Apple Intelligence中国解禁|頭脳はQwen

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • 2026年7月15日、中国のネット規制当局がApple Intelligenceの中国展開を正式に承認しました
  • 中国版の頭脳になるのはアリババの生成AI「Qwen(クウェン)」。海外版のChatGPTとは別物です
  • 2024年の発表から承認まで約2年。米中対立と中国のデータ規制が壁になっていました
  • 同じ日にサムスンのGalaxy AIなど、計7つのスマホ向けAIが一斉に承認されています
  • 実際に使えるようになるのは2026年後半から2027年になる見込みです

iPhoneを買ったのに、AI機能だけが使えない。中国のユーザーは2年近く、そんな状態に置かれてきました。その扉がついに開きます。しかもカギを握っていたのは、Appleではなくアリババが作ったAIでした。

中国当局がApple Intelligenceを正式承認

2026年7月15日、中国の国家インターネット情報弁公室(CAC)が、Apple Intelligenceの中国国内での提供を承認しました。

CACは、中国でネットサービスやAIを提供するときの許可を出す役所です。ここを通らなければ、中国のユーザーに生成AIを届けることはできません。

Apple Intelligenceは、iPhoneやMacに組み込まれたAI機能のまとまりです。文章の要約や書き直し、画像の生成、賢くなったSiriなどが含まれます。

2024年6月に発表され、日本を含む多くの国ではすでに使えます。しかし中国本土だけは、ずっと空白地帯のままでした。

今回の承認で、その空白がようやく埋まります。ただし、明日から使えるわけではありません。CACもAppleも、開始時期は明らかにしていないからです。

報道では、実際の提供開始は2026年後半から2027年になるとみられています。なお今回の許可はiPhoneが対象で、iPadやMacが含まれるかどうかははっきりしていません。

なぜAppleにとって重要なのか

中国はAppleにとって、売上の柱のひとつです。2026年4〜6月期の中華圏の売上は、前年から28%増えて205億ドル(約3.2兆円)に達しました。

スマホの出荷シェアでも、Appleは中国で2位に返り咲いています。首位はファーウェイの23%で、Appleは約19%。差は詰まりつつあります。

ただし、その戦いは今や「カメラの画質」ではなくAIの賢さで決まりはじめています。AI機能だけ空欄のiPhoneは、中国では明確なハンデでした。

なぜアリババの「Qwen」が選ばれたのか

今回いちばんの注目点は、中国版Apple Intelligenceの頭脳がアリババの「Qwen(クウェン)」になることです。

Qwenは、アリババが開発した大規模言語モデル(人間のように文章を読み書きできるAI)です。中国語の扱いに強く、多くのモデルを無償公開してきたことで知られます。

アリババの説明によると、QwenはiOS・iPadOS・macOS・visionOSのApple Intelligenceに統合されます。担当するのは文章と画像の理解・生成です。

実力も十分です。Qwenを使うアプリの利用者は、2026年5月時点で2億3400万人に達したと報じられています。世界のAI開発者の間でも、無償公開モデルの定番のひとつになっています。

市場の反応も素直でした。承認が伝わると、アリババの米国株は取引開始前に4%上がり、その後6%超まで値を伸ばしています。

Appleは6社以上を検討していた

アリババに決まるまでの道のりは、平坦ではありませんでした。

報道によると、Appleは百度(バイドゥ)、DeepSeek、バイトダンス、テンセント、百川智能、ムーンショットAIなど、複数の候補と話を進めていたとされます。

当初はバイドゥとの提携が有力でした。ところが、中国のユーザー向けにモデルを調整する作業がうまく進まず、時間だけが過ぎたと伝えられています。

低コストで世界を驚かせたDeepSeekも候補でした。それでも見送られています。理由は数億人規模のサービスを支える体制や経験が足りないと判断されたためと言われています。

ちなみに、バイドゥが完全に外れたわけではありません。バイドゥは中国版Apple Intelligenceの機能開発でAppleと協力していることを認めています。頭脳の中心はアリババ、脇をバイドゥが固める形です。

承認まで2年かかった3つの理由

Apple Intelligenceの発表は2024年6月、承認は2026年7月。この約2年の空白には、はっきりした理由があります。

理由1:ChatGPTが中国では使えない

海外版のApple Intelligenceには、手に負えない質問をOpenAIのChatGPTに引き継ぐ仕組みがあります。

ところがChatGPTは中国本土では利用できません。つまり海外版をそのまま持ち込むことは、最初から不可能でした。

理由2:中国の厳しいデータ規制

中国には、国内ユーザーのデータの扱いを厳しく定めた法律があります。海外のAIにデータを送って処理させる形は、認められにくいのが実情です。

そのためAppleには、中国国内の企業と組む以外の道がありませんでした。海外ではOpenAIやGoogleのモデルを使っているので、中国版だけが例外的な作りになります。

理由3:米中の緊張関係

AIはいま、経済だけでなく安全保障のテーマでもあります。米中の対立が深まるなか、審査が慎重になるのは避けられませんでした。

Appleとアリババの提携自体は、2025年2月に初めて表面化しています。提携が明るみに出てから承認まで、さらに1年半近くかかったことになります。

承認されたのは7サービス|サムスンも同時通過

実はこの日、承認されたのはApple Intelligenceだけではありません。

CACは7月15日、スマホ向けAI7サービスをまとめて承認しました。内訳は次のとおりです。

  • Apple Intelligence(Apple)
  • Galaxy AI(サムスン)
  • ファーウェイ
  • シャオミ
  • OPPO
  • vivo
  • ヌビア(nubia)

中国メディアによると、CACがスマホ専用に作られたAIモデルを承認したのは今回が初めてです。1社ずつの審査というより、スマホAIというジャンル全体に一気に道が開いた形になります。

海外勢はAppleとサムスンの2社だけ。残る5社はすべて中国メーカーです。

そのサムスンも、中国では独自の作りにしています。文章生成はバイドゥの「ERNIE」、カメラ機能はMeitu、一部機能はバイトダンスの「Doubao」と、複数の中国企業を組み合わせる構成です。

つまり「中国で売るなら、頭脳は中国製にする」という形が、事実上の入場料になりつつあります。

海外版Apple Intelligenceと何が違う?

同じiPhoneでも、中国向けと日本向けでは中身が変わります。主な違いを整理しました。

項目海外版(日本など)中国版
外部の頭脳ChatGPT(OpenAI)Qwen(アリババ)
開発の協力先OpenAI・Googleアリババ・バイドゥ
データの扱いAppleのサーバー中心中国の規制に合わせた処理
回答の制限Appleの基準中国の規制基準も加わる
提供状況提供中2026年後半〜2027年見込み

いちばん大きいのは、外部の頭脳が丸ごと入れ替わる点です。同じ「文章を要約して」という指示でも、中国では別の会社のAIが答えを作ります。

答え方の傾向も変わる可能性があります。中国のAIは規制上、答えられない話題があるためです。日本で試したときと同じ結果になるとは限りません。

スマホの頭脳を国境で載せ替える。これはAppleにとって、これまでなかった作り方です。

日本のiPhoneユーザーへの影響は?

結論から言うと、日本で使うiPhoneの中身は変わりません。今回の話は中国国内向けの仕組みです。

日本語版のApple Intelligenceは、2025年3月のiOS 18.4で提供が始まりました。iOS 26.1の時点では16の言語に対応しています。日本のユーザーはすでに文章の要約や書き直しを使えます。

中国へ出張する人は要注意

上海に出張した営業担当者が、ホテルで英語のメールをiPhoneに要約させようとする場面を想像してみてください。

これまで中国本土では、Apple IntelligenceそのものがOFFの状態でした。提供が始まれば状況は変わりますが、どの端末で何が使えるかは端末の地域設定によって変わるとみられます

日本で買ったiPhoneが中国でどう動くかは、Appleの正式な案内を待つ必要があります。仕事で中国へ行く人は、開始時期の発表を追っておくと安心です。

日本企業にとっての意味

もうひとつ、静かですが大きい影響があります。Qwenが「世界最大級の端末に載るAI」として認められたことです。

ある日本のメーカーが、社内文書を要約するAIを選ぶ場面を考えてみましょう。これまでQwenは「安いが実績が読めない選択肢」でした。Appleが採用した今、その評価は変わります。

アプリを海外展開する開発者にも関係します。中国向けアプリを作るなら、これからは「どの国産AIと組むか」が現実的な検討事項になります。OpenAIを前提にした設計は、中国では通用しないからです。

よくある質問(FAQ)

Q. 中国版Apple Intelligenceはいつから使えますか?

正式な開始日は発表されていません。報道では2026年後半から2027年になるとみられています。今回の承認は「許可が下りた」段階で、提供開始とは別です。

Q. 日本で買ったiPhoneを中国で使うとどうなりますか?

現時点では明確な案内がありません。一般に、使えるAI機能は端末の地域設定に左右されるとみられます。確定した仕様はAppleの発表を待つ必要があります。

Q. 中国版ではChatGPTは使えないのですか?

ChatGPTは中国本土では利用できません。そのため、海外版でChatGPTが担っていた役割を、中国版ではアリババのQwenが引き受ける形になります。

Q. Qwenが頭脳になると、データはどこへ行きますか?

詳しい仕組みは公開されていません。ただし中国のデータ規制に合わせる必要があるため、中国国内で処理される部分が生まれるとみられます。Appleは従来からプライバシー保護を強調していますが、中国版の詳細は今後の説明待ちです。

Q. なぜAppleは中国にこだわるのですか?

中華圏は2026年4〜6月期に205億ドル(約3.2兆円)を売り上げた重要市場だからです。しかも競合のファーウェイやシャオミはAI機能を強化済みで、AIなしのiPhoneでは戦いにくくなっていました。

まとめ

  • 2026年7月15日、中国当局CACがApple Intelligenceの中国提供を正式承認した
  • 中国版の頭脳はアリババの「Qwen」。海外版のChatGPTとは別物になる
  • バイドゥも機能開発でAppleに協力している
  • 承認が遅れた原因は、ChatGPTが中国で使えないこと・厳しいデータ規制・米中対立の3つ
  • 同日にサムスンGalaxy AIなど計7つのスマホAIが承認され、スマホAIが一斉に解禁された
  • 提供開始は2026年後半〜2027年の見込み。日本版の中身は変わらない

まずはご自身のiPhoneで、設定アプリからApple Intelligenceが有効になっているかを確認してみてください。日本ではすでに、文章の要約や書き直しを無料で試せます。

参考文献

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