- Lex Fridmanポッドキャスト #490「State of AI in 2026」は4.5時間の超大作。AI研究者2名と徹底討論
- ゲストはNathan Lambert(Allen AI、RLHF研究のリーダー)とSebastian Raschka(LLM構築の著者)
- スケーリング則は「死んでいない」が、計算量だけでなく学習手法の質が重要に
- コーディングAI(Claude Code、Cursorなど)が開発者の働き方を根本的に変えつつある
- AGI到達時期は専門家間でも意見が分かれる。楽観論と慎重論の両方を紹介
AI研究者にとって「年に一度の健康診断」のような存在。
Lex Fridmanが2026年2月に配信したポッドキャスト #490「State of AI in 2026」は、4時間30分にわたりAIの現在地を徹底的に議論する超大作です。
ゲストはAI訓練のエキスパート2名。
LLM、コーディングAI、スケーリング則、米中AI競争、AGI——2026年のAI業界の全体像を1本のエピソードで把握できる貴重なコンテンツを、本記事で要点を解説します。
ゲスト紹介|AI訓練の最前線にいる2人
今回のゲストは、AIモデルの「作り方」を熟知する2人の研究者です。
- Nathan Lambert — Allen Institute for AI(Ai2)のポストトレーニング責任者。著書『The RLHF Book』はAIの強化学習に関する必読書
- Sebastian Raschka — 著書『Build a Large Language Model (From Scratch)』と『Build a Reasoning Model (From Scratch)』の著者。LLMの実装を一から教える第一人者
たとえるなら、Lambertは「AIの料理人(訓練担当)」、Raschkaは「AIのレシピ本の著者(構築方法の教育者)」。AIを使う側ではなく、作る側の視点から2026年のAIを語っています。
スケーリング則は死んだのか?
AI業界で最も議論を呼ぶテーマの1つがスケーリング則(Scaling Laws)です。「モデルを大きくし、データを増やし、計算量を増やせば性能が上がる」という法則で、GPT-4までの進化を支えてきました。
ポッドキャストでは、スケーリング則は「死んでいない」が「変質した」という見解が示されました。
- プレトレーニングのスケーリングは鈍化。テキストデータの質と多様性に限界が見え始めている
- ポストトレーニング(RLHF、DPOなど)のスケーリングは依然として有効
- 推論時間のスケーリング(テスト時に考える時間を増やす)が新たなフロンティア
たとえるなら、「エンジンを大きくすれば車は速くなる」時代が終わり、「タイヤの素材、空力設計、ドライバーの技術」など総合的な改善が必要な段階に入ったということです。
コーディングAI革命|Claude Code・Cursorが変える開発
ポッドキャストで大きく取り上げられたのがコーディングAIの爆発的進化です。
- Claude Code — AnthropicのCLIツール。ターミナルからAIにコーディングを任せる
- Cursor — AI統合型エディタ。コードの文脈を理解して提案する
- GitHub Copilot — VS Code統合のAIペアプログラマー
議論のポイントは、これらのツールがプログラマーの「補助」から「協働」へと進化していること。以前は1行ずつのコード補完でしたが、2026年現在は数百行のコードを生成し、テストまで自動で書くレベルに達しています。
Raschkaは「AIがコードを書く速度は人間の数倍だが、本当に難しいのはAIが書いたコードを人間が検証すること」と指摘。AIコーディングの恩恵を受けるには、むしろ従来以上のプログラミング知識が必要だという逆説を提示しています。
米中AI競争|DeepSeekが突きつけた現実
米中のAI競争も重要なテーマです。特にDeepSeekの台頭が議論を大きく動かしました。
- DeepSeek R1 — 米国の主要モデルに匹敵する推論性能を、はるかに低コストで実現
- 中国のAI企業は米国の半導体輸出規制にもかかわらず急速に進化
- オープンソースモデルの台頭がクローズドモデルのビジネスモデルを脅かしている
Lambertは「米国のAI優位性は思ったほど盤石ではない。中国は制約の中で創意工夫し、効率的なモデル開発を進めている」と警鐘を鳴らしています。
AGIへの道筋|楽観論と慎重論
番組の最後に議論されたのがAGI(汎用人工知能)の到達時期です。
- 楽観論 — 2027〜2030年にAGIレベルのシステムが登場する可能性。エージェントAIの進化が鍵
- 慎重論 — 現在のLLMアーキテクチャの延長線上にAGIはない。根本的なブレークスルーが必要
- 定義の問題 — そもそも「AGI」の定義が人によって異なる。一部のタスクでは既にAGIレベルという見方も
Raschkaは「AGIの夢は死んでいない。ただし、到達方法は当初の想定とは大きく異なるかもしれない」と述べ、スケーリングだけでなく新しいアーキテクチャや学習パラダイムの重要性を強調しています。
日本のリスナーへの示唆
4.5時間の議論から、日本のAI関係者が特に注目すべきポイントをまとめます。
- コーディングAIの導入 — 日本の開発現場でもClaude Code・Cursorの活用は急務。英語圏では既に標準ツール
- オープンソースの活用 — DeepSeek R1やLlama 4などオープンモデルの日本語ファインチューニングに商機
- AI人材育成 — Raschkaのような「ゼロから作れる」人材の育成が長期的な競争力に
よくある質問(FAQ)
Q. 英語のポッドキャストですが、日本語で視聴できますか?
公式には英語のみですが、YouTubeの自動翻訳字幕で日本語表示が可能です。また、トランスクリプト(文字起こし)が公式サイトで公開されており、ブラウザの翻訳機能で日本語で読むことができます。
Q. スケーリング則が鈍化するとAIの進化は止まりますか?
止まりません。
スケーリングの軸が変わっただけです。
モデルサイズの拡大から、ポストトレーニングの改善、推論時間の最適化、新しいアーキテクチャの開発へと進化の方向が多様化しています。
Q. コーディングAIでプログラマーの仕事はなくなりますか?
Raschkaの見解は「なくならない。むしろ重要性が増す」。
AIが生成するコードを正しく評価・修正できる能力がこれまで以上に求められます。
ただし、単純なコーディング作業の価値は下がるでしょう。
Q. Nathan LambertとSebastian Raschkaの著書は日本語で読めますか?
2026年4月時点では、いずれも英語版のみです。ただし、Raschkaの『Build a Large Language Model (From Scratch)』は世界的ベストセラーとなっており、日本語翻訳版の出版が期待されています。
まとめ
この記事のポイントを振り返りましょう。
- Lex Fridman #490は4.5時間のAI総合討論。AI研究の最前線にいる2名がゲスト
- スケーリング則は死んでいないが、プレトレーニングからポストトレーニング・推論時間へ軸が移動
- コーディングAI(Claude Code、Cursor)が開発者の働き方を根本的に変革
- DeepSeekの台頭で米中AI競争に新たな局面
- AGIの到達時期は専門家でも意見が分かれる。2027〜2030年の楽観論と慎重論が併存
このポッドキャストは、AIを「使う」だけでなく「理解する」ための最良の教材です。
4.5時間という長さですが、それだけの価値がある内容。
2026年のAI業界を鳥瞰するなら、まずこの1本を聴くことをおすすめします。
参考文献
- Lex Fridman. (2026). #490 – State of AI in 2026: LLMs, Coding, Scaling Laws, China, Agents, GPUs, AGI. Lex Fridman Podcast
- Lex Fridman. (2026). Transcript: State of AI in 2026. Lex Fridman Transcript
- Sebastian Raschka. (2026). State of AI 2026 with Sebastian Raschka, Nathan Lambert, and Lex Fridman. Sebastian Raschka Blog
- Next Big Future. (2026). Up to Date Technical Dive into State of AI. Next Big Future
- Shortform. (2026). Lex Fridman Podcast #490 Summary. Shortform



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