購入した本10万冊をAIが解説|Google新機能

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • Googleが2026年8月27日、購入済み電子書籍をAIに読ませる「Expert Intelligence」を発表
  • Google Playブックスの10万冊超が対象。Penguin Random HouseやO’Reilly Mediaなど大手出版社が参加
  • 本の内容を根拠にした回答、クイズ、音声解説、インフォグラフィックを生成できる
  • 「買っていない人は読めない」所有権チェック付き。Amazonの無断AI化との違いはここ
  • 現時点では英語書籍が中心。日本語版の対応時期はまだ発表されていない

本棚に眠っている本、最後まで読みましたか? 買ったまま積んである電子書籍を、AIが読んで質問に答えてくれるとしたらどうでしょう。Googleがまさにその機能を発表しました。対象は10万冊超。しかも「ちゃんと買った人だけ」という条件付きです。

Expert Intelligenceとは何か

Googleが2026年8月27日(米国時間)に発表した新機能です。

ひとことで言うと、Google Playブックスで購入した電子書籍を、AIの知識源として使える仕組みです。

舞台になるのは「Gemini Notebook(ジェミニ・ノートブック)」。PDFや音声、YouTube動画などを読み込ませて、AIに要約や質問応答をさせるツールです。

このツール、少し前まで「NotebookLM」という名前でした。2026年7月にGoogleのAIブランドである「Gemini」に統合され、いまの名称に変わっています。

そこに今回、「Playブックス」というソース選択肢が加わりました。自分が購入した本を、PDFファイルと同じ感覚でAIに渡せるようになったわけです。

対象は10万冊超、大手出版社がずらり

第1弾の対象は10万冊以上の書籍です。

参加している出版社の顔ぶれが豪華です。Penguin Random House(ペンギン・ランダムハウス)、Macmillan Publishers(マクミラン)、O’Reilly Media(オライリー・メディア)、Bloomsbury(ブルームズベリー)、Johns Hopkins University Press(ジョンズ・ホプキンス大学出版局)、De Gruyter Brill(デ・グロイター・ブリル)。

さらにGoogleは15人以上のベストセラー作家と組んで「Featured Notebooks」も用意しました。参加者には『言語を生みだす本能』のスティーブン・ピンカー氏、食のジャーナリストであるマイケル・ポーラン氏、教育書で知られるジェニファー・ウォレス氏などが名を連ねています。

これは著者の本に関連資料を足した、いわば「公式の副読本」です。

実際に何ができるのか

本の中身を根拠に答えてくれる

いちばんの基本は質問応答です。

ノートブックに本を追加すると、その本の内容にもとづいた回答が返ってきます。回答には本文からの引用が添えられます

これが地味に重要です。AIが適当に作った話なのか、本当に本に書いてあることなのかを、その場で確認できるからです。

クイズ、音声解説、図解も自動生成

質問に答えるだけではありません。

本の内容からクイズ、音声概要(Audio Overview)、インフォグラフィックを作れます。

資格試験の参考書を読み込ませて模擬問題を作らせる。分厚いビジネス書を通勤中に聞ける音声解説に変える。複雑な章立てを1枚の図にまとめる。こういった使い方が想定されています。

自分の情報と混ぜられるのが本当の強み

ここがKindleのAI機能と決定的に違うところです。

Gemini Notebookでは、本と自分のファイルを同じノートブックに並べられます

Googleが挙げている例を紹介します。ひとつは、部下へのフィードバックに悩むマネージャーが、リーダーシップ本と自分のメモを一緒に読み込ませて相談するケース。

もうひとつは、冷蔵庫の中身を撮った写真と料理本を組み合わせて、今日の献立を考えさせるケースです。

もう少し身近な例も想像してみてください。育児書3冊と、保育園からのお便りPDFと、自分が書いた子どもの様子メモ。これをまとめて放り込んで「イヤイヤ期の対応、この3冊はどう言っている?」と聞く。本を横断して答えが返ってくるわけです。

なぜ「購入済み」にこだわるのか

Expert Intelligenceには、はっきりした制限があります。

Google Playブックスでその本を所有していないと使えません

しかも徹底しています。作ったノートブックを誰かと共有した場合、相手がその本を持っていなければ、本の中身は相手の画面では使えません。相手には「自分で購入してください」と表示されます。

面倒に見えますが、これは出版社と著者を守るための設計です。

もしこの制限がなければ、1人が本を買ってノートブックを100人に配るだけで、100人分の売上が消えてしまいます。所有権チェックは、その抜け道をふさぐ仕組みです。

Googleは今回の発表で、Expert Intelligenceが「コンテンツの発見につながり、著者が新しい熱心な読者に出会う助けになる」と説明しています。

ただし、著者への報酬がどうなるのか、参加は出版社ごとの判断なのか個々の著者が選べるのかといった細かい条件までは、まだ公表されていません。

AmazonのKindle AIとの違い

電子書籍にAIを載せる動きは、Googleが最初ではありません。

Amazonは2026年6月、Kindleに「Ask this Book」と「Story So Far」を導入しました。

前者は、本の内容についてネタバレなしで答えるチャット機能。後者は、シリーズ物の前巻までのあらすじやキャラクターの流れを振り返る機能です。

読者にとっては便利です。ただ、これらの機能には批判も出ています。

著者や出版社の多くが、機能の存在を事前に知らされていなかったと報じられているためです。しかも著者側からオフにすることができません。

両者の設計思想を整理すると、こうなります。

  • Amazon(Kindle):読書アプリの中で完結。所有権チェックは購入前提なので不要だが、著者はオプトアウトできない
  • Google(Expert Intelligence):出版社と提携した上で参加書籍を限定。所有権を確認し、共有時もブロックする

Amazonは「読書体験の中でAIを使う」方向。Googleは「AI作業の中で本を使う」方向です。

小説を読みながら人間関係を整理したいならKindle。技術書を仕事の資料と突き合わせたいならGemini Notebookが強いでしょう。

日本のユーザーはどうなる?

気になるのは日本での使い勝手です。結論から言うと、いまはまだ「お試し」の段階です。

今回の提供は米国のGoogleアカウントが中心で、対象になっているのも英語の書籍です。

ただ、日本語環境のGemini Notebookでも、ソース追加画面に「Playブックス」の項目自体は表示されることが確認されています。ITmediaの検証では、英語版のオライリー技術書を追加できたと報じられています。

つまり入口は開いているものの、日本語の本はまだほぼ対象外という状態です。

日本の読者にとって、実は別の壁もあります。日本の電子書籍市場は漫画の比率が非常に高く、Kindleのシェアが圧倒的だという点です。Google Playブックスで実用書や技術書を買い揃えている人は、そこまで多くありません。

逆に言えば、日本語の技術書や資格参考書が対象に入った瞬間、状況は一変します。宅建やITパスポートの参考書を読み込ませて、AIに模擬試験を作らせる。そんな学習スタイルが現実的になるからです。

なお、Gemini Notebook自体は無料でも使えます。読み込めるソース数などの上限を上げたい場合は、月額約3,000円の「Google AI Pro」などの有料プランが必要になります。

この先どこまで広がるのか

Googleは今回を「第一歩」と位置づけています。

公式発表によると、今後の拡大先は次の通りです。

  • 提供場所の拡大:Gemini NotebookだけでなくGeminiアプリ、さらにGoogle検索のAIモードへ
  • ソースの拡大:他社のサブスクリプション、ビジネス調査レポート、教科書へ

特に注目したいのが「Google検索のAIモード」への展開です。

検索したときの回答が、自分が買った本の内容を踏まえたものになる。そんな世界が視野に入っています。

教科書への対応も見逃せません。大学の指定教科書だけを根拠にAIへ質問できるようになれば、学習のあり方は変わります。

「AIが持っている知識」から「自分が正規に買った知識」へ。情報源の主導権が動きはじめている、と言えるかもしれません。

よくある質問(FAQ)

Q1. 買った本ならどれでもAIに読ませられますか?

いいえ。Google Playブックスで購入済みかつ、参加している出版社の対象書籍に限られます。第1弾の対象は10万冊超です。

Q2. 有料プランに入らないと使えませんか?

Gemini Notebookは無料でも利用できます。ただし無料版には読み込めるソース数などの上限があります。本格的に使うなら月額約3,000円のGoogle AI Proなどが選択肢になります。

Q3. 友だちに自分のノートブックを見せたらどうなりますか?

ノートブック自体は共有できますが、本の中身は相手の画面では使えません。相手が同じ本を購入すると使えるようになります。

Q4. 日本語の本はいつ対応しますか?

時期は発表されていません。現時点で対象は英語書籍が中心です。日本の出版社との提携が進めば対応する可能性はありますが、確定した情報はありません。

Q5. Kindleで買った本は使えますか?

使えません。Expert IntelligenceはGoogle Playブックスの購入履歴と連動しています。Kindleの本にはAmazon独自の「Ask this Book」機能があります。

まとめ

  • Googleが2026年8月27日、購入済み電子書籍をAIの知識源にする「Expert Intelligence」を発表した
  • 対象はGoogle Playブックスの10万冊超。Penguin Random House、Macmillan、O’Reillyなど大手出版社が参加
  • クイズ・音声概要・図解も生成でき、所有権チェックと共有制限で著者・出版社の権利にも配慮
  • 提供は米国アカウント・英語書籍が中心で、日本語対応の時期は未発表
  • 今後はGeminiアプリ、検索のAIモード、教科書やビジネスレポートへ拡大予定

まずはGemini Notebookのソース追加画面を開いて、「Playブックス」の項目が出ているか確認してみてください。英語の技術書を1冊持っているなら、今日から試せるかもしれません。

参考文献