小中に「情報」教科新設|2028年から何を学ぶ?

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

taolis.net X note Voicy YouTube
  • 次期学習指導要領で、小中学校に「情報」の新しい教科・領域が生まれます
  • 中学は「情報・技術科」を新設し、最大で年間70コマ(週2コマ相当)に増えます
  • プログラミングだけでなく、生成AIのしくみや情報モラルも学びます
  • 2030年度の全面実施を待たず、2028年度から前倒しで始まる予定です
  • 授業の総時間は増やさず、他の教科から少しずつ時間を集める方針です

「AIが当たり前になる時代、うちの子は学校で何を学ぶんだろう?」と気になったことはありませんか。2026年7月8日、文部科学省が大きな方針を示しました。小中学校に「情報」の教科を新しくつくり、しかも予定より早く始めるというのです。この記事を読めば、いつ・誰が・何を学ぶのかがスッキリわかります。

何が決まった?小中に「情報」教科を新設

2026年7月8日、文部科学省は中央教育審議会(教育の方針を話し合う国の会議)の特別部会で、大きな方針を発表しました。

それが、小中学校に「情報」を学ぶ新しい教科・領域をつくるという計画です。

これまで日本では、プログラミングやパソコンの使い方は、いろいろな教科の中に少しずつ混ぜて教えていました。

今回はそれを一歩進めて、情報を学ぶための独立した時間をしっかり確保します。

さらに注目なのが「先行実施」という言葉です。次の学習指導要領は2030年度に全面スタートの予定でした。ですが情報教育だけは2028年度から前倒しで始める方針です。

それだけAIの発達が速く、待っていられないという国の危機感が表れています。

小学校と中学校で学ぶ内容・授業時数

では、具体的に子どもたちは何を、どれくらい学ぶのでしょうか。

小学校と中学校で、内容が分かれています。

小学校は「情報の領域」を新設

小学校では、3年生以降の「総合的な学習の時間」の中に「情報の領域(仮称)」をつくります。

授業時数の目安はこうです。

  • 小学3〜4年生:年間30コマ程度
  • 小学5〜6年生:年間35コマ程度(週1コマ相当)

低学年に近いほど、まずは「触ってみる」体験を大切にします。

パソコンの基本操作や、AIがどんなしくみで動くのか、そして「その情報は本当に正しいの?」と見きわめるメディアリテラシーなどを学びます。

中学校は「情報・技術科」を新設

中学校では、いまの「技術・家庭科」の技術分野を発展させて、「情報・技術科」という新しい教科をつくります。

授業時数はぐっと増えます。

  • 中学1〜2年生:年間70コマ程度(週2コマ相当)
  • 中学3年生:年間35コマ程度

ここではプログラミングに加えて、生成AIの特性や情報モラルまで踏み込みます。

「AIは便利だけど、間違うこともある」「作った文章をそのまま使っていいの?」といった、使う側の判断力も育てるねらいです。

なぜ今?AI時代に情報教育を強化する背景

そもそも、なぜ国はここまで急ぐのでしょうか。

背景にあるのは、2040年代の社会を見すえた強い危機感です。

AIやロボットが広がると、仕事のかたちが大きく変わると言われています。

また、ネット上には偽情報(フェイクニュース)があふれ、社会の分断につながる心配もあります。

こうした時代を生きる子どもたちには、情報を正しく読み解く力が欠かせません。

文科省の情報・技術ワーキンググループ(専門家の作業チーム)は、2026年6月に骨子案を公表しました。

そこで掲げられたのが「AI自体を学ぶ」と「AIを使って学ぶ」という2本の柱です。

めざすのは、情報技術の「賢い使い手」と、新しい価値を生む「創り手」の両方を育てること。ただ操作を覚えるだけではないのです。

授業時間はどう捻出する?「調整授業時間数制度」

「新しい教科が増えたら、勉強がもっと大変になるのでは?」と心配になりますよね。

じつは、授業の総時間は増やさない方針です。

その代わり、他の教科の時間を少しずつ削って、情報の時間を生み出します。

そのために新しくつくるのが「調整授業時間数制度」です。

これは、各学校が教科ごとの授業時間を柔軟に組みかえられるしくみです。

調整できる時間の上限も示されました。

  • 小学校:最大138コマ程度(対象教科の総授業時間の15%)
  • 中学校:最大128コマ程度(同15%)

つまり、地域や学校の実情に合わせて「情報に厚く」できる余地を残したわけです。

現行制度・諸外国とどう違う?

今回の改革が「どれくらい大きな一歩なのか」を知るには、比べてみるのが一番です。

これまでの日本の情報教育

日本の情報教育は、少しずつ積み上げられてきました。

  • 2020年度:小学校でプログラミング教育が必修化(独立教科ではなく各教科に組み込み)
  • 中学校:技術・家庭科の技術分野でプログラミングを学習
  • 2022年度:高校で「情報I」が必修化
  • 2025年から:大学入学共通テストに「情報」が加わる

これまで小中には「情報」という独立した学びの枠がありませんでした。今回、そこがはっきり変わります。

海外の情報教育との比較

世界に目を向けると、情報教育の先進国はすでに動いています。

  • イギリス:2014年から「Computing」を小学校〜中学校で必修化
  • エストニア:2012年から導入。必修ではないが、ほぼ全校で実施
  • 韓国:中学校からプログラミングを学ぶ(選択科目)

イギリスは10年以上前から必修にしており、問題解決力の向上といった効果も報告されています。

日本の今回の方針は、こうした世界の流れに本格的に追いつこうとする動きと言えます。

日本の家庭・子どもへの影響

この改革は、遠い国の話ではありません。日本の家庭や子どもに直接かかわってきます。

たとえば、いま小学校低学年のお子さんがいる家庭を考えてみましょう。

2028年度から前倒しが始まれば、その子が高学年や中学生になるころには、情報の授業が今よりずっと本格的になっている可能性が高いです。

中学生の保護者にとっても他人事ではありません。週2コマ相当に増えれば、成績や高校入試での位置づけにも影響が出るかもしれません。

塾や習い事の世界も動くでしょう。プログラミング教室や、AIの使い方を教えるサービスの需要はさらに高まりそうです。

一方で、課題も残ります。これまでも「教える先生のスキル不足」や「学校ごとの差」が指摘されてきました。

新しい教科をきちんと動かすには、先生の研修や教材の準備が欠かせません。ここが実際の成否を分けそうです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 情報の授業はいつから始まりますか?

次期学習指導要領の全面実施は2030年度ですが、情報教育は先行して2028年度から段階的に始まる予定です。各学校や教育委員会の判断で、1〜2年ほど前倒しできる想定です。

Q2. 小学生も「情報」という教科を受けるのですか?

小学校では独立した教科ではなく、「総合的な学習の時間」の中に「情報の領域(仮称)」がつくられます。3年生以降が対象で、体験を通じて基本を学びます。

Q3. 何を学ぶのですか?プログラミングだけですか?

プログラミングだけではありません。生成AIのしくみや特性、情報モラル、そして情報が正しいかを見きわめるメディアリテラシーなど、幅広く学びます。

Q4. 授業が増えると、子どもの負担も増えますか?

授業の総時間は増やさない方針です。新設の「調整授業時間数制度」を使い、他の教科の時間を少しずつ回して情報の時間を確保します。

Q5. 中学ではどのくらい増えるのですか?

新設の「情報・技術科」で、1〜2年生は年間70コマ程度(週2コマ相当)、3年生は35コマ程度が想定されています。従来より大きく増える見込みです。

まとめ

今回のポイントを振り返りましょう。

  • 2026年7月8日、文科省が小中への「情報」教科・領域の新設方針を発表
  • 小学校は「情報の領域」、中学校は「情報・技術科」を新設
  • 中学は最大で年間70コマ(週2コマ相当)に増える
  • プログラミングに加え、生成AIや情報モラルも学ぶ
  • 2030年度の全面実施を待たず、2028年度から前倒し
  • 授業の総時間は増やさず、他教科から時間を捻出する

AIとの付き合い方は、これからの子どもたちにとって必須の力になります。まずは自分の地域の学校がいつ前倒しを始めるのか、今後の情報をチェックしておきましょう。

参考文献

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です