GMO社長がAI最高責任者に|自ら10万行コード

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • GMOグループの熊谷正寿代表が「グループCAIO(最高AI責任者)」に就任した
  • 「コーディングはもう人間だけの仕事ではない」として組織の作り方を根本から見直す
  • 熊谷氏は自分で2ヶ月間に10万行のコードをAIで書いた実績を持つ
  • 年間10億円超のAI支援金など、投資額と目標の数字が具体的
  • CAIOは世界の大企業の76%が置く「新しい経営ポスト」になりつつある

会社のトップが自分から「AIの最高責任者」を名乗ったら、その会社はどう変わると思いますか。GMOインターネットグループが2026年7月13日、まさにそんな発表をしました。社長みずからが2ヶ月で10万行のコードを書いた本気度とあわせて、何が起きているのかをやさしく整理します。

GMOが発表した「グループCAIO」とは?

2026年7月13日、GMOインターネットグループが新しい役職を発表しました。

その名も「グループAI変革最高責任者(グループCAIO)」です。

CAIOは英語で「Chief AI Transformation Officer」と書きます。会社全体のAI活用を、一人でまとめて引っ張るリーダーのことです。

このポストに就いたのが、GMOのトップである熊谷正寿(くまがい まさとし)代表です。会長兼社長という一番上の立場のまま、AIの責任者も兼ねることになりました。

担当する範囲はとても広いです。AI戦略、導入の推進、ガバナンス(ルール作りと管理)、人材育成、業務改革の5つを、まとめて統括します。

つまり「AIのことは全部トップが自分で見る」という宣言です。

なぜトップ自らがAI責任者になるのか

ふつう、こうした専門的な役職は担当役員に任せます。なぜ熊谷氏は自分でやると決めたのでしょうか。

公式発表には、はっきりした理由が書かれています。

「コーディング(プログラムを書く作業)は、すでに人間だけの仕事ではなくAIの仕事になった」という認識です。

だからこそ「エンジニアを含む組織体制や、仕事のやり方そのものを見直す」と宣言しています。目指すのは「AIナイズされた組織」です。

これは働く人にとってドキッとする言葉かもしれません。エンジニア(技術者)の役割まで見直しの対象に入っているからです。

熊谷氏は、生成AIの登場を「インターネット革命の本番の幕開け」と表現しています。変化の速さを「秒進分歩(びょうしんぶんぽ)」と呼び、使う人と使わない人の差がどんどん開くと考えています。

社長が2ヶ月で10万行|本気度を示す数字

この宣言を「口だけ」と感じさせないのが、熊谷氏本人の行動です。

熊谷氏は、この2ヶ月間でおよそ10万行のコードを自分で書きました。数千人のエンジニアを抱える会社のトップが、誰の手も借りず、参考書もYouTubeも見ずに開発したといいます。

使ったのは「Claude Code(クロードコード)」というAIです。細かい仕様書を書かず、AIと会話しながら作る「バイブコーディング」という手法で進めました。

作ったのは「夢が、かなうCockpit」という自分専用のアプリです。自分があと何日生きられるかを秒単位で示す「人生のカウントダウン時計」なども入っているそうです。

この本気度は、会社全体にも広がっています。GMOが2026年6月に社内5,621人へ行った調査を見てみましょう。

  • 日常的に使う生成AIで、Claudeの利用率が73.4%となり、ChatGPT(72.3%)を初めて上回った
  • バイブコーディングを体験した人は約7割にのぼる
  • そのうち4割超が、実際の仕事でも活用している

トップが率先して使い、社員も後に続く。そんな流れが数字にあらわれています。

巨額のAI投資と2027年の目標

GMOはお金の使い方でも本気を見せています。

まず2025年5月に「GMO AIブースト支援金」を作りました。社員一人あたり月平均1万円を支援する制度で、年間10億円の規模です。

さらに2026年2月には、Claude活用に特化した支援として11.5億円を追加投資しました。AIツール代を会社が積極的に負担する姿勢です。

変わった取り組みもあります。2026年1月から「GMO AI Day」を制定しました。これは社員全員が、その日は集中してAIに向き合うという日です。

そして掲げる目標が具体的です。2027年11月30日までに、AIエージェント(自動で作業をこなすAI)をフル活用する「日本で最もハイパーオートメーション化された企業グループ」になるとしています。ハイパーオートメーションとは、仕事の多くをAIで自動化しきる状態のことです。

CAIOは世界の新常識|他社との比較

「トップがAI責任者」と聞くと珍しく感じるかもしれません。でも実は、CAIOという役職は世界で急速に広がっています。

IBMが2026年に世界のリーダー2,000人以上へ行った調査では、76%の企業がCAIOを設置済みでした。2025年の26%から一気に増えた計算です。

日本国内はどうでしょうか。売上500億円以上の企業を対象にしたPwCの調査では、何らかのAI責任者を置く企業は約6割ありました。ただし「CAIO」という独立した肩書きで置く例は、まだ4%程度にとどまります。

先を行く企業も出ています。人材大手のパーソルホールディングスは2026年4月に、CAIOと約150名のグループAI本部を新設しました。福島県の磐梯町(ばんだいまち)のような自治体でもCAIOを置く動きがあります。

政府も後押ししています。AIセーフティ・インスティテュートが2026年2月に「CAIOガイドブック」を公開しました。役職名だけでなく、仕事の中身までルール化が進んでいます。

こうして見ると、GMOの発表は「流行に乗った」のではなく、トップ自らが最前線を走る形だとわかります。CTO(技術の責任者)やCDO(データの責任者)とは別に、AI専門のかじ取り役を置く流れが本格化しているのです。

日本の企業と働く人にとっての意味

この動きは、大企業だけの話ではありません。あなたの職場にも関わってきます。

中小企業の経理担当者を想像してみてください。月末に数百枚の請求書を1枚ずつ手で確認しているとします。GMOが目指す「ハイパーオートメーション」は、この作業をAIエージェントに任せる世界です。

個人にとってのヒントもあります。熊谷氏が示したのは「専門家でなくてもAIで開発できる」という事実です。62歳の経営者が、対話だけで10万行のアプリを作ったのですから、私たちが身構えすぎる必要はありません。

一方で、シビアな面もあります。「エンジニアを含む組織の見直し」という言葉は、これまでの仕事がそのまま残るとは限らない、というメッセージでもあります。

大事なのは、AIに仕事を奪われるかどうかではありません。AIを使いこなす側に回れるかどうかです。GMOの事例は、その分かれ道を私たちに見せてくれています。

よくある質問(FAQ)

Q1. CAIOとは何ですか?

Chief AI(Transformation)Officer の略で、日本語では「最高AI責任者」と呼びます。会社全体のAI活用を統括する経営ポストです。CTO(技術)やCDO(データ)とは別に置かれることが増えています。

Q2. 熊谷正寿氏はエンジニア出身なのですか?

もともとプロのエンジニアというわけではありません。それでもAIとの対話で2ヶ月に約10万行のコードを書いた点が、大きな話題になっています。

Q3. バイブコーディングとは何ですか?

細かい仕様書を書かず、AIと会話しながらプログラムを作っていく手法です。「こう動かしたい」と伝えるとAIがコードを書いてくれます。

Q4. GMOは今後どこを目指しているのですか?

2027年11月30日までに「日本で最もハイパーオートメーション化された企業グループ」になることを掲げています。AIによる自動化を会社全体に広げる計画です。

Q5. 自分の会社にもCAIOは必要ですか?

規模によりますが、まず「誰がAI活用の責任を持つか」を決めることが第一歩です。専任のCAIOでなくても、担当を明確にするだけで導入は進みやすくなります。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • GMOの熊谷代表が2026年7月13日、グループCAIO(最高AI責任者)に就任した
  • 「コーディングはもう人間だけの仕事ではない」として組織を根本から見直す
  • 熊谷氏は自ら2ヶ月で約10万行のコードをAIで開発した
  • 年間10億円超の支援金と、2027年の自動化目標を掲げている
  • CAIOは世界の76%の大企業が置く「新しい経営の常識」になりつつある

まずは自分の毎日の仕事から、AIに任せられる作業がないか一つ探してみましょう。それが「使いこなす側」への第一歩になります。

参考文献

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