NTTデータ9000人がCodex|3日の分析が30分に

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • NTTデータが「OpenAI Codex(AIのプログラミング助手)」を約9,000人に広げました
  • 5人のベテランで3日かかった障害分析が、わずか30分に短縮されました
  • 使うのは技術者だけでなく、経理や事務の人まで幅広い職種です
  • ChatGPT Enterpriseの社内満足度は96%超、生産性が上がったと答えた人は95%超でした
  • Codex・Claude Code・GitHub Copilotの違いと、企業が導入前に確認すべき4つのポイントもわかります

「AIでプログラミングが楽になる」とよく聞きますが、大企業が本気で全社に配ると何が起きるのでしょうか。国内最大級のシステム開発会社NTTデータが、その答えを数字で示しました。5人のベテラン技術者が3日かけていた障害の原因調査が、AIを使うとたった30分で終わったのです。この記事では、何が起きたのか、他のAIツールとどう違うのか、そして日本のあなたの会社にどう関係するのかを、やさしく解説します。

NTTデータが約9,000人にCodexを配った

2026年7月23日、OpenAIが1つの事例を公開しました。

主役はNTTデータグループです。日本を代表する巨大なシステム開発会社(SIer)です。

この会社が「OpenAI Codex」を約9,000人の社員に広げたと発表しました。

Codexとは、OpenAIが作ったAIのプログラミング助手です。人間の指示を受けて、コードを書いたり、バグを探したり、システムの不具合を調べたりできます。

驚くのは使う人の範囲です。エンジニアだけではありません。

経理や事務など、プログラムを書かない職種の人まで使っているのです。会社全体の働き方が変わりはじめています。

3日かかった障害分析が30分に

今回いちばん注目されたのが、ある「事件」の解決スピードです。

重要なシステムでトラブルが起きたときの話です。

これまではベテラン技術者5人が、3日かけて原因を調べていました。複雑なシステムほど、どこが悪いのか突き止めるのは大変な作業です。

ところがCodexを使ったところ、同じ調査がわずか30分で完了しました。

3日を分数に直すと、営業時間だけでも20時間以上です。それが30分になったのですから、体感の速さは想像を超えます。

ベテラン5人が3日がかりで挑む難問を、優秀な調査員が横について一気に手がかりを整理してくれる。そんなイメージです。

NTTデータのAI技術部門の佐藤宏昭氏は、「Codexは会社のAIへの見方を変えた」と語っています。ChatGPTが登場したときと同じくらいの衝撃だった、という意味です。

エンジニア以外もこう使っている

「AIのプログラミング助手」と聞くと、技術者だけの道具に思えます。

でもNTTデータでは、事務職の人たちも日常業務でCodexを活用しています。具体的な使い方を見てみましょう。

  • クレジットカードの明細から交通費だけを自動で抜き出す
  • 出張の経費精算のフォームを自動で埋める
  • Excelのデータを分析して、報告書のもとを作る
  • 大量のファイルを一気に整理・仕分けする

たとえば、月末に何百枚もの領収書と格闘する経理担当者を想像してください。

これまで1枚ずつ目で確認していた作業を、Codexに「この明細から交通費を抜き出して」と頼むだけで終わります。数時間の単純作業が、数分に縮むのです。

グローバルAIオフィス責任者の庄野翔司氏は、Codexは「開発者の補助を超えて、すべての社員に新しい働き方をもたらす」と述べています。

満足度96%超という高い評価

数字も好調です。

NTTデータはCodexを配る前に、まず全社に「ChatGPT Enterprise(企業向けの安全なChatGPT)」を導入していました。

その社内アンケートの結果がこちらです。

  • 96%超の社員が「満足している」と回答
  • 95%超の社員が「生産性が上がった」と実感

ほとんど全員が良い評価をしている、という結果です。

ここに成功のカギがあります。いきなり難しいCodexから始めたのではありません。

まず身近なChatGPTでAIに慣れてもらい、社員に「AIを使う習慣」ができてから、次のステップとしてCodexを配ったのです。この順番が、スムーズな普及につながりました。

Codex・Claude Code・Copilotの違い

AIのプログラミング助手は、Codexだけではありません。

「うちの会社ならどれがいいの?」と気になった方のために、主要なツールを整理します。設計思想でざっくり3タイプに分かれます。

  • ターミナル型(Codex・Claude Code):黒い画面に指示を打ち込み、AIが自律的に作業する。大きな変更やデバッグに強い
  • エディタ組み込み型(GitHub Copilot・Cursor・Windsurf):普段使う開発ソフトの中でAIが補完してくれる。チームで統一しやすい
  • フルおまかせ型(Devin):課題を渡すと最後まで自律的にこなす。料金は高め

料金の目安も幅があります。CursorやCopilot、Claudeの個人向けは月20ドル前後です。一方、Devinのチームプランは月数百ドル規模になります。

選び方のヒントはこうです。ChatGPTの有料版を契約済みなら、Codexは追加費用なしで使えます。大規模なコード改修やデバッグが多いならClaude Code、チームで足並みをそろえたいならCopilot Business(1人あたり月19ドル)が向いています。

日本の会社に何が起きるのか

この話は、遠い大企業だけのものではありません。

日本全体でAI導入の波が来ています。2026年4月時点で、大企業の59.1%が組織として生成AIを活用中です。

一方、中小企業は30%前後にとどまります。その差は約30ポイント。この差が、これからの競争力を左右しそうです。

同じSIerの富士通も動いています。国内の全プロジェクト約2万件のうち、すでに約3割で生成AIを使用中です。2025年度末には、この割合を5〜6割へ引き上げる方針です。

背景には「脱・人月型」という大きな流れがあります。

これまでSIerは「何人が何か月働いたか」で料金を決めてきました。でもAIが1人分の仕事を数十倍に速めると、この仕組みは合わなくなります。NTTデータの30分の事例は、その未来を先取りしているのです。

導入前に確認したい4つのポイント

「便利そうだから、うちもすぐ配ろう」と焦るのは危険です。

NTTデータも、社内に「OpenAI Excellence Center」という専門チームを作り、安全に使うルールを整えてから配っています。会社で導入するなら、次の4点を契約や設定の段階で必ず確認しましょう。

  • 権限の境界:ファイルの書き換えやコマンド実行を、許可制にできるか
  • サンドボックス:本番環境から隔離された安全な場所で動かせるか
  • 監査ログ:誰が何をAIにやらせたか、記録が残るか
  • 学習オプトアウト:自社のソースコードをAIの学習に使わせない設定ができるか

ちなみにセキュリティ認証も判断材料になります。SOC2 Type IIという認証は、GitHub Copilot・Claude Code・Google Gemini Codeが取得済みです。オンプレミス(自社サーバー内)での運用は、Claude CodeやTabnine Proが対応しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. Codexは無料で使えますか?

Codex単体の完全無料版はありません。ただしChatGPTの有料プラン(PlusやEnterprise)を契約していれば、追加費用なしで併用できます。まずは有料版のChatGPTから試すのが現実的です。

Q2. プログラミングを知らなくても使えますか?

使えます。NTTデータでも、経理や事務の人が交通費の抽出やExcel分析に使っています。「この明細から交通費を抜き出して」のように、日本語で指示できます。

Q3. 会社の秘密情報が漏れませんか?

企業向けプラン(Enterprise)では、入力した情報をAIの学習に使わない設定が基本です。とはいえ、記事後半で紹介した4つのポイントを確認してから配るのが安全です。

Q4. 中小企業でも導入できますか?

できます。9,000人規模のNTTデータは大がかりですが、まずは数人でChatGPTの有料版から始める方法があります。小さく試して効果を確かめてから、範囲を広げるのがおすすめです。

まとめ

今回の要点を振り返ります。

  • NTTデータがOpenAI Codexを約9,000人に展開した
  • 5人・3日かかった障害分析が、30分に短縮された
  • エンジニア以外の事務職も日常業務で活用している
  • ChatGPT Enterpriseの満足度は96%超と高評価だった
  • 導入時は権限・サンドボックス・監査ログ・学習オプトアウトを確認する

まずは自社の身近な業務で、AIに任せられる作業がないか1つ書き出してみましょう。それが第一歩になります。

参考文献