、スライドまで必要な場面で強みを発揮します。
Q. AB-MCTSの技術は公開されていますか?
はい。Sakana AIは木探索のソフトウェア「TreeQuest」を、Apache 2.0ライセンスで公開しています。技術者なら、その仕組みを自分で確かめることもできます。
まとめ
今回のポイントを振り返ります。
- Sakana AIが初の商用サービス「Sakana Marlin」を2026年6月15日に発表した
- AIが平均8時間かけて自律的に調べ、最大80ページのレポートを作る
- 独自技術「AB-MCTS」で「広さ」と「深さ」を自動で切り替える
- 料金は月額約20万円(15回)と約40万円(60回)の法人向け2プラン
- スピード重視のDeep Researchと違い、ビジネス調査の「深さ」に特化している
まずは自社の市場調査のどこに時間がかかっているかを書き出し、AIに任せられる部分を考えてみましょう。

