生成AIは部長が最多|毎日使うのは3人に1人

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • 全国2万人調査で、新規事業に関わる人の33.6%が生成AIを「ほぼ毎日」使っていた
  • 週1回以上の利用率は一般社員55.4%に対し、部長クラスは75.7%。「若手ほど使う」は逆だった
  • 年齢で見ると45〜54歳で66.7%へ落ち、55歳以上は59.0%まで下がる
  • 経営者・役員は「毎日使う」36.2%と「ほぼ使わない」26.5%に真っ二つ
  • 情報通信業78.9%、医療・福祉52.9%と、業種の差は26ポイント

「生成AIって、結局は若い人の道具でしょう?」——そう思ったことはありませんか。2026年8月24日に公表された2万人規模の調査は、その常識をきれいに裏返しました。実は、いちばん使っているのは部長クラスだったのです。この記事では、その数字の中身と、私たちの働き方に何が起きているのかを読み解きます。

2万人調査でわかった「3人に1人が毎日」

調査を実施したのは、新規事業の支援を手がける株式会社ARCHECO(アルケコ)です。

2026年8月17日から19日にかけて、全国の25〜69歳の会社員・経営層20,000人にインターネットで聞きました。

そのうち、直近で新規事業に関わった人は4,794人。この人たちだけを取り出すと、生成AI(文章や画像を自動でつくるAI)の使用頻度はこうなります。

  • ほぼ毎日:33.6%
  • 週に数回:32.9%
  • 月に数回:18.4%
  • 使わない:15.2%

つまり週1回以上が66.4%。3人に2人が、少なくとも週に一度はAIに何かを頼んでいる計算です。

ここで比較したいのが、回答者2万人全体の数字です。全体では「ほぼ毎日」は14.7%、「使わない」は55.6%でした。

新規事業の現場だけが、社内でも突出してAIに寄りかかっている。この温度差が、今回の調査のいちばん大きな発見かもしれません。

「若手ほど使う」は誤解だった|部長が75.7%

役職ごとに週1回以上の利用率を並べると、きれいな右肩上がりの階段が現れます。

  • 一般社員:55.4%(毎日は24.8%)
  • 係長・主任:61.2%(毎日は29.3%)
  • 課長:71.3%(毎日は31.7%)
  • 部長:75.7%(毎日は41.7%)
  • 経営者・役員:58.6%(毎日は36.2%)

一般社員と部長の差は、実に20.3ポイントです。

さらに、新規事業の「責任者」として関わった層に絞ると、ほぼ毎日が48.9%、週1回以上は78.5%まで跳ね上がります。

ハンコを押す側の人ほど、AIを毎日開いている。ARCHECOの取締役・須齋佑紀氏も、この「決裁する側ほど使っている」点に注目すべきだとコメントしています。

なぜ責任者ほど使うのか

理由を考えると、腑に落ちるところがあります。

新しい事業の責任者は、毎日のように「知らないこと」に当たります。聞いたことのない業界の規制、初めて見る競合の名前、根拠のあやしい市場規模。

そこで求められるのは、完璧な正解ではありません。翌朝の会議までに、判断できるだけの見取り図です。

生成AIは、まさにその「たたき台を30分で出す」作業が得意です。だから決裁層と相性がいい、というわけです。

一方の一般社員は、担当業務が決まっていて、手順もマニュアル化されていることが多い。AIに頼む余地が、そもそも少ないのです。

45歳の壁|年齢では確かに落ちる

役職では逆転しましたが、年齢で切ると話は変わります。

  • 25〜34歳:77.3%
  • 35〜44歳:75.6%
  • 45〜54歳:66.7%
  • 55歳以上:59.0%

44歳までは75%を超えているのに、45歳を境に約9ポイント下がります。55歳以上ではさらに落ちて59.0%です。

いちばん低かったのは、55歳以上の一般社員で39.5%。役職が上がらないまま年齢を重ねた層が、最も取り残されている構図が見えます。

整理すると、こういうことになります。AIを使うかどうかを決めているのは「若さ」ではなく「役割」。ただし同じ役割なら、年齢が上の人ほど手が伸びにくい。この2つが同時に起きているのです。

経営者・業種・企業規模に走る格差

経営者だけが真っ二つ

数字がいちばん面白いのは、経営者・役員層です。

「ほぼ毎日」が36.2%と部長に次いで高い一方、「ほとんど・全く使わない」も26.5%。4人に1人が完全に触っていません。

使わない経営者189人の内訳を見ると、79.4%が55歳以上74.6%が従業員49名以下の企業でした。

逆に、従業員5,000名以上の企業の経営者・役員では、ほぼ毎日が70.9%に達します。同じ「社長」でも、会社の規模で景色がまったく違うわけです。

業種で26ポイントの差

業種別の週1回以上利用率も、ばらつきが大きいものでした。

  • 情報通信業:78.9%
  • 金融・証券・保険業:74.0%
  • 製造業:69.7%
  • サービス業:67.0%
  • 医療・福祉:52.9%

トップとボトムで26.0ポイントの開きです。個人情報を厳しく扱う医療・福祉が最下位なのは、納得のいく結果と言えます。

意外だった性別の逆転

もう一つ、見落とせない数字があります。

新規事業に関わっている割合は男性24.7%に対し女性20.5%と低いのに、関わった人の週1回以上利用率は女性72.6%、男性65.3%と逆転しています。

「まったく使わない」も女性10.7%、男性16.0%。参加のチャンスは少なくても、参加したら女性のほうがAIを使いこなしている、という構図です。

他の調査と比べると何が新しいのか

生成AIの利用実態調査は、2026年に入って各社から出ています。今回の調査の位置づけを整理します。

まず総務省の令和8年版情報通信白書(2026年7月公表)。個人の生成AI利用経験は58.8%で、前年の26.7%から2倍以上に伸びました。ただしこれは「使ったことがあるか」を聞いた数字で、毎日使っているかまでは分かりません。

次に帝国データバンクの2026年3月調査。業務で活用している企業は34.5%、大企業46.5%に対し中小企業32.4%、小規模企業28.0%と、企業単位の格差を示しました。こちらは「会社が導入したか」の話です。

マクロミルの2026年4月調査(3,090人)では、毎日活用する層は1日平均75分の業務時間削減を実感し、平均2.3個のAIツールを併用していると報告されました。

これらに対してARCHECOの調査がユニークなのは、「新規事業に関わっているか」という切り口で個人を分類した点です。

会社が入れたかどうかでも、年齢でもなく、「今どんな仕事をしているか」で使用頻度を割った。だからこそ、役職と利用率の逆転が浮かび上がったのです。

ちなみに、パーソル総合研究所も「利用率では測れない職場での活用実態」を指摘しています。導入率という指標だけでは現場は見えない、という問題意識は各社で共通しつつあります。

日本の職場はこれからどう変わるか

この調査が日本の働き方に投げかけているものを、3つの場面で考えてみます。

場面1:研修の相手を間違えている会社

ある製造業の人事担当者が、生成AI研修の対象者を選ぶとします。多くの会社は「若手・中堅から」と考えるはずです。

でも今回の数字を見れば、すでに部長は75.7%が使っている。むしろ手つかずなのは、55歳以上の一般社員(39.5%)や、小さな会社の経営者です。

研修の予算を、いちばん使っている層に投じてしまう。この取り違えは、かなり多くの企業で起きていそうです。

場面2:医療・福祉の現場に残る余白

介護施設の管理者が、月末に手書きの記録から報告書をまとめている場面を想像してください。数十人分の日誌を読み返し、要点を拾って文章にする作業です。

医療・福祉の利用率が52.9%と最下位なのは、慎重さの表れでもあります。患者や利用者の情報を、外部のAIに送るわけにはいきません。

だからこそ、社内で完結する仕組みや、個人情報を含まない業務からの導入が現実的な入り口になります。最下位ということは、伸びしろが最大だとも読めます。

場面3:ひとり社長の分かれ道

従業員10人の会社を営む58歳の社長を思い浮かべてください。今回の調査では、この属性がまさに「使わない側」の中心でした。

同じ規模の同業他社の社長が、見積書のたたき台や求人票をAIに30分で書かせているとしたら。1年後には、事務作業にかける時間そのものが違ってきます。

大企業の役員は70.9%が毎日使う。小さな会社の経営者ほど使っていない。この差が、そのまま企業規模の格差を広げる燃料になりかねません。

よくある質問(FAQ)

Q1. この調査は日本の会社員全体の実態を表していますか?

数字を読むときは注意が必要です。中心となる33.6%などの利用率は、2万人のうち新規事業に関わった4,794人を対象にしたものです。回答者全体で見ると「ほぼ毎日」は14.7%、「使わない」は55.6%でした。日本全体の平均というより、新しい仕事をしている人の実態と考えるのが正確です。

Q2. 「若手ほど使う」という通説は完全に間違いだったのですか?

半分は正しく、半分は間違いです。年齢別では25〜34歳が77.3%で最も高く、若い人ほど使うのは事実でした。ただし役職別では部長クラスが75.7%と一般社員(55.4%)を大きく上回ります。年齢より役職の影響のほうが大きい、というのが今回の結論です。

Q3. なぜ経営者・役員は部長より利用率が低いのですか?

経営者層が二極化しているためです。「ほぼ毎日」36.2%と「ほとんど使わない」26.5%が同居しており、平均すると58.6%に落ち着きます。使わない層は55歳以上(79.4%)と従業員49名以下の企業(74.6%)に強く偏っていました。

Q4. 45歳以降で利用率が下がるのは日本だけの現象ですか?

今回の調査は国内のみが対象なので、断定はできません。ただし総務省の令和8年版情報通信白書によると、日本の生成AI利用経験は58.8%で、7割を超える米国やドイツより低い水準にあります。テキスト以外の用途では差がさらに大きく、日本全体として普及が遅れ気味である点は共通して指摘されています。

Q5. 自分の職場が遅れているか、どう判断すればいいですか?

自分の業種の数字と比べるのが早道です。情報通信業78.9%、金融74.0%、製造業69.7%、サービス業67.0%、医療・福祉52.9%が目安になります。この水準を大きく下回るなら、ツールの問題ではなく使っていい業務の線引きが決まっていない可能性が高いでしょう。

まとめ

  • ARCHECOが2026年8月17〜19日に全国2万人へ実施した調査で、新規事業に関わる人の33.6%が生成AIを「ほぼ毎日」使っていた
  • 週1回以上の利用率は一般社員55.4%、課長71.3%、部長75.7%と、役職が上がるほど高い
  • 年齢別では45〜54歳で66.7%、55歳以上で59.0%と落ち込み、最低は55歳以上の一般社員の39.5%
  • 経営者・役員は毎日36.2%と不使用26.5%に二極化し、従業員5,000名以上では毎日が70.9%に達する
  • 業種差は情報通信業78.9%と医療・福祉52.9%で26ポイント、女性の利用率は男性を7.3ポイント上回った

まずは自分の役職と年齢を、この表に当てはめてみてください。もし平均より低いなら、足りないのはスキルではなく「AIに任せていい仕事」を決める一手間かもしれません。

参考文献