- リコーが2026年6月、工場で働く「多能工ヒューマノイド」を初公開しました
- 1台で「運ぶ・つかむ・しまう・戻る」など4つの作業を切り替えてこなします
- 体は中国Unitree製の人型ロボ「G1」、頭脳はAWSのクラウドで鍛えられています
- VRヘッドセットや360度カメラ「THETA」で動きの学習データを集めています
- すでに自社工場で実証を開始、今夏には一部の工程を任せる計画です
「ロボットが工場で人と同じように複数の仕事をこなす」。そんな未来が、もうすぐそこまで来ています。
リコーが2026年6月、工場で働く人型ロボットを公開しました。1台で4つの作業をこなす「多能工」タイプです。この記事では、何ができるのか、どんな仕組みなのか、日本のものづくりにどう関わるのかを、やさしく解説します。
リコーが披露した「多能工ヒューマノイド」とは
リコーは「AWS Summit Japan 2026」でこのロボットを披露しました。
開催は2026年6月25日〜26日、場所は幕張メッセです。AWS(アマゾンのクラウドサービス)が主催する大きなイベントです。
会場では、人型ロボットが実際に作業するデモが行われました。
「多能工」とは、1人で複数の作業をこなせる人材のことです。日本の製造業で昔から大切にされてきた考え方です。
リコーはこれをロボットで実現しようとしています。つまり「1台で何役もこなすロボット」を目指しているのです。
1台で4つの作業を切り替える仕組み
このロボットがすごいのは、作業を切り替えながら連続でこなせる点です。
具体的には、次の4つの動きを順番に実行します。
- ピック&プレース:製造ラインからインクジェットヘッド(プリンターの部品)を取り出し、台車の決まった位置に置く
- ホールド&プッシュ:両手で台車の取っ手をつかみ、目的の場所まで押していく
- オープン&ストレージ:棚の引き出しを開け、部品をしまって、引き出しを閉める
- ムーブトゥポイント:作業が終わったら、最初の位置まで自分で戻る
「部品を取る → 運ぶ → しまう → 戻る」という一連の流れを、1台でやりきるわけです。
これまでの工場ロボットは、決まった1つの作業だけを高速でこなすのが得意でした。でも作業が変わると使えません。
多能工ヒューマノイドは、人間の作業員のように場面に応じて動きを変えられるのが大きな違いです。
体は中国製、頭脳はAWSクラウド
このロボットの中身を見てみましょう。
体(ハードウェア)には、中国のUnitree(宇樹科技)が作る人型ロボット「Unitree G1」を使っています。
身長は約127センチ、重さは約35キロ。関節は23カ所も動きます。価格は日本での販売で300万円台からと、人型ロボットとしては手ごろです。
一方で、頭脳(AI)はリコーがAWSのクラウド上で鍛えています。
- 学習データの保管に「Amazon S3」
- 大量の計算に「AWS ParallelCluster」
- 仮想空間での練習にNVIDIAの「Isaac Sim」
頭脳の中心はVLA(映像と言葉から動きを生み出すAI)です。カメラで見た映像と指示の言葉から、次の動作を自分で考えて実行します。
VRと360度カメラで動きを覚えさせる
ロボットに動きを覚えさせるには、大量の「お手本データ」が必要です。リコーは2つの工夫でこれを集めています。
1つ目はVRヘッドセットです。人がVRを装着してロボットを遠隔操作し、その動きを記録します。人の自然な動作がそのままお手本になります。
2つ目は360度カメラ「RICOH THETA」です。実際の工場を撮影し、その映像から3Dの仮想空間を作ります。
この仮想空間の中なら、ロボットは何度でも安全に練習できます。本物の工場を止めずに済むのが利点です。
THETAはリコーの得意な製品です。自社の強みをロボット開発に活かしている点が興味深いところです。
すでに自社工場で実証スタート
このロボットは展示だけの話ではありません。すでに実際の工場で試されています。
リコーが開発を始めたのは2025年末から。スピード感のある取り組みです。
自社工場でのPoC(概念実証=本格導入前のお試し)では、こんなことも確認されています。
ロボットがクリーンルームからエアシャワーを通り、ドライルームまで自分で移動するという実験です。場所をまたいで自律的に動けるかを試しています。
リコーは今夏までに、一部の工程を実際にロボットに任せるより実用的な実証を始めたい考えです。「お試し」から「導入」へ、着実に近づいています。
他社のヒューマノイドと何が違う?
2026年は「ヒューマノイド商用化の年」とも言われ、世界中で開発競争が起きています。主なライバルと比べてみましょう。
- テスラ「Optimus」:価格は2万〜3万ドル(約300〜450万円)を目標。2026年に最大10万台の生産を計画する物量勝負
- Figure AI:2026年から外部販売を開始。量産による低コスト化が強み
- Unitree R1 Air:約4,900ドル(約75万円)と世界最安クラス
- 川崎重工「Kaleido」:日本勢の代表格で、長年ヒューマノイドを開発
海外勢の多くは「ロボット本体を作って売る」ことに力を入れています。中国は世界出荷の約9割を占めるとも言われます。
これに対しリコーの特徴は、本体は外部から買い、AIと現場ノウハウで勝負する点です。実際の工場作業に合わせ込む力が問われます。
日本のものづくりにどう関わる?
このニュースは、日本の製造業にとって大きな意味を持ちます。
日本の工場は今、深刻な人手不足に直面しています。特に地方の工場では、働き手の確保が年々難しくなっています。
多能工ヒューマノイドは、まさにこの課題への答えになりえます。1台で複数の作業をこなせれば、少ない人数でも工場が回せるからです。
ある工場の現場を想像してみてください。夜間は人がいなくても、ロボットが部品を運び、棚にしまい、また定位置に戻る。そんな働き方が現実味を帯びてきました。
「多能工」という日本ならではの考え方を、日本企業がロボットで形にしようとしている点も注目です。海外の物量勝負とは違う道を歩んでいます。
よくある質問(FAQ)
Q1. このロボットはもう買えますか?
いいえ。現在は自社工場での実証段階です。一般販売の発表はまだありません。まずはリコー社内での実用化を目指しています。
Q2. 本体が中国製なのはなぜですか?
人型ロボットの本体(Unitree G1)は中国製ですが、安価で高性能だからです。リコーはAIと現場ノウハウの開発に集中する戦略をとっています。
Q3. 工場で働く人の仕事はなくなりますか?
当面は、人手不足の補完が中心と見られます。重い物を運ぶ作業や夜間作業など、人が足りない部分をロボットが担うイメージです。
Q4. 「VLA」とは何ですか?
Vision-Language-Action(映像・言葉・行動)の略です。カメラ映像と言葉の指示から、ロボットが次の動きを自分で考えて実行するAIのことです。
Q5. いつ本格導入されますか?
リコーは今夏までに、一部の工程を任せる実証を始めたい考えです。本格的な導入時期はまだ明らかにされていません。
まとめ
リコーの多能工ヒューマノイドについて、要点を振り返ります。
- 2026年6月、AWS Summit Japanで工場向け人型ロボットを公開
- 1台で「取る・運ぶ・しまう・戻る」の4作業を切り替えてこなす
- 体はUnitree G1、頭脳はAWSクラウドとVLA(映像と言葉から動くAI)
- VRと360度カメラ「THETA」で学習データを収集
- すでに自社工場で実証中、今夏に一部工程を任せる計画
人手不足に悩む日本のものづくりにとって、心強い一歩になりそうです。今後の実証結果に注目してみてはいかがでしょうか。

