- Googleが2026年6月2日、Android向けに「偽通話検知(Fake Call Detection)」を正式発表しました。
- 家族や上司の声をAIで真似た「なりすまし電話」を、端末同士の自動チェックで見抜きます。
- 仕組みはRCS(次世代SMS)を使った「デジタル握手」。発信側の本物端末に裏で確認を取ります。
- 対象はAndroid 12以降のPhone by Googleアプリ。Pixelから順次、全世界に展開中です。
- AI音声詐欺は2025年に前年比1,600%急増。日本でも「ニセ警察詐欺」が深刻化しており他人事ではありません。
「お母さん、事故った。今すぐ100万円振り込んで」——もしこの電話の声が、本当に家族の声そっくりだったら、あなたは気づけるでしょうか。生成AIが数秒の音声から声をコピーできる時代、こうした詐欺は急増しています。Googleが2026年6月に発表した「偽通話検知」は、この問題に正面から挑む新機能です。本記事では、その仕組みと日本の私たちへの影響を、わかりやすく解説します。
Google「偽通話検知」とは?2026年6月発表の新機能
何が発表されたのか
2026年6月2日、GoogleはAndroidの新セキュリティ機能「Fake Call Detection(偽通話検知)」を発表しました。
AI音声で家族や上司になりすました詐欺電話を、端末側で自動的に見抜く仕組みです。
「業界初の保護機能」とGoogleは強調しています。世界的に急増する音声詐欺(vishing)への、大手プラットフォームによる本格的な対抗策と言えます。
対応端末と展開スケジュール
対応端末は、Android 12以降のスマートフォンです。標準の「Phone by Google」アプリに組み込まれます。
2026年6月からPixelシリーズで提供開始。その後、Galaxyなど他のAndroid端末にも順次展開していく予定です。展開エリアは「グローバル」と明言されており、日本も対象に含まれます。
注意点として、利用には発信者と着信者の両方がAndroidかつPhone by Googleを使っていることが必要です。さらに「Googleメッセージ」と「Google連絡先」アプリのインストールも条件になります。
どうやって偽電話を見抜くのか?「デジタル握手」の仕組み
電話と一緒に「確認シグナル」を送る
偽通話検知の核心は、シンプルなアイデアです。本物の発信者なら、電話と同時に「これ私です」という確認シグナルを裏で送れるはず、という発想です。
具体的にはこう動きます。
- 発信者の端末が電話をかけると、音声通話とは別に「サイレント確認シグナル」を受信側に送る
- 受信側の端末は、このシグナルが届いているか自動でチェックする
- シグナルがなかった場合、受信側は連絡先に登録された本物の端末に直接「いま電話している?」と問い合わせる
- 本物の端末が「電話していない」と返答したら、画面に警告を表示して即座に切るよう促す
つまり、電話番号は偽装できても、本物の端末そのものは偽装できないという弱点を突いた仕組みです。
基盤はRCS(次世代SMS)
この「デジタル握手」を支えているのは、RCS(Rich Communication Services)という通信規格です。RCSは従来のSMSの後継として、Googleが普及を進めてきた次世代メッセージング標準です。
RCSの大きな特長は、エンドツーエンド暗号化に対応していること。確認シグナルの中身はGoogle自身にも見えないため、プライバシー面でも安心と説明されています。
またRCSはオープン標準なので、将来的にApple iMessageやサードパーティの通話アプリが同じ仕組みを採用する道も開かれています。
ユーザー側の操作は不要
この機能は初期状態でオンになっており、ユーザーが何か設定する必要はありません。怪しい電話が来たときだけ、画面に「これは偽の可能性があります」と警告が表示される、という体験になります。
高齢者など設定が苦手な方でも、自動的に守られる点が大きなメリットです。
なぜ今これが必要なのか?AI音声詐欺の急増
わずか数秒の音声で声がコピーできる時代
現代のAI音声合成は、SNSにアップされた数秒の動画から、その人そっくりの声を生成できます。技術ハードルが劇的に下がり、誰でも音声詐欺の「武器」を手に入れられる状況です。
セキュリティ企業の調査によると、2025年第1四半期のディープフェイク音声によるvishing(ビッシング、音声フィッシング)攻撃は、前期比で1,600%以上の急増を記録しました。AI詐欺全体の被害額は2027年に約400億ドル(約6兆円)に達するという予測もあります。
日本でも「ニセ警察詐欺」が過去最悪に
日本も例外ではありません。警察庁の発表によれば、2025年の特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の被害額は合計3,241億円と、過去最悪を更新しました。
特に深刻なのが、警察官や検察官を装う「ニセ警察詐欺」です。生成AIで作った音声や、偽の身分証画像を組み合わせ、高齢者だけでなく若年層まで巻き込んでいます。
従来の「オレオレ詐欺」も、AI音声の登場で再び勢いを増しています。たとえば家族の動画から声を学習させ、本人そっくりの声で「事故った。示談金が必要」と電話をかける手口が報告されています。
具体的にどんな詐欺を防げるのか
偽通話検知が想定している主な詐欺シナリオは、次の3つです。
- 家族なりすまし型:母親の声で「事故った、すぐお金を振り込んで」と電話。子どもや親が冷静さを失った瞬間を狙う
- 上司なりすまし型:CEOや上司の声で経理担当者に「至急、この口座に送金して」と指示。企業の社員を直接狙う「ディープフェイクBEC詐欺」
- 権威者なりすまし型:警察官、銀行員、税務署員などの声を偽装し「あなたの口座が犯罪に使われている」と恐怖を煽る
いずれも電話番号を偽装するスプーフィング技術と、AI音声を組み合わせるのが共通点です。偽通話検知は、この組み合わせ攻撃の「番号偽装」の段階で検知します。
他のスマホとの違いは?iPhoneや既存対策との比較
iPhoneとの違い
AppleもiOS 26で「Call Screening(通話スクリーニング)」を提供しています。これは知らない番号からの着信に対し、ロボット音声が「ご用件は?」と確認し、相手の返答を画面に文字起こしする仕組みです。
しかしAppleの機能は「未知の番号」が対象で、家族や上司を装った偽電話には対応していません。番号自体が偽装されているため、ロボット音声を挟む前に「知っている番号」として通ってしまうからです。
Googleの偽通話検知は、ここに踏み込みました。「知っている番号」を疑える仕組みとして、現時点ではiPhoneより一歩先を行く設計です。
既存の迷惑電話アプリとの違い
「Whoscall」や「Truecaller」などの迷惑電話判定アプリは、過去の通報データベースを使って番号を識別します。すでに詐欺と知られた番号には強い一方、初めて使われる番号には反応できません。
偽通話検知はデータベースに頼らず、「本物の端末からの発信かどうか」を毎回チェックします。新しい詐欺電話でも、その場で見抜ける点が画期的です。
とはいえ両者は競合ではなく、補完関係にあります。データベース型は番号自体が悪質と判定済みのケースに、偽通話検知は番号偽装+音声偽装のケースに、それぞれ強みがあります。
Google Pixelの「Call Screen」との関係
同じくGoogleが提供する「Call Screen」は、未知の番号からの着信に対しAIが代理応答する機能です。偽通話検知とは別物で、こちらは「知らない番号」用の盾、偽通話検知は「知っている番号を装う詐欺」用の盾と役割が分かれています。両方を組み合わせると、Android端末の電話セキュリティは大幅に強化されます。
日本市場への影響は?利用条件と注意点
日本でもPixelユーザーから順次利用可能
日本でも、Pixel 8a以降のPixelシリーズユーザーは2026年6月中に利用開始できる見込みです。日本語版「Phone by Google」アプリでもそのまま使えると報じられています。
キャリア独自の電話アプリ(NTTドコモの「らくらく電話」など)を使っている場合は、まずPhone by Googleに切り替える必要があります。設定アプリから既定の電話アプリを変更できます。
普及までは時間がかかる可能性
日本のスマホ市場ではiPhoneのシェアが約50%と高く、Android側でもキャリア独自アプリの利用率が無視できません。「両者ともPhone by Googleを使っている必要がある」という条件は、当面の普及を制約する要因です。
特に高齢者の家族との通話で機能を発揮させたい場合、まずは家族のスマホ設定を整える必要があります。お盆や正月の帰省時に、親のスマホのアプリ設定を見直しておくのが現実的な使い方です。
iPhoneユーザーへの示唆
iPhoneユーザーは現時点でこの機能を直接使えません。ただし、RCSはオープン標準なので、Apple側がiMessageやFaceTime通話に同様の検証機能を実装する可能性は十分あります。
Googleが先行した結果、業界全体で「端末同士の認証で詐欺を防ぐ」という標準が広がる流れが期待されます。
使う前に知っておきたい3つの注意点
①万能ではない、過信は禁物
偽通話検知は強力ですが、未知の番号からの詐欺電話には対応できません。たとえば最初から「警察ですが」と名乗ってかけてくる詐欺は、検知の対象外です。
「電話に出る前に画面の警告がなかったから安全」とは限らない、と覚えておきましょう。
②条件が揃わないと作動しない
前述の通り、発信側・着信側の両方がAndroid+Phone by Google+Google Messages+Google Contactsを揃えている必要があります。条件が崩れると静かに無効化される点に注意してください。
家族間で機能を活用したいなら、お互いのスマホ環境を確認し合うのが第一歩です。
③最後の判断は人間
機械が「これは偽です」と警告しても、最終判断は受け手の人間です。「家族から急にお金の話が出たら必ず折り返す」といった基本ルールを家庭内で共有しておきましょう。
テクノロジーと人間のリテラシー、両輪で守る姿勢が引き続き重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. iPhoneでも使えますか?
A. 現時点では使えません。AndroidかつPhone by Googleアプリ利用が必須です。ただしRCSはオープン標準のため、将来Appleが同様機能を導入する可能性はあります。
Q2. 通話内容が録音されたり、Googleに送られたりしませんか?
A. 送られません。仕組みはエンドツーエンド暗号化されたRCS上の「確認シグナル」のやり取りで、音声データそのものは関与しません。Google自身も内容にアクセスできないと説明しています。
Q3. 警告が出たらどうすればいいですか?
A. すぐに通話を切り、別の手段(LINE・SMS・別の連絡先など)で本人に直接確認してください。決して画面の指示や電話越しの相手の指示には従わないようにしましょう。
Q4. ガラケーや固定電話からの詐欺には効きますか?
A. 効きません。本機能は「両方がAndroidスマホでPhone by Googleを使っている」前提です。固定電話からのなりすまし詐欺には、自治体の防犯アプリや迷惑電話対策機能を別途活用してください。
Q5. 設定を変えれば機能をオフにできますか?
A. 可能です。Phone by Googleアプリの設定画面から無効化できます。ただし誤検知の頻度は低いとされており、初期設定のままで使うことが推奨されます。
まとめ:AI詐欺時代の「家族の防衛戦」が変わる
Google「偽通話検知」のポイントを振り返ります。
- 2026年6月2日にGoogleが発表、Android 12以降のPixelから順次展開
- RCS暗号通信による端末同士の「デジタル握手」で番号偽装を検知
- 背景にはAI音声詐欺の1,600%急増と、日本の特殊詐欺被害3,241億円
- iPhoneや既存の迷惑電話アプリでは防げない「番号偽装+AI音声」に対応
- ただし発信側・受信側の両方がAndroid+Phone by Googleの利用が条件
AI詐欺はもはや遠い国の話ではなく、私たちの両親や自分自身の身に起こりうる脅威です。まずは家族のスマホがAndroidなら、Phone by Googleを既定アプリに設定し直すところから始めてみてください。たった数分の設定で、AI詐欺の入り口を一つ閉じられます。
参考文献
- TechCrunch「Google rolls out fake call detection to protect against AI deepfake impersonation scams」(2026年6月2日)
- Google公式ブログ「How Android helps keep you safe from impersonation scams with fake call detection」
- 9to5Google「Google Phone app rolling out Android fake call detection that uses RCS」
- 時事ドットコム「SNS型投資、ロマンス詐欺被害が過去最悪『ニセ警察』急増、AI活用で手口巧妙化も―警察庁」
- DeepStrike「Vishing Statistics 2025: AI Deepfakes & the $40B Voice Scam Surge」

