Midjourney反撃|ディズニーもAIで制作?

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • MidjourneyがディズニーやユニバーサルなどにAI利用の内部資料を開示するよう要求しました
  • もとは2025年6月に映画大手がMidjourneyを著作権侵害で訴えた裁判です
  • Midjourneyの反論は「あなたたちも同じようにAIを使っているはず」というもの
  • 6月15日、判事は開示範囲を「消費者向けAI」だけに限定。Midjourneyは不服として上訴中
  • この争いは、生成AIと著作権のルールを決める重要な先例になる可能性があります

「自分が訴えられたら、相手の弱みを突く」。そんな展開が、いまアメリカの裁判所で起きています。画像生成AI「Midjourney(ミッドジャーニー)」が、訴えてきた映画大手に対して「あなたたちも社内でAIを使っているでしょう?」と逆に情報開示を迫っているのです。生成AIと著作権の未来を左右するこの裁判、何がポイントなのかをやさしく解説します。

何が起きた?Midjourneyの「逆質問」作戦

2026年7月、あるニュースがAI業界をざわつかせました。

画像生成AIのMidjourneyが、ディズニー・ユニバーサル・ワーナーブラザースという映画大手3社に対し、「社内でどうAIを使っているのか、資料を全部出してほしい」と裁判所に求めたのです。

これは、もともとMidjourneyが「著作権を侵害した」と訴えられている裁判での動きです。

訴えられた側が、訴えた側に情報開示を迫る。まるで攻守が入れ替わったような展開に、注目が集まっています。

なぜMidjourneyはこんな作戦に出たのでしょうか。まずは裁判の全体像から見ていきましょう。

そもそもこの裁判は何?ディズニー vs Midjourney

この裁判の始まりは、2025年6月11日にさかのぼります。

ディズニー、NBCユニバーサル、ドリームワークスの3社が、Midjourneyを著作権侵害でカリフォルニアの裁判所に提訴しました。

訴えの中身は「キャラクターの無断コピー」

映画会社側の主張はシンプルです。

Midjourneyに指示を出すと、スター・ウォーズのキャラクターや、バート・シンプソン、シュレック、人魚姫のアリエル、ウォーリー、ミニオンズなどが簡単に生成できてしまう、というものです。

訴状の中で映画会社は、Midjourneyを「盗作の底なし沼」「著作権を無視した自動販売機」と強い言葉で非難しました。

賠償額は20億円を超える可能性

請求額も巨大です。

映画会社は1作品あたり15万ドル(約2,200万円)の賠償を求めています。

訴状には150以上の作品が侵害されたとしてリストアップされており、もし全面勝訴すれば賠償総額は2,000万ドル(約30億円)を超える計算です。

ちなみに映画会社側は、Midjourneyには2,100万人の有料会員がいて、前年に3億ドル(約440億円)の売上があったと主張しています。決して小さな相手ではありません。

Midjourneyの反撃「みんなやってるでしょ」戦略

訴えられたMidjourneyは、どう反論したのでしょうか。

その柱が2つあります。

1つ目は「フェアユース」の主張

Midjourneyは「フェアユース(公正な利用)」を主張しています。

フェアユースとは、アメリカの著作権法にある考え方です。研究や批評などの目的なら、著作物を一部使っても許される場合がある、というルールです。

AIの学習も「フェアユースにあたる」というのがMidjourney側の言い分です。

2つ目は「あなたたちも同じことをしている」

そしてもう1つが、今回話題の反撃です。

Midjourneyの弁護士ボビー・ガジャー氏はこう説明しています。もし映画会社が、ライセンスを得ていない他社の著作物でAIを学習させ、社内の絵コンテ作りや企画に使っているなら、それはMidjourneyの行為と同じだ、というのです。

つまり「著作物でAIを学習させるのは業界の常識(当たり前のこと)」だと証明しようとしているわけです。

この作戦は「みんなやっているじゃないか」という主張なので、法律の世界では「unclean hands(きれいでない手)」の抗弁とも呼ばれます。訴えた側にも落ち度があるなら、一方的に責めるのはおかしい、という考え方です。

6月の裁判所命令と今回の申し立て

Midjourneyのこの作戦、実は一度ブレーキがかかっています。

6月15日、判事が開示範囲を限定

2026年6月15日、担当のジョエル・リッチリン判事(マジストレイト判事)が判断を下しました。

Midjourneyが求めていた「映画会社のAI利用に関する幅広い情報開示」を認めなかったのです。

理由は「映画会社がAIをどう使っているかは、Midjourneyが著作権を侵害したかどうかとは関係がない」というもの。

開示するのは消費者向け(一般の人が使う)AIサービスの情報だけでよい、と範囲を狭めました。

Midjourneyは上訴で巻き返しを狙う

これに納得しないMidjourneyは、上位のジョン・クロンスタット判事に「この判断をくつがえしてほしい」と申し立てました。これが2026年7月の動きです。

Midjourneyが求めている資料は、かなり広範囲にわたります。

  • AIに関する事業計画
  • 社内の研究レポート
  • AIの学習データやモデルの中身(モデルウェイト)
  • 映画やテレビ制作でAIをどう使っているかの資料
  • AI戦略を議論した取締役会の資料

一方の映画会社側の主任弁護士デビッド・シンガー氏は、これを「fishing expedition(証拠あさり)」だと批判しています。自分たちの不正から目をそらすための作戦だ、という反論です。

なぜこの裁判がそんなに重要なのか

「AI企業と映画会社のケンカでしょ?」と思うかもしれません。

でも、この裁判の結果はこれからの生成AIのルール全体に大きく影響します。

ポイントは「証拠開示(ディスカバリー)の範囲」です。

もしMidjourneyが勝てば、AIをめぐる裁判で「訴えた側のAI利用まで調べられる」という先例ができます。映画会社にとっては、社内の秘密まで明かすことになりかねません。

逆にMidjourneyが負ければ、今のように開示範囲が限られたままになります。

クリエイターの権利を守りたい人にとっても、AIを開発したい企業にとっても、見逃せない一戦なのです。

この裁判の行方が、AI時代の「どこまでが許されるか」の線引きを決めるかもしれません。

他のAI著作権訴訟との比較

実は、AIと著作権をめぐる裁判はこれだけではありません。似たケースと比べてみましょう。

Anthropicは15億ドルで和解

AI企業のAnthropic(アンソロピック)は、作家グループから著作権侵害で訴えられていました。

結果は15億ドル(約2,200億円)の和解金を支払うことで決着しました。

このとき担当判事は「海賊版サイトからのコピーは著作権侵害そのものだ」と述べ、フェアユースを認めませんでした。

AI企業にとっては、学習データの入手ルートが問われる厳しい判断でした。

Midjourneyのケースが特別な理由

Anthropicの件が「学習データの入手方法」を問うたのに対し、Midjourneyの件は「生成される画像そのもの」が問われています。

ケース争点状況
ディズニー vs Midjourneyキャラクター画像の生成係争中(開示範囲で攻防)
作家 vs Anthropic学習データの入手方法15億ドルで和解

さらにMidjourneyの「訴えた側もAIを使っている」という反撃は、これまでの裁判ではあまり見られなかった戦略です。

だからこそ、多くの専門家が結果に注目しているのです。

日本のクリエイターや企業への影響

「アメリカの話でしょ?」と感じるかもしれません。

でも、この裁判は日本にとっても他人事ではありません。

日本の法律とアメリカの違い

日本には、アメリカのような「フェアユース」の規定はありません。

その代わり著作権法30条の4という条文があります。AIの学習目的なら、著作物を広く使ってよいという内容です。

ただし「著作権者の利益を不当に害する場合」は制限される、とも書かれています。この線引きが、いま日本でも議論の的になっています。

日本でも権利保護の動きが加速

2025年10月31日には、日本のコンテンツ産業の団体が動きました。

OpenAIの映像生成AI「Sora 2」のやり方を批判し、学習データの透明性を求める共同声明を発表したのです。

「勝手に学習して、いやなら断ってね」という方式(オプトアウト)ではなく、「許可を得てから使う」方式(オプトイン)を求める声が強まっています。

アメリカのMidjourney裁判で「学習データの中身」が明らかになれば、日本の議論にも影響を与える可能性があります。

日本のクリエイターや企業も、この裁判の行方を知っておいて損はありません。

よくある質問(FAQ)

Q. Midjourneyは今も使えますか?

はい、裁判は続いていますが、Midjourney自体は通常どおり利用できます。ただし、有名キャラクターを無断で生成する使い方は、著作権侵害になる恐れがあるので注意が必要です。

Q. 「フェアユース」とは何ですか?

アメリカの著作権法にある考え方です。研究・批評・報道などの目的なら、著作物を一部使っても許される場合があります。ただし、どこまで許されるかは裁判ごとに判断されます。

Q. なぜMidjourneyは映画会社の資料を欲しがるのですか?

「映画会社も同じようにAIを使っているなら、それは業界の常識だ」と証明したいからです。相手にも落ち度があると示せば、自分だけが責められるのはおかしい、と主張できます。

Q. この裁判はいつ決着しますか?

まだ開示範囲を争っている段階なので、最終的な判決までには時間がかかる見通しです。まずは7月の上訴に対する判断が次の焦点になります。

Q. 日本のAIサービスにも影響しますか?

直接の効力はありませんが、世界的な議論の流れをつくる可能性があります。日本でも著作権法30条の4の解釈をめぐる議論が進んでおり、参考にされることが考えられます。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • Midjourneyが、訴えてきた映画大手にAI利用の開示を逆に要求した
  • もとは2025年6月、ディズニーらが著作権侵害でMidjourneyを提訴した裁判
  • Midjourneyの反論は「フェアユース」と「あなたたちも同じことをしている」の2本柱
  • 6月15日、判事は開示範囲を消費者向けAIに限定。Midjourneyは上訴中
  • 結果は生成AIと著作権の重要な先例になり、日本の議論にも波及しうる

まずは、あなたが使っているAIサービスがどんなデータで学習しているのか、少し気にしてみるところから始めてみませんか。

参考文献

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