社長がAIを使わない会社85.7%が無戦略

AIをためらう経営者と活用する現場の分断イメージ

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • 中小企業の調査で「トップがAIを全く使わない会社」の85.7%に、AI活用の方針も推進体制もないと判明
  • 代表・役員の「全く使っていない」割合は22.8%で、全職種の中で最も高い
  • 逆にトップが積極活用する会社では、方針も体制もない割合はわずか4.0%
  • 大企業の推進率59.1%に対し中小企業は30%前後で、約30ポイントの格差
  • 最初の一歩は「ツール選び」ではなく「業務の棚卸し」から始めるのが正解

「AIを使いたいけれど、何から始めればいいかわからない」。そう感じたことはありませんか。実はその停滞の原因が、現場ではなく社長や役員の側にあるという調査結果が出ました。トップがAIを使わない会社の85.7%が、そもそも戦略を持っていなかったのです。この記事では、その数字の意味と、今日からできる打開策をやさしく解説します。

調査でわかった「85.7%」の衝撃

この調査を行ったのは、印刷やノベルティで知られるラクスルです。

対象は従業員2〜100人の中小企業で働く経営者と従業員300人。2026年5月29日から6月1日にかけて、第三者機関がインターネットで聞き取りました。

注目された数字が「85.7%」です。

これは、トップ(代表・役員)がAIを「全く使っていない」会社のうち、AI活用の方針も推進体制も整っていない会社の割合を指します。

つまり、社長がAIに触れていない会社は、ほぼ例外なく「会社としての作戦」も持っていない、ということです。

もう1つ気になるデータがあります。代表・役員が「全く使っていない」割合は22.8%。これは、営業や事務など全職種の中でいちばん高い数字でした。

会社を引っ張る立場の人が、いちばんAIから遠い。そんな逆転現象が起きているのです。

なぜ経営層はAIを使わないのか

そもそも、なぜトップほどAIを避けてしまうのでしょうか。

調査では、経営・経営企画の職種の45.3%が「AIの必要性を感じない」と答えています。事務職の22.6%、IT管理の18.9%と比べても、突出して高い割合です。

背景には、いくつかの「わからない」が重なっていると言われています。

  • 何ができるのかがわからない(知識不足)
  • どこから手をつければいいかわからない(目的の曖昧さ)
  • 効果を数字でどう測るかわからない
  • 旗を振る担当者がいない(体制の不在)

ある地方の製造業の社長を思い浮かべてみてください。日々の受注や資金繰りで手一杯です。

「AIが便利らしい」とニュースで聞いても、忙しさの中で後回しになります。そうして触れないまま時間だけが過ぎていきます。

実はこの「触れないから必要性もわからない」という悪循環こそが、最大の壁なのです。

トップが使う会社と使わない会社の決定的な差

ここで、もう一段深い数字を見てみましょう。

先ほどは「トップが使わない会社の85.7%が無戦略」でした。ところが、代表・役員が積極的にAIを活用している会社では、方針も体制もないと答えた割合はわずか4.0%まで下がります。

85.7%と4.0%。同じ中小企業なのに、トップの姿勢ひとつで、これだけ大きな差が開くのです。

これは「トップがまず自分で触ること」が、会社全体のAI活用を動かすスイッチになっている証拠だと言えます。

たとえば、社長自身がChatGPTでメール文の下書きを作り始めたとします。

すると「うちの会社はAIを使っていい」という空気が生まれます。現場も安心して試せるようになり、少しずつ全体へ広がっていきます。

逆にトップが黙っていると、社員は「勝手に使って怒られないか」と様子見をします。こうして会社は動き出せないまま止まってしまうのです。

他の調査や海外と比べてどうなのか

ラクスルの数字は、他の調査とも重なります。

東京商工リサーチの調査では、生成AIを組織で活用推進している会社は大企業で59.1%。一方、中小企業は30%前後にとどまり、その差は約30ポイントにもなります。

さらに株式会社Leachの調査では、中小企業のAI導入率はわずか12%。最大の障壁は「何から始めればいいか分からない」でした。

海外との比較でも差が見えます。

PwCの6カ国調査(2026年春)では、日本企業のAI活用・推進度は87%まで伸びました。数字だけ見れば高そうです。

しかし「試している」段階の会社が多く、成果に結びつけるところまで進んだ会社は限られるという指摘があります。世界では「AIは選択肢ではなく生存条件」へと変わりつつあります。

ちなみに、生成AIを積極推進する会社は売上が1.7倍に伸びたという報告もあり、活用の有無が業績を左右し始めています。

日本の中小企業にとって何を意味するか

この結果は、日本の中小企業にとって大きな警告です。

日本は企業数の99%以上を中小企業が占めます。その中小企業でAIが止まっているということは、国全体の生産性が伸び悩むことに直結します。

人手不足が深刻な今、AIは「あれば便利」ではなく「人手を補う手段」になりつつあります。

採用に苦戦する飲食店を想像してみてください。予約対応や在庫管理の一部をAIに任せれば、少ない人数でも店を回せます。

大企業だけがAIを使い、中小企業が使えないままだと、両者の差はどんどん開きます。取引先としての競争力にも影響が出かねません。

だからこそ、トップがまず一歩を踏み出すことが、これまで以上に重要になっているのです。

今日からできる最初の一歩(3ステップ)

では、忙しい経営者は何から始めればいいのでしょうか。専門家がすすめる進め方は、意外にシンプルです。

1. 業務の棚卸しから始める

最初にやるのは、ツール選びではありません。「自社のどの作業に時間がかかっているか」を書き出すことです。

見積書づくり、問い合わせ返信、議事録作成。こうした繰り返し作業こそ、AIが得意な領域です。

2. 月数千円のツールで小さく試す

いきなり大きなシステムを作る必要はありません。

まずはChatGPTなど月額数千円の生成AI(文章や画像を作れるAI)から始めます。効果を確かめてから広げれば、失敗のリスクを抑えられます。

3. 旗振り役を決めて現場を巻き込む

AI導入がつまずく最大の理由は、技術でも予算でもなく「旗を振る人がいないこと」だと言われています。

社長自身か、信頼できる社員を担当に決めましょう。小さな成功を社内で見せて、「これなら使える」と納得してもらうことが定着への近道です。

よくある質問(FAQ)

Q. うちは小さな会社ですが、それでもAIは必要ですか?

A. はい。むしろ人手が限られる小さな会社ほど効果が出やすいです。1人分の作業をAIが肩代わりする感覚で使えます。

Q. 社長がパソコンやITに詳しくなくても大丈夫ですか?

A. 大丈夫です。今のAIは日本語で話しかけるだけで使えます。詳しさより「まず触ってみる」姿勢のほうが大切です。

Q. 情報漏えいが心配です。安全に使えますか?

A. 会社の機密情報を入力しない、業務向けの有料プランを使う、といった基本ルールを決めれば、リスクはかなり減らせます。

Q. 何から使えばいちばん失敗しませんか?

A. メールや文章の下書き、要約など「答えが1つに決まらない作業」から始めるのがおすすめです。ミスがあってもすぐ修正できます。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • トップがAIを使わない会社の85.7%は、方針も推進体制もない
  • 代表・役員の「全く使わない」割合は22.8%と全職種で最多
  • トップが積極活用する会社では、無戦略の割合が4.0%まで激減
  • 大企業59.1%に対し中小企業は30%前後で、格差は約30ポイント
  • 始め方は「業務の棚卸し→小さく試す→旗振り役を決める」の順

AI活用の成否を分けるのは、技術力よりもトップが最初に触れるかどうかです。まずは社長自身が、身近な作業を1つAIに任せることから始めてみてください。

参考文献

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