Copilot Coworkの中身はClaude|93ツール

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • Microsoftの新AI「Copilot Cowork」は、AnthropicのClaude Agent SDKを土台に作られていた
  • セッションログ218件を解析した結果、JSONL形式のログ構造までClaude Codeと同じだった
  • MCPツールは6サーバーで合計93個、スキルは28個。毎ターン約12,700文字が注入される
  • 「思い込み」を防ぐ5つの認知バイアス対策と、確信度75以上でしか断定させないルールが組み込まれている
  • Copilot Coworkは2026年6月16日に一般提供開始。マネーフォワードなど日本発のプラグインも参入している

AIエージェントの「中身」を見たいと思ったことはありませんか。Microsoftが世界中のオフィスに配ろうとしているCopilot Coworkは、実はAnthropicのClaude Agent SDKの上に建っていました。セッションログ218件の解析から、93個のツールと28個のスキル、そしてAIの暴走を止める設計思想までが見えてきます。

ログ218件から見えた「Copilot Coworkの中身」

2026年8月24日、ASCII.jpにCData Software Japanの杉本和也さんによる検証記事が公開されました。

題材はCopilot Cowork(Microsoft 365 Copilotに組み込まれた、仕事を最後まで実行してくれるAI)です。

検証で使われたのは、実際の業務そのものでした。kintone(サイボウズの業務アプリ基盤)からクローズ案件を取り出し、PowerPointで集計し、Teamsに投稿するという一連の作業です。

このとき記録されたセッションログは218レコード。中身を開いてみると、Claude Codeのトランスクリプト(会話の記録)と同じJSONL形式でした。

つまりCopilot Coworkは、Anthropicの「Claude Agent SDK」をベースに実装されているということです。動いていたモデルはclaude-opus-4-8と記録されていました。

そもそも「ハーネス」とは何か

ここで出てくるのがハーネスという言葉です。

ハーネスとは、AIモデルの周りを取り囲む実行の仕組みを指します。どんな道具を使わせるか、何回まで試させるか、作業の記録をどう残すか。そうした「モデル以外のすべて」です。

Anthropicは自社のAgent SDKを「エージェントハーネス」と位置づけています。同じモデルでも、ハーネスの出来次第で仕事の質は大きく変わります。

だからこそ、Microsoftほどの企業が自前ではなくAnthropicの土台を採用した事実には意味があります。モデルだけでなく、その周りの実行基盤ごと外部から借りたということだからです。

93個のツールと28個のスキルという実測値

MCPサーバー6つ、ツール93個

ログから判明したツール構成は、想像よりずっと大規模でした。

MCP(AIが外部サービスを操作するための共通規格)サーバーは6つ。合計93個のツールが接続されていました。

内訳はMicrosoft 365系が88個、CData Connect AIが5個です。Microsoft 365系はさらに細かく分かれます。

  • Outlook関連:29個
  • Teams関連:24個
  • SharePoint/OneDrive:14個
  • カレンダー:13個
  • People・組織情報:7個
  • 会議トランスクリプト:3個
  • Graph・横断検索:3個

ネイティブツール8種とスキル28個

これに加えて、AIが直接使えるネイティブツールが8種類あります。TaskCreate、TaskUpdate、Bash、Read、Write、Skill、Agent、Globです。

さらに28個のスキルが5カテゴリに整理されていました。生産性が6個、ドキュメント生成が7個、開発・コード品質が7個、推論・分析が3個、設定管理が5個です。

このスキル一覧は毎ターン、約12,700文字ぶんがAIに送り込まれます。AIは毎回「自分に何ができるか」を読み直しながら作業しているわけです。

AIの思い込みを止める5つのルール

最も興味深いのは、セッション開始時に一度だけ注入されるdeep-reasoningという約6,400文字の推論フレームワークです。

しかも、じっくり考えさせるultrathinkモードが有効になっていました。

ここには5つの「認知的ハザード」、つまりAIが陥りやすい思考の罠と、その対処法が明記されています。

  • Inherited certainty:ユーザーの主張を鵜呑みにしそうなときは、仮説として扱いツールで外部検証する
  • Self-correction trap:自分の頭だけでの検証は不可。Read/Grep/WebSearchで確かめる
  • Premature switching:方針転換は2回以上試してから
  • Confirmation bias:自説に都合の良い情報だけでなく、批判や問題点を能動的に探す
  • Hasty commitment:代替案を検討してから決める

さらに確信度スコアが75以上でなければ断定してはいけないというルールもあります。75未満なら「ここは不確かです」と明示してから進む決まりです。

作業管理も徹底しています。「TaskCreate/TaskUpdateを必ず使え、mental tracking(頭の中だけの管理)は禁止」と書かれていました。タスクはpending→in_progress→completedと状態が移ります。

加えて、毎ターン更新されるtask_reminderが現在のタスクリストをJSONで送り続けます。AIが途中で目的を見失わないための仕掛けです。

検証した杉本さんは、固定のシステムプロンプトはログから確認できなかったとしています。代わりに、Claude Code SDKのSessionStartフックでスキルと推論の枠組みを動的に注入する設計だと結論づけました。この方式なら、スキルを追加・更新するだけで次のセッションから反映されます。

他のエージェント基盤と何が違うのか

エージェント開発の土台は、いま大きく3つに分かれています。

  • Claude Agent SDK(Anthropic):MCPを軸にOSレベルの操作まで踏み込む。長時間の作業やコーディングに強い
  • OpenAI Agents SDK:エージェント・ツール・ハンドオフの3概念で構成。少ないコードで動かせる手軽さが売り
  • Google ADK:モデル非依存。Gemini以外にClaudeやローカルモデルも動かせ、コスト面で評価されている

Claude Agent SDKとGoogle ADKは司令塔が部下に振り分けるスーパーバイザー型、OpenAI Agents SDKは担当をバトンのように渡す軽量な連鎖型と整理されています。差し替え可能な同じものとして扱うのは危険です。

Copilot Coworkが扱うのは、メールを読み、資料を作り、投稿するまでの長い一続きの仕事です。長時間の作業に強い土台が選ばれたのは自然な流れといえます。

なお、Copilot Cowork自体は特定モデルに縛られていません。一般提供の時点でAnthropicのOpus 4.8とSonnet 4.6が動き、FrontierユーザーはGPT 5.5も選べる構成になっています。

日本のユーザーと企業にどう関係するか

Copilot Coworkは2026年6月16日に一般提供が始まりました。Microsoft 365 Copilotのライセンスに加え、Copilot Creditsという従量課金が必要です。PayGoなら1クレジット0.01ドルからで、管理画面からテナント単位・ユーザー単位で上限を決められます。

日本企業にとって見逃せないのがプラグインです。マネーフォワードは『マネーフォワード クラウド会計』のリモートMCPサーバー連携を発表し、会計データをExcelやPowerPointに反映できるようにしています。

今回の検証がkintoneを題材にしていた点も象徴的です。国産SaaSのデータを、Microsoftの画面から動かす使い方が現実になりつつあります。

具体的な場面を思い浮かべてみてください。

ある営業事務の担当者は、毎週金曜に案件管理システムから今週のクローズ案件を抜き出し、報告資料に貼り直しています。この30分の手作業が、そのままCopilot Coworkのタスク1件に置き換わります。

情報システム部門の視点はまた違います。93個のツールが社内データにどこまで触れるのかを把握し、権限設計を見直す必要が出てきます。感度ラベルの継承や監査ログ、eDiscoveryへの対応が用意されているのは、この不安に応えるためです。

そして開発者にとっては、もっと直接的な学びがあります。Microsoftほどの企業が採用したハーネス設計を、そのまま設計図として読めるのです。認知バイアス対策や確信度スコアの考え方は、自社のAI活用ルールにもすぐ応用できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. Copilot CoworkはClaudeそのものなのですか?

いいえ。Claude Agent SDKという実行基盤の上に、Microsoftが独自のツール群とスキルを載せた製品です。動かすモデルもAnthropic製とOpenAI製から選べます。

Q2. なぜログの中身がわかったのですか?

セッションログがClaude Codeと同じJSONL形式で出力されるためです。検証者はそのログを解析し、レコードの種類や注入されるコンテキストの文字数を数えています。

Q3. 使うのに追加費用はかかりますか?

かかります。Microsoft 365 Copilotのライセンスに加え、Copilot Creditsによる従量課金が必要です。管理画面で上限を設定できます。

Q4. 日本語や国内サービスでも使えますか?

一般提供は全世界のMicrosoft 365 Copilot利用者が対象です。マネーフォワードのようにプラグインを提供する国内企業も出ており、kintoneとの連携も検証されています。

Q5. 自分でも同じような仕組みを作れますか?

Claude Agent SDKは公開されているため、原理的には可能です。ただし93個のツール接続や権限管理まで含めると、企業規模の設計が必要になります。

まとめ

  • Copilot Coworkの中身はClaude Agent SDKベースで、ログ形式までClaude Codeと同一だった
  • MCPツール93個、ネイティブツール8種、スキル28個という大規模構成
  • 毎ターン約12,700文字のスキル一覧と、開始時に約6,400文字の推論フレームワークを注入
  • 5つの認知バイアス対策と確信度75のルールで、AIの思い込みを構造的に防いでいる
  • 2026年6月16日に一般提供開始。マネーフォワードなど日本発の連携も動き始めている

まずは自社のMicrosoft 365環境でCopilot Coworkが有効かどうか、そしてクレジットの上限設定がどうなっているかを確認してみてください。

参考文献