- AnthropicがSamsung(サムスン)と、自社AI用の専用チップづくりを協議していると報じられました
- 使う予定なのは「2nm(ナノメートル)」という最先端の製造技術です
- この報道が出た直後、NVIDIAなど半導体メーカーの株価が一気に下がりました
- 狙いは、AIチップを1社だけに頼る状態(NVIDIA依存)から抜け出すことです
- まだ初期段階の話で、いつ完成するかは決まっていません
「AIの会社が、なぜ自分でチップまで作ろうとするの?」と思ったことはありませんか。2026年7月、ChatGPTのライバル「Claude」を作るAnthropicが、韓国サムスンと専用チップを協議していると報じられました。このニュースだけで半導体株が大きく揺れています。この記事を読むと、何が起きて、なぜ株価が動き、私たちにどう関係するのかがまるごとわかります。
そもそも何が起きたの?サムスンとの協議の中身
まず事実から整理します。
2026年7月2日、米メディアThe Informationが「AnthropicがSamsungと専用AIチップの製造を協議中」と報じました。日本ではITmediaなどが7月3日に伝えています。
Anthropicは、対話AI「Claude(クロード)」を開発する会社です。今回わかったのは、その計算を動かす「頭脳」にあたるチップを、自分たちで設計しようとしているという話です。
協議の中身も具体的です。サムスンが提供を検討しているのは、次の2つと報じられています。
- 2nm(ナノメートル)プロセス…回路をものすごく細かく作る最先端の製造技術です。細かいほど電気を食わず、性能が上がります
- 先端パッケージング…計算する部分と記憶する部分(メモリ)を近づけて、データのやり取りを速くする技術です
ただし、話はまだ入り口の段階です。「チップに何をさせるか」「どれくらいの性能にするか」「サーバーにどう組み込むか」すら、これから決める状態だと報じられています。つまり設計図が完成しているわけではありません。
なぜAnthropicは自社チップを作りたいの?
ここが今回のいちばん大事なポイントです。
今、AIの計算にはNVIDIA(エヌビディア)のGPUという部品がほぼ必須です。世界中のAI企業がNVIDIAに殺到しているため、手に入りにくく、値段も高いという状態が続いています。
1社の部品に頼りきると、供給が止まったり値上げされたりしたときに逃げ場がありません。会社の生命線を他社に握られている、とも言えます。
そこでAnthropicが進めているのが「チップの分散作戦」です。すでに複数の計算基盤を組み合わせて使っています。
- Google(グーグル)のTPU…約100万個規模を確保し、2026年後半までに導入する計画です
- Amazon(アマゾン)のTrainium…今後10年で1000億ドル(約15兆円)超をAWSに投じ、最大5GW分の計算力を押さえます
- Broadcom(ブロードコム)との専用チップ…210億ドル(約3兆円)規模の契約を結んでいます
ここにサムスンが加われば、選択肢はさらに増えます。狙いは、性能もコストも自分たちの都合に合わせられる「自社専用チップ」を持つこと。ひとことで言えば「脱NVIDIA」への一手です。
背景には急成長もあります。Anthropicの年間売上ペースは約300億ドルに達し、2025年末の約90億ドルから一気に伸びました。稼ぐAI企業ほど、計算力の確保が最優先課題になっているのです。
半導体株がいっせいに急落した理由
この報道が出た直後、市場は大きく反応しました。
半導体銘柄を集めたフィラデルフィア半導体指数は、2日間で約12%も下落しました。ハイテク株の多いナスダック100も、つられて約2%下げています。
個別の値下がりも目立ちました。
- Marvell(マーベル)… 約9.8%安
- Arm(アーム)… 約6.6%安
- Micron(マイクロン)… 約5.5%安
- AMD… 約4.3%安
- Broadcom… 約2.4%安
- NVIDIA… 約1.4%安
- TSMC(台湾積体電路)のADR… 約2.3%安
なぜ下がったのでしょうか。投資家がこう考えたからです。「大手AI企業が次々と自前のチップを持つなら、既存メーカーからの注文が減るかもしれない」。
実際、AnthropicのライバルであるOpenAIも、6月にBroadcomと組んで自社チップ「Jalapeno(ハラペーニョ)」を開発中と伝えられました。AI企業の「自前チップ化」が続けて表面化したことが、市場の不安に火をつけた形です。
他社と比べてどう違う?自前チップ競争を整理
Anthropicは決して先頭ランナーではありません。むしろ大手は先に動いています。ここで主要プレイヤーを並べてみましょう。
- Google…「TPU」を長年自社開発。検索やGeminiなど自社サービスで実績があります
- Amazon…学習用の「Trainium」、推論用の「Inferentia」を展開。AWSで外部にも提供中です
- OpenAI…Broadcomと「Jalapeno」を開発中と報道。ここは推論に特化した設計とされます
- Anthropic…今回のサムスン協議で自社設計に本格参入か。ただしまだ初期段階です
従来の「NVIDIAのGPUを買って使う」やり方と、今回の「自社で設計して専用工場で作る」やり方は、根本的に違います。
汎用のGPUは何でもこなせる代わりに割高です。自社チップは自分のAIに最適化できるため、うまくいけば電力もコストも大きく下げられます。ただし設計や量産には莫大な時間とお金がかかり、失敗のリスクも高い。ここが自前チップ競争の難しさです。
サムスンにとっても、この協議は意味が大きい出来事です。チップ製造の受託ではTSMCが世界首位を走っており、サムスンは追う立場。大型のAI顧客をつかめれば、最先端2nmでの巻き返しにつながる可能性があります。
日本のユーザーや企業への影響は?
「韓国と米国の話でしょ?」と感じるかもしれません。でも、日本にも関わってきます。
まず身近なところから。Anthropicの「Claude」は日本でも使えます。自社チップで計算コストが下がれば、将来的にサービスの値段や応答速度に良い影響が出るかもしれません。私たちが払う料金にもつながる話です。
次に産業面です。日本には半導体の製造装置や素材で世界的な強みを持つ企業が多くあります。AI企業がこぞって最先端チップを作り始めれば、2nm向けの装置や材料の需要が増える可能性があります。ここは日本にとって追い風になり得ます。
一方で注意点もあります。今回のように、たった一つの報道で株価が大きく動く時代になりました。AI関連の株や投資信託を持つ人は、ニュース一本で値動きが荒くなることを頭に入れておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
Q1. これはもう決定した話ですか?
いいえ。あくまで「協議中」という報道段階です。設計も生産時期も、まだ決まっていません。
Q2. なぜサムスンなの?NVIDIAではダメなの?
NVIDIAは汎用チップを売る会社で、設計は基本自社で持ちます。サムスンは他社の設計を預かって作る「工場役」を担えるため、Anthropicの専用チップを製造できるのです。
Q3. 2nmって何がすごいの?
回路をより細かく作れる最先端技術です。細かいほど省電力で高性能になり、同じ電気でより多くの計算ができます。
Q4. NVIDIAはこれで終わってしまうの?
いいえ。AI計算の主役は今もNVIDIAです。ただ、大手が自前チップを増やすと「NVIDIA一強」がやわらぐ可能性がある、という段階の話です。
Q5. Claudeの使い勝手はすぐ変わりますか?
すぐには変わりません。チップ開発は数年がかりが普通です。効果が出るのはまだ先の話と考えてよいでしょう。
まとめ
今回のニュースの要点を振り返ります。
- Anthropicが、サムスンと専用AIチップの製造を協議していると2026年7月に報じられました
- 使う技術は最先端の「2nmプロセス」と先端パッケージングです
- 狙いは、NVIDIAへの依存を減らす「脱NVIDIA」の一手です
- 報道直後、半導体指数は2日で約12%下落しました
- GoogleやAmazon、OpenAIも自前チップを進めており、業界全体の流れになっています
- まだ初期段階で、完成時期は未定です
まずはAnthropicの「Claude」を実際に触ってみて、AIの進化を自分の目で確かめることから始めてみてください。
参考文献
- ITmedia NEWS「Anthropic、Samsungと独自AIチップで協議か」
- The Information「Anthropic in Talks With Samsung to Manufacture Custom AI Chip」
- TechCrunch「Anthropic is discussing a new custom chip with Samsung」
- The Elec「Samsung and Anthropic Discuss Collaboration on 2nm AI Chips」
- Anthropic「Anthropic and Amazon expand collaboration for up to 5 gigawatts of new compute」



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