- ChatGPTは検索を実行する前に、自分で作った検索文の中へブランド名を書き込んでいる
- その検索文に名前が載ったブランドは、最終回答に登場する確率が68.9%。載らなかったブランドは2.1%で、その差は約33倍
- ChatGPTが読み込んだ3,554ページのうち、実際に引用されたのは110ページ(3.1%)だけ
- 調査は1アカウント・60会話の分析。著者自身も「傾向を示す数字」と断っている
- 日本の企業がやるべきことは、検索順位対策より先に「その分野といえばこの会社」という結びつきを作ること
ChatGPTに「おすすめの会計ソフトは?」と聞いたことはありませんか。返ってきた3〜5社の名前を見て、「AIが公平に調べて選んでくれた」と感じた人は多いはずです。ところが、その候補はAIが検索を始める前からほぼ決まっているという調査結果が出ました。しかも差は33倍。何が起きているのかを見ていきます。
ChatGPTは検索する前に候補を決めている
2026年8月10日、海外のSEO専門家スガンサン・モハナダサン氏が、ある実験結果を公開しました。
やったことはシンプルです。自分のChatGPTを開き、ブラウザの開発者ツール(Webページの裏側の通信を見られる機能)で、AIが裏で送っている検索の中身をのぞきました。
すると、意外なものが見つかります。
ChatGPTが自分で作った検索文の中に、ユーザーが一言も言っていないブランド名が並んでいたのです。
たとえば「初心者向けのおすすめ語学アプリは?」と聞いたとします。AIはそのまま検索するのではなく、いったん質問を分解して、複数の検索文に作り替えます。これをファンアウト(質問の枝分かれ)と呼びます。
その枝分かれした検索文が、すでに「A社 語学アプリ 評判」「B社 料金」といった形になっている。つまり出場選手は、試合が始まる前に決まっていたわけです。
興味深いのは、著者自身が記事の見出しを後から修正している点です。当初は「検索する前に結果は決まっている」という強い表現でしたが、追加検証の結果、検索によって順位が入れ替わることもあると分かり、2026年8月17日に「候補入りしている」という表現へ直しました。決定ではなく、あくまで有力候補という位置づけです。
33倍の差は、どこから出てきた数字なのか
名前が載るか載らないかで、結果が変わる
調査でいちばん目を引くのが、この2つの数字です。
- ChatGPTの検索文に名前が入っていたブランド: 最終回答に登場した割合は68.9%
- 検索結果として拾われただけのブランド: 登場した割合は2.1%
およそ33倍の開きです。
スポーツの選考にたとえるなら、代表候補リストに名前が載った選手はほぼ試合に出られる一方、当日に会場へ来ただけの選手はまず出番がない、という状態に近いといえます。
3,554ページ読んで、引用は110ページだけ
もうひとつ衝撃的なのが、引用の少なさです。
著者が57会話分を調べたところ、ChatGPTが取得したページは3,554ページありました。しかし、最終的な回答に引用されたのは110ページ。全体のわずか3.1%です。
96.9%のページは、読まれても回答には使われていません。「AIに見つけてもらう」だけでは、ほとんど意味がないということです。
同じサイトの中でも、順番で差がつく
さらに細かい傾向も報告されています。ひとつの検索結果グループの中で、何番目に出てきたかで引用率が変わるのです。
- 1番目: 引用率5.2%
- 2番目: 4.6%
- 3番目: 2.4%
- 4番目以降: 急激に低下
ちなみに、この調査は1つのアカウント(ドバイ在住)による60会話の分析で、質問の多くがソフトウェアやAI関連に偏っています。著者本人も「方向性を示す数字であって、絶対値ではない」と明記しています。数字の受け取り方には注意が必要です。
なぜ「事前リスト」ができてしまうのか
理由は、ChatGPTの記憶の仕組みにあります。
ChatGPTは学習の段階で、大量の文章を読み込んでいます。その中で「語学アプリといえばこのあたり」「会計ソフトといえばこのあたり」という結びつきができあがっています。
質問を受けると、AIはまずこの記憶から候補を引っ張り出します。そのうえで、裏づけを取るために検索へ行く。順番が逆なのです。
調査によれば、この「事前リスト」が働きやすいのは、次のような場面です。
- ユーザーが具体的な商品名を出さず、「おすすめの◯◯は?」と広く聞いたとき
- 会計ソフトや語学アプリのように、カテゴリーとして確立している分野のとき
逆に、ユーザーが最初から「freeeとマネーフォワードを比べて」と指定した場合は、事前リストの出番はありません。指名された2社がそのまま検索対象になります。
著者はこの構造を、2つのゲームに分けて説明しています。ひとつは候補に入るためのゲーム。もうひとつは、候補に入ったあとで実際に引用されるためのゲームです。前者は記事やレビュー、比較サイトでの露出づくり。後者はページの作り方といった技術面の話になります。
従来のSEOや他のAIとどう違うのか
ここが実務では一番大事なところです。
Google検索の世界では、「検索したときに何位に出るか」がすべてでした。10位から3位に上げれば、クリック数は目に見えて増えます。順位=成果という分かりやすい関係があったわけです。
AI検索では、この関係が崩れます。検索結果に出てくること自体は、スタートラインですらありません。3,554ページのうち110ページという数字が、それを示しています。
他社の調査も似た方向を向いています。SEOツール大手のSemrushは、Kevin Indig氏と共同で、2026年1〜6月にChatGPT上の1,094カテゴリーを追跡しました。そこで分かったのは、ドメインの権威スコアやアクセス数といった従来のSEO指標が、AI上での「そのテーマの代表格」を予測できるのは半分程度だということです。
同社は別途、2026年1〜4月の1億2,600万件のAI検索プロンプトを分析し、1,200以上のブランドがChatGPT・Gemini・Google AI Modeなどでどう引用されるかを調べています。
そこから見えてくる違いを整理すると、こうなります。
- 従来のSEO: 1つのキーワードで上位を取る。順位が成果に直結する
- AI検索(LLMO/GEO): 1つの質問に勝っても意味が薄い。関連する質問すべてに繰り返し登場して、はじめて「そのテーマの会社」と認識される
Semrushの調査では、いったんそのテーマの代表格になると強く、5ポイント以上リードしている企業は90%の確率で翌月も首位を守っていました。逆に、僅差の争いは頻繁にひっくり返ります。先行者が有利で、追いつくのは簡単ではない構造です。
日本の企業やお店にとって何が変わるか
日本でもAI検索の利用は広がっています。LLMO(大規模言語モデル最適化)やGEO(生成AI最適化)を掲げる支援サービスも次々に登場しました。ただ、対策の中身を取り違えると、お金と時間を無駄にしかねません。
具体的な場面で考えてみます。
まず、地方でソフトウェアを作っている20人ほどの会社を想像してください。この会社は自社サイトのSEOに毎月コストをかけ、狙ったキーワードで検索3位まで来ました。ところが問い合わせが伸びません。見込み客がGoogleではなくChatGPTに「中小企業向けのおすすめ在庫管理システムは?」と聞き、そこに名前が出てこないからです。検索3位でも、AIの事前リストに入っていなければ届きません。
次に、都内の美容機器メーカーの広報担当者。業界誌の取材依頼を「費用対効果が読めない」と断り続けてきました。しかし今回の調査を踏まえると、業界誌や比較記事への露出は、AIの中に「この分野といえばこの会社」という結びつきを作る作業そのものです。すぐには数字にならなくても、AIの記憶に効いてきます。
3つ目は、地域の学習塾です。ホームページは10年前のまま、実績は保護者の口コミだけで広がってきました。保護者が「◯◯市 中学受験 塾 おすすめ」とAIに聞いても、ネット上に語られた情報が薄ければ、AIは候補として思いつけません。良いサービスでも、言及されていなければ存在しないのと同じ扱いになります。
日本市場では、この構造がとくに効きやすい可能性があります。日本語のWeb情報は英語より量が限られているため、少数の記事や比較サイトが与える影響が相対的に大きくなるからです。裏を返せば、後発でも巻き返せる余地が残っているといえます。
今日からできる3つの対策
調査結果を踏まえると、やるべきことは次の3つに絞られます。
1. まず自分の名前が呼ばれるかを確かめる
ChatGPTに「おすすめの◯◯は?」と、お客さんの言葉づかいで聞いてみてください。3〜5パターン試すのが目安です。自社が出てこないなら、対策はSEOではなく露出づくりから始まります。
2. 第三者に語られる場所を増やす
自社サイトで「当社は業界No.1です」と書いても、AIの記憶は変わりません。効くのは、比較記事・レビューサイト・業界メディア・専門家の投稿といった外側の言及です。自分で名乗るより、他人に呼ばれる回数がものを言います。
3. 1つの質問ではなく、テーマ全体を押さえる
Semrushの調査が示すとおり、AI上の存在感はテーマ単位で決まります。「在庫管理システム 価格」だけでなく、「導入手順」「他社との違い」「失敗例」まで含め、関連する疑問に幅広く答えておくことが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. ChatGPTのおすすめは、お金を払えば載せてもらえますか?
今回の調査は広告枠の話ではありません。事前リストは学習データの中の結びつきから生まれるもので、支払いで直接買えるものではないとされています。ただしOpenAIはショッピング機能の拡充を進めており、今後の仕様変更には注意が必要です。
Q2. 33倍という数字は信用できますか?
方向性としては参考になりますが、そのまま鵜呑みにはできません。1アカウント・60会話という規模で、質問もソフトウェアやAI分野に偏っています。著者自身が「傾向を示す数字」と断っており、業種によって差が出る可能性があります。
Q3. GeminiやClaudeでも同じことが起きますか?
今回の調査対象はChatGPTのみです。ただ、学習で得た知識をもとに候補を考えてから検索する流れは、多くのAIに共通する設計です。似た傾向が出る可能性は高いといえますが、各サービスごとの検証は別途必要です。
Q4. 中小企業や個人商店でも間に合いますか?
間に合う分野は残っています。カテゴリーが確立していない新しい領域や、地域に密着したテーマでは、大手の名前が固まっていないことが多いためです。まずは自分の業界名でAIに質問し、誰の名前が出てくるかを確かめるところからです。
Q5. 従来のSEOはもう不要になりますか?
不要にはなりません。AIが引用先を選ぶ段階では、ページの読みやすさや構造といった技術面が効きます。順位を取ることが目的ではなく、AIに引用されやすい情報を用意する手段としてSEOの技術が生きる、と考えるのが実態に近いでしょう。
まとめ
- ChatGPTは検索を実行する前に、自ら作る検索文へブランド名を書き込んでいる
- その検索文に載ったブランドの回答登場率は68.9%、載らなかった場合は2.1%で約33倍の差
- 読み込んだ3,554ページのうち引用は110ページ(3.1%)。見つかるだけでは不十分
- 調査は1アカウント60会話の分析で、著者も「傾向値」と明言している
- Semrushの1,094カテゴリー調査でも、従来のSEO指標がAI上の存在感を説明できるのは半分程度
- 対策の軸は順位争いから、テーマ単位での言及づくりへ移りつつある
まずは今日、自社の業界名を入れて「おすすめの◯◯は?」とChatGPTに聞いてみてください。そこに名前があるかどうかが、すべての出発点になります。
参考文献
- ChatGPTに「おすすめの○○は?」と聞くと 実は答えがほぼ決まっているらしい(ITmedia、2026年8月21日)
- ChatGPT Already Knows Who’s In The Running Before It Searches(Suganthan Mohanadasan、2026年8月10日)
- Brands named in ChatGPT’s own query win mentions 33x more often(PPC Land)
- AI visibility is a topic-level game: A study of 50,000 brands in ChatGPT(Semrush)
- ChatGPT Already Knows Who It’ll Recommend Before It Searches(Search Engine Journal)


