- Getty ImagesとOpenAIが複数年の「表示提携」を結び、ChatGPTの検索結果にライセンス画像が出るようになります
- 発表を受けてGetty Imagesの株価は1日で一時200%超も急騰しました
- これはAIの「学習」用ではなく「表示」だけの契約で、著作権の扱いが従来と大きく違います
- GettyはかつてAI企業を提訴した会社で、「対立から提携へ」の転換点として注目されています
- 一方で、写真家への報酬がどうなるかは未公表のままで、課題も残っています
「AIが勝手に画像を使うのは許せない」。そう言って裁判まで起こした会社が、今度はそのAI企業と手を組みました。2026年6月、Getty ImagesとOpenAIの提携ニュースは世界中を驚かせます。株価は1日で200%超も急騰しました。なぜ「敵」が「味方」になったのか。この記事を読むと、AIと著作権をめぐる大きな流れの変化がわかります。
Getty ImagesとOpenAIの提携、何が決まったのか
まずは何が起きたのかを整理します。
Getty Images(ゲッティイメージズ/世界最大級の写真ライセンス会社)は2026年6月21日、OpenAIとの提携を発表しました。
内容は「複数年の表示提携(ディスプレイ・パートナーシップ)」です。
ChatGPTで画像を検索すると、Gettyが持つライセンス済みの写真が表示されるようになります。
表示される写真には、誰が撮った作品かという「クレジット(出どころの表示)」が付きます。
イメージとしては、Google画像検索でライセンス元のサイトが出てくるのに近い仕組みです。
Gettyは報道写真やスポーツ、エンタメ、歴史的なアーカイブまで、膨大な写真をそろえています。
その質の高い画像が、ChatGPTの検索や発見の体験に組み込まれることになります。
「表示」だけで「学習」には使わない
ここがこのニュースの一番大事なポイントです。
今回の契約は「表示(ディスプレイ)」専用で、AIの「学習(トレーニング)」には画像を使いません。
AIの学習とは、大量のデータをAIに読み込ませて賢くする作業のことです。
これまでの著作権トラブルの多くは、この「学習に勝手に使った」という点が争点でした。
今回は学習には触れず、あくまで「検索結果に表示する」だけの取り決めです。
だからGettyは、やっかいな著作権の問題を裁判で決着させなくても、ビジネスとして話を進められます。
OpenAIにとっては、権利関係がきれいな高品質画像をChatGPTで使えるメリットがあります。
株価が1日で200%超急騰した理由
このニュースで投資家が最も反応したのが株価です。
Getty Imagesの株価は、6月22日の取引で大きく動きました。
取引開始前(プレマーケット)の段階で150%超、取引中には一時200%超も急騰しました。
最終的には前日比で123%高という、それでも驚異的な水準で取引を終えています。
実はGetty株は、その前の1年で価値が約55%も下がっていました。
急騰前の金曜日の終値は、わずか0.61ドル(約90円)まで落ち込んでいたのです。
そこへ今回の発表が出て、株価は一気に2倍以上にはね上がりました。
投資家は何を期待したのか
では、なぜここまで買われたのでしょうか。
投資家が見たのは、「コンテンツを持つ会社の新しい稼ぎ方」です。
これまで写真会社は、AIに対して「被害者」になりがちでした。
勝手に画像を使われ、価値を奪われる立場だったのです。
ところが今回の提携は、その関係をひっくり返しました。
写真会社が「AIに素材を供給する側」になり、お金を受け取る立場に変わったのです。
この「被害者から供給者へ」という発想の転換に、市場は大きく期待しました。
なぜ「敵」だったGettyが手を組んだのか
この提携が驚かれたのには、はっきりした理由があります。
GettyはもともとAI画像生成サービスに、最も厳しい態度をとっていた会社だからです。
2023年、Gettyは画像生成AIの「Stability AI」を提訴しました。
自社の画像を、許可なく学習データに使われたという訴えでした。
つまりGettyは、AIと戦う「急先鋒(一番前で戦うリーダー)」だったのです。
裁判で見えた「戦いの限界」
その裁判の流れが、今回の方針転換につながったと見られています。
2025年11月、英国の高等裁判所はGettyの主要な著作権侵害の主張を退けました。
裁判所は「AIモデルは学習中に写真そのものを複製・保存しているわけではない」と判断したのです。
認められたのは、ロゴ(透かし)に関するわずかな商標違反だけでした。
つまり、裁判で勝ってAIを止めるのは、とても難しいと分かったわけです。
「戦い続けても得るものが少ない」。
その現実が、Gettyを「提携」という現実的な道へ向かわせたと考えられます。
他のライセンス提携との違い
AI企業とコンテンツ会社の提携は、実は今回が初めてではありません。
他の事例と比べると、今回の特徴がはっきりします。
たとえばShutterstock(シャッターストック/同じく大手の写真素材会社)も、OpenAIと提携しています。
ただし、Shutterstockの契約は主に「学習データ」用です。
Shutterstockの画像は、ChatGPT内で画像を生成する仕組みを支えています。
一方、今回のGettyの契約は「学習には使わない表示専用」という点が大きく異なります。
「学習用」と「表示用」の違いを整理
2つの契約タイプの違いを、表で見てみましょう。
| 項目 | 表示提携(今回のGetty) | 学習提携(Shutterstockなど) |
|---|---|---|
| 画像の使い道 | 検索結果に元画像を表示 | AIを賢くする学習データ |
| 著作権の論点 | 表示なので比較的クリア | 学習の合法性が争点になりやすい |
| クレジット | 付く(出どころが分かる) | 基本的に付かない |
| 権利者の立場 | 素材の供給者 | データ提供者 |
このように、同じ「AIとの提携」でも中身はかなり違います。
表示専用の今回のモデルは、権利者にとって受け入れやすい形だといえます。
日本のクリエイターや企業への影響
このニュースは、海外だけの話ではありません。
日本のクリエイターや企業にも、いくつかの形で関わってきます。
まず、Gettyは日本国内でも広く使われている写真サービスです。
日本の写真家や映像作家も、Gettyに作品を預けている人が少なくありません。
つまり、日本のクリエイターの作品がChatGPTの検索結果に表示される可能性もあります。
「AIに使われる」から「AIで稼ぐ」へ
日本の権利者にとって、この流れは大きな意味を持ちます。
これまで「AIに勝手に使われるのが怖い」と感じていた人は多いはずです。
あるフリーランスのカメラマンを想像してみてください。
苦労して撮った写真が、いつの間にかAIの素材になっている。報酬もない。
そんな不安が、業界には根強くありました。
今回のモデルが広がれば、「正式に許可して、クレジット付きで表示され、対価を得る」道が見えてきます。
日本でも、権利を守りながらAIと付き合う新しいルール作りの参考になりそうです。
企業の画像利用にも変化が
企業にとっても無関係ではありません。
ChatGPTで画像を探すとき、権利がはっきりした写真が出てくれば安心して使えます。
資料作りや広報で「この画像、使って大丈夫かな」と悩む場面は多いものです。
出どころが明確な画像が増えれば、こうした不安は減っていくでしょう。
残された課題は「写真家への報酬」
明るいニュースに見える今回の提携ですが、課題も残っています。
最大の問題は、写真家への報酬がどうなるかが分からない点です。
GettyとOpenAIは、契約の金額を公表していません。
そして、Gettyが受け取るお金のうち、どれだけが実際に写真家へ渡るのかも未公表です。
Gettyは約60万人のクリエイターと、約360のコンテンツパートナーと組んでいます。
それだけ多くの人が関わるのに、報酬の条件が見えていないのです。
過去にあった「わずかな報酬」問題
この不安には、過去の前例があります。
Shutterstockは、AIに画像を提供した際に写真家へ還元する基金を作りました。
ところが、1枚あたりの支払いはごくわずかだったと業界では言われています。
「会社は儲かっても、現場の作り手にはほとんど回らない」。
そんな構図が、今回も繰り返されないか心配されています。
作品を提供した人に、創作をやめる選択(オプトアウト)が用意されるかも明らかではありません。
よくある質問(FAQ)
Q1. ChatGPTでGettyの画像はもう見られますか?
提携は2026年6月に発表されたばかりです。今後、ChatGPTの検索や発見の機能に順次組み込まれていく見込みです。表示の頻度や具体的な見え方は、まだ明らかになっていません。
Q2. 今回の契約でAIがGettyの画像を学習するのですか?
いいえ。今回は「表示」専用の契約で、AIの「学習」には画像を使いません。検索結果に元の写真を出すための取り決めです。
Q3. 表示される画像にはクレジットが付きますか?
はい。表示されるGettyの画像には、出どころを示すクレジット(帰属表示)が付くとされています。誰の作品かが分かる形です。
Q4. 日本の写真家の作品も対象になりますか?
Gettyに作品を預けている日本のクリエイターも多く、対象に含まれる可能性があります。ただし報酬の条件は未公表のため、今後の発表を待つ必要があります。
Q5. なぜGettyの株価はそんなに上がったのですか?
「コンテンツを持つ会社がAIにお金を取って素材を売る」という新しいビジネスモデルへの期待が理由です。被害者ではなく供給者になれる点が、投資家に評価されました。
まとめ
今回のニュースの要点を振り返ります。
- Getty ImagesとOpenAIが「表示専用」の複数年提携を発表しました
- ChatGPTの検索結果に、クレジット付きのライセンス画像が表示されます
- AIの学習には使わないため、著作権の扱いが従来と大きく違います
- 発表を受けてGetty株は1日で一時200%超も急騰しました
- かつてAIを提訴したGettyの「対立から提携へ」の転換点として注目されています
- 一方で写真家への報酬は未公表で、現場への還元が課題として残っています
AIと権利者が「戦う」時代から「共存する」時代へ。その大きな一歩を、まずはこのニュースから感じ取ってみてください。
参考文献
- Getty Images Announces Display Partnership with OpenAI(Getty Images公式)
- OpenAI、Getty Imagesと複数年契約 ChatGPTの検索結果にライセンス画像を直接表示(ITmedia NEWS)
- Getty Images Soars 200% in Early Trading After OpenAI Deal(Bloomberg)
- Getty Images v. Stability AI: English High Court Rejects Secondary Copyright Claim(Latham & Watkins)
- Getty Images OpenAI Deal Puts Licensed Photos in ChatGPT, Creator Pay Unknown(Tech Times)

