- BMSG(SKY-HI代表)が所属アーティストのAIディープフェイク無断利用に対し公式声明を発表
- 生成AIの表現可能性は尊重しつつ、著作権・肖像権・パブリシティ権の侵害を明確に警告
- 実写に近い肖像、ボイスクローニング、ツーショット捏造など具体的なNG行為を列挙
- ファンには「静かに通報」を推奨。悪質なケースには法的措置の方針を示唆
- エンタメ業界全体でAI権利保護の動きが加速。芸能事務所の対応が先行事例に
「テクノロジーの進化がもたらす表現の可能性を尊重する。しかし、アーティストの権利を侵害する行為は許容しない」——SKY-HIが代表を務めるBMSGは2026年2月4日、所属アーティストのAIディープフェイクに関する公式声明を発表しました。
生成AIを使ったコンテンツが「表現の自由」なのか「権利の侵害」なのか。
この問いに対するBMSGの回答は、日本のエンタメ業界全体の指針となりつつあります。
何が起きたのか|ディープフェイクの実態
BMSGが声明を出した背景には、所属アーティストのAIディープフェイクが実際にSNS上で確認されたという事実があります。
- 画像・動画の捏造 — アーティストの顔写真を基にAIが生成した「偽の写真」が拡散
- ボイスクローニング — アーティストの声を学習させたAIで、本人が歌っていない楽曲を生成
- ツーショット捏造 — 実在しない人物とのツーショット写真をAIで生成・拡散
たとえるなら、有名人の「分身」をAIで作り、本人の知らないところで勝手に活動させているようなもの。本人の意思とは無関係に、イメージが傷つけられるリスクがあります。
BMSGの声明|全文のポイント
BMSGの公式声明は、AIに対するバランスの取れた姿勢が特徴です。
生成AIへの基本スタンス
BMSGは生成AIを全否定していません。「テクノロジーの進化がもたらす新しい表現の可能性を尊重しており、生成AIを利用したコンテンツの生成は、表現の一形態である」と認めています。
具体的なNG行為
その上で、以下の行為を「控えていただきたい」と明確に警告しています。
- 所属アーティストの実写に近い肖像(画像・動画)の生成
- ツーショット写真の捏造
- 実際にパフォーマンスしたかのように見える歌唱・ダンス動画の生成
- ボイスクローニングによる音声の無断複製
- 公序良俗に反する内容、政治的・宗教的メッセージへの流用
ファンへの呼びかけ
BMSGはファンに対し、「静かに通報」を推奨。
直接の指摘は「ファン同士の穏やかな対話の範囲に留める」よう求めています。
これは、炎上や対立を防ぎながら権利保護を実現するための賢明なアプローチです。
法的な論点|何が違法なのか
AIディープフェイクに関連する法的な権利を整理します。
- 著作権 — 楽曲や振り付けの無断利用は著作権侵害の可能性
- 著作隣接権 — 歌唱・演奏の複製はレコード製作者や実演家の権利を侵害
- 肖像権 — 本人の容姿を無断で使用する行為
- パブリシティ権 — 有名人の肖像や名前に付随する経済的価値を無断で利用する行為
日本にはAIディープフェイクを直接規制する法律はまだありませんが、既存の権利法で対応可能なケースが多いです。2026年にはAPPI(個人情報保護法)の改正も予定されており、AI関連の権利保護は今後さらに強化される見込みです。
エンタメ業界の動き|他事務所・業界団体の対応
BMSGの動きは孤立したものではありません。
- ジャニーズ事務所(STARTO) — 所属タレントのAI利用に関するガイドライン策定
- 日本レコード協会 — AI生成音楽に関する業界指針を検討中
- NAFCA(日本アニメフィルム文化連盟) — クリエイターの93%がAI利用の透明性を重視
- 芸団協 — 実演家の権利保護に関するAIガイドラインを議論
世界的にも、米国ではSAG-AFTRA(俳優・声優組合)がAI利用に関する契約条項を交渉で勝ち取り、EUではAI Actで透明性要件が義務化されています。
よくある質問(FAQ)
Q. ファンがアーティストのAIイラストを描くのは違法ですか?
BMSGの声明は「実写に近い肖像」を問題にしています。
明らかにイラスト風のファンアートと、実写と見分けがつかないディープフェイクでは法的リスクが大きく異なります。
ただし、アーティストのイメージを損なう内容は避けるべきです。
Q. ボイスクローニングは何が問題ですか?
アーティストの声を無断で複製・利用する行為は、著作隣接権(実演家の権利)の侵害に該当する可能性があります。また、本人が言っていないことを「言った」かのように見せる場合は名誉毀損にもなりえます。
Q. 海外ではどう対応していますか?
米国では2024年にNO FAKES Act(ディープフェイク規制法案)が提出され、個人の声や容姿の無断AI複製を規制する動きがあります。EUのAI Actでは、ディープフェイクの開示義務が規定されています。
Q. 「静かに通報」とは具体的に何をすればいいですか?
ディープフェイクコンテンツを見つけた場合、SNSプラットフォームの通報機能を使って報告することが推奨されています。リプライやコメントで直接攻撃すると、かえってコンテンツが拡散するリスクがあるためです。
まとめ
この記事のポイントを振り返りましょう。
- BMSGが所属アーティストのAIディープフェイク問題に公式声明を発表
- 生成AIの可能性は認めつつ、実写肖像・ボイスクローニング・捏造写真を明確に警告
- ファンには「静かに通報」を推奨。冷静な対応が最も効果的
- 著作権・肖像権・パブリシティ権の既存法で対応可能なケースが多い
- エンタメ業界全体でAI権利保護のルール整備が加速中
AIは表現の可能性を広げる強力なツールです。
しかし、その力を他人の権利を侵害するために使うことは許されません。
BMSGの声明は、「AIを楽しむ自由」と「アーティストを守る責任」のバランスを示す重要な先行事例です。


