- 映画「アギト-超能力戦争-」が公開2日前にAI生成動画で宣伝した
- 登場人物が「過去から現在」へ変わる、SNS流行スタイルの映像だった
- 反応は「初めて見た」という驚きと、AI利用への否定が混在した
- VIVANT続編やAIドラマなど、映像業界でAI活用が一気に広がっている
- 日本では著作権やファン感情をめぐる議論が大きな課題になっている
映画の宣伝にAIで作った動画が使われたら、あなたはどう感じますか。2026年4月、国民的な特撮シリーズ「仮面ライダーアギト」の最新映画で、まさにそれが起きました。SNSで賛否が飛び交ったこの出来事は、映像業界の大きな変化を映しています。この記事では、何が起きたのか、なぜ話題になったのかを、やさしく解説します。
仮面ライダーアギトの映画宣伝で何が起きた?
公開2日前に投稿された「AI動画」
2026年4月29日、映画「アギト-超能力戦争-」が公開されました。
この作品は、2001年から2002年に放送された特撮ドラマ「仮面ライダーアギト」の最新映画です。仮面ライダー生誕55周年を記念した作品でもあります。
その公開2日前にあたる4月27日、映画の公式SNSアカウントがある動画を投稿しました。
それがAI(人工知能)で作られた宣伝動画でした。投稿はすぐにSNSで話題を集めました。
「過去から現在」へ変わる映像
投稿された動画は、ちょっと変わった作りでした。
有名俳優が演じる登場人物たちが、過去の姿から現在の姿へ、なめらかに変わっていくのです。
映画はテレビドラマから25年後の世界が舞台です。その25年という時間の流れを、映像の変化で表現していました。
主演は要潤さんです。テレビ版で氷川誠(仮面ライダーG3)を演じた俳優が、25年ぶりに同じ役で帰ってきました。動画はその「時の流れ」を見せる狙いだったのです。
宣伝動画のねらいと「シュナイト」の説明
この宣伝動画は、誰がどんな狙いで作ったのでしょうか。
映画の宣伝を担当したのは、東京都中央区にあるシュナイトという会社です。
シュナイトの担当者は、取材にこう答えました。「SNSでもよく見かける『過去から現在』の動画は、作品の宣伝になると思った」。
つまり、すでに多くの人に親しまれている動画の形を借りて、映画に注目してもらおうと考えたのです。
担当者は今後についても前向きでした。「作品の宣伝になるのであれば、前向きに検討したい」と語っています。
ただし、注意したい点もあります。シュナイトは後日、説明を補足しました。
「AI動画の企画や映像制作に、自社は一切関わっていない」という内容です。取材への回答は、関係する各所に確認した内容だと明記しました。
使ったAIツールや、くわしい制作の流れについては、明言を避けています。
ファンと俳優はどう反応した?
この宣伝動画に対して、SNSではさまざまな声が上がりました。
まず目立ったのは、驚きの声です。「公式がやってるのを初めて見た」というコメントが続出しました。
個人がSNSで楽しむAI動画は、もう珍しくありません。でも、大きな公式アカウントが使う例はまだ少なかったのです。
一方で、否定的な反応もありました。「AIを使ったのでは」と気づき、いい印象を持たなかった人もいます。
俳優本人の反応も話題になりました。主演の要潤さんは、自身のXで動画にふれています。
「なんか最近よく見るやつ!」という、軽やかなコメントでした。出演者がこうして反応したことも、注目を後押ししました。
賛否は分かれましたが、「話題になった」という意味では、宣伝として機能したと言えそうです。
そもそも「AI変換動画」とは何か
ここで、話題になった「AI変換動画」について整理します。
AI変換動画とは、AIを使って写真や映像を別の姿に作り変える動画のことです。
2025年ごろから、SNSで一気に流行しました。よく見かけるのが「過去から現在」の変化を見せるタイプです。
子どものころの写真から大人の今へと、顔がなめらかに変わっていく動画です。SNSを使う人なら、一度は目にしたことがあるかもしれません。
こうした動画が作りやすくなった理由は、動画生成AIの進化にあります。
動画生成AI(文字や画像から動画を作るAI)は、ここ数年で急速に賢くなりました。スマホアプリだけで、誰でも数分で動画を作れるようになっています。
仮面ライダーアギトの宣伝動画も、この流行の形をなぞったものでした。だからこそ、多くの人が「見たことのある動画だ」と感じたのです。
映画・ドラマ業界に広がるAI活用
AIを映像づくりに使う動きは、アギトだけではありません。
いま、映画やドラマの世界でAI活用が一気に広がっています。いくつか例を見てみましょう。
テレビ業界の例では、TBSの人気ドラマ「VIVANT」の続編があります。Googleの動画生成AI「Veo 3」を映像に取り入れると発表しました。
これまで1週間かかっていたVFX(コンピューターによる映像加工)の作業が、AIなら数時間で終わるケースもあると報告されています。
全編をAIで作るドラマも登場しました。日本テレビは生成AIをフル活用したドラマを制作しています。読売テレビのショートドラマでは、約1万5000カットがAIで作られました。
映画でも動きがあります。全編を生成AIで作った映画が2025年に上映され、海外10カ国の映画賞を受けました。
こうして見ると、アギトの宣伝動画は特別な事件ではありません。映像業界全体がAIへ向かう流れの、ひとつの場面なのです。
従来の映画宣伝と何が違う?
これまでの映画宣伝といえば、予告編やポスターが中心でした。
予告編は、本編の映像を切り取って作ります。つまり、撮影済みの素材が必要です。
一方、AI変換動画は撮影していない映像でも作れます。「25年後の姿」のような、現実には撮れない映像も表現できるのです。
制作のコストや時間を下げられる点も、大きな違いです。少ない予算でも、目を引く動画を用意しやすくなります。
その手軽さが魅力である一方、次に見るような新しい課題も生んでいます。
日本のファンやクリエイターへの影響
このニュースは、日本のファンやクリエイターにとっても他人事ではありません。
大きな論点になっているのが、著作権(作品を作った人の権利)です。
2025年10月、スタジオジブリや任天堂など100社以上が加盟する団体が、ある要望書を出しました。AIが日本の作品を無断で学習することへの抗議です。
動画生成AIは、大量の既存作品を学習して賢くなります。その学習に作り手の許可があったのかが、いま問われているのです。
もうひとつの論点が、ファンの感情です。
過去には、AIで作ったとみられるイラストが公式に使われ、批判を集めた例があります。作風が特定の作家に似ていたためです。
専門家は、炎上の本当の原因をこう指摘します。「法律を守っていても、消費者の期待や感情を裏切ると炎上する」。
仮面ライダーのような長く愛される作品では、ファンの思い入れがとても強いです。AIの使い方ひとつで、応援したい気持ちが冷めてしまうこともあります。
だからこそ、企業にはていねいな説明と、ファンへの配慮が求められています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 仮面ライダーアギトの映画はいつ公開されましたか?
2026年4月29日に公開されました。タイトルは「アギト-超能力戦争-」です。2001年放送のテレビドラマの25年後を描いた作品で、仮面ライダー生誕55周年の記念作品でもあります。
Q2. 宣伝動画はAIだけで作られたのですか?
宣伝動画はAIを使って作られたと説明されています。ただし、使ったAIツールやくわしい制作の流れは公表されていません。宣伝を担当したシュナイトは、AI動画の企画や制作に自社は関わっていないと補足しています。
Q3. AI変換動画は自分でも作れますか?
はい、作れます。スマホ向けのアプリやWebサービスを使えば、写真をもとに数分で変換動画を作れます。ただし、他人の写真や作品を無断で使うとトラブルの原因になります。利用するときはルールの確認が大切です。
Q4. なぜAIでの宣伝は賛否が分かれるのですか?
手軽に目を引く映像を作れる便利さがある一方で、著作権やファン感情の問題があるためです。AIが他人の作品を学習する仕組みや、AI利用を好まない人の気持ちが議論を生んでいます。
Q5. 映画やドラマのAI活用は今後も増えますか?
増える見通しです。VIVANT続編や全編AIのドラマなど、すでに多くの事例があります。制作の時間とコストを下げられるため、今後さらに広がると考えられています。
まとめ
仮面ライダーアギトの映画宣伝をめぐる出来事を振り返ります。
- 映画「アギト-超能力戦争-」が、公開2日前にAI生成動画で宣伝した
- 動画は登場人物が「過去から現在」へ変わる、SNS流行スタイルだった
- 反応は「初めて見た」という驚きと、AI利用への否定が混在した
- VIVANT続編など、映像業界全体でAI活用が急速に広がっている
- 日本では著作権とファン感情をめぐる議論が大きな課題になっている
AIによる映像づくりは、もう止まらない流れです。これからは作り手の姿勢や説明の仕方が、ファンの信頼を左右します。気になる映画やドラマの宣伝が、どう作られているのか調べてみてはいかがでしょうか。

