Figure 03がBMW工場で稼働|人型ロボが部品を並べる

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • 人型ロボット「Figure 03」がBMWのアメリカ工場(サウスカロライナ州スパルタンバーグ)で実際の作業を開始しました
  • 担当するのは「シーケンシング」という、部品を組み立ての順番どおりに並べる作業です
  • Figure 03は「Helix」という頭脳(VLA)で、見て・聞いて・動くを1つのAIでこなします
  • 前世代のFigure 02は、すでに3万台以上のBMW車の生産を手伝った実績があります
  • トヨタや川崎重工など、日本メーカーも人型ロボットの工場導入を進めています

「人型ロボットが工場で働く」と聞くと、まだ少し先の未来の話に感じませんか。でも、それはもう始まっています。ドイツの自動車大手BMWが、人型ロボット「Figure 03」を実際の生産ラインに投入しました。この記事では、ロボットが何をしているのか、なぜ今なのか、そして日本にどう関係するのかを、やさしく解説します。

BMW工場で何が起きたのか

2026年、BMWがアメリカの工場で大きな一歩を踏み出しました。

舞台は、サウスカロライナ州にあるスパルタンバーグ工場です。BMW最大の生産拠点の1つです。

ここに、人型ロボット「Figure 03(フィギュア・スリー)」が導入されました。開発したのはアメリカのスタートアップ、Figure AI(フィギュア・エーアイ)です。

ロボットが担当するのは「物流」の作業です。人間の作業員のすぐ近くで、部品の準備を手伝います。

BMWはこの取り組みを「フィジカルAI(現実世界で体を動かすAI)を生産に活用する」と説明しています。画面の中のAIが、ついに現実の工場へ出てきたのです。

「シーケンシング」ってどんな作業?

Figure 03が任されたのは「シーケンシング」という仕事です。聞き慣れない言葉ですよね。

これは、部品を組み立ての順番どおりに並べる作業のことです。

自動車の組み立てでは、どの車にどの部品を付けるかが1台ごとに違います。だから、部品を正しい順番でラインに届ける必要があります。

Figure 03は、たくさんの部品がごちゃ混ぜに入った大きな箱から、必要な部品を1つずつ取り出します。そして、専用の台車(シーケンシング・トロリー)に順番どおりに並べていきます。

並べ終わった台車は、別の搬送ロボットが組み立て担当者のところまで運びます。人間は、届いた部品をそのまま取り付けるだけで済むのです。

単純に見えて、実はとても頭を使う作業です。「どの部品を」「どこから取って」「どの順で置くか」を、その場で判断しないといけないからです。

Figure 03の頭脳「Helix」の正体

なぜ、こんな複雑な作業がロボットにできるのでしょうか。カギは頭脳にあります。

Figure 03を動かしているのは「Helix(ヘリックス)」というAIです。これは「VLA」と呼ばれる新しいタイプのAIです。

VLAとは「Vision-Language-Action」の略です。日本語にすると「視覚・言語・行動」となります。

つまり、目で見て、言葉を理解して、体を動かす——この3つを1つのAIでまとめてこなすのです。

これまでのロボットは、動きを1つずつプログラムで細かく指示する必要がありました。「ここで曲げて」「ここで掴んで」と、人間が全部決めていたのです。

でもHelixは違います。人間がお手本を見せた映像から、作業のコツを自分で学びます。プログラムを書き換えなくても、新しい仕事を覚えられるのです。

歩きながら全身で協調する

最新の「Helix 02」では、さらに進化しました。

以前は主に上半身(腕や手)の制御が中心でした。今は歩く・掴む・バランスを取るを1つのシステムで同時に動かせます

Figure AIによると、Helix 02のロボットは食器洗い機の食器を出し入れする作業を、約4分間ずっと自分で続けられたそうです。歩いて、手を伸ばして、体を支える——これらを途切れなくこなしました。

さらに、荷物の仕分け作業を8時間ぶっ通しで続けた実演もありました。人間と同じくらいの速さで、バーコード付きの荷物を処理し続けたのです。

Figure 03本体も進化しています。ワイヤレス充電、手のひらのカメラ、指先で物に触れた感触を感じるセンサーなどが新しく加わりました。

なぜBMWは人型ロボットを選んだのか

BMWとFigure AIの付き合いは、今回が初めてではありません。

実は前の世代「Figure 02」が、すでにスパルタンバーグ工場で活躍していました。車のボディを作る工程で、3万台以上のBMW X3の生産を手伝った実績があります。

この成功があったからこそ、より高性能なFigure 03へと進んだのです。いきなり本番ではなく、実績を積み重ねてきました。

では、なぜ「人型」なのでしょうか。工場のロボットといえば、これまでは腕だけのロボットアームが主流でした。

理由は、工場が「人間が働く前提」で作られているからです。通路の幅、部品箱の高さ、台車の位置——すべて人間サイズです。

人型ロボットなら、工場を作り替えなくても、人間と同じ場所でそのまま働けます。ここが大きな利点です。

ある工場のラインを想像してみてください。人間の作業員が部品を取り付けている、そのすぐ横で。人型ロボットが部品を並べて渡す。数年前ならSF映画の光景でしたが、もう現実になりました。

ライバルはどこ?他社の人型ロボットと比較

人型ロボットの開発競争は、今とても激しくなっています。主なライバルを見てみましょう。

  • Tesla(テスラ)の「Optimus」:自社の工場で電池の仕分けなどに使用。ただしCEOのマスク氏は「まだ学習が主目的」と認めています。ロボット学習用の巨大コンピューターに大型投資中です。
  • Agility Robotics(アジリティ)の「Digit」:脚が2本の人型ロボット。倉庫作業で実際に収益を上げている数少ない存在です。トヨタやメルカドリブレと契約しています。
  • Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)の「Atlas」:バク宙もできる高い運動能力が特徴。ヒュンダイの工場で試験導入中です。
  • Figure AI(フィギュア)の「Figure 03」:今回の主役。BMW工場で実際の物流作業を開始しました。

各社の違いは「どこまで実際の仕事をしているか」に表れています。デモ(実演)だけの段階から、本当の現場での稼働へ——競争の軸が変わってきました。

Figure AIは資金面でも注目されています。シリーズCで10億ドルを調達し、企業価値は約395億ドル(約6兆円)とされます。自社工場「BotQ」で、今は1時間に1台のペースで量産しているといいます。

日本市場への影響と国内メーカーの動き

「海外の話でしょ?」と思うかもしれません。でも、日本メーカーも本気で動いています。

まずトヨタ自動車です。トヨタは人型ロボットの実用化を、まず自社工場から始める方針を示しました。2026年5月に東京で開かれたイベントで明らかにしています。

トヨタはカナダの工場に、前述のAgility製「Digit」を7台導入する計画も進めています。搬送車から部品を積み替えるような、体に負担の大きい作業を任せる予定です。

次に川崎重工業です。「RHP Kaleido(カレイド)」という身長約190cmの人型ロボットを開発しています。重い荷物を持ち上げる力と、転んでも壊れにくい頑丈さが特徴です。

日本は少子高齢化で、工場の働き手が減り続けています。だからこそ、人型ロボットへの期待は日本でも大きいのです。

2026年4月には、東京ビッグサイトで日本初の人型ロボット専門展も開かれました。国が導入を後押しする補助金の動きも出ています。海の向こうの出来事ではなく、日本のすぐ隣の話題なのです。

よくある質問(FAQ)

Q1. Figure 03は人間の仕事を奪うのですか?

今のところ、狙いは「人手が足りない作業」や「体に負担が大きい作業」を任せることです。BMWの例でも、ロボットは人間の作業員を助ける形で働いています。すぐに人が総入れ替えになるわけではありません。ただし、単純作業の一部が置き換わっていく流れは進むと見られます。

Q2. VLAは普通のロボットと何が違うのですか?

これまでのロボットは、動作を1つずつプログラムで指定する必要がありました。VLAは、映像を見て作業のやり方を自分で学びます。だから、細かく命令しなくても新しい仕事を覚えられます。ここが大きな違いです。

Q3. 日本の工場でもFigure 03は買えますか?

現時点で、Figure 03は主にBMWなど特定のパートナー企業で稼働している段階です。誰でもすぐ買える一般販売の商品ではありません。ただし、Agility製「Digit」のようにトヨタが導入する例もあり、日本でも人型ロボットは着実に広がりつつあります。

Q4. 人型ロボットはあとどれくらいで当たり前になりますか?

正確な時期は誰にもわかりません。ただ、2026年時点で「デモ」から「実際の現場稼働」へと段階が進みました。BMW、テスラ、トヨタなど大手が次々と実導入を始めています。数年のうちに、工場で人型ロボットを見かけるのが珍しくなくなる可能性は高いと言われています。

まとめ

今回のポイントを振り返りましょう。

  • 人型ロボット「Figure 03」が、BMWのアメリカ工場で実際の物流作業を開始しました
  • 担当は「シーケンシング」。部品を組み立て順に並べる、判断力が必要な作業です
  • 頭脳の「Helix(VLA)」が、見る・理解する・動くを1つのAIでこなします
  • 前世代Figure 02は、すでに3万台以上のBMW車の生産を支えた実績があります
  • トヨタや川崎重工など、日本メーカーも工場への人型ロボット導入を進めています

人型ロボットは、いよいよ「見せるため」から「働くため」の存在へ変わり始めました。あなたの身近な製品も、近い将来ロボットが作る日が来るかもしれません。まずは日本メーカーの導入ニュースに注目してみてください。

参考文献

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