JetBrainsのAIが無料でオフライン|M5 Mac必須

ノートPCの中で完結するAIコーディングエージェントのイメージ

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • JetBrainsが2026年8月24日、完全ローカル動作のAIコーディングエージェント「Junie Local」の提供を開始
  • 料金は完全無料。トークン課金もクレジット消費も一切なし
  • 中身はQwen3.6-27Bの4bit量子化モデル。ダウンロードサイズは約20GB
  • 動作条件はM5チップ搭載Mac+メモリ64GB。日本では対象のMac miniでも約47万9800円と報じられています
  • コードを外部に送らないため、ソースコードの社外送信が禁じられた現場でも使える可能性がある

「AIにコードを書かせたいのに、社内ルールでソースコードを外に出せない」。そんな壁にぶつかったことはありませんか。

JetBrainsが出した答えは、AIごと手元のMacに持ってくる、というものでした。無料・オフライン・課金ゼロ。ただし、それなりの代償もあります。

Junie Localとは? コードを一切外に出さないAIエージェント

JetBrainsは2026年8月24日、AIコーディングエージェント「Junie Local」の提供を始めました。

JetBrainsは、IntelliJ IDEAやPyCharmといった開発ツール(IDE:プログラムを書くための専用アプリ)で知られる会社です。

Junieはもともと、そのIDEに組み込まれたエージェント型のAIでした。エージェント型とは、質問に答えるだけでなく、自分でファイルを開いて書き換え、テストまで走らせてくれるタイプのAIのことです。

ただし、これまでのJunieはクラウド上のAIモデルに接続して動いていました。つまり、あなたが書いたコードは一度インターネットの向こう側へ送られていたわけです。

今回のJunie Localは、そこが決定的に違います。JetBrainsによれば「完全にローカルマシン上で動作」し、コードなどのデータを外部のAIサービスへ送る必要がありません。

「無料」「オフライン」の中身を確かめる

料金もトークン制限も存在しない

JetBrainsのAI機能は、通常はクレジット制で提供されています。

2026年時点のプランは、AI Free(無料・30日ごとに3クレジット)、AI Pro(月10ドル・10クレジット)、AI Ultimate(月30ドル・35クレジット)という構成です。1クレジットはおよそ1ドル相当として扱われます。

そしてエージェントであるJunieは、このクレジットを消費します。Proティア以上でないと本格的には使えません。

ところがJunie Localは、ダウンロードにも利用にも料金がかからないとされています。手元のMacで計算しているので、そもそも誰かに払う相手がいないのです。

切り替えは「/local」と打つだけ

導入手順は驚くほど短くなっています。Junieの入力欄に「/local」と打ち込むだけで、約20GBのモデルのダウンロードが始まります。クラウド側に戻したいときは「/model」で切り替えられます。

実は、これまでもJunieをローカルのモデルに接続すること自体は可能でした。

ただし手動の設定が大量に必要で、しかも小さめのモデルでは簡単な作業しかこなせなかったと説明されています。JetBrainsは今回、エージェント用途に向いたモデルを自分たちで選び、最適化した状態で配る方式に切り替えたわけです。

中身はQwen3.6-27Bの4bit量子化モデル

27Bなのに前世代の397Bを上回る

Junie Localが使っているのは、Alibaba(アリババ)のQwenチームが開発した「Qwen3.6-27B」です。2026年4月にApache 2.0ライセンスで公開されました。

27Bは270億パラメータを意味します。パラメータはAIの「脳のつまみの数」のようなもので、多いほど賢くなりやすい代わりに、動かすのに必要なメモリも増えます。

このモデルが注目されたのは、サイズの割に成績が良すぎたからです。

  • SWE-bench Verified(実際のGitHubのバグを修正できるか測るテスト)で77.2%
  • Terminal-Bench 2.0で59.3
  • SkillsBenchで48.2。前世代のフラッグシップだった397Bモデル(30.0)を18ポイント以上引き離した

さらにJunie Localでは、このモデルを4bit量子化して積んでいます。量子化とは、AIの内部の数値をざっくり丸めてファイルを小さくする技術です。写真をJPEGに圧縮する感覚に近く、多少の精度と引き換えに、必要なメモリを大幅に減らせます。

「Claude Sonnet 4.5と同等」には但し書きがある

JetBrainsは自社テストで、Junie LocalがClaude Sonnet 4.5と同等の能力を示したと報告しています。

ここは正確に読む必要があります。同等とされたのは「推論トークンを1万に制限した条件下」での比較だからです。

とはいえ、ノートPCの中だけで動くAIが商用トップクラスと比較の土俵に乗ること自体、少し前なら考えにくいことでした。

動かすための条件 M5 Mac+64GBの壁

ここが今回いちばんの関門です。Junie Localの動作には、M5チップを搭載したMacと64GB以上のメモリが必要とされています。20GBのモデルを常にメモリへ載せておくため、一般的な16GBや32GBの構成では足りません。

日本の金額感でいうと、条件を満たす最安構成のMac miniでも約47万9800円が必要と報じられています。個人が思いつきで買える価格帯ではないでしょう。

  • 必要メモリを減らすための最適化を継続中
  • NVIDIAの「DGX Spark」への対応を検討
  • GeForce RTX 5090を搭載したPCへの対応も開発中
  • 将来的にはメモリ24GBのGPU環境も視野に入れている

24GB GPUまで降りてくれば、話は一気に変わります。RTX 4090やRTX 5090を積んだ自作PCは、日本のエンジニアにも珍しくないからです。

他のローカルAI開発環境と何が違う?

「ローカルでAIにコードを書かせる」こと自体は、以前から可能でした。では今回の何が新しいのでしょうか。主な選択肢と並べてみます。

  • Cline+Ollama:2026年時点でローカルLLM向けの定番。自由度は高いが、モデル選び・量子化の設定・接続先の指定をすべて自分でやる必要がある
  • Continue:ローカル接続に強かったが、2026年6月にCursorへ買収され、v2.0.0を最後にリポジトリは読み取り専用に。Ollamaとの連携は動くものの新規開発は終了
  • Aider:ターミナルで動くタイプ。Ollama経由でローカルモデルを使えるが、IDEとの統合は薄い
  • クラウド型(通常のJunie、GitHub Copilot、Cursorなど):性能は最上位。ただし課金が続き、コードは外部へ送信される

Junie Localの新しさは、モデル選定と最適化をIDEベンダー自身が引き受けた公式のローカル環境である点にあります。代わりにモデルを自由に差し替えたい人には、ClineやOllamaの組み合わせのほうが向いているでしょう。

ユーザーがやることは「/local」と打つことだけ。動かないモデルを引いて時間を溶かす、という典型的なつまずきが消えます。

日本の開発現場にとって何が変わるか

「コードを社外に出すな」という壁

日本には、生成AIそのものを直接規制する単独の法律はまだありません。個人情報保護法や著作権法といった既存の枠組みと、総務省・経済産業省のガイドラインに沿った自主的な対応が中心です。

背景には実際の事故もあります。2023年には韓国サムスン電子の半導体部門で、エンジニアが社内の機密ソースコードをChatGPTに入力して問題になりました。

Junie Localは、この論点そのものを消しにいきます。送信が起きないなら、送信のリスク評価も不要になるからです。

具体的に効きそうな3つの現場

ひとつめは、受託開発の会社です。顧客との契約に「ソースコードを第三者に開示しない」という条項が入っているケースでは、法務判断が下りずAI補完すら導入できないチームがあります。手元で完結する環境なら、その稟議の中身が変わってきます。

ふたつめは、地方の製造業でよくある閉じた社内ネットワークです。工場の制御系に近いシステムは、そもそも外部インターネットへ出られない構成が多い。20年前に書かれた仕様書もないコードを前に、担当者が一人で読み解いている——そんな現場でこそ、オフラインで動く読解役の価値は大きいはずです。

みっつめは、個人開発者の深夜の作業です。「あと少しリファクタしたいけど、今月のクレジット残量が心もとない」と手を止めた経験がある人は多いでしょう。上限がなくなれば、失敗覚悟の大改造を何度でも試せます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 本当に完全無料ですか? あとから課金されませんか?

JetBrainsはソフトウェアのダウンロードにも利用にも料金はかからないと説明しています。クラウドのAIを使わないため、トークン課金やクォータ(利用上限)も発生しません。ただしIDE本体の有償ライセンスとは別の話なので、そこは分けて考える必要があります。

Q2. Windows PCやLinuxでは使えますか?

2026年8月時点では、M5チップ搭載Macのみが対象です。JetBrainsはNVIDIAのDGX SparkやGeForce RTX 5090への対応を開発中としており、将来的にはPC環境にも広がる見込みです。

Q3. メモリ32GBのMacでは動きませんか?

現時点の要件は64GB以上です。約20GBのモデルを常時メモリに保持する必要があるためです。JetBrainsは必要メモリを減らす最適化を進めており、将来的には24GBのGPU環境も検討対象に挙げています。

Q4. クラウド版のJunieと比べて、どのくらい性能差がありますか?

JetBrainsのテストでは、推論トークンを1万に制限した条件下でClaude Sonnet 4.5と同等の結果が出たとされています。長時間じっくり考えさせる使い方や、最新の巨大モデルが必要な難題では、クラウド版に分があると考えるのが妥当でしょう。「/model」でいつでも戻せるので、使い分けが現実解です。

Q5. 書いたコードがAIの学習に使われる心配はありませんか?

Junie Localはローカルマシン上で完結し、外部のAIサービスへデータを送信しない設計です。そのため、入力内容が外部の学習に回るという経路自体が存在しないことになります。

まとめ

  • JetBrainsが2026年8月24日、完全ローカル動作のAIコーディングエージェント「Junie Local」を提供開始
  • 利用は無料。トークン課金もクレジット消費もない
  • 中身はQwen3.6-27Bの4bit量子化版で、ダウンロードは約20GB。「/local」と打つだけで導入できる
  • 性能はJetBrains社内テストで、推論1万トークン制限下のClaude Sonnet 4.5と同等
  • 動作条件はM5 Mac+64GBメモリ。日本では約48万円からという価格が最大の壁
  • NVIDIA DGX SparkやRTX 5090への対応が進めば、対象は一気に広がる

条件を満たすMacを持っているなら、まずはJunieの入力欄に「/local」と打ってみることから始めてみてください。

参考文献