Anthropicが独自AIチップへ|サムスンと2nm交渉

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • Claudeの開発元Anthropicが、サムスンと「独自AIチップ」の製造を交渉中と報じられました
  • 狙いはNvidia依存からの脱却と、深刻なチップ不足への備えです
  • 製造にはサムスンの最先端「2nm(2ナノメートル)」技術が候補に挙がっています
  • 元OpenAIのチップ担当エンジニアを引き抜き、本気の体制づくりが進んでいます
  • 背景には、10月にも噂される超大型IPO(新規株式公開)があります

AIチップといえばNvidia(エヌビディア)の独占状態が続いてきました。でも、その常識が今まさに崩れようとしています。Claude(クロード)を作るAnthropic(アンソロピック)が、韓国サムスンと手を組んで「自分専用のAIチップ」を作ろうとしているのです。なぜ今、AI企業が自らチップ作りに乗り出すのでしょうか。この記事を読めば、その狙いと日本への影響がわかります。

何が起きた?AnthropicがSamsungにチップ製造を打診

2026年7月2日、経済メディアThe Informationが大きなニュースを報じました。

Anthropicが、サムスン電子に自社初の独自AIチップの製造を打診しているという内容です。

Anthropicは、対話AI「Claude」を開発している会社です。ChatGPTを作るOpenAIの最大のライバルとして知られています。

今回作ろうとしているのは、AIを動かす専用の半導体(チップ)です。特に「推論(すいろん)」と呼ばれる作業に使うとみられています。

推論とは、AIが質問に答えたり文章を作ったりする、実際の利用シーンでの計算のことです。学習した知識を使って答えを出す部分だと考えてください。

ただし、話はまだ初期段階です。チップの性能や仕様は決まっておらず、計画が中止になる可能性もあります。

なぜAnthropicは「自社チップ」が欲しいのか

理由は大きく2つあります。

1つ目は、Nvidia依存からの脱却です。

今、世界中のAI企業はNvidiaのGPU(画像や計算を高速処理するチップ)を奪い合っています。Nvidiaはこの分野でほぼ独占状態です。

その結果、価格は高止まりしています。Nvidiaの利益率は70%を超えるとも言われ、AI企業にとっては重い負担です。

2つ目は、深刻なチップ不足への備えです。2026年4月には、Anthropicが供給不足を解消するため自社チップを検討中だと報じられていました。

自分でチップを設計すれば、自社のAIに最適化した性能を出せます。しかも、他社から買うより安く、安定して手に入る可能性があります。

お店の弁当ばかり買っていた人が、自炊を始めるようなものです。手間はかかりますが、味も値段も自分の思いどおりにできます。

サムスンの「2nm」って何がすごい?

今回の交渉で注目されているのが、サムスンの2nm(2ナノメートル)という最先端の製造技術です。

ナノメートルとは、チップの中の回路がどれだけ細かく作られているかを示す単位です。数字が小さいほど、より高性能で省エネなチップになります。

2nmは、髪の毛の太さの約4万分の1という極小の世界です。サムスンはこの技術(正式名称はSF2)を2025年後半から量産し始めました。

細かく作れるほど、同じ面積にたくさんの回路を詰め込めます。つまり、より賢く、より電気を食わないAIチップができるわけです。

サムスンにとっても大きなチャンスです。この分野では台湾のTSMC(世界最大の半導体受託製造会社)が圧倒的に強く、サムスンは追いかける立場だからです。

ちなみに、Googleも将来のTPU(Google独自のAIチップ)の一部にサムスンを使うことを検討していると報じられています。

元OpenAIエンジニアの引き抜きと10月IPO観測

Anthropicの本気度を示す動きがあります。

2026年6月初め、クライブ・チャン氏をOpenAIから引き抜いたのです。

チャン氏は、OpenAIが独自チップ「Jalapeño(ハラペーニョ)」を作ったチームの一員でした。約2年半、チップ設計に携わった専門家です。

チップ作りの経験者を迎えることで、開発体制を一気に固めた形です。

この動きの裏には、大きな資金の話もあります。Anthropicは2026年6月1日、アメリカのSEC(証券取引委員会)にIPO(新規株式公開)を非公開で申請しました。

報道によると、上場は早ければ10月とされています。ゴールドマン・サックスなど大手銀行が主幹事を務め、6兆円以上を調達する見込みです。

会社の評価額は約9650億ドル(約145兆円)。1兆ドル超えでの上場が有力視されています。独自チップ戦略は、投資家に成長性を示す材料にもなります。

競合比較|OpenAI・Google・Amazonの自社チップ

実は、独自チップを作る動きはAnthropicだけではありません。むしろ大手は先を走っています。

それぞれの状況を整理します。

  • OpenAI:2026年6月24日に初の独自チップ「Jalapeño」を発表。半導体大手Broadcom(ブロードコム)と共同開発し、Nvidia比で1トークンあたりの推論コストを約50%下げたとされます
  • Google:長年「TPU」を自社開発。最新は第7世代で、Google CloudのAIを支えています
  • Amazon:「Trainium(トレイニアム)」という学習用チップを展開。AWS上のAIを安く動かす武器にしています
  • Microsoft:独自チップ「Maia 100」を開発中です

こうして見ると、Anthropicはむしろ後発です。GoogleやAmazonが自社インフラから育てたチップに対し、Anthropicはゼロからの挑戦になります。

大事な点として、Anthropicは「自社チップは既存のパートナーを置き換えない」と明言しています。今後もAmazonのTrainium、GoogleのTPU、NvidiaのGPUを使い続ける方針です。

日本市場への影響|Claudeユーザーと半導体産業

このニュースは、日本にも意外な形で関わってきます。

まず、Claudeを使っている日本のユーザーや企業にとっての話です。

Anthropicがチップコストを下げられれば、Claudeの利用料が将来的に安くなる可能性があります。AIを業務で使う会社には朗報です。

次に、半導体産業への影響です。日本も国を挙げて2nm技術に挑んでいます。

Rapidus(ラピダス)という国産の半導体メーカーが、北海道で2nmチップの量産を目指しています。トヨタやソニーなど日本の大企業が出資しています。

AI企業が「自社チップ」を次々と求める流れは、Rapidusにとって追い風です。将来、こうした受託製造の注文を取れれば、日本の半導体復活の足がかりになります。

つまり今回の一件は、遠い海外の話ではありません。日本の産業戦略とも深くつながっているのです。

よくある質問(FAQ)

Q1. Anthropicの独自チップはいつ完成しますか?

まだ交渉の初期段階で、完成時期は決まっていません。仕様も未定で、計画自体が中止になる可能性もあります。

Q2. なぜサムスンが選ばれそうなのですか?

最先端の2nm技術を持っているためです。加えて、サムスンはAnthropicの資金調達に出資した株主でもあり、関係が近いことが背景にあります。

Q3. これでNvidiaは不要になりますか?

いいえ。Anthropicは今後もNvidiaのGPUを使い続けると明言しています。特にAIの「学習」には引き続きNvidiaが欠かせません。

Q4. Claudeの使い勝手はすぐ変わりますか?

すぐには変わりません。チップは開発初期のため、当面は現在の環境で動きます。将来的にコストや速度の面で恩恵が出る可能性があります。

Q5. 日本のRapidusにチャンスはありますか?

すぐの受注は難しいものの、AI企業の自社チップ需要が増える流れは追い風です。技術で追いつければ将来の受注も見えてきます。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • Claude開発元のAnthropicが、サムスンと独自AIチップの製造を交渉中
  • 狙いはNvidia依存からの脱却とチップ不足への備え
  • 製造には最先端の2nm技術が候補で、元OpenAIの専門家も引き抜き済み
  • 背景には10月にも噂される1兆ドル超えのIPOがある
  • 日本のRapidusや半導体産業にとっても見逃せない動き

AIチップの「脱Nvidia」競争は、これからますます激しくなりそうです。まずはAnthropicの正式発表がいつ出るのか、続報に注目してみてください。

参考文献

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