- 組織の生成AI利用率は80.9%に到達。もう「使っている」のが当たり前の時代です
- でも33.6%が「簡易業務には使えるが、コア業務には使えていない」と回答
- 全社で環境を整えても、約3人に1人(31.8%)は「時々使う」程度にとどまります
- つまずきの正体は、スキル格差・セキュリティ不安・活用アイデア不足の3つ
- カギは「効果を測れる小さな業務」から始めて、成果を横に広げること
「うちもAIを入れたのに、なぜか仕事が楽になった気がしない」。そう感じたことはありませんか。最新調査では、生成AIを使う組織は8割を超えました。でも本当に大事な仕事で使えている会社は、まだ少数派です。この記事では、その「導入と成果のズレ」がどこで起きているのか、そしてどう乗り越えればいいのかをやさしく解説します。
調査でわかった「利用8割」の中身
今回の話のもとになったのは、株式会社うるるBPOの調査です。2026年6月4日に発表されました。
対象は、100名以上の会社で働く係長以上の役職者1,201名です。調査自体は2026年3月に行われました。
注目すべき数字はこれです。
組織で生成AIを使っている割合は80.9%。「かなり利用している」が32.6%、「やや利用している」が48.3%でした。
もう導入そのものは、めずらしいことではありません。10社のうち8社が、なんらかの形でAIを業務に取り入れている計算です。
ところが、ここからが問題です。「使っている」と「役立っている」は、別の話だったのです。
「使えている」の正体は、簡易業務どまり
調査でいちばん多かった答えは、少し切ないものでした。
「簡易的な業務には使えているが、コア業務には使えていない」が33.6%で最多だったのです。
コア業務とは、その会社の利益や価値に直接つながる中心的な仕事のことです。営業の提案、商品の企画、専門的な判断などがあてはまります。
多くの会社では、AIの出番が「議事録づくり」や「メールの下書き」で止まっています。便利ではありますが、会社の競争力を変えるほどではありません。
定着度を見ても同じ傾向です。全社でAIを使える環境を整えた会社ですら、「日常的に利用」は64.3%にとどまりました。
残りの約3人に1人(31.8%)は「時々利用」する程度。毎日の仕事の道具には、まだなりきれていないのです。
成果が出ている業務、出ていない業務
どんな仕事で成果が出ているのかも、はっきり分かれました。
「文章作成」では47.0%が効率化を実感しています。約半数ですから、ここは合格点といえます。
一方で「業務プロセスの自動化」はわずか15.3%。「顧客対応の高度化」にいたっては11.9%しかありません。
つまり、文章を整える作業は得意でも、仕事の流れそのものを変えるところまでは届いていない、というわけです。
なぜコア業務で使えないのか
では、なぜここで止まってしまうのでしょうか。原因は大きく3つあります。
1. 人によるスキル格差
同じ会社でも、AIを使いこなせる人とそうでない人の差が広がっています。
別の調査(コーレ株式会社)では、7割超が「使いこなせない人がいることで業務に支障が出ている」と感じていました。
意外なことに、つまずいているのは現場の若手だけではありません。使いこなせない層の上位は「課長・リーダー職」(29.3%)、次いで「経営層」(26.8%)でした。
指示を出す側がAIを理解していないと、現場も「どこまで使っていいのか」わからなくなります。
2. セキュリティへの不安
「社外秘の情報を入力して大丈夫なのか」という心配も大きな壁です。
活用が進まない理由として、セキュリティ懸念を挙げた人は33.5%にのぼりました。
コア業務ほど、扱う情報も重要になります。だからこそ慎重になり、結局は安全な簡易作業だけで使う、という流れになりがちです。
3. 活用アイデアが浮かばない
「自分の仕事のどこにAIを使えばいいのか思いつかない」という声も26.0%ありました。
ツールはあっても、使い道が見えない。これはAIそのものより、業務の見直し不足が原因です。
他の調査と比べてもズレは共通
このズレは、うるるBPOの調査だけの話ではありません。複数の調査で同じ傾向が出ています。
コーレ株式会社が管理職1,008名に聞いた調査では、よく使う業務は「文書作成」63.1%、「情報収集・要約」51.4%でした。やはり簡易業務が中心です。
コンサル大手PwCの調査でも、活用の壁は「スキルを持つ人材がいない」27%、「ユースケースがない」26%、「進め方がわからない」22%と並びました。
会社や調査が違っても、答えはほぼ同じです。導入は終わった。次は「どう深く使うか」が共通の宿題になっているのです。
一方で、明るい数字もあります。今後の投資について、約90%の企業が「増やす方向で考えている」と答えています。停滞を自覚しつつも、あきらめてはいないのです。
日本企業がいま打つべき一手
では、この壁をどう越えればいいのでしょうか。専門家が共通してすすめるのは、派手な大改革ではありません。
ポイントは「効果を測れる小さな業務」から始めることです。
ある中小企業の問い合わせ対応を思い浮かべてみてください。1日に何十件も届く似た質問に、担当者が毎回ゼロから返信しています。ここにAIで返信案を作る仕組みを入れれば、削減できた時間をそのまま数字で示せます。
こうして「何分減ったか」をはっきり出せる業務から試すのです。成果が見えれば、現場も経営層も納得し、次の業務へ広げやすくなります。
もう一つ大事なのが、管理職の意識を変えることです。リーダー自身がAIを触り、「この仕事はこう任せられる」と語れるようになると、チーム全体の使い方が一気に進みます。
ツールを買って終わりにしない。仕事の進め方そのものを見直す「組織の更新」こそが、本当の分かれ道になります。
日本企業にとって、これは決して不利な状況ではありません。多くの会社が同じ場所で足踏みしている今こそ、一歩先に深い活用へ進めば、それがそのまま差になるからです。
よくある質問(FAQ)
Q. 生成AIの利用率8割というのは、個人ではなく組織の数字ですか?
はい。今回紹介した80.9%は、組織として生成AIを利用している割合です。係長以上の役職者に、自社の状況をたずねた結果です。個人の利用率はこれより低くなる調査が多いです。
Q. 「コア業務」とは具体的に何を指しますか?
会社の利益や価値に直接つながる中心的な仕事のことです。営業提案、商品企画、専門的な判断、顧客対応などが当てはまります。逆に議事録づくりやメールの下書きは「簡易業務」に近い位置づけです。
Q. うちの会社が「時々利用」止まりなのは遅れているのでしょうか?
焦る必要はありません。全社で環境を整えた会社でも、約3人に1人は「時々利用」どまりです。多くの企業が同じ段階にいます。大事なのは比べることより、自社で成果を測れる業務を一つ見つけることです。
Q. 何から手をつければいいですか?
削減時間を数字で出しやすい業務から始めるのがおすすめです。問い合わせ対応や議事録作成などが代表例です。小さく試して成果を見せ、その実績をもとに対象を広げていくと定着しやすくなります。
Q. セキュリティが不安です。どうすればいいですか?
まずは入力してよい情報の範囲を社内ルールで決めることが第一歩です。法人向けの安全な環境を選び、社外秘の扱い方を明確にすれば、コア業務でも少しずつ使えるようになります。
まとめ
今回のポイントを振り返ります。
- 組織の生成AI利用率は80.9%。導入はもう当たり前の段階に入った
- ただし33.6%が「コア業務には使えていない」と回答。簡易業務どまりが課題
- 全社環境でも約3人に1人(31.8%)は「時々利用」にとどまる
- 原因はスキル格差・セキュリティ不安・活用アイデア不足の3つ
- 解決のカギは「効果を測れる小さな業務」から始め、成果を横展開すること
まずは自分の職場で、削減時間を数字にできる業務を一つ探してみましょう。そこが、深いAI活用への第一歩になります。

