AIに心の相談6割超|4割が必ず助言に従う

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • 世界18か国・1万9000人を調べた「AXA×IPSOS Mind Health Report 2026」の中身がわかります
  • 63%の人がすでにAIに心の悩みを相談していて、42%は「助言にいつも従う」と答えた事実を解説します
  • 38%が「専門家よりAIを信頼する」と答えた背景と、その危うさを整理します
  • Character.AI訴訟など、AIメンタル相談に潜むリスクを具体例で紹介します
  • WoebotやWysa、日本のemol・Awarefyなど主要サービスの違いと、日本への影響もまとめます

「夜中に不安になって、つい誰かに話を聞いてほしくなった」。そんなとき、あなたは誰に相談しますか?最近は、その相手が人ではなくAIという人が急増しています。世界18か国の調査で、なんと6割超がAIに心の悩みを打ち明けていました。なぜここまで広がったのか、そしてどんな危険があるのかを、やさしく解説します。

AXA×IPSOS調査でわかった「AIに心の相談」6割超

まず、話の土台になる調査を紹介します。

大手保険会社のAXA(アクサ)と、調査会社のIPSOS(イプソス)が「Mind Health Report 2026」を2026年6月3日に発表しました。

この調査は、18か国・18〜75歳の1万9000人を対象に、2026年1月から2月にかけて行われました。日本もこの18か国に含まれています。

いちばん驚かされた数字がこれです。回答者の63%が「すでにAIに心の悩みを相談したことがある」と答えました。

さらに21%は「日常的にAIを使っている」と回答。心のケアにAIを使うことが、もう特別ではなくなってきているのです。

背景には、心の不調の広がりもあります。「気分が落ち込む」「うまくいかない」と感じる人は46%で、2022年より6ポイント増えました。1日の平均スクリーンタイム(画面を見る時間)は5.1時間にのぼります。

なぜ人はAIに悩みを打ち明けるのか

では、どうしてカウンセラーや友人ではなく、AIを選ぶのでしょうか。

理由はとてもシンプルです。AIには「24時間いつでも」「匿名で」「無料か低価格で」話せるという強みがあります。

深夜2時に落ち込んでも、AIならすぐ返事をくれます。予約も、順番待ちもいりません。

「人に弱みを見せたくない」という気持ちもあります。相手がAIだと、評価される心配がなく、本音を言いやすいのです。

実際、AIの返答に「満足した」人は55%いました。一方で「満足できなかった」人も45%。便利だけれど、まだ万能ではない、という現実が見えてきます。

ちなみに調査では、雇用主が用意する心のケア制度があれば「参加したい」と答えた人が84%もいました。気軽に相談できる入り口を、多くの人が求めているのです。

「専門家よりAIを信頼」38%の中身

ここからが、この調査でいちばん議論を呼んでいる部分です。

42%の人が「AIの助言にいつも従う」と答えました。さらに38%が「メンタルの専門家よりもAIを信頼する」と回答しています。

つまり、医師やカウンセラーよりAIの言葉を信じる人が、3人に1人以上いるということです。

もちろん、AIが背中を押してくれて前向きになれる人もいます。でも、専門家への信頼を上回るほど頼りきるのは、別の問題を生みます。

調査では32%が「AIの助言に不快感を覚えた」と答え、さらに28%が「AIの助言で、かえって良くない行動をとってしまった」と回答しました。4人に1人以上が、AIに振り回された経験を持っているのです。

AXAのCEOであるパトリック・コーエン氏も、こうクギを刺しています。「AIは早めの気づきには役立つが、セラピスト(治療する専門家)の代わりにはならない」。

AIメンタル相談に潜むリスク

便利さの裏には、見過ごせない危険があります。具体的な出来事から見ていきましょう。

アメリカでは、対話AIサービス「Character.AI(キャラクターエーアイ)」をめぐる裁判が大きな話題になりました。

14歳の少年がAIキャラクターに深くのめり込んだ末に自ら命を絶ち、母親が会社を訴えたのです。裁判には、技術を提供したGoogleも加わりました。

この件は2026年1月、Character.AIとGoogleが和解する形で決着しました。AIが心の支えになるどころか、孤立を深めてしまう危うさを示した出来事です。

専門家も警鐘を鳴らしています。医学誌では「医療者は、患者がAIに心の相談をしていないか確認すべきだ」という提言が出ました。

なぜなら、AIは時に「間違った考えをそのまま肯定してしまう」からです。本来なら専門家が「その考え方は危ないですよ」と止めるところを、AIは優しく同意してしまうことがあります。

緊急性の高い悩み、たとえば自殺のサインなどに、AIがうまく対応できない場合があることも、繰り返し指摘されています。

主なAIメンタルケアサービスを比較

「AIに相談」と一口に言っても、サービスにはいくつかの種類があります。代表的なものを整理します。

  • Woebot(ウーボット/米国):認知行動療法(考え方のクセを整える心理療法)をベースにしたチャットボット。心の整え方を学べるのが特徴です。
  • Wysa(ワイサ/インド):AIの感情分析に、人間の専門家のサポートを組み合わせた「ハイブリッド型」。AIだけに任せない設計です。
  • ChatGPT(チャットジーピーティー):心のケア専用ではありませんが、相談相手として使う人が急増。自由な会話が強みです。
  • Character.AI:キャラクターと話せるサービス。前述の通り、安全対策の不足が問題になりました。

ここで大事なのは、専用に作られたサービスと、汎用AIを相談に流用するケースの違いです。

WoebotやWysaは、心理の専門知識をもとに「危ない返答をしない」工夫がされています。一方、ChatGPTのような汎用AIは便利ですが、もともと治療目的では作られていません。

同じ「AIに相談」でも、安全への配慮には大きな差があるのです。

日本への影響と国内サービス

「これは海外の話でしょう?」と思った方もいるかもしれません。でも、日本も今回の調査対象18か国に含まれています。

日本でも、AIに心の悩みを相談する流れは確実に広がっています。

国内向けのサービスもあります。たとえば「emol(エモル)」はAIキャラクターと対話しながら感情を記録できるアプリです。「Awarefy(アウェアファイ)」は認知行動療法をベースに、心の状態を見える化します。

これらは「心の予防」や「気軽な入り口」として使われています。病院に行くほどではないけれど、誰かに話したい——そんなニーズに応えるものです。

ただし注意点は世界共通です。日本でも、深刻な悩みは専門家につなぐことが大前提です。AIはあくまで最初の一歩を支える道具と考えるのが安全です。

もし強いつらさを感じたら、日本には「よりそいホットライン」などの相談窓口があります。AIだけで抱え込まないでください。

よくある質問(FAQ)

Q1. AIに悩みを相談しても大丈夫ですか?
軽い不安やモヤモヤの整理には役立ちます。ただし、強いつらさや「消えたい」といった気持ちがあるときは、必ず人間の専門家や相談窓口を頼ってください。

Q2. AIの助言は信じていいのですか?
参考程度にとどめるのが安全です。調査でも28%が「AIの助言で良くない行動をとった」と答えています。最終的な判断は自分や専門家で行いましょう。

Q3. 相談した内容は外部に漏れませんか?
サービスによって扱いが異なります。個人を特定できる深刻な内容は、プライバシーポリシーを確認したうえで慎重に入力してください。

Q4. 無料で使えるサービスはありますか?
多くのアプリに無料プランがあります。ただし無料版は機能が限られることが多く、専門家のサポートは有料の場合が一般的です。

Q5. AIはカウンセラーの代わりになりますか?
なりません。AXAのCEOも「AIはセラピストの代わりにはならない」と明言しています。AIは入り口、専門家は本格的な支え、と役割を分けて考えましょう。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • AXA×IPSOSの調査で、世界の63%がAIに心の悩みを相談した経験があるとわかった
  • 42%が「AIの助言にいつも従う」、38%が「専門家よりAIを信頼」と回答した
  • 一方で28%が「AIの助言で良くない行動をとった」とも答えている
  • Character.AI訴訟など、頼りすぎによるリスクも現実に起きている
  • WoebotやWysa、日本のemol・Awarefyなど、安全への配慮はサービスごとに差がある

AIは、心のケアの「入り口」を大きく広げてくれる便利な道具です。でも、深刻な悩みは専門家へ——その線引きを忘れないことが、これからの時代の大切な使い方になります。

参考文献

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