- 防衛省が2026年6月26日、AIによる偽情報「認知戦」への対応方針をまとめた分析資料を公開
- ウクライナでロシアが使った偽SNSアカウントやディープフェイク動画の手口を分析
- 「認知戦対応サイクル」を作り、AIで偽情報を素早く見つけて反論する体制をめざす
- 2027年までに情報戦に対応できる能力を整える計画。経産省やスタートアップとも連携
- 私たち一人ひとりが「偽情報を見抜く力」を持つことが、これからますます大切になる
SNSで見た動画が、実は本物そっくりの「ニセモノ」だったとしたら、あなたは気づけるでしょうか。AIの進化で、こうした偽情報を見抜くのはどんどん難しくなっています。そんな中、防衛省が新しい対策方針を公開しました。この記事を読むと、いま世界で起きている「認知戦」と、日本がどう守ろうとしているのかがわかります。
防衛省が公開した「認知戦」対策とは
2026年6月26日、防衛省がある分析資料を公開しました。
テーマは「認知戦(にんちせん)」への対応です。
認知戦とは、ウソの情報を流して、人々の考えや判断をあやつろうとする攻撃のことです。
武器を使う戦争とはちがい、SNSやニュースを通じて、こっそり心の中に入り込んできます。
この資料は、6月9日に開かれた「防衛力変革推進本部」という会議の議論をまとめたものです。
大きく分けて2つの内容があります。1つはウクライナで起きた事例の分析、もう1つは日本の今後の対応方針です。
ウクライナで起きた偽情報攻撃の実例
資料では、ロシアがウクライナに対して行った情報操作が詳しく分析されています。
なりすましサイトと偽アカウント
ロシアは、西側の有名なメディアにそっくりな「なりすましサイト」を作りました。
本物の新聞社のフリをして、ウソのニュースを流していたのです。
さらに、にせのSNSアカウントをたくさん用意しました。
そのアカウントから捏造(ねつぞう=でっち上げ)した記事を広め、本当のことのように見せかけました。
ゼレンスキー大統領の偽動画
もっとも衝撃的だったのが、ディープフェイク動画です。
ディープフェイク(AIで作る本物そっくりの偽映像)で、ゼレンスキー大統領が「降伏しよう」と国民に呼びかける動画が作られました。
もちろん、本人はそんなことを言っていません。
この偽動画はSNSで一気に拡散しました。AIがあれば、国のトップの発言すらねつ造できてしまうのです。
なぜAIで認知戦が危険になったのか
これまでも偽情報はありました。では、なぜ今あらためて問題になっているのでしょうか。
答えはAIの進化です。
昔は、偽の映像や文章を作るのに高い技術とお金が必要でした。
でも今は、AIを使えば、だれでも短時間で大量の偽情報を作れます。
本物の写真や声と見分けがつかないレベルのものが、ボタン1つで完成してしまいます。
防衛省も資料の中で、こう指摘しています。「AI技術の進展等により、偽情報の拡散が加速する等、認知戦への対応がより一層困難になる可能性がある」と。
つまり、AIによって攻撃する側がどんどん有利になっている、ということです。
日本がめざす「認知戦対応サイクル」
では、日本はどう守ろうとしているのでしょうか。
防衛省が打ち出したのが「認知戦対応サイクル」という仕組みです。
これは、次の3つのステップをぐるぐる回し続ける考え方です。
- 情報収集・分析:あやしい偽情報をいち早く見つける
- 発信:正しい情報や日本の立場を、国内外に向けてしっかり伝える
- 評価・改善:対応がうまくいったか確かめ、次に活かす
この一連の流れを止めずに回すことで、偽情報に素早く反応できるようにします。
そして、この情報収集にはAIを含む最新技術を積極的に取り入れる方針です。
SNSにあふれる膨大な投稿の中から、あやしい動きをAIで効率よく見つけ出す。攻撃に使われるAIに、守る側もAIで対抗するというわけです。
2027年までに体制を整える
防衛省は、具体的な目標時期も示しています。
2027年までに、認知領域を含む情報戦に対応できる能力を整える計画です。
日本の防衛政策の正しさを、国内だけでなく海外にも能動的に発信する体制づくりを進めます。
偽情報が出てきたとき、すぐに反応して打ち消せるようにすることも目標です。
海外ではどう対策している?
認知戦への対策は、日本だけの課題ではありません。世界中の国や組織が頭を悩ませています。
たとえばEU(ヨーロッパ連合)では、「AI法(AI Act)」という新しいルールが2026年8月から本格的に動き始めます。
この法律には、ディープフェイクには「これはAIが作ったものです」と表示させる、といった透明性のルールも含まれています。
フランスでは、外務省が専門チームを作り、偽情報を24時間監視する取り組みも行われています。
こうして比べてみると、日本の今回の動きは、世界の流れに歩調を合わせたものだとわかります。
ただし、ルールで縛る「規制」が中心の海外に対し、日本はAIで素早く検知・反論する「サイクル」づくりに重点を置いている点が特徴です。
日本の私たちにとって何が変わる?
「国の防衛の話でしょ?」と、自分には関係ないと思うかもしれません。
でも、認知戦のターゲットは私たち一般の市民です。
偽情報は、新聞やテレビではなく、あなたが毎日見るSNSのタイムラインに流れてきます。
たとえば、ある災害が起きたとき。AIが作った「ニセの被害動画」が拡散して、人々がパニックになる。そんなことも実際に起こりえます。
選挙の前に、ある候補者の偽の発言動画が広まれば、投票の結果すら左右されかねません。
友達から回ってきた1本の動画。それが、だれかの意図したウソかもしれない時代になっているのです。
だからこそ、国の対策と同じくらい、私たち一人ひとりが「これは本当かな?」と一度立ち止まる習慣を持つことが大切になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 認知戦とふつうの戦争はどう違うのですか?
ふつうの戦争は武器を使って戦います。認知戦は、ウソの情報を使って人々の考えや判断をあやつる「心への攻撃」です。目に見えにくく、戦っていることに気づきにくいのが特徴です。
Q. ディープフェイクは素人でも見分けられますか?
正直、年々むずかしくなっています。昔は不自然な口の動きなどで気づけましたが、今はかなり精巧です。動画1本だけで信じず、公式サイトや複数の信頼できるメディアで確認するのが確実です。
Q. 防衛省は私たちのSNSを監視するのですか?
今回の方針は、外国などからの偽情報の動きをAIで見つけることが目的です。狙いは「偽情報の検知」であり、信頼性・透明性・説明責任を伴う形で進めるとされています。
Q. 私たちが今日からできる対策はありますか?
あります。気になる情報を見たら、すぐにシェアせず一度立ち止まること。発信元はどこか、ほかのメディアも報じているかを確認するだけで、多くの偽情報にだまされにくくなります。
まとめ
今回のポイントを振り返ります。
- 防衛省が2026年6月26日、AI偽情報による「認知戦」への対応方針を公開した
- ウクライナでの偽SNSアカウントやゼレンスキー大統領の偽動画を分析した
- AIの進化で偽情報が大量・高精度になり、対応が難しくなっている
- 「認知戦対応サイクル」を作り、AIで検知・反論する体制を2027年までにめざす
- 狙われるのは市民であり、私たちの「見抜く力」が最後の防波堤になる
まずは身近な一歩として、あやしい情報を見たら「すぐシェアせず、一度確かめる」ことから始めてみましょう。

